AIモデルの肖像権を自社サイトで使う|安全な判断軸と3つの権利
この記事の要点
- 実在しない人物のAIモデルは肖像権が原則発生せず、長期一貫利用に有効
- 肖像権がクリアでもパブリシティ権と著作権の侵害リスクは残る
- 学習元の明確なツール選定と公開前の人による最終確認が必須
「自社サイトのモデル写真、AIで作れば撮影費も肖像権も気にしなくていいらしい」。そんな話を聞いて、一歩を踏み出していいものか迷っていませんか。
結論から言うと、AIモデルは正しく使えば強力な選択肢です。ただし「AIだから肖像権はゼロ」という理解は危険で、ここを誤解したまま公開すると思わぬトラブルに発展します。この記事では、2026年6月時点の最新ルールをふまえ、AIモデルを自社サイトに採用するメリットと、つまずかないための判断軸・手順・失敗例を、現場目線で具体的にお伝えします。
Contents / 目次
AIモデル採用で押さえるべき結論は「3つの権利」と「人の最終確認」
自社サイトにAIモデルを使うかどうかの判断は、突き詰めると次の2点に集約されます。第一に、肖像権・パブリシティ権・著作権という3つの権利をクリアできているか。第二に、AIの出力をそのまま信じず、人が公開前にチェックする体制があるか。この2つさえ押さえれば、AIモデルは安全に活用できます。
「実在しない人物をAIで生成すれば、その人物の肖像権は発生しない」。これがAIモデル活用の出発点です。肖像権とは、自分の顔や姿を勝手に撮影・公開されない権利のことです。世の中に存在しない顔なら、権利を主張する本人がいないため、肖像権侵害は原則として起きません。撮影モデルのように契約更新やギャラの心配もなく、ブランドイメージを長く一貫して保てるのが最大の魅力です。
ただし「肖像権がクリアされる」ことと「すべての権利がクリアされる」ことは別物です。AIが既存の有名人や実在の誰かに似た顔を出力してしまえば、その人のパブリシティ権(有名人が自分の顔や名前を経済的に利用する権利)を侵害する恐れがあります。さらに、生成画像が既存の写真や作品に酷似していれば著作権の問題も出てきます。つまり、守るべき権利は1つではないのです。
まずは、撮影モデル・無料素材・AIモデルの違いを一覧で整理しておきましょう。
| 項目 | 撮影モデル | フリー素材・ストック写真 | AIモデル(生成) |
|---|---|---|---|
| 肖像権の所在 | 本人にある(契約で許諾) | 本人にある(素材側が許諾済み) | 実在しないため原則なし |
| 利用期間の縛り | 契約で期限あり。更新が必要なことも | ライセンス範囲内 | 縛りが少なく長期利用しやすい |
| ブランドの一貫性 | 同じ人を使い続けるのは費用大 | 同じ人の別カットが少ない | 同一人物の表情・衣装違いを量産しやすい |
| 主なリスク | 契約切れ後の使用、二次利用範囲 | 他社とのカブり、利用規約違反 | 実在人物との類似、学習データの権利 |
ここがポイント。AIモデルは「肖像権リスクを下げる」手段であって「すべての法的リスクをゼロにする魔法」ではありません。この前提に立てるかどうかで、安全に使えるかが決まります。

AIモデルを自社サイトに採用する具体的な手順
やるべきことは、ツール選び・生成・チェック・記録という4つの流れに整理できます。順番に見ていきましょう。難しそうに見えますが、一つずつ進めれば社内のリソースでも十分対応できます。
手順1。学習データの素性がはっきりしたツールを選ぶ
最初の分岐点は、どの画像生成サービスを使うかです。ここで重視すべきは「何を学習元にしているか」が公開されているかどうかです。たとえばAdobeのFireflyは、Adobe Stockの素材やパブリックドメインの作品などを学習元にしていると公式に説明しており(2026年6月14日時点)、著作権面のリスクを抑えやすい設計になっています。 逆に、学習データの出所が不透明なサービスは、生成画像が誰かの権利を侵害している可能性を自分では検証できません。
肖像権フリーのモデル写真に特化したサービスや、存在しない人物の顔を生成する専用サービスも登場しています。用途が「人物写真だけ」なら、こうした専用サービスのほうが余計なリスクを抱えにくい場合もあります。
手順2。プロンプトで「誰かに似せない」を徹底する
生成時に最も事故が起きやすいのが、プロンプト(AIへの指示文)の書き方です。鉄則は、特定の個人名・有名人名・作品名を絶対に入れないことです。「あの俳優風の」「人気アイドルのような」といった指示は、実在人物への類似を生み、パブリシティ権侵害の引き金になります。
代わりに、年代・雰囲気・服装・シーンといった属性で指示します。さらに、生成してほしくない要素を排除する「ネガティブプロンプト」を併用すると、事故率がぐっと下がります。そのまま使える指示文の雛形を用意しました。角括弧の中を自社の用途に置き換えてください。
# 前提:人物画像生成AIのプロンプト欄に貼り付けて使う。
# [ ]内を自社の用途に差し替える。固有名詞(人名・ブランド名)は絶対に入れない。
【生成したい人物】
30代後半・日本人・女性・ビジネスカジュアル・穏やかで信頼感のある表情
シーン:[明るいオフィスで打ち合わせをしている様子]
構図:上半身・自然光・正面やや斜め
【スタイル】
リアルな写真風/企業サイトの採用ページで使える清潔感
【ネガティブプロンプト(生成してほしくない要素)】
特定の有名人への類似, 既存ブランドのロゴや商標, 不自然な手や指,
過度な加工感, 実在しそうな個人の特徴の再現
うまくいかないときは、まず属性の指示を1つずつ具体化します。表情が硬ければ「穏やかな笑顔」、雰囲気がずれていれば年代やシーンの言葉を変えるのがコツです。逆にキーワードを詰め込みすぎると指示がぼやけるので、シンプルで明確な構成を保ちましょう。
手順3。公開前チェックリストで人の目を通す
AIが出した画像は、必ず人が確認してから公開します。ここを飛ばすと、後述する失敗に直結します。公開前に最低限見るべき項目をチェックリストにまとめました。
- 実在人物との類似:有名人や取引先など、特定の誰かに似ていないか。逆画像検索で確認するとより安心
- ロゴ・商標の写り込み:服や背景に既存ブランドのロゴ、商品名が紛れていないか
- 不自然な描写:指の数、文字の崩れ、装飾品の歪みなどAI特有の破綻がないか
- 用途との整合:採用ページ・サービス紹介など、使う場所にふさわしい雰囲気か
- 生成記録の保存:どのツールで・いつ・どんなプロンプトで作ったかを残したか
手順4。生成の記録を残し、社内ルールにする
最後に、使ったツール名・生成日・プロンプト・チェック担当者を記録に残します。「この画像はAIで作った実在しない人物です」と説明できる状態を保つためです。万一「これはうちの社員の顔では」と問い合わせが来ても、生成プロセスを示せれば冷静に対応できます。最初は1業務、たとえば採用ページのモデルだけといったスモールスタートで試し、問題がなければ範囲を広げるのが安全です。

AIモデル導入で得られる効果と成果イメージ
AIモデルをうまく取り入れると、コスト・スピード・ブランド一貫性の3点で効果が出ます。特に中小企業にとっては、これまで予算の壁で諦めていた施策が現実的になります。
まずコスト面です。モデル撮影には、出演料・スタジオ・カメラマン・契約管理といった費用がかかり、利用期間が切れれば撮り直しや再契約も発生します。AIモデルなら、同じ人物の表情違い・衣装違いを必要なだけ生成でき、契約更新のたびに費用がかさむ構造から抜け出せます。専属のイメージキャラクターを長期にわたり一貫して使い続けられる点は、ブランディング上の大きな資産になります。
スピード面では、撮影のスケジュール調整やレタッチの往復が不要になり、サイト用の人物素材を社内で内製できるようになります。生成AIの活用は今や実証実験の段階を超え、業務に組み込んで成果を出すフェーズへ移っています。削減できる時間やコストは業種・業務によって大きく異なりますが、画像領域に限らず「人がやっていた作業をAIが肩代わりする」流れは確実に広がっています。
成果を出している企業に共通するのは、AIに丸投げせず「AIが対応する範囲」と「人が最終判断する範囲」を線引きしている点です。広告やサイト制作の現場でも、人物画像をAIで補う使い方は少しずつ広がっています。AIモデルは「人の代わり」ではなく「人の判断を前提とした効率化の道具」として使うほど、成果につながりやすいのです。

AIモデル活用でよくある失敗と回避法
ここからは、現場で実際にやりがちな失敗を具体的に見ていきます。どれも「知っていれば防げた」ものばかりです。3つのパターンを、起きる状況・結果・防ぎ方のセットで解説します。
失敗1。「AIが作ったから著作権・権利は関係ない」と思い込む
これが最も多い誤解です。「AIが自動で作ったものに権利問題はない」と考えてプロンプトに有名人名を入れたり、チェックなしで公開してしまうケースです。結果として、生成画像が既存の写真や実在人物に酷似し、著作権やパブリシティ権の侵害を指摘されることがあります。「AIが作ったから」は免責の理由にはなりません。防ぐには、本記事の公開前チェックリストを必ず通すこと。AIだから安全なのではなく、人が確認するから安全になるのだと考え方を切り替えましょう。
失敗2。社員の顔写真をAIで加工して、無断で使う
「AIモデルを使うほどではないから、社員の写真を少しAIで加工して載せよう」という場面で起きがちです。実在する社員には当然、肖像権があります。本人の許可なく顔写真をAIで加工・公開すれば、たとえ自社の社員であっても肖像権侵害になり得ます。回避策はシンプルで、社員の顔を使う・加工する場合は必ず本人の明確な同意を取ること。AIの学習データとして社員の顔写真や動画を使う場合も、同じく本人同意が前提です。「身内だから大丈夫」という油断が一番危険です。
失敗3。学習データの素性を確認せずにツールを選ぶ
「無料で高品質だから」とだけ判断して、学習元が不明なサービスを選んでしまうパターンです。日本の著作権法では、情報解析などの目的なら原則として許諾なく学習に利用できるとされていますが、著作権者の利益を不当に害する場合は例外です。 海賊版サイトから集めたデータで学習したツールを使えば、その出力が権利侵害を含むリスクがあります。回避策は、学習データの方針を公式に説明しているツールを選ぶこと。学習段階のリスクと、生成・利用段階のリスクは別物だと理解し、入口のツール選びから慎重に進めましょう。著作権リスクを抑えた画像活用の全体像はBtoB広報向けのAI画像生成と著作権リスク回避の記事でも詳しく整理しています。
失敗4。機密情報や顧客の写真をプロンプトに入れてしまう
意外と見落とされるのが情報漏洩です。「この顧客の写真みたいな雰囲気で」と既存の顧客写真や個人情報を外部のAIに入力すると、個人情報保護法に触れる可能性や、情報が外部に残るリスクがあります。社員が会社の許可なく勝手に外部AIを使う「シャドーAI」も同じ危険をはらみます。防ぐには、AIに入力してよい情報の範囲を社内ルールで決めて周知すること。AIに入れてはいけない情報の線引きはAIセキュリティの最低限ルールと社内規定の作り方で具体的に解説しています。

AIモデルを使う側の落とし穴と、現場で見えた妥協点
ここまで読むと「AIモデルは便利だし、リスクも対策できる」と感じるかもしれません。それは正しい理解です。ただ、教科書には書かれない「使ってみて初めて見える限界」も率直にお伝えしておきます。ここを知らずに導入すると、期待とのギャップに悩むことになります。
まず、AIが自律的に作った画像には著作権が認められないという原則があります。 これは裏を返すと、自社が作ったAIモデル画像を他社が無断でコピーしても、著作権を理由に止めるのが難しい可能性があるということです。「自社の専属モデルだから独占できる」と思い込むと、肩透かしを食らいます。一方で、人がプロンプトを練り、出力を選び、編集を加えて最終判断を下した場合は、その関与の度合いによって権利の議論が変わってきます。だからこそ「AIに丸投げ」ではなく「人が深く関与する」プロセスが、資産を守るうえでも重要になるのです。
次に、ルールはまだ動いている最中だという点です。EUでは世界初の包括的なAI規制であるEU AI法が段階的に適用されており、その主要な規則の多くは2026年8月2日に適用開始が予定されています。 AI生成コンテンツの表示義務など、域外の日本企業にも関わる可能性のある内容を含みます。日本でも文化庁が「AIと著作権に関する考え方」をまとめ、政府の「AI事業者ガイドライン」も更新が続いています。 今日の正解が来年も正解とは限らない。これがAI活用の現実です。
ここが正直な妥協点です。AIモデルは「導入して終わり」ではなく、ルールの変化に合わせて運用を見直し続ける前提で使うべきものです。内製ですべて追いかけるのは負担が大きく、ここが「自社だけでやり切るか、専門家と並走するか」の分かれ目になります。判断に迷う領域こそ、外部の知見を借りる価値が出るところです。AIの使い方を会社の仕組みに落とし込む全体像はAI倫理ポリシー策定の記事も参考になります。
よくある質問(FAQ)
AIで作ったモデルなら、肖像権は本当に気にしなくていいの?
実在しない人物を生成した場合、その人物の肖像権は原則発生しません。ただし、たまたま有名人や実在の人に似てしまうと別の権利を侵害する恐れがあります。公開前に「誰かに似ていないか」を必ず確認しましょう。
社員の写真をAIでちょっと加工して使うのはダメですか?
本人の許可があればOK、なければNGです。社員であっても顔には肖像権があるため、AIでの加工や公開には本人の明確な同意が必要です。学習データに使う場合も同意が前提なので、口頭ではなく記録に残しておくと安心です。
無料の画像生成サービスを使っても大丈夫でしょうか?
無料かどうかより「学習データの素性が公開されているか」で選んでください。出所が不透明なサービスは、生成画像が誰かの権利を侵害していても自分で確認できません。学習方針を公式に説明しているツールを優先するのが安全です。
AIモデルの画像は、自社だけで独占して使えますか?
完全な独占は難しい場合があります。AIが自律生成した画像には著作権が認められにくく、他社のコピーを止めにくいためです。人が編集や選定に深く関わるほど立場は強くなるので、丸投げにしない運用が大切です。
AIモデル活用を「安心して進められる仕組み」にしませんか
ここまで読んで、AIモデルは魅力的だけれど、権利のチェックやルールづくりまで自社だけでやり切るのは大変そうだと感じた方も多いはずです。コレットラボでは、AIを使った画像運用やサイト制作を、リスク対策とルール設計まで含めて伴走支援しています。「まず何から確認すればいいか整理したい」という段階でも大丈夫です。現状をお聞かせいただくだけでも歓迎しますので、AI業務システム化の詳細はこちらから気軽にご相談ください。
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