生成AIの顔画像と肖像権|広告で安全に使う可否の判断基準
この記事の要点
- AI生成画像のリスクは「実在の人に似る」「既存作品に似る」の2点に集約される
- 安全の決め手は公開前の3チェック。実名を入れない、似ていないか人が確認、画像検索で照合
- 守りを固めれば撮影コストや出演者リスクを抑えつつ自社専用のビジュアルを量産できる
AIで人物の顔を作って広報物に使いたいけれど、「この顔、誰かに似ていたら問題になるのでは」と手が止まっていませんか。実際、ここで一度止まって考えられる方は筋がいいです。
この記事では、AI生成画像を広報で安全に使うための判断軸と、公開前にやるべき確認手順を、現場でそのまま回せる形でまとめました。法律の難しい議論ではなく、「何を確認し、何を残せば安心して使えるか」に絞ってお伝えします。
Contents / 目次
結論。AI画像のリスクは2種類だけ、守るのは公開前の3チェック

結論からお伝えします。AI生成画像で広報がつまずくリスクは、突き詰めると2種類しかありません。「実在の人に似てしまう(肖像権・パブリシティ権の問題)」と「既存の作品に似てしまう(著作権の問題)」です。この2つさえ押さえれば、過度に怖がる必要はありません。
まず言葉を整理します。肖像権とは、自分の顔や姿を勝手に使われない権利のことです。さらに有名人の場合は、その顔に経済的な価値があるため「パブリシティ権」という別の権利も関わってきます。AIが作った顔でも、結果的に実在の誰かに似ていれば、これらの権利を侵害したと見なされる可能性があります。
もう一つの著作権は、絵や写真などの作品を作った人に発生する権利です。AIが出した画像が既存の作品と似ていて、かつそれを参考にしたと認められる場合(類似性と依拠性)は、著作権の侵害になり得ます。この類似性・依拠性という論点は、国立国会図書館カレントアウェアネス・ポータルの記事でも紹介されています。
この2つのリスクに対して、広報がやるべき守りはシンプルです。公開前の3つのチェックに集約できます。
| リスクの種類 | 何が問題になるか | 公開前にやる対策 |
|---|---|---|
| 実在の人に似る | 肖像権・パブリシティ権の侵害 | 実名を入れない。似ていないか人が目視確認 |
| 既存作品に似る | 著作権の侵害 | 画像検索で似た既存画像がないか照合 |
| 情報が外に漏れる | 機密・個人情報の流出 | 社員写真や未公開情報をプロンプトに入れない |
ここが肝心。AI画像のトラブルは「作るとき」より「公開するとき」に決まります。生成は自由でも、世に出す前に上の3点を通す仕組みを作れば、リスクの大半は防げます。
AI画像を安全に使う具体的な手順とチェックリスト

ここからは実際の流れを順番に見ていきましょう。広報がAI画像を1枚公開するまでに踏むべき手順を、誰でも再現できる形に分解します。
手順1。実在の人に「似せない」プロンプトで作る
最初の分かれ道は、AIへの指示の出し方です。実在の人物に似た顔が出てくる最大の原因は、プロンプトに具体的な個人名や固有の特徴を入れてしまうことにあります。
鉄則は、人を特定できる情報ではなく「属性だけ」を言葉にすることです。たとえば「30代の女性、ショートヘア、落ち着いた表情、オフィスの背景」のように、年代・髪型・雰囲気・場面だけを伝えます。芸能人の名前や「○○さん風」といった指定は絶対に入れません。
出発点として、こんな短いたたき台(seed)から始めると安定します。あとはAIと対話しながら、自社のトーンに合わせて詰めてください。
架空の人物のポートレートを作ってください。
実在の人物・有名人には一切似せないでください。
- 年代:[20代/30代など]
- 性別・雰囲気:[例 やわらかい印象の女性]
- 髪型・服装:[例 黒髪ボブ、ネイビーのジャケット]
- 場面:[例 明るいオフィスで微笑む]
特定の個人名やブランド名は使わず、属性だけで描写してください。
プロンプトそのものを作り込むより大事なのは、出てきた顔を「どう確認するか」です。文面は出発点にすぎません。
手順2。出てきた画像を人の目でチェックする
AIの出力をそのまま使ってはいけません。必ず人の目で次の点を確認します。これがAIにはできない、人がやるべき仕事です。
- 実在の人に似ていないか:「これ、あの俳優に似てない?」と感じたら作り直す。少しでも引っかかれば差し替える
- ロゴや商標が写り込んでいないか:背景の看板や服の柄に、実在ブランドのロゴらしきものが混じることがある
- 不自然・不適切な表現がないか:指の本数、文字の崩れ、特定の人種や性別に偏った描き方になっていないか
- 自社のトーンに合っているか:表情や雰囲気がブランドの印象とずれていないか
手順3。公開前にリバースイメージ検索で照合する
仕上げに、生成した画像をGoogle画像検索などの「リバースイメージ検索」にかけます。これは、手元の画像をアップロードして、よく似た画像がネット上に存在しないかを探す機能のことです。
やり方は、画像検索サービスに自社の生成画像をアップロードして検索するだけです。具体的な操作画面はサービスによって変わるため、各サービスの公式ヘルプで確認してください。酷似した既存の写真やイラストがヒットしたら、その画像は使わず作り直します。何も似たものが出てこなければ、独自性の面では一安心です。
この一連の流れを、チームの誰がやっても同じ品質になるようチェックリストにしておきましょう。印刷して使える雛形を載せます。
| 確認項目 | OK/NG |
|---|---|
| プロンプトに個人名・ブランド名を入れていない | |
| 実在の人物に似ていないか目視で確認した | |
| ロゴ・商標の写り込みがない | |
| リバースイメージ検索で酷似画像がなかった | |
| 使用したツールの利用規約で商用利用が認められている | |
| 必要に応じてAI生成である旨を表示できる状態にした |
ツールごとに利用規約は異なります。生成画像の権利が誰に帰属するか、商用利用がどこまで許されるかは、使う前に各サービスの公式の規約で必ず確認してください。商用利用を前提に作られたサービスを選ぶと安心感が高まります。なお著作権面の作り込み方はAI画像生成の著作権トラブル回避|2026年版ガイドラインの作り方でも詳しく整理しています。
きちんと運用すると何が変わるのか

安全ルールを整えてAI画像を使えるようになると、広報の現場は具体的にこう変わります。
まず、撮影にかかっていた時間とお金が大きく圧縮されます。モデルの手配、スタジオ予約、カメラマンとの調整、撮影当日の立ち会い。これらが「数枚の画像を生成してチェックする」作業に置き換わります。急な差し替えや、A案B案の出し分けも、その場で対応できるようになります。
次に、出演者にまつわるリスクから解放されます。実在のモデルやタレントを起用すると、契約期間の管理や、万が一の不祥事による差し替えといったリスクが常につきまといます。架空の人物を使えば、こうした心配なく長く同じイメージを使い続けられます。
さらに、自社専用のビジュアルを資産として積み上げられます。ストックフォトは便利ですが、同じ写真を競合も使っている可能性があります。AIで作れば、自社の世界観に合った唯一無二のイメージを、何枚でも統一感を保って量産できます。
成功している会社の共通点。AI画像で成果を出している企業は「ツールが優秀」なのではなく「公開前のチェックを仕組みにしている」点が共通しています。属人的に頑張るのではなく、誰がやっても同じ確認が通る運用にしているのです。
ただし、これらの効果はあくまで「守りを固めたうえで」の話です。チェックを飛ばして量産すれば、効率化どころか炎上や訴訟という形で何倍ものコストが跳ね返ってきます。スピードと安全は両輪だと考えてください。AIに作らせる部分と人が判断する部分の線引きについてはAX時代のクリエイティブ革命──AIと人が共創する表現もあわせて読むと、役割分担のイメージがつかめます。
よくある失敗と、その防ぎ方

現場でよく見かける失敗を、起きる状況とセットで紹介します。先に知っておけば、ほとんどは避けられます。
失敗1。プロンプトに有名人の名前を入れてしまう
「○○さんみたいな爽やかな男性」と指示したくなる場面はよくあります。イメージを早く伝えたいからです。しかしこれをやると、AICはその有名人に寄せた顔を出してきます。結果、肖像権やパブリシティ権の侵害につながり、広告に使えば訴訟リスクが生じます。
防ぎ方は手順1の通りです。名前を出さず、年代・髪型・雰囲気といった属性だけで描写します。「誰かに似せる」のではなく「条件を満たす架空の人を作る」と発想を切り替えてください。
失敗2。社員の写真を無断でAIに加工させる
「社員の顔写真をAIできれいに加工したい」「集合写真から一人だけ差し替えたい」という依頼も起きがちです。一見問題なさそうですが、本人の同意なく顔写真を加工・利用すれば肖像権の問題になります。さらに、その写真をクラウド型のAIにアップロードすること自体が、個人情報の社外持ち出しにあたる場合があります。
防ぎ方は2つです。社員の顔を扱うときは必ず本人の同意を取ること。そして、個人情報や機密を含むデータは、外部に学習されない設定のサービスや法人向けの安全な環境でのみ扱うこと。この線引きを社内ルールに明記しておきます。
失敗3。出てきた画像をノーチェックで公開する
納期に追われると、生成した画像をそのまま入稿してしまいがちです。ところがAIは、意図せず既存作品に酷似した構図や、不自然な要素を含む画像を平気で出すことがあります。生成した本人も気づきにくいため、ノーチェックで公開すると権利侵害や品質トラブルにつながります。
防ぎ方は、公開前のリバースイメージ検索と目視チェックを「省略できない工程」として運用に組み込むことです。チェックを担当者の気合いに任せず、チェックリストを通さない画像は公開できないという流れにしておきます。
失敗4。AIで作ったことを一切示さない
AI生成であることを完全に隠して、実写のように見せかけて使うと、後から発覚したときに信頼を損ないます。国内外で、AI生成コンテンツに表示やラベルを求める動きが強まっています。海外の規制は地域ごとに内容も施行時期も異なるため、自社が発信する国の最新ルールは公式情報で確認してください。
防ぎ方は、社として「どんな場面でAI生成を明示するか」を先に決めておくことです。すべてに表示する必要はありませんが、誤解を招きやすいビジュアルでは一言添えられるようにしておくと安全です。
現場で見えてくる落とし穴と妥協点
ここからは、教科書には書きにくい、実際に運用して初めて分かる本音をお伝えします。相談を受ける中で繰り返し出てくる論点です。
一つ目は、「肖像権フリー」をうたうサービスでも、安心しきってはいけないということです。肖像権フリーのAIモデル生成サービスは確かに便利で、出演者リスクを避けたい場面で有力な選択肢になります。ただし「フリー」が指す範囲はサービスごとに違います。実在の人に似ない保証なのか、商用利用の許可なのか、再配布まで含むのか。ここを確認せずに導入すると、後で使える範囲が想定と違ったという事態になります。自社サイトでAIモデルを使う判断軸はAI肖像権の新常識。自社サイトにAIモデルを採用する際のメリットと注意点でも掘り下げています。
二つ目は、ガイドラインを作っても「現場が見ないと意味がない」という現実です。立派な社内ルールを弁護士監修で作っても、分厚いPDFが共有フォルダに眠っているだけ、というのはよくある光景です。
大事なのは、ルールそのものより「公開ボタンを押す直前に通る1枚のチェックリスト」です。完璧な規程より、毎回必ず通る簡単な関門のほうが、現場では機能します。
三つ目は、内製と外注の線引きです。日常的なバナーやブログの挿絵なら、チェックリストを整えて内製で十分回せます。一方で、全社的なブランドビジュアルや、大規模な広告、規制が絡む業界の発信になると、判断のコストが一気に上がります。「どこまで自分たちでやり、どこから専門家に相談するか」をあらかじめ決めておくと、迷って止まる時間が減ります。
「無料ツールで作ったから大丈夫」という思い込みは危険です。ツールが無料かどうかと、その画像を商用利用してよいか、権利侵害がないかは、まったく別の話です。コストの安さと法的な安全性を混同しないでください。
正直に言えば、AI画像のルールづくりは「一度作って終わり」にはできません。規制も技術も動き続けています。だからこそ、完璧を目指して動けなくなるより、最低限の3チェックから始めて、運用しながら育てていくのが現実的です。
よくある質問
AIで作った顔の画像は、本当に広告に使っても大丈夫なの?
実在の人物に似ておらず、既存作品の模倣でもなければ、商用利用が認められたツールで作った画像は広告に使えます。ただし公開前に、似た人や似た画像がないかの確認は必ず行ってください。確認を通すこと自体が安全の根拠になります。
AIが偶然、有名人に似た顔を作ってしまったらどうなる?
意図せず似た場合でも、それを公開して使えば肖像権などの問題になり得ます。「わざとではない」は通用しにくいと考えてください。だからこそ公開前の目視チェックが重要で、少しでも似ていると感じたら作り直すのが安全です。
社員の写真をAIで加工するのは問題ある?
本人の同意があれば可能ですが、無断での加工・利用は肖像権の問題になります。また顔写真をクラウドのAIに上げること自体が情報の持ち出しになる場合があります。同意の取得と、安全な環境での利用の2点を社内ルールにしておきましょう。
AIで作ったと表示する義務はあるの?
国や用途によってルールが異なり、表示を求める動きが世界的に強まっています。一律の正解はないため、自社が発信する地域の最新ルールを公式情報で確認しつつ、誤解を招きやすい画像では一言添える運用にしておくのが無難です。
ここまで読んで、自社だけでルールづくりや運用の仕組み化までやり切るのは大変そうだと感じた方もいるはずです。コレットラボのAI業務システム化支援では、AI画像の確認フローやガイドラインを「現場が毎回通せる仕組み」に落とし込むところまで伴走しています。まずは現状を整理するだけでも構いません。AI業務システム化の詳細はこちらから、お気軽にご相談ください。
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