動画テロップをAIで自動生成|表記ルール表と指示文の例で作る6手順
この記事の要点
- 文字起こしはAI、誤字と改行は生成AI、最終確認は人の3工程に分ける
- 生成AIに渡すのはSRTと表記ルール表。指示文の例を本文に掲載
- AIはタイムコードを崩す場合がある。照合スクリプトで公開前に確認
動画テロップは、AIの自動文字起こしで字幕の下書きを作り、誤字と改行の修正を生成AIに任せ、人は最後の確認だけを行う形にすると、音声を聞きながら文字を打つ作業がほぼなくなります。ただし、自動字幕をそのまま公開すると、社名や製品名の誤変換、読みにくい改行が残ります。どこまでAIに任せ、どこを人が見るかを先に決めておくと、テロップ作業にかかる時間を短くできます。
社内研修や製品紹介、SNS用の動画を社内で編集していて、テロップ入れに毎回まとまった時間を取られている方に向けた記事です。読み終わる頃には、表記ルール表と生成AIへの指示文を用意し、次の動画から同じ手順で字幕を作れる状態を目指します。
扱うのは、話している言葉を文字にするテロップの作り方です。ナレーションの声をAIで作る方法はAIナレーションで動画の声を統一|ElevenLabs設定5ステップと注意点で解説しています。
Contents / 目次
動画テロップのAI自動生成は、3つの工程に分けて任せる
テロップ作業は「文字起こし」「文章の修正」「見た目の決定と最終確認」の3工程に分け、前の2つをAIに任せると速くなります。1つのツールですべて済ませようとすると、苦手な工程で修正が増え、結局自分で打ち直すことになります。
テロップとは、動画の画面に重ねて表示する文字のことです。そのうち、話している言葉をそのまま文字にしたものを字幕と呼びます。この記事では、字幕をツール間で受け渡すためにSRTという形式を使います。
SRTとは、字幕の番号・表示する時間(タイムコード)・表示する文字をセットで書いたテキストファイルの形式です。多くの動画編集ソフトやYouTubeが読み込めるので、自動字幕を作るツールと、文章を修正する生成AIと、仕上げる編集ソフトの間で、字幕をそのまま受け渡せます。
3つの工程で、AIが担う作業とご自身で確かめる作業は次のとおりです。
| 工程 | 任せる先 | AIが行うこと | 自分で確かめること |
|---|---|---|---|
| 1. 文字起こしと表示時間の割り当て | 動画編集ソフトや文字起こしツールの自動字幕機能 | 音声を文字にし、字幕ごとに表示する時間を割り当てる | 話す人の区切り、聞き取れていない箇所 |
| 2. 文章の修正 | 生成AI(Claude・ChatGPT・Geminiなど) | 誤変換・表記ゆれ・改行位置・「えー」などの削除 | 社名・製品名・数字、発言の意味が変わっていないか |
| 3. 見た目の決定と最終確認 | 動画編集ソフト | 決めたスタイル(フォント・縁取り・位置)を全字幕に適用 | 画面との重なり、最後まで通して再生したときの抜け |
工程を分ける理由は、それぞれのAIが得意なことが違うからです。自動字幕の機能は音声を文字にして時間を割り当てるのは得意ですが、自社の製品名の正しい表記や、数字の書き方のルールは知りません。生成AIは文章の修正は得意ですが、音声を聞いていないので、発言のタイミングは分かりません。
手作業のテロップで時間がかかるのは、音声を聞いて打つ作業と、打った文章をどこで区切るか決める作業です。1つ目の工程で打つ作業と、2つ目の工程で区切りを決める作業の大部分を、AIに任せられます。人の時間は、3つ目の工程の確認に集中させます。
社内だけで進めるときに難しいのは、ツールの操作よりも、表記のルールと確認の担当を決め、毎回同じ手順で回すところです。動画の担当者が1人だと、ルールがその人の頭の中にしかなく、担当者が休むと作業が止まります。
テロップ作業を、担当者が替わっても同じ手順で回る形にしたい場合は、AI導入支援・DX支援で、AIが行う作業と自社で確かめる作業の分け方から一緒に検討する進め方もあります。
この章の結論。自動字幕は「文字にする」まで、生成AIは「文章を修正する」まで、人は「確かめる」だけ、と工程ごとに任せる範囲を決めると、どこで時間がかかっているかも見えるようになります。
動画テロップをAIで自動生成する手順
手順は6つです。最初の1本は表記ルール表づくりに時間がかかりますが、2本目からはステップ3〜6を繰り返すだけになります。
ステップ1 表記ルール表を先に作る
最初に作るのは、テロップの表記ルールを1つの表に書き出したものです。このルール表が無いと、生成AIは毎回違う書き方で修正し、同じ製品名が動画ごとに違う表記で出てしまいます。
表の項目は次のとおりです。「例」の欄は仮の値なので、自社の動画を実際の画面で見て、読みやすい数字に書き換えてください。
| 項目 | 自社のルール(例) | 誤変換されやすい例 |
|---|---|---|
| 社名 | 「株式会社」を付けず「[社名]」とだけ書く | 同じ読みの別の漢字、ひらがな表記 |
| 製品・サービス名 | 正式な表記を1つに決める(英字かカタカナかも決める) | 英字の名前がカタカナで出る |
| 人名と役職 | 初めて出たときだけ「役職+氏名」 | 同じ読みの別の漢字 |
| 数字 | 半角の算用数字。金額は「1万円」のように書く | 漢数字と算用数字が混ざる |
| 句読点 | 句点「。」は付けない。読点「、」は半角スペースにする | 文の途中に句点が入る |
| 1行の文字数 | 横型の動画は16文字まで、縦型は12文字まで | 長い1文が1行に詰め込まれる |
| 1枚の行数 | 2行まで | 3行以上になり、画面が文字で埋まる |
| 消してよい言葉 | 「えー」「あのー」「えっと」は消す | 残すと読む量が増える |
| 社内の略語 | 社外向けの動画では正式名に書き換える | 略語のまま出て、社外の人に通じない |
表記ゆれを辞書にまとめる考え方は、テロップ以外の社内文書でも同じです。報告書やメールの表記ルールと共通にしたい場合は、社内文書のAI校正ワークフロー|表記ルールの辞書化と設定手順も参考にしてください。
ステップ2 収録のときに文字起こしの精度を上げておく
自動字幕の精度は、収録した音声の聞き取りやすさで大きく変わります。編集の段階で修正する量を減らすなら、収録の段階で次の4点を押さえます。
- マイクの位置:話す人の口元近くにピンマイクやハンドマイクを置く。カメラ内蔵のマイクは部屋の反響や空調の音を拾う
- BGM:収録中には流さず、編集で後から足す。声と音楽が混ざると、音楽の部分まで文字にされる
- 対談の進め方:話す人ごとにマイクを分けるか、発言が重ならないよう進行役が順番を回す
- 台本と資料:専門用語が多い回は、台本や説明資料のデータを保存しておく。ステップ4で生成AIに一緒に渡すと、誤変換を正しい用語に修正させやすい
話す人が入れ替わる場面や、専門用語で誤変換が起きる理由は、会議の録音でも同じです。詳しくはAI議事録の文字起こしが崩れる原因と直し方で解説しています。
ステップ3 自動字幕を作り、SRTで書き出す
収録した動画から自動字幕を作り、SRTファイルとして書き出します。自動字幕を作ってSRTで書き出せるツールには、次のようなものがあります。
- Adobe Premiere Pro:書き出しの手順はAdobe公式ヘルプ:キャプショントラックの書き出しで確認できる
- Vrew:書き出しの手順はVrew公式:SRTファイルのエクスポートで確認できる
- CapCut:SRTで書き出せるのは、自動字幕の機能で作った字幕だけと案内されている(CapCut公式ヘルプ:字幕を書き出せないときの確認事項)
YouTube Studioにも自動字幕起こし機能がありますが、この記事の手順では、ほかのツールで作って修正したSRTを登録する先として使います。
どのツールでも、設定で決めることは共通です。
- 文字起こしの言語を日本語にする
- 話す人を分ける機能があればオンにする(対談・インタビューの場合)
- 字幕1つあたりの最大文字数を設定できる場合は、ルール表の数字に合わせる
- 自動字幕を作ったら、修正せずにSRT形式で書き出す
書き出したファイルは「元の字幕.srt」のような名前で保存し、上書きせずに残します。ステップ5で、生成AIが修正したファイルと照らし合わせるためです。
メニューの名前や書き出せる形式は、ツールとプランによって違い、更新で変わることもあります。正確な操作は各ツールの公式ヘルプで確認してください。SRTの中身は、次のような形になっています。
12
00:01:05,200 --> 00:01:08,900
えーこちらがみなと精機の新製品で
13
00:01:08,900 --> 00:01:12,400
あのー去年の十月から販売を開始しております
1行目が字幕の番号、2行目が表示を始める時間と終える時間、3行目以降が表示する文字です。字幕と字幕の間は空行で区切ります。
自社で文字起こしの仕組みを組みたい方に向けては、Microsoftが音声テキスト変換でのキャプション付けに関する概念の解説を公開しています。
ステップ4 生成AIにSRTとルール表を渡して修正させる
生成AIには、SRTファイルと表記ルール表を一緒に渡し、「番号とタイムコードは変えない」と明示して修正させます。この一文が無いと、生成AIが読みやすさを優先して、字幕を1つにまとめる場合があります。
渡すものは次の4つです。
- SRTファイル:ステップ3で書き出した元の字幕
- 表記ルール表:ステップ1で作った表を、文章のまま貼り付ける
- 台本・資料:あれば。専門用語の正しい表記を生成AIが確かめられる
- 固有名詞の一覧:その動画に出てくる人名・製品名・地名
指示文は、次のたたき台から始めてください。[ ]の中を自社の内容に書き換え、あとは生成AIとやり取りしながら、自社の動画に合う形に修正していけば十分です。
あなたは動画の字幕を校正する担当者です。
添付のSRTファイルの誤字と誤変換を修正してください。
守ること
・番号とタイムコードの行は1文字も変えない
・字幕の数を増やしたり減らしたりしない(2つの字幕を1つにまとめない)
・1行は[16]文字まで。超える場合は、意味の切れ目で改行して2行にする
・表記は下の表記ルール表に合わせる
・「えー」「あのー」「えっと」は消す。言い直した箇所は、言い直した後の言葉だけ残す
・数字、否定の言葉(〜ない)、条件(〜の場合)は変えない
・意味が変わるかもしれない箇所は修正せず、最後に一覧で報告する
出力
・修正後のSRTを、そのまま保存できる形で全文
・そのあとに、修正した箇所の一覧(番号・修正前・修正後・理由)
[表記ルール表をここに貼る]
[固有名詞の一覧をここに貼る]
ステップ3の例を渡すと、次のような形で返ってきます。番号とタイムコードはそのままで、文字の部分だけが変わっているのが正しい出力です。
12
00:01:05,200 --> 00:01:08,900
こちらがミナト精機の新製品で
13
00:01:08,900 --> 00:01:12,400
去年の10月から
販売を開始しております
修正した箇所
12番 「みなと精機」→「ミナト精機」(固有名詞の一覧に合わせた)
13番 「十月」→「10月」(数字は算用数字のルール)
12番・13番 「えー」「あのー」を削除
修正した箇所の一覧を出させるのは、ご自身で確認する場所を絞るためです。一覧にある修正だけを音声と照らし合わせれば、全文を読み返さずに済みます。
長い動画で出力が途中で切れる場合は、SRTを前半と後半に分けて渡してください。
ステップ5 照合スクリプトでずれと長さを確かめる
生成AIが修正したSRTは、編集ソフトに読み込む前に、元のSRTと機械で照らし合わせます。字幕が1つにまとめられると、2つ分の発言が1枚に詰め込まれ、その字幕の表示時間も変わりますが、目で見て気づくのは難しいからです。
次のスクリプトは、元の字幕と修正後の字幕を比べて、字幕の数とタイムコードが変わっていないか、1行の文字数と読む速さが上限を超えていないかを一覧にします。Python 3が入ったパソコンなら、追加のインストールなしで動きます。
# srt_check.py
# 字幕ファイル(SRT)の照合スクリプト
# 必要なもの:Python 3.8以上(追加のライブラリは不要)
# 使い方:python3 srt_check.py 元の字幕.srt 修正後の字幕.srt
# (Windowsでは py srt_check.py 元の字幕.srt 修正後の字幕.srt)
# 確かめること
# 1. 元と修正後で、字幕の数とタイムコードが同じか
# 2. 1行の文字数と、1枚の行数が上限を超えていないか
# 3. 1秒あたりの文字数が多すぎて、読み切れない字幕がないか
# 読み込みエラーや文字化けが出たら、SRTをUTF-8で保存し直してください
import re
import sys
MAX_CHARS_PER_LINE = 16 # [ここを自社の値に変更]1行の文字数の上限(全角・半角とも1文字)
MAX_LINES = 2 # [ここを自社の値に変更]1枚に出す行数の上限
MAX_CHARS_PER_SEC = 8.0 # [ここを自社の値に変更]1秒あたりの文字数の上限(仮の値)
TIME_RE = re.compile(
r"(\d{1,2}):(\d{2}):(\d{2})[,.](\d{3})\s*-->\s*(\d{1,2}):(\d{2}):(\d{2})[,.](\d{3})"
)
def to_sec(h, m, s, ms):
return int(h) * 3600 + int(m) * 60 + int(s) + int(ms) / 1000
def read_srt(path):
# BOM付きのUTF-8にも対応する
with open(path, encoding="utf-8-sig") as f:
text = f.read().replace("\r\n", "\n").strip()
blocks = []
for raw in re.split(r"\n\s*\n", text):
lines = [l for l in raw.split("\n") if l.strip() != ""]
idx = None
for i, l in enumerate(lines):
if TIME_RE.search(l):
idx = i
break
if idx is None:
continue
g = TIME_RE.search(lines[idx]).groups()
blocks.append({
"no": lines[idx - 1].strip() if idx > 0 else "?",
"time": lines[idx].strip(),
"start": to_sec(*g[0:4]),
"end": to_sec(*g[4:8]),
"text": lines[idx + 1:],
})
return blocks
def main():
if len(sys.argv) != 3:
print("使い方 python3 srt_check.py 元の字幕.srt 修正後の字幕.srt")
sys.exit(1)
before = read_srt(sys.argv[1])
after = read_srt(sys.argv[2])
problems = 0
# 1. 字幕の数とタイムコードの照合
if len(before) != len(after):
print(f"[ずれ] 字幕の数が違います。元 {len(before)} 件 / 修正後 {len(after)} 件")
problems += 1
for i, (b, a) in enumerate(zip(before, after), start=1):
if (b["start"], b["end"]) != (a["start"], a["end"]):
print(f"[ずれ] {i}件目のタイムコードが変わっています。元 {b['time']} / 修正後 {a['time']}")
problems += 1
break # 順番に突き合わせているので、1か所ずれると以降もすべて食い違って見える。最初の1件で止める
# 2・3. 修正後の字幕の文字数と読む速さ
for a in after:
if len(a["text"]) > MAX_LINES:
print(f"[行数] {a['no']}番({a['time']})が{len(a['text'])}行あります")
problems += 1
for line in a["text"]:
if len(line) > MAX_CHARS_PER_LINE:
print(f"[長い] {a['no']}番 「{line}」 {len(line)}文字")
problems += 1
duration = a["end"] - a["start"]
chars = sum(len(l) for l in a["text"])
if duration > 0 and chars / duration > MAX_CHARS_PER_SEC:
print(f"[速い] {a['no']}番 {chars}文字を{duration:.1f}秒で表示(1秒あたり{chars / duration:.1f}文字)")
problems += 1
if problems == 0:
print("問題は見つかりませんでした")
else:
print(f"確認が必要な箇所は{problems}件です")
sys.exit(1 if problems else 0)
if __name__ == "__main__":
main()
実行すると、確認が必要な箇所だけが次のように表示されます。
[ずれ] 字幕の数が違います。元 214 件 / 修正後 213 件
[ずれ] 88件目のタイムコードが変わっています。元 00:03:41,200 --> 00:03:44,000 / 修正後 00:03:41,200 --> 00:03:47,600
[長い] 45番 「去年の10月から販売を開始しております」 19文字
[速い] 102番 18文字を1.5秒で表示(1秒あたり12.0文字)
確認が必要な箇所は4件です
「ずれ」が出たら、その修正版は使いません。指示文の「字幕の数を増やしたり減らしたりしない」を先頭に移して、もう一度生成AIに渡します。「長い」「速い」だけなら、該当する番号の字幕を編集ソフト上で改行するか、言葉を短くすれば足ります。
1秒あたりの文字数の上限は、仮に8文字としています。自社の動画を再生して、実際に読み切れるかを見ながら調整してください。
ステップ6 編集ソフトに読み込み、見た目を決めて通しで確認する
照合を通ったSRTを編集ソフトに読み込み、フォント・色・縁取り・位置を決めて全字幕に適用します。スタイルは一度決めたらテンプレートとして保存し、次の動画からはそれを呼び出すだけにします。
字幕の出し方は2種類あり、公開する場所で選びます。
- 焼き込み(オープンキャプション):字幕を映像の一部として書き出す方法。どの再生環境でも必ず表示される
- 字幕ファイルの登録(クローズドキャプション):SRTを動画とは別に動画サイトへ登録する方法。視聴者が表示を切り替えられ、公開後も字幕だけ修正できる
YouTubeに公開するなら字幕ファイルの登録で足ります。字幕ファイルを登録できないSNSに載せる場合や、強調したい言葉を大きく見せたい場合は焼き込みにします。
書き出す前に、最後まで通して再生しながら次の項目を確認します。
- 固有名詞:社名・製品名・人名が、ルール表どおりの表記になっているか
- 数字:金額・日付・数量が音声と一致しているか。数字を含む字幕は音声を聞き直す
- 否定と条件:「〜ない」「〜の場合は」が消えて、意味が逆になっていないか
- 重なり:テロップが人物の顔や、画面に映した資料の文字に重なっていないか
- 縦型の端:縦型動画で、文字が画面の端で切れていないか。画面下部のボタンや説明文と重なっていないか
- 抜け:話しているのに字幕が出ていない区間がないか
- 確認者:編集した人とは別の人が一度見たか
この章の結論。ご自身で作業するのは、ルール表を作る最初の1回と、照合スクリプトが出した箇所の修正と、書き出し前の通し確認の3か所です。それ以外の作業は、ステップ3と4でAIに任せられます。
AIテロップで起きる失敗と防ぎ方
AIでテロップを作るときの失敗は、AIの修正を信じて確認を省いた工程で起きます。ここでは、テロップの自動生成に特有の5つを、起きる条件と防ぎ方に分けて説明します。
生成AIが字幕を結合し、表示の区切りが崩れる
SRTを生成AIに渡して「読みやすく修正して」とだけ頼むと、短い字幕を前後とつなげて1つにまとめる場合があります。まとめられた字幕は、2つ分の発言が1枚に詰め込まれ、話している区切りと表示の区切りが合わなくなります。
編集ソフトはこのSRTを問題なく読み込むので、再生して見るまで気づきません。防ぐには、指示文に「番号とタイムコードは変えない」「字幕を結合しない」を明記し、ステップ5の照合スクリプトを必ず通します。
言い直しや口ぐせを消しすぎて、発言の意味が変わる
「話し言葉をきれいにして」と頼むと、生成AIは言い直しだけでなく、「できなくはないです」を「できます」のように言い切りへ書き換えることがあります。社員や顧客のインタビューでこれが起きると、本人が言っていない内容をテロップで見せることになります。
防ぐには、消してよい言葉をルール表で具体的に挙げ、「数字・否定・条件は変えない」を指示文に入れます。顧客が話している動画は、公開前にテロップ入りの動画を本人に見てもらうと安心です。
数字の誤変換に気づかず、金額や日付を誤って公開する
自動字幕は「1,500円」と「15,000円」、「10月」と「重大」のような聞き違いをすることがあります。生成AIは音声を聞いていないので、文として自然なら誤りのまま残します。価格や申込期限の誤りは、問い合わせや返金の対応につながります。
防ぐには、ステップ6の確認で、数字を含む字幕だけは必ず音声を聞き直します。価格や日付が話に出る回は、台本や資料をステップ4で生成AIに渡し、数字を照らし合わせさせると見落としが減ります。
横型のテロップを縦型に流用し、文字が端で切れる
横型(16:9)で作った動画を縦型(9:16)に切り抜いてSNSに載せると、横型用に1行16文字で作ったテロップが画面の幅に収まらず、端で切れます。位置も画面下部のままだと、いいねやコメントのボタン、説明文と重なります。
防ぐには、縦型用の1行の文字数をルール表に別で決めておき、元のSRTを縦型用の数字で生成AIに修正させます。テロップの位置は、画面下部を空けて中央寄りに置きます。
焼き込みで書き出したあとに誤字が見つかる
焼き込みは字幕が映像の一部になるので、公開後に誤字が見つかると、動画ごと書き出し直すことになります。投稿済みの動画を差し替えられないSNSでは、削除して投稿し直すしかありません。
防ぐには、焼き込みの前に、SRTの段階で確認を済ませます。編集した人とは別の人が確認する場合も、書き出し前の動画を見てもらいます。
この章の結論。5つの失敗のうち、字幕の結合と文字数はスクリプトで見つけられます。意味の変化と数字の誤りは機械では見つけられないので、人の確認はこの2点に時間を使ってください。
テロップ作成ツールの選び方と、社内で回すときの注意点
ツールは「いま何で編集しているか」と「どこに公開するか」で選びます。新しい編集ソフトを覚えるより、いま使っているソフトの自動字幕と生成AIを組み合わせる方が、社内に定着させやすくなります。
| 今の状況 | 組み合わせ方 |
|---|---|
| Premiere Proで編集している | Premiere Proの自動字幕で下書き → SRTで書き出して生成AIで修正 → Premiere Proに読み込む |
| 編集ソフトが無い、短い動画が中心 | VrewやCapCutのような自動字幕つきの編集ツールで下書きし、SRTを生成AIで修正する |
| YouTubeにだけ公開し、焼き込みは不要 | YouTube Studioの自動字幕を画面上で修正する。ほかのツールで修正したSRTがあれば、字幕ファイルとしてアップロードする(SRTはYouTubeが対応している字幕ファイル形式の1つ) |
| 研修動画を英語など他の言語でも出す | 日本語のSRTを確定させてから生成AIで翻訳し、その言語が分かる人が確認する |
多言語にする場合は、日本語のSRTを確定させてから翻訳します。誤変換が残った日本語から翻訳すると、誤りのまま別の言語になり、その言語が分からない担当者には見つけられません。
動画や音声を外部のAIに渡すときの情報の扱い
社外秘の会議、顧客の顔や声、発表前の製品が映った動画を外部のAIサービスに渡す場合は、渡す前に社内のルールを確認します。生成AIに渡すのをSRTだけにすれば、顔や画面に映った資料は外部に出ません。
個人向けのプランでは、入力した内容がAIの学習に使われる設定になっている場合があります。業務で使う前に、AIの法人プランと個人プランの違いで、学習への利用と管理機能の違いを確かめてください。
自動字幕が向かない動画の見分け方
次の条件がそろう動画では、自動字幕の修正に、自分で打つ以上の時間がかかる場合があります。
- 話し方:方言が強い
- 話す人数:複数の人が同時に話す
- 周りの音:工場やイベント会場のように、周りの音が大きい
判断の目安は、最初の数分の自動字幕です。ほぼ1文ごとに修正が必要なら、その動画は自分で打つか、音声を聞き取りやすく録り直す方が早く終わります。
無料プランと外注で見落としやすい費用
自動字幕の無料プランには、書き出した動画に透かしが入る、書き出せる形式や回数が限られる、といった制限があるツールもあります。業務で使う前に、公式サイトの料金ページで、SRTを書き出せるプランかを確認してください。
テロップを外注している場合も、この記事の表記ルール表は役立ちます。発注のときにルール表を渡しておくと、社名や数字の表記の修正依頼が減り、確認のやり取りが短くなります。
この章の結論。ツールは今の編集環境に合わせて選び、生成AIにはSRTだけを渡すのが、情報の扱いと手間の両面で始めやすい形です。自動字幕の修正が1文ごとに必要な動画は、無理にAIを使わない判断も入れておきます。
AIでテロップを作ると変わる作業時間と、その測り方
AIでテロップを作ると、音声を聞いて打つ時間がほぼなくなり、人の時間は確認に移ります。一方で、確認の時間と見た目を決める時間は残るので、作業時間がゼロになるわけではありません。
どれだけ短くなったかは、工程ごとに時間を記録して比べると分かります。次の表を使って、手作業のときと、AIを使ったときを1本ずつ記録してみてください。
| 工程 | 手作業のとき | AIを使ったとき |
|---|---|---|
| 音声を聞いて文字にする | [ 分] | [ 分](自動字幕の待ち時間) |
| 誤字・表記・改行の修正 | [ 分] | [ 分](生成AIへの指示と照合) |
| 見た目を決めて適用する | [ 分] | [ 分] |
| 通しでの最終確認 | [ 分] | [ 分] |
| 合計 | [ 分] | [ 分] |
仮に、手作業で音声を聞いて打つ工程が全体の半分を占めていたとすると、その半分がほぼ待ち時間に変わります。修正の工程も、生成AIが出す「修正した箇所の一覧」を確認するだけになるので短くなります。実際の比率は動画の長さや話し方で変わるので、自社の数字で確かめてください。
時間の測り方や、削減した時間を社内に報告する方法は、AI業務効率化の効果を数字で出す方法|削減時間の測り方で詳しく解説しています。
時間以外にも、次の変化があります。
- テキストの再利用:修正済みのSRTは動画の全文テキストなので、ブログ記事やFAQ、研修資料の下書きにそのまま使える
- 過去の動画の検索:研修動画のSRTを保存しておくと、「あの説明は何本目の何分だったか」を文字で探せる
- 音を出せない場所での視聴:電車内や職場で音を出さずに見る人にも内容が伝わる
- 多言語化の土台:確定した日本語のSRTがあれば、翻訳の下書きを生成AIで作れる
一方で、ルール表を作る最初の1回には時間がかかります。月に1本しか動画を作らない場合は、その時間を取り戻すまでに数か月かかります。研修動画のシリーズや毎週のSNS投稿のように、同じ形式の動画を続けて作る会社ほど、仕組みにする意味が大きくなります。
動画テロップのAI生成でよくある質問
VrewやCapCutの自動字幕を、修正せずにそのまま公開しても大丈夫ですか?
社外に出す動画ならおすすめしません。社名・製品名・数字の誤変換が残りやすく、会社の信頼に関わります。社内の打ち合わせの記録のように、見る人が限られ、内容が伝われば足りる動画なら、自動字幕のままで用が足りる場合もあります。
方言や業界用語が多い現場の研修動画でも、AIのテロップは使えますか?
使えます。台本や用語の一覧を生成AIに一緒に渡すと、業界用語の誤変換を正しい表記に修正させやすくなります。方言は、標準語に書き換えるか、話し方として残すかをルール表で先に決めておきます。周りの音が大きい現場では自分で打つ方が早い場合もあります。
動画ファイルごと生成AIに渡すのと、SRTだけ渡すのはどちらがよいですか?
最初はSRTだけを渡す方法をおすすめします。テキストなので多くの生成AIで扱え、顔や画面に映った資料を外部に出さずに済みます。動画ファイルを読み込めるかどうかは、生成AIのサービスやプランによって違います。対応しているかは各サービスの公式情報で確認してください。動画ごと渡す場合は、顔や画面に映った資料も外部のサービスに渡すことになります。
YouTubeに自動字幕があるなら、テロップを焼き込む必要はありますか?
YouTubeだけに公開するなら、修正したSRTを字幕ファイルとして登録すれば足ります。視聴者が表示を切り替えられ、公開後も字幕だけ修正できます。同じ動画をSNSにも載せる場合や、強調したい言葉を大きく見せたい場合は焼き込みを選びます。
日本語のテロップから、英語字幕も同じ流れで作れますか?
作れます。日本語のSRTを確定させてから、タイムコードを変えないよう指示して生成AIに翻訳させます。英語は同じ内容でも文字数が増えるので、照合スクリプトの上限を英語用に変えて確かめます。社外向けの動画は、英語が分かる人の確認を入れてください。
最初の1本で試すこと
まずは、直近で公開した動画を1本選び、テロップに出てくる社名・製品名・人名を書き出してみてください。それが表記ルール表の最初の数行になります。インタビュー動画の内容を記事にも使いたい方は、インタビュー文字起こしをAIで自動化も続けて読むと、SRTの使い道が広がります。
ここまで読んで、ルール表づくりや確認の担当決めまで社内で進めるのは手が回らないと感じた方は、AI導入支援・DX支援をご利用ください。いまの編集の流れを伺い、AIに任せる作業と自社で確かめる作業を分けるところから一緒に進めます。対象の業務や作るシステムが決まる前から、ご相談いただけます。
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