AI広報部の作り方|1人でも発信量と対応速度を伸ばす5ステップ
この記事の要点
- AI広報部は、下書きと書き分けをAIに任せ、人は素材集めと確認を担う体制
- 発信量の上限は素材の数。社内から素材を集める6問のフォームを本文に掲載
- 失敗は5つ。事実を確定する前に媒体展開すると、誤りが全媒体に広がる
AI広報部とは、1人の広報担当者が、下書き・媒体別の書き分け・想定問答づくりをAIに任せ、自分は社内からの素材集めと最終確認に時間を使う体制のことです。作り方は5つのステップに分かれていて、各ステップで行うことは次の章の表で一覧にしています。発信量を伸ばすには、下書きを速くする前に、社内から素材が届く入口をつくる必要があります。
広報を1人で、または他の業務と兼務で担当していて、AIを使い始めたのに発信の本数も返信の速さも変わっていない方に向けた記事です。読み終わる頃には、自社用の業務仕分け表と素材シートを作り、来週から回す1週間の予定を決められる状態を目指します。
プレスリリースの文章の書き方そのものは、この記事では深く扱いません。広報のどの仕事をAIに任せ、どこを人に残すかという考え方は、AI広報の自動化で人に残る仕事で解説しています。
Contents / 目次
AI広報部の作り方の全体像と5ステップ
AI広報部の作り方は、次の5ステップです。AIが受け持つのは下書き・書き分け・想定問答・誤りの洗い出しで、担当者は素材を集めることと、事実を確定させることに時間を使います。
| ステップ | 行うこと | AIが受け持つ作業 | 作るもの |
|---|---|---|---|
| 1 | 1週間の広報業務を書き出し、5つに仕分ける | 書き出した業務の分類案 | 業務仕分け表 |
| 2 | 社内から素材が届く入口をつくる | 届いた回答の要約 | 素材シート(6問のフォーム) |
| 3 | 会社の前提資料をAIに置き、役割ごとの指示を用意する | 下書き・書き分け・想定問答・校閲 | 前提資料一式と、4つの役割の指示の型 |
| 4 | 事実を確定させてから、媒体別に展開する | 媒体ごとの書き分け | 事実の行と、媒体別の展開表 |
| 5 | 公開前の確認と、取材依頼への一次返信を型にする | 想定問答と返信の下書き | 公開前チェックリストと返信テンプレート |
この順番にしている理由は、AIで下書きが速くなっても、社内から届く素材が月に2件なら、出せる発信も2件分にとどまるからです。1人広報の発信量の上限は、書く速さより、素材シートに届く件数のほうに近くなります。
5ステップのうち、担当者1人で進められるのはステップ1・3・4です。ステップ2は各部署に記入をお願いする必要があり、ステップ5は社長とどこまで確認するかの合意が要るので、社内の調整に時間がかかります。
素材集めから下書き・確認までを、社内の誰が担当しても同じ手順で回る形にしたい場合は、広報業務のAI導入支援で、入力フォームと手順書まで一緒に作る進め方もあります。
最初に押さえること。AIが速くするのは「書く」と「広げる」です。「集める」は速くならないので、素材の入口を先につくってから、AIに渡す作業を増やします。
AI広報部を作る5ステップのやり方
ここからは、各ステップで何を用意し、AIに何を渡し、出てきたものをどう確かめるかを順に説明します。テンプレートと指示の型は、そのまま自社用に書き換えて使えます。
ステップ1 1週間の広報業務を書き出して5つに仕分ける
最初に、自分が広報で行っている作業を1行1作業で書き出し、「集める・調べる・書く・広げる・答える」の5つに仕分けます。どこから先にAIへ任せるかを、感覚ではなく時間の大きさで決めるためです。
直近1〜2週間の予定表とメールの送信履歴を見ながら書き出すと、抜けが少なくなります。各行には「月に何回あるか」と「1回に何分かかるか(15分単位)」を入れてください。
5つの分類は、次のように分けます。
- 集める:社内の出来事・写真・コメントを各部署から受け取る
- 調べる:業界ニュース、競合の発表、記者が書いている分野を確認する
- 書く:プレスリリース、自社サイトのお知らせ、社内報の下書きを作る
- 広げる:1つの原稿を、SNS・取引先へのメール・自社サイトに書き分ける
- 答える:取材依頼・問い合わせに返信し、想定問答を用意する
記入例は次のとおりです。回数と時間は例なので、自社の実態に置き換えてください。
| 業務 | 分類 | 月の回数×1回の時間 | AIに任せる部分 | 自分で確かめる部分 |
|---|---|---|---|---|
| 各部署に最近の出来事を聞いて回る | 集める | 4回×30分 | 聞き取りメモの要約 | 何を聞くか、社外に出してよいか |
| 業界ニュースと競合の発表を確認する | 調べる | 20回×15分 | 要約と出典URLの一覧 | 出典を開いて日付と数字を確かめる |
| プレスリリースを書く | 書く | 1回×180分 | 構成と下書き | 事実の行、代表コメント、解禁日 |
| お知らせ・SNS・社内報に書き分ける | 広げる | 4回×45分 | 媒体ごとの書き分け | 画像の権利、投稿する時間 |
| 取材依頼・問い合わせに返信する | 答える | 3回×30分 | 想定問答と返信の下書き | 回答の内容、日程、対応者 |
この例では、月の時間が大きいのは「調べる」(300分)と、「書く」「広げる」の合計(360分)です。AIに任せる候補は、この2つから選びます。
「調べる」のうち、毎朝の業界ニュースの確認のように決まった形で繰り返す作業は、自動で届く形にもできます。作り方はAIニュースの要約を毎朝自動配信する作り方で解説しています。
ステップ2 素材シートを作り、社内から素材が届く入口をつくる
素材シートとは、社内の各部署が「社外に紹介できそうな出来事」を書き込む共有の表です。1人広報が各部署を聞いて回らなくても、発信の材料が届くようにするためのものです。
作り方は、Googleフォームなどの入力フォームを1つ作り、回答をスプレッドシートに集める形が手軽です。フォームの質問は、記入する社員が迷わない次の6問にします。
- どんな出来事ですか?(1行で)
- いつのことですか?(日付)
- 数字で言えることはありますか?(件数・人数・期間など)
- 商品名・取引先名・お客様の名前は、社外に出してよいですか?(出してよい/伏せる/分からない)
- 写真や資料はありますか?(あれば添付してください)
- 社外に出してよい時期は決まっていますか?(すぐ出してよい/◯月◯日以降/まだ出せない)
各部署への依頼は、社内チャットで次のように送ると、記入のハードルが下がります。
各部署のみなさんへ(広報・[氏名])
社外に紹介できそうな出来事を集めています。
新しい取引の開始、社員の資格取得、地域の行事への参加など、小さなことで大丈夫です。
下のフォームの6問に答えるだけで、数分で終わります。
[フォームのURL]
毎月[日付]に、届いた内容から今月発信するものを決めて、各部署にお知らせします。
AIに渡す前の3項目ルール。「どんな出来事か」「いつか」「数字か固有名のどちらか」の3つが埋まっていない回答は、AIに渡しません。埋まっていない状態で渡すと、AIは足りない部分を一般論で埋めるので、社名を伏せても通じる文章になります。
ステップ3 会社の前提資料をAIに置き、役割ごとの指示を用意する
前提資料とは、AIが毎回参照する「会社の基本情報と書き方の決まり」をまとめた資料です。これを置いておくと、毎回の指示を短くしても、社名の表記や言い回しがそろいます。
- 会社概要:正式な社名、所在地、代表者の役職と氏名の表記
- 事業の説明文:100字版と300字版の2種類
- 表記ルール:数字の全角・半角、「お客様」などの書き方、商品名の正式表記
- 使わない言葉:根拠を示せない最上級の表現、他社と比べる表現など
- 過去の良い例:社内で評判の良かったリリースやお知らせを2〜3本
表記ルールを一から作るときは、AI感を消す文章のスタイルガイドの項目を下敷きにすると早く進みます。
置き場所には、資料を置いたうえで同じ前提のまま繰り返し会話できる機能を使います。使っているAIサービスにこうした機能があるか、どのプランで使えるか、どう設定するかは、各社の公式ヘルプで確認してください。
解禁前の情報を扱うので、アカウントは個人ではなく会社名義で用意し、入力内容がモデルの改善に使われない設定になっているかを確かめてください。プランごとの違いはAIの法人プランと個人プランの違いで比べています。
そのうえで、AIに4つの役割を割り振ります。指示は長く作り込む必要はありません。次の型を出発点にして、出てきた結果を見ながらAIと対話し、自社に合わせて詰めてください。
【下書き係】
あなたは[会社名]の広報担当の下書き係です。
前提資料と、次の素材シートの行だけを使って、プレスリリースの下書きを作ってください。
素材に無い数字・固有名・コメントは足さないでください。
足りない情報は、最後に「確認したいこと」として箇条書きにしてください。
[素材シートの行を貼る]
【展開係】
次の「事実の行」と確定済みのプレスリリースをもとに、[媒体名]向けの原稿を3案作ってください。
事実の行にある日付・数字・固有名は1字も変えないでください。
[事実の行とリリースを貼る]
【質問係】
次のプレスリリースを読んだ記者が、取材で聞きそうな質問を10個挙げてください。
答えにくい質問ほど上に並べ、回答欄は空けたままにしてください。
[リリースを貼る]
【校閲係】
次の原稿と「事実の行」を突き合わせ、食い違いを表にしてください。
見る点は、日付と曜日、金額の税込・税別、人数や件数、固有名の表記、事実の行に無い記述の5つです。
[事実の行と原稿を貼る]
下書き係の出力は、まず末尾の「確認したいこと」から読みます。ここに挙がった項目は、素材を出した部署に聞いて埋めてから、本文を読み進めてください。本文では、素材に無い形容(「画期的な」「大幅に」など)が足されていないかを確かめ、見つけたら消します。
ステップ4 事実の行を確定させてから、媒体別に展開する
事実の行とは、発信に使う日付・数字・固有名だけを抜き出して、人が確定させたメモです。媒体別に書き分ける前にこれを確定させておくと、どの媒体の原稿も同じ事実から作られます。
【事実の行】確定日:[日付] 確認者:[氏名]
何が:[1行で]
いつ:[日付と曜日]
どこで・誰が:[場所・部署・担当者名]
数字:[件数・金額(税込/税別を明記)・期間]
社外に出してよい時期:[解禁日時]
問い合わせ先:[部署・氏名・電話・メール]
事実の行が確定したら、展開係に媒体ごとの原稿を作らせます。媒体によって読む人が違うので、先に書くことと人が見るところも変わります。
| 媒体 | 読む人 | 先に書くこと | AIへの追加の指示 | 人が見るところ |
|---|---|---|---|---|
| プレスリリース | 記者 | 何が新しいか、日付 | 見出しを3案、本文は結論から | 数字、解禁日、問い合わせ先 |
| 自社サイトのお知らせ | 取引先、求職者、検索から来た人 | 何が変わるか、誰に関係するか | 専門用語に説明を添えて書き直す | 既存ページとの食い違い |
| SNS | フォロワー、社員の知人 | 1〜2行で出来事 | 最初の1行で出来事が分かる案を3つ | 画像の権利、写っている人の了承 |
| 社内報 | 社員 | 関わった人と経緯 | 関わった部署と担当者名を入れる前提で | 名前の表記、本人の了承 |
| 取引先へのメール | 担当している取引先 | 相手に関係する変更点 | 相手の業種に関係する点を先に | 送る相手の選び方 |
展開が終わったら、校閲係に各原稿と事実の行を突き合わせてもらいます。食い違いの表に1行でも出たら、その原稿は事実の行に合わせて修正してから次に進みます。
ステップ5 公開前の確認と、取材依頼への一次返信を型にする
最後に、公開前に見る項目と、取材依頼が来たときの最初の返信を型にします。確認の抜けを防ぐことと、返信までの時間を短くすることの両方に効くステップです。
公開前には、次の6項目を確認します。
- 事実の行と一致:日付・曜日・金額(税込/税別)・人数が、確定した事実の行と同じか
- 固有名:社名・商品名・人名の表記が、前提資料と同じか
- 解禁日:素材シートの「社外に出してよい時期」を過ぎているか
- 素材に無い記述:根拠を示せない最上級の表現や、AIが足した形容が残っていないか
- 写真:写っている人の了承があり、使ってよい画像か
- 問い合わせ先:記者が連絡する先の部署・氏名・電話・メールが入っているか
SNSの投稿は、上の6項目に加えて炎上につながる表現の確認も必要です。確認の手順はSNS炎上を防ぐAI投稿前チェックの手順にまとめています。
想定問答は、質問係が挙げた10個の質問に、担当者が回答を書き込む形で作ります。回答の横には「確認者」「確認日」「根拠にした資料」の3列を足し、3列が埋まった回答だけを取材で使います。
取材依頼には、受け取った日のうちに、受け取ったことと回答日だけを先に返します。日程や対応者の確認に時間がかかる日でも、相手を待たせずに済みます。
[媒体名][お名前]様
ご連絡ありがとうございます。[会社名]広報の[氏名]です。
取材のご依頼、確かに拝受しました。
社内で日程と対応者を確認し、[日付(曜日)]の[時刻]までにご連絡いたします。
差し支えなければ、次の3点を教えていただけますでしょうか。
・掲載予定の時期と媒体
・お聞きになりたい内容(質問項目があれば)
・取材の形式(対面/オンライン/書面)
どうぞよろしくお願いいたします。
5ステップを1週間の予定に落とす
5ステップを作ったあとは、曜日ごとに行うことを決めておくと、他の業務と兼務していても回ります。次の表は、週に1〜2件の素材を扱う場合の例です。
| 曜日 | 行うこと | AIに任せる部分 |
|---|---|---|
| 月 | 素材シートの新しい回答を読み、今週出すものを1〜2件決める | 回答の要約と、発信先の候補出し |
| 火 | 事実の行を確定し、リリースやお知らせの下書きを作る | 下書き係 |
| 水 | 媒体別に展開し、事実の行と照合する | 展開係、校閲係 |
| 木 | 社長の確認を受け、予約投稿と配信の準備をする | 質問係(想定問答) |
| 金 | 反応と問い合わせを記録し、来週の候補を素材シートから選ぶ | 反応の要約と分類 |
| 毎日 | 取材依頼・問い合わせには、受け取った日のうちに一次返信する | 返信の下書き |
この章で押さえるのは、AIに渡すのは「素材シートの行」と「事実の行」だけにする、という一点です。渡すものを決めておけば、下書きも展開も校閲も、同じ事実から作られます。
AI広報部で発信量と対応速度はどう変わるか
AI広報部を作って変わるのは、「1つの素材から出せる発信の本数」と「取材依頼を受けてから一次返信するまでの時間」の2つです。素材シートに届く件数と、記者が記事にするかどうかは、AIを使っても変わりません。
仮に、リリース1本の下書きに3時間、4つの媒体への書き分けに合計3時間かかっていたとします。下書きと書き分けをAIに任せても、事実の行の確定と各原稿の確認に2時間ほどは人の時間が残ります。それでも1素材あたり6時間が2時間になれば、週に広報へ使える時間が6時間の人は、扱える素材が週1件から3件に増える計算です。
ただし、この計算は素材が週3件届いていることが前提です。素材シートへの回答が週1件のままなら、空いた時間で出せるものがありません。空いた時間は、ステップ2の依頼を各部署に広げることに使ってください。
対応速度は、ステップ5の型があるかどうかで変わります。一次返信のテンプレートがあれば、受け取った日のうちに返信できます。想定問答を先に作っておけば、取材の場で「確認して折り返します」と答える回数が減ります。
変化を確かめるには、始める前の4週間と始めたあとの4週間で、次の項目を比べます。
| 記録する項目 | 記録の仕方 | 比べ方 |
|---|---|---|
| 媒体別の発信本数 | 週ごとに、媒体別の本数を数える | 4週間の合計 |
| 素材シートの受付件数 | フォームの回答数 | 4週間の合計と、回答があった部署の数 |
| 一次返信までの時間 | 受信した時刻と返信した時刻を1行ずつ記録する | 平均と、いちばん長かった件 |
| 社長確認の待ち日数 | 確認を依頼した日と戻ってきた日 | いちばん長かった件 |
作業時間の測り方をもう少し詳しく知りたい方は、AI業務効率化の効果を数字で出す方法で記録シートの作り方を解説しています。
一方、記者が記事にするかどうかは、新しさや社会との関わりといった素材の中身で判断されます。AIで文章の読みやすさは上げられますが、素材が同じなら掲載の判断は大きく変わりません。
この章で押さえるのは、発信本数を増やしたいなら素材の件数を、返信を速くしたいなら一次返信の型を、それぞれ記録して比べることです。数字があれば、次にどのステップへ手を入れるかを決められます。
AI広報部でつまずく5つの失敗と防ぎ方
AI広報部の失敗は、AIの性能よりも、渡す素材と確認の順番から起きます。ここでは、1人広報がAIに作業を任せるときに起きる5つの失敗と、防ぎ方をまとめます。
素材が届く前に、AIで下書きを始めてしまう
発信の予定日が迫っているのに素材が届いていないと、手元の断片だけでAIに下書きを頼みたくなります。AIは足りない部分を一般的な言い回しで埋めるので、社名を差し替えても通じる文章ができあがります。
防ぎ方は、ステップ2の3項目ルールを守ることです。「どんな出来事か」「いつか」「数字か固有名のどちらか」が埋まるまでは、下書きに進みません。予定日に間に合わないときは、その週は発信を1本減らすほうが、会社の印象を損ないません。
事実を確定する前に、媒体別に展開してしまう
リリースの下書きができた段階で、確認前のままSNSやお知らせ、社内報に展開すると、1つの誤りがすべての媒体に写ります。たとえば曜日の食い違いや、金額の税込・税別の取り違えがあると、4つの媒体で同時に誤った情報が出て、訂正も4か所で必要になります。
防ぎ方は、展開の前に事実の行を確定させることです。展開したあとは、校閲係に各原稿と事実の行を突き合わせてもらい、食い違いが0件になった原稿について社長の確認を受けてから公開します。
解禁前の情報を、個人契約のAIに入力してしまう
新商品や人事のように解禁日が決まっている情報を、担当者が個人で契約したAIに入力すると、会社がその履歴を管理できません。たとえばAnthropicは、Claudeの個人向けプランでは、チャットをモデルの改善に使うことを許可するかどうかを利用者が選ぶ形だと説明しています(Anthropicプライバシーセンター)。扱いはサービスごとに違うので、使っているサービスの公式のプライバシーポリシーや利用規約で確認してください。
防ぎ方は、会社名義のアカウントを用意し、入力内容の扱いに関する設定を確認してから使うことです。そのうえで、解禁前の素材は取引先名や金額を「A社」「◯円」のように伏せて下書きを作り、固有名は人が最後に入れます。入力してよい情報の線引きは、生成AI社内ルールのサンプルのひな形で決めておくと迷いません。
代表コメントを、AIに一から作文させてしまう
リリースに入れる代表コメントをAIに一から書かせると、社長が実際には言っていない言葉が載ります。取材で「このコメントの意図は」と聞かれたとき、本人が自分の言葉として説明できず、答えに詰まります。
防ぎ方は、社長に5分だけ話してもらい、その録音やメモから言葉を選ぶことです。AIには、話した内容から要点を3つ抜き出す作業と、長い言い回しを短くする案を出す作業だけを任せます。最終の文は、社長本人に読んで確かめてもらいます。
AIが書いた想定問答の回答を、確認せずに返信に使う
想定問答の回答欄までAIに書かせ、そのまま記者への返信に使うと、確認していない数字が記事に載ります。売上の伸び率や取引社数のように、社内の誰も確かめていない数字が一度記事になると、あとから訂正をお願いする必要が出てきます。
防ぎ方は、ステップ5の「確認者」「確認日」「根拠にした資料」の3列を必ず埋めることです。1列でも空いている回答は、返信にも取材の場にも使いません。
この章で押さえるのは、5つの失敗のうち4つが「確定していない情報をAIに渡す」「AIの出力を確定させずに外へ出す」のどちらかで起きている点です。素材シートと事実の行を通す順番を守れば、大半は防げます。
1人広報がAI広報部を続けるための現場の妥協点
AI広報部は、作るより続けるほうが難しい仕組みです。止まる原因は、社長の確認待ち、ツールの選び方、見積もりに出てこない社内の時間の3つに集まります。
承認者が社長1人なら、確認を2種類に分ける
承認者が社長1人の会社で、すべての発信を社長の確認に回すと、社長が出張している週は発信が止まります。AIで下書きが速くなるほど、確認待ちの原稿がたまります。
そこで、社長の確認が要るものと、担当者の判断で出してよいものを、事前に一覧にして合意しておきます。
- 社長の確認が要るもの:新商品・新サービス、売上や価格などの数字、人事、取引先やお客様の名前、代表コメント
- 担当者の判断で出すもの:すでに公開した情報の再掲、定例イベントの告知、採用情報の更新、社内行事の報告
社長に確認を頼むときは、原稿全体ではなく、事実の行と原稿の2点だけを送ります。見る範囲が決まっていれば、移動中でも確認してもらえます。
広報特化ツールと汎用AIの分かれ目
リリースが月に1〜2本で、配信先もほぼ決まっている会社なら、汎用のAIと前提資料で5ステップは回ります。リリースを毎月複数本出していて、掲載の見込みの判定や配信先の管理まで1か所で扱いたい場合は、広報に特化したツールを検討する段階です。
たとえば広報AIの公式サイトでは、概要メモや資料からプレスリリースを生成する機能と、独自の判定ロジックでリリースを採点する機能が案内されています(2026年09月25日時点)。どちらを選んでも、素材シートと事実の行が無ければ同じ失敗が起きるので、ツールを選ぶ前にステップ2までは済ませておきましょう。
見積もりに出ないコストは、素材を出す人と確認する人の時間
AIツールの月額は見積もりに出ますが、各部署が素材シートに記入する時間と、社長が確認する時間は出てきません。仮に5つの部署に月10分ずつ記入をお願いすると、会社全体で月50分を広報に使ってもらう計算になります。
この時間を各部署に納得してもらうには、ステップ2の依頼文にあるとおり、届いた素材がいつ、どの媒体で発信されたかを毎月返すことです。自分の書いた内容が発信されたと分かると、次の月も記入してもらいやすくなります。
自社サイトのお知らせを増やすときの線引き
AIで書く速さが上がると、自社サイトのお知らせを増やしたくなります。ただし、Google検索のスパムに関するポリシーでは、読む人の役に立てるためではなく、主に検索順位を操作する目的で多くのページを作る行為(scaled content abuse)が挙げられています。
Googleは、AIで作ったかどうかにかかわらず、読む人の役に立つ質の高いコンテンツを評価するという考え方を示しています(Google検索セントラルのAI生成コンテンツに関するガイダンス)。素材シートに届いた1件の出来事につき1ページを基本にし、素材の無いまま季節の話題だけでページを増やすことは避けてください。
この章で押さえるのは、AI広報部を止める原因がAIではなく社内の時間にあることです。確認の種類を分け、記入してくれた部署に結果を返すところまでを、仕組みの一部として決めておきましょう。
AI広報部についてよくある質問
兼務で週に数時間しか広報に使えません。5ステップのどこから始めればいいですか?
ステップ2の素材シートから始めてください。下書きの速さはあとからでも上げられますが、素材が届かない状態では何本も出せません。フォームの質問は本文の6問をそのまま使えるので、作って各部署に案内するところまでは短い時間で進められます。
取材依頼への返信をAIで下書きしても、失礼になりませんか?
返信が早く、内容が正確であれば、下書きをAIが作ったかどうかは相手に関係ありません。ただし日程・対応者・答えられる範囲はAIが知らない情報なので、担当者が埋めます。受け取ったことと回答日だけを先に返す型を使えば、確認に時間がかかる日でも待たせずに済みます。
社内報とプレスリリースを、同じ素材シートの行から作ってもいいですか?
同じ素材から作ってかまいません。日付・数字・固有名は事実の行で共通にし、書き方だけを変えます。社内報は社員向けなので関わった人の名前と経緯を、リリースは記者向けなので新しさを先に書きます。解禁日前の情報を社内報に先に載せないよう、素材シートの時期の欄を確認してから出しましょう。
素材シートに書いてくれる部署が偏ってしまうときは、どうすればいいですか?
回答が無い部署には、フォームを待たずに担当者から5分だけ話を聞き、その内容を代わりに素材シートへ記入します。聞き取りのメモはAIに要約させれば、記入の手間は小さく済みます。発信されたあとにその部署へ結果を伝えると、次の月から自分で記入してもらいやすくなります。
まずは今日、社内の2〜3人に「最近、社外に紹介できそうな出来事はありましたか」と聞き、返ってきた話がステップ2の6問に当てはめて埋まるかだけ試してみてください。素材がそろったら、プレスリリースをAIで書く4ステップで、下書きから媒体ごとの投げ分けまで進められます。
ここまで読んで、素材シートや指示の型を自社の業務に合わせるところで手が止まりそうだと感じた方は、自社の広報業務を題材にしたAI活用研修で、講師と1対1で実際に作りながら身につける方法もあります。いまの担当範囲と困っていることを伺うところからで大丈夫です。気軽にご相談ください。
個別のご相談
サービスの選び方やご依頼について、ご相談いただけます。
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