「AIで作った顔」は誰のもの?広報が絶対に知っておきたいAI画像と肖像権の安全ルール

最近、いろいろな場面で「AIが作った画像」を見るようになりましたよね。「社内報の挿絵にちょっとした人物の写真が欲しいな」「オウンドメディアの記事をもっと華やかにしたいな」と思ったとき、パッと数秒で思い通りの画像を作ってくれるAIは、広報担当者にとって魔法のようなツールです。
ですが、AIを使っているときに、ふとこんな不安を感じたことはありませんか?
「このAIが作った人物の顔、どこかの誰かにそっくりだったらどうなるんだろう?」
「有名な俳優さんの名前をAIに伝えて、似たような画像を作っても法律的に問題ないのかな?」
実は、この「誰かに似ているかもしれない」という問題は、会社にとって非常に大きなリスクを隠し持っています。便利なツールだからといって深く考えずに使っていると、知らないうちに「コンプライアンス(会社が法律や社会のルールを守ること)」に違反してしまい、会社の信用を大きく落としてしまうかもしれないのです。
この記事では、AIが作った画像と「肖像権(しょうぞうけん)」という法律のルールについて、小中学生が読んでも「なるほど、そういうことか!」とわかるくらい、やさしい言葉とたっぷりのたとえ話で解説していきます。
この記事を最後まで読めば、AIが作った画像をどうやって安全に使えばいいのかがハッキリとわかります。「この画像、本当に使っていいのかな…」とビクビクすることなく、自信を持ってAIを使いこなせるようになりますよ。ぜひ、日々の業務の安心材料として役立ててくださいね。
AI生成画像と「肖像権」って、そもそも何のこと?
まずは、ニュースや新聞でよく耳にする「肖像権(しょうぞうけん)」という言葉の意味から確認していきましょう。「権利」とか「法律」と聞くと、なんだか難しそうなイメージがあるかもしれませんが、中身はとってもシンプルです。
肖像権とは「自分の顔や姿を勝手に使われない権利」のこと
ひとことで言うと、肖像権とは「自分の顔や姿を、他の人に勝手に写真に撮られたり、世の中に公開されたりしないための権利」のことです。
たとえば、あなたが街を歩いているとき、知らない人がいきなりカメラを向けてあなたの顔のアップ写真を撮り、それを勝手にインターネットのブログやSNSに載せたらどう思いますか?「やめてよ!」「気持ち悪い!」と怒りたくなりますよね。これは、あなたが「自分の顔を勝手に使われない権利」、つまり肖像権を持っているからです。
肖像権は、有名な人だけでなく、私たち一般人を含めた「すべての人」が持っている大切な権利です。
「自分の顔は自分だけのものだから、勝手に商売に使ったり、みんなに見せたりしないでね」と言えるのが、肖像権の基本的な考え方なのです。
有名人の顔には「お金を稼ぐ力」がある(パブリシティ権)
肖像権のお話をするうえで、もう一つ知っておいてほしい言葉があります。それが「パブリシティ権」です。これも難しい言葉ですが、かんたんに言うと「顔や名前が持っている『お金を稼ぐ力』を守る権利」のことです。
もう少し詳しく言うと、テレビで大活躍している俳優さんや、有名なスポーツ選手を想像してみてください。彼らの顔写真がポスターに載っているだけで、その商品がたくさん売れますよね。つまり、有名人の顔や名前には「お客さんを集める力=お金を生み出す価値」があるのです。
もし、ある会社が「あの有名なアイドルの写真を勝手に使って、うちの会社のジュースを宣伝しよう!」と考えたらどうなるでしょうか。アイドル本人は一円ももらえないのに、会社だけが儲かってしまいます。これはズルいですよね。
だからこそ、有名人の顔や名前が持つ「お客さんを呼ぶ力」を勝手に使われないように守るルールがあります。これがパブリシティ権です。広報担当者が広告や記事を作るときは、この権利を絶対に侵害しないように注意する必要があります。
AIが作った「架空の人物」にも肖像権はあるの?
さて、ここからが本題です。AIが作り出した「この世に存在しない架空の人物」の顔に、肖像権はあるのでしょうか?
結論から言うと、架空の人物には肖像権はありません。
肖像権は「実際に生きている人間」を守るための権利だからです。AIが何億枚という写真のデータを混ぜ合わせて、「こんな感じの顔かな?」と福笑いのように新しく作った顔は、誰のものでもないので、基本的には自由に使っても問題ありません。
しかし、ここで大きな落とし穴があります。それは「AIが作った顔が、偶然、実在する誰かにそっくりになってしまった場合」です。
AIは、過去のたくさんの画像データを学習して新しい画像を作ります。もし、AIが「ある特定の人の顔」を強く学習していて、そのまま吐き出してしまった場合、できた画像は「架空の人物」ではなく「実在するAさんの顔」になってしまいます。これを知らずに会社の広告に使ってしまったら、「私の顔を勝手に広告に使わないで!」とAさんから訴えられてしまう危険があるのです。

広報担当者が絶対にやってはいけない!3つのNG行動
AIが作った画像を使うとき、「偶然似てしまった」以外にも、人間が意図的にやってしまいがちな失敗があります。ここからは、広報担当者が現場で「これくらいならいいよね」と、ついついやってしまいがちな3つのNG行動を紹介します。これは会社を守るために絶対に避けてください。
【NGその1】実在の有名人に似せて画像を作る
一番やってはいけないのが、「特定の有名人に似せてAI画像を作り、それを会社の宣伝に使うこと」です。
たとえば、「うちの新商品のターゲットは20代の女性だから、今大人気の女優の〇〇さんに似たモデルさんの画像を作って、ポスターにしよう」と考えるのはNGです。
「本物の写真を使っていないから、ギリギリセーフじゃない?」と思うかもしれません。しかし、見る人が「あ、これ〇〇さんだ!」とわかるレベルで似ていた場合、先ほど説明した「パブリシティ権(有名人の顔がお金を稼ぐ権利)」を侵害しているとみなされる可能性が非常に高くなります。
本物の写真を使おうが、イラストで描こうが、AIで作ろうが、「その有名人の人気を利用して商売をしている」という事実に変わりはないからです。
【NGその2】社員の顔写真を、本人の許可なくAIで加工する
広報の仕事では、自社の社員を紹介する記事を作ることも多いですよね。そのとき、「この社員さんの写真、ちょっと暗いし表情が硬いから、AIに読み込ませて笑顔に加工しちゃおう」「背景をハワイの海に変えちゃおう」と、勝手にAIを使うのも実はNGです。
なぜなら、社員であっても、一人ひとりに「肖像権」があるからです。会社のために働く社員だからといって、会社がその人の顔を自由自在に作り変えて世の中に出していいわけではありません。
もしどうしてもAIを使って社員の写真を加工したり、キャラクター化したりしたい場合は、必ず「AIを使ってこういう風に加工して、この記事に載せたいんだけど、いいですか?」と本人に聞いて、OK(許可)をもらうのが大事です。本人が「嫌です」と言ったら、絶対にやってはいけません。
【NGその3】プロンプト(指示文)に、特定の人の名前を入れる
AIに画像を作ってもらうとき、「どんな画像を作ってほしいか」を言葉で指示しますよね。これを専門用語で「プロンプト」と呼びます。お店の店員さんに「こういう料理を作って」と注文するようなものです。
このプロンプトの中に、実在の有名人やスポーツ選手の「名前」を直接入れて指示を出すのは、とても危険な行為です。
たとえば、「日本の有名な俳優の〇〇さんが、パソコンを使って笑顔で仕事をしている画像を作って」とAIにお願いしたとします。するとAIは、その俳優さんの顔を一生懸命に再現しようとします。その結果出てきた画像は、限りなく本人に近いものになります。
これをそのまま会社のブログなどに使ってしまうと、肖像権やパブリシティ権の侵害になってしまいます。「誰かに似てしまった」という偶然の事故ではなく、「自分から似せようとした」という証拠(プロンプトの履歴)が残ってしまうため、言い逃れができません。指示を出すときは、「20代の男性、黒髪、爽やかな笑顔」のように、特徴だけを言葉にして伝えるのが鉄則です。
AIの著作権や画像生成のリスクについては、専門家の見解も参考になります。たとえば、生成AIの著作権リスクについて(エクサウィザーズ)や、生成AIの著作権に関する解説(LegalOn Technologies)といった記事でも、ビジネスでAIを使う際の注意点が詳しく解説されていますので、時間があるときに目を通してみてください。

AI時代のコンプライアンス!安全にAI画像を使うための3つのルール
ここまで「やってはいけないこと」や「リスク」についてお話ししてきましたが、怖がる必要はありません。正しいルールを知って、しっかり対策をしておけば、AIは広報担当者にとって最強の相棒になってくれます。
ここからは、「これだけやっておけば安心!」という、今日からできる3つの安全ルールを紹介します。
ルール1:商用利用OKで、安全対策がされているAIツールを選ぶ
世の中には、無料で使えるものから有料のプロ向けまで、たくさんのAI画像作成ツールがあります。会社で使う場合は、必ず「商用利用(しょうようりよう:ビジネスやお金儲けのために使うこと)がOK」とルールに書かれているツールを選んでください。
さらに、ビジネス向けのしっかりしたAIツールの中には、「もしAIが作った画像が原因で、誰かから裁判を起こされた場合、AIの会社が責任を持ってサポートしますよ」という補償制度(ほしょうせいど)を用意しているものもあります。
無料だからといって出どころのわからないAIツールを使うのは、賞味期限のわからない食べ物を食べるようなもので、とても危険です。会社のお金を使ってでも、ビジネス用に安全対策がしっかりされているツールを契約するのが大事です。
ルール2:できた画像が「誰かに似ていないか」を画像検索でチェックする
AIが作ってくれた画像が、偶然、実在の有名人に似てしまうことがあるとお話ししましたね。これを防ぐためのとても簡単な方法があります。それが「画像検索」です。
AIが人物の画像を作ってくれたら、いきなり世の中に出すのではなく、Googleの「画像検索」などの機能を使って、その画像を一度インターネット上で検索してみましょう。
画像検索を使うと、「この画像と似ている写真が、世の中にありませんか?」と調べることができます。もし検索結果に、実在する特定の有名人の写真がズラッと並んだら、それは「その人に似すぎている」という危険なサインです。その画像は使うのを諦めて、もう一度AIに作り直してもらうのが安全です。
少し手間だと感じるかもしれませんが、この「公開する前に一度チェックする」というワンクッションを挟むだけで、トラブルの確率をグッと下げることができます。
ルール3:会社の中で「AIを使うときのルールブック」を作る
広報の担当者が一人だけで気をつけていても、他の部署の人が勝手にAIで作った危険な画像を会社のホームページに載せてしまったら意味がありませんよね。だからこそ、会社全体で「AIを使うときのルールブック(ガイドライン)」を作ることが大事です。
ルールブックといっても、何十ページもある分厚い本を作る必要はありません。最初は、紙1枚に箇条書きで書くくらいで十分です。
- プロンプト(指示文)に有名人の名前は入れないこと
- 社員の顔をAIで加工するときは、必ず本人にOKをもらうこと
- 作った画像は、必ず画像検索で似ている人がいないかチェックすること
このように、今日お話ししたような基本的なルールをまとめて、社内の全員が見られる場所に貼っておきましょう。みんなが同じルールを守ることで、会社全体が安全にAIを使えるようになります。
AIを会社でどう活用していくかの仕組みづくりについては、こちらの記事(BtoB企業向け「AI広報部」の作り方|1人広報がAIを相棒にして3人分の成果を出す体制構築術)や、こちらの記事(【BtoB広報向け】「AI画像生成」を最強の武器に!著作権リスクを回避し、自社専用のオリジナル画像を作り続ける運用術)でも詳しく解説していますので、あわせて読んでみてください。

AIと肖像権に関する「よくある質問(FAQ)」
最後に、広報担当者の方からよくいただく質問と、その答えをわかりやすくまとめました。「こんな時どうすればいいの?」と迷ったときの参考にしてください。
AIで作った顔の「ほくろの位置」や「髪型」を少し変えれば、有名人に似ていてもセーフですか?
いいえ、アウトになる可能性が高いです。「少し変えたからOK」というわけではなく、パッと見たときに「あ、これ〇〇さんだ!」とわかるレベルであれば、パブリシティ権の侵害になる危険があります。似ているとわかった時点で使わないのが一番安全です。
社長が「うちの会社のマスコットキャラクターを、有名人の〇〇さん風にAIで作ってよ」と無茶ぶりしてきました。どう断ればいいですか?
「社長、それはパブリシティ権という法律に引っかかって、会社が訴えられるリスクが大きいです。〇〇さんの所属事務所から損害賠償を請求されるかもしれません」と、会社の信用やお金のトラブルにつながる危険性をしっかり伝えてあげてください。
AIが作った架空の人物が、街を歩いている一般の人に偶然似てしまうことはありませんか?
確率としてはゼロではありませんが、非常に低いです。万が一「これ、私に似ていて嫌なので消してください」と連絡が来た場合は、相手の気持ちに寄り添い、すみやかに画像を差し替えるのが誠実な対応です。意図的に似せたわけでなければ、すぐ大きな裁判になることは少ないでしょう。
まとめ:正しくルールを守って、AIを心強い味方にしよう
ここまで、AI生成画像と「肖像権」についてお話ししてきました。難しい法律の言葉もいくつか出てきましたが、一番大切なのは「誰かの顔や名前の価値にタダ乗りしない」「相手が嫌がるような使い方をしない」という、人としての基本的な思いやりの気持ちです。
AIは、何時間もかかっていた作業を数秒で終わらせてくれる、本当に素晴らしい道具です。「法律が怖いから、もうAIを使うのはやめよう…」と避けてしまうのは、とてももったいないことです。
自動車と同じですね。ルールを守らずにスピードを出しすぎれば事故を起こしますが、信号を守り、シートベルトを締めて安全運転をすれば、これほど便利な乗り物はありません。AIも同じです。
今日お伝えした「有名人に似せない」「プロンプトに特定の名前を入れない」「公開前に似ていないかチェックする」という基本的なルールさえ守れば、AIは広報担当者のあなたにとって、最高の相棒になってくれます。
これからも新しい技術を上手に、そして安全に取り入れながら、会社の魅力をたくさんの人に伝えていってくださいね!

