AXとは|広報の定型作業を仕組み化する6手順と業務カード
この記事の要点
- 広報のAXは、AIが処理する前提で定型作業の手順を組み替えることから始める
- 広報で最初に選ぶのは、毎月同じ手順で繰り返す1業務
- 業務カード・依頼シート・確認リストの書き方を本文で解説
AX(AIトランスフォーメーション)とは、AIを活用して仕事の進め方や、お客様に提供する価値を変えていく取り組みです。広報では、プレスリリースの下書きや掲載記事の要約のように、毎月同じ手順で繰り返す作業を選び、作業の一部をAIが処理する前提で手順を組み替えるところから始めます。「依頼シートで材料を集める→AIが下書きする→人が確認する→記録する」という決まった流れにするのが入口です。
この記事は、1〜3人で広報を担当している中小企業の広報担当者や経営者に向けて書いています。AIは使っているのに、担当者ごとにやり方が違う会社を想定しています。読み終わる頃には、最初に仕組み化する広報業務を1つ選び、業務カードと確認チェックリストの初版を書けることを目指します。
生成AIの社内ルールづくりは、この記事では扱いません。入力してよい情報の決め方から始めたい方は、先に生成AI社内ルールのサンプルとA4一枚12項目のひな形をご覧ください。
Contents / 目次
AXとは、AIを活用して仕事の進め方と提供する価値を変える取り組み
AXは、AIを活用して仕事の進め方や、お客様に提供する価値を変えていく取り組みです。AIを使う人数を増やすだけでは、仕事の進め方は変わりません。広報の定型作業では、AIが処理する工程を組み込んだ手順を、会社の標準にすることが中心になります。担当者が思いついたときにチャットで質問する使い方は、個人のAI活用にとどまります。
この記事では、AXのうち仕事の進め方を変える取り組みとして、誰が担当しても、同じ材料から同じ手順で同じ品質の成果物が出る状態を作る方法を扱います。
AXとよく比べられるのが、DX(デジタルトランスフォーメーション)とデジタル化です。この記事では、紙やExcelの手作業をデジタルに置き換え、データとして扱えるようにする取り組みをデジタル化と呼びます。データとデジタル技術を使って、事業や組織のあり方まで変える取り組みはDXと呼び、デジタル化とは分けて扱います。
AXは、デジタル化したデータをAIが読み、下書き・要約・分類などを行う工程を手順の中に組み込みます。個人のAI活用・デジタル化との違いを表にまとめました。
| 比べる点 | 個人のAI活用 | デジタル化 | AX |
|---|---|---|---|
| 何が変わるか | 担当者1人の作業スピード | 情報の置き場所と形式(紙→データ) | 業務の手順そのもの(AIの工程が入る) |
| 成果が残る場所 | 担当者の頭とチャット履歴 | 共有フォルダやシステム | 業務カード・依頼シート・確認リスト・記録 |
| 担当が変わったとき | やり方が引き継がれない | データは残るが、作業の手順は人に依存 | 手順書どおりに次の人が回せる |
| 広報での例 | リリースの文章を思いついたときにAIで直す | 過去のリリースを共有フォルダにまとめる | 依頼シートの材料からAIが下書きし、担当者がチェックリストで確認して配信する |
広報の定型作業をAXで仕組み化するときに行うことは、次の3つです。
- 1か月分の広報作業を書き出し、仕組み化する業務を1つだけ選ぶ
- その業務の手順を、業務カード・依頼シート・確認チェックリストの3つの文書に書く
- 3回回して、AIの出力を確認者が直した箇所を記録し、指示文と手本を修正する
最初の1業務の選び方は、ほかの部署でも同じ考え方で決められます。全社でどこから始めるかを先に決めたい場合は、AI導入で最初に選ぶ1業務の決め方もあわせて読むと判断しやすくなります。
3つのうち、社内だけで進めるのが難しいのは2つ目の文書づくりです。とくに、確認チェックリストに書く「確認する点」を決める作業に手間がかかります。AIの出力のどこが間違えやすいかは、実際に何度か出力させて比べないと分かりません。
担当者が自分でAIを使いこなしながら仕組みを作りたい場合は、講師と1対1で学ぶ広報のAI活用研修(オンライン)で、自社の実際の広報業務でAIを使いながら、元資料から事実を抜き出す方法や出力の確かめ方を身につける進め方もあります。
この章の結論。広報の定型作業を仕組み化できたかどうかは、担当者が変わっても同じ手順で回るかどうかで判断します。広報で1業務のAXを始めるのに必要なのは、業務カード・依頼シート・確認チェックリストの3つです。指示文と手本、記録シートは、実際に回しながら作り、修正していきます。
仕組み化に向く広報の定型作業を見分ける4つの条件
仕組み化に向くのは、発生頻度が高く、材料と完成形の形が毎回ほぼ同じで、公開前に人が誤りを見つけられる作業です。広報の作業をすべてAIに向けるのではなく、次の4つの条件で1つずつ判定します。
- 月2回以上発生する:回数が少ないと、手本づくりやチェックリスト作成にかけた時間を取り戻せません
- 材料が毎回同じ種類で届く:「発表内容・日付・数字・コメント」のように、入力の項目を決められるかどうかです
- 完成形の手本がある:過去の良いプレスリリースや投稿など、「こう仕上げたい」と見せられるものが2〜3本あるかどうかです
- 誤りを公開前に人が見つけられる:配信・投稿の前に、元資料と照らし合わせる時間を取れるかどうかです
4つのうち3つ以上が当てはまる業務から始めます。広報で扱う代表的な作業に当てはめると、次のように判定できます。頻度は会社によって変わるので、自社の実際の回数で見直してください。
| 広報の作業 | 発生頻度の例 | 判定 | 理由 |
|---|---|---|---|
| プレスリリースの下書き | 月1〜数本 | 向く | 依頼シートで材料が揃い、配信前に人が確認できる |
| 掲載記事・SNSでの言及の要約 | 週1回 | 向く | 入力が記事本文やURLで一定で、要約の型を決めやすい |
| SNS投稿文の作成 | 週数回 | 向く | 頻度が高い。キャンペーン条件と画像は担当者が確認する |
| 月次の広報レポート | 月1回 | 向く | 数字の出どころが決まっていれば、構成を固定できる |
| 取材依頼への一次返信 | 不定期 | 条件付き | 受付の返信文は型にできるが、受けるかどうかの判断は広報担当が行う |
| 社内報の原稿づくり | 月1回 | 条件付き | 各部署からの報告の形式が揃っていれば向く |
| 事故・不祥事への対応コメント | まれ | 向かない | 頻度が低く、一語の誤りが会社の信用に直結する |
| 記者との関係づくり | 継続 | 向かない | 相手ごとに判断が変わり、型にできない |
「条件付き」の作業は、足りない条件を先に補えば仕組み化できます。たとえば社内報なら、各部署からの報告を同じ項目のフォームで集めるだけで、「材料が毎回同じ種類で届く」を満たせます。
この章の結論。最初の1業務は、4条件のうち3つ以上を満たす作業から選びます。条件付きの作業は、足りない条件を補ってから取り組みます。
広報の定型作業を仕組み化する6つの手順
ここからは、プレスリリースの下書きを例に、1業務を仕組み化する手順を説明します。掲載記事の要約やSNS投稿文でも、同じ6つの手順で進められます。使うのは表計算ソフト・文書ファイル・AIのチャットツールだけで、新しいシステムは不要です。
ステップ1 1か月分の広報作業を書き出す
最初に、先月1か月分の広報作業を1行ずつ書き出します。記憶だけに頼ると抜けるので、カレンダーの予定と送信済みメールを見返しながら書くのがコツです。
| 作業名 | 月の回数 | 1回の時間 | 手元に届く材料 | 完成形 |
|---|---|---|---|---|
| 新商品のプレスリリース | 2回 | 3時間 | 開発部のメモ、価格表、社長コメント | 配信用の原稿と画像 |
| 掲載記事の要約 | 4回 | 1時間 | 掲載記事のURL | 役員向けの週報 |
| (自社の作業を書く) |
書き出したら、前の章の4条件で判定し、仕組み化する作業を1つだけ選びます。2つ以上を同時に進めると、どちらの手順も固まりません。
ステップ2 選んだ業務の業務カードを書く
業務カードとは、1つの業務の「材料・完成形・AIが行う処理・確認する点」を1か所に書いた手順書のことです。担当者の頭の中にある手順を文書に移すのが目的で、次の8項目で作ります。
【業務カード】
業務名 :新商品・新サービスのプレスリリース作成
発生頻度 :月2回前後
材料(入力) :依頼シート(ステップ3)、商品資料、過去の手本2本
完成形(出力) :配信用原稿(見出し・リード文・本文・会社概要・問い合わせ先)
AIが行う処理 :依頼シートの材料から下書きを作る/見出し案を3つ出す
確認する点 :確認チェックリスト(ステップ5)の全項目
保存場所 :共有フォルダ「広報/プレスリリース/年月_商品名」
担当と確認者 :作成=広報担当、最終確認=部長(配信の判断も部長)
いちばん大事なのは「確認する点」と「担当と確認者」です。ここが空欄だと、AIの下書きを誰も確認しないまま配信される流れができてしまいます。
ステップ3 材料を集める依頼シートを作る
依頼シートとは、他部署から広報に届く材料を、毎回同じ項目で受け取るための入力フォームです。AIの下書きの質は、渡した材料で決まります。材料が口頭やチャットでばらばらに届く状態のままでは、AIに渡す前に広報担当が材料を集め直す作業が毎回発生します。
プレスリリース用なら、次の項目で作ります。GoogleフォームやMicrosoft Formsのような社内で使い慣れたフォームか、共有の表計算シートで十分です。
- 発表内容を1文で:「何が・いつから・誰に向けて」を1文で書いてもらう
- 公開してよい日時:解禁日時。これより前の情報はAIに渡す先を限る(後述)
- 対象の読者:業界紙の記者、地元の利用者など
- 数字とその出典:価格・数量・実績値と、元資料のファイル名
- コメント:誰のコメントかと、本人が確認した原文
- 画像:使ってよい写真と、撮影者・権利の確認状況
- 問い合わせ先:記者からの問い合わせに対応する部署と担当者
数字とコメントを依頼シートの項目にしておくと、AIへの指示に「数字とコメントは依頼シートにあるものだけを使う」と書けます。これが、後で説明する数字の誤りを防ぐいちばん確実な方法です。
ステップ4 AIに指示文と手本を保存する
毎回ゼロから指示を書くのではなく、指示文・手本・表記ルールをAIのツール側に保存しておきます。使っているAIツールに指示と参考資料を保存できる機能があれば、そこに保存します。無い場合も、共有フォルダの文書ファイルに置いておけば、毎回貼り付けて使えます。
指示文は、長く作り込む必要はありません。次のような短いたたき台から始め、実際の出力を見ながらAIと対話して、自社の状況に合わせて書き足してください。
あなたは[会社名]の広報担当です。
添付の依頼シートの内容から、報道関係者向けのプレスリリース下書きを作ってください。
・構成は、手本のプレスリリース2本と同じ順番にする
・数字、日付、人名、コメントは、依頼シートにあるものだけを使う。無い場合は[要確認]と書く
・「業界初」「No.1」など、根拠資料が必要な表現は使わない
・表記ルールのファイルに従う
・最後に、依頼シートから読み取れなかった項目を箇条書きで出す
あわせて保存する表記ルールは、1ページ程度で足ります。実際に直したことがある表記から、次のように書いていきます。
- 社名は正式名称で書く
- 数字は半角
- サービス名の表記はこの一覧に従う
- 日付は2026年9月25日の形式
最後の「読み取れなかった項目を出す」という指示が効きます。材料が足りないときにAIがもっともらしい文を補うのを防げるうえ、他部署に何を聞き直せばいいかがすぐ分かります。
ステップ5 確認者が使うチェックリストを作る
AIの下書きは、次のチェックリストで上から順に確認します。上の項目ほど、誤ったまま配信したときの影響が大きいものです。確認者が変わっても同じ順番で見られるように、業務カードと同じ場所に保存します。
- 数字と日付:価格・数量・発売日を、依頼シートの元資料と1つずつ照合したか
- 固有名詞と肩書き:社名・商品名・人名・役職が、最新の正式表記になっているか
- 依頼シートに無い事実:AIが材料に無い実績や効果を書き足していないか
- [要確認]の残り:AIが空欄にした箇所が、すべて埋まっているか
- 表現:「業界初」「最高」など根拠の要る表現や、景品表示法に触れるおそれのある言い回しが無いか(景品表示法の概要は消費者庁「景品表示法」で確認できます)
- 公開日時:解禁前の情報を、解禁前に出す設定になっていないか
- 添付と宛先:画像の権利確認が済んでいるか、配信先リストが正しいか
ステップ6 3回回して記録し、指示文と手本を修正する
ステップ5までができたら、実際の業務で3回回します。毎回、次の記録シートに1行ずつ書き残します。
| 日付 | 業務 | かかった時間 | 確認者が直した箇所 | 直した種類 | 次に修正する文書 |
|---|---|---|---|---|---|
| 9/10 | 新商品リリース | 80分 | 見出しが長い、会社概要が旧版 | 形式・情報の古さ | 手本の会社概要を差し替える |
| (次回) |
判断の基準は1つです。同じ種類の修正が2回続いたら、チェックリストに項目を足すのではなく、指示文か手本を修正します。原因を元から断たないと、確認の手間がいつまでも減りません。
3回回して修正が減ってきたら、次の段階として、依頼シートの送信をきっかけにAIが下書きを作り、担当者に通知する自動化を検討します。自動化しても、「確認して配信する」工程には人の承認を残してください。
属人化していた広報業務を担当交代に耐える形にする進め方は、広報の属人化をAIで解消する3ステップでも解説しています。
この章の結論。仕組み化の成果物は、始めるのに必要な業務カード・依頼シート・確認チェックリストの3つに、回しながら作って修正する指示文と手本・記録シートを加えた5つです。自動化は、手作業で3回回して修正が減ってから検討します。
仕組み化すると広報の仕事で何が変わるか
いちばん大きく変わるのは、業務の手順が担当者の頭の中から文書に移ることです。担当者が休んでいる日や異動した後でも、業務カードと依頼シートを見れば、次の人が同じ手順で作業を進められます。1〜2人で広報を担当している会社ほど、この変化の影響が大きくなります。
次に、作業時間が数字で見えるようになります。ステップ6の記録シートを付けていれば、仕組み化の前後で1回あたりの時間を比べられます。計算例を示します。
- 仕組み化前:プレスリリース1本に3時間かかっていたとする
- 仕組み化後:AIの下書きの確認と修正に1時間20分かかるとする
- 1本あたりの短縮:1時間40分
- 月2本の場合:月3時間20分、年間では40時間ほど
実際の数字は業務と会社によって変わるので、必ず自社の記録シートの値で計算してください。削減時間の測り方は、AI業務効率化の効果を数字で出す方法で詳しく解説しています。
3つ目は、確認の抜けが減ることです。チェックリストの順番どおりに見れば、数字や肩書きの照合を毎回同じ手順で行えます。記録シートに「直した種類」が溜まっていくので、どの項目でAIが間違えやすいかも、会社の中で分かるようになります。
最初の1か月は、仕組み化の前より時間がかかることがあります。手本選び・表記ルールづくり・チェックリストの作成が加わるためです。効果は、3回目以降の記録で判断してください。
この章の結論。仕組み化の効果は、担当交代への強さ・作業時間の見える化・確認の抜けの減少の3つで判断します。時間の効果は、記録シートの3回目以降の数字で比べます。
広報の仕組み化でつまずく5つの条件と防ぎ方
広報の仕組み化では、発表前の情報や公開される数字を扱うため、ほかの部署にはない失敗が起きます。ここでは、どういう条件で起き、どうなり、どう防ぐかを5つに分けて説明します。
解禁前の発表内容を個人契約のAIに入れると、会社が管理できない場所に情報が残る
担当者が個人で契約しているAIのアカウントで新商品や業績の下書きを作ると、発表前の情報が会社の管理外に残ります。入力した内容をAIの学習に使うかどうかなど、データの扱いは契約先の利用規約と設定で決まります。個人のアカウントでは、その設定を会社の側から確認できません。
防ぐには、依頼シートの「公開してよい日時」の欄を使います。解禁前の情報を含む依頼は、会社で契約し、学習に使わない設定を確認済みのアカウントでだけ処理すると、業務カードに書いておきます。どの情報を入力してよいかの線引きは、AIに入力してはいけない情報と社内ルールの作り方を参考に決めてください。
過去のプレスリリースを手本として丸ごと渡すと、終了したサービスや旧い肩書きが下書きに混ざる
手本として過去のリリースを10本、20本とまとめて渡すと、AIはその中の会社概要や役職名、終了したサービス名まで参考にします。その結果、新しい下書きに古い情報が混ざります。数年前のリリースほど、社名や所在地、代表者の肩書きが変わっている可能性があります。
防ぐには、手本を2〜3本に絞り、会社概要と問い合わせ先の部分は最新版に差し替えてから保存します。手本は「構成と文体を真似させるもの」、事実は「依頼シートから取るもの」と、役割を分けて指示文に書いておきます。
AIが書いた数字をそのまま配信すると、依頼シートに無い数字が公開される
材料に数字が足りないと、AIが文脈から「それらしい数字」を補って下書きを作ることがあります。生成AIが事実と違う内容をもっともらしく出力する現象は、ハルシネーションと呼ばれます。プレスリリースは記者が記事に引用するため、誤った数字が配信されると訂正の手間が社外にまで及びます。
防ぐには、ステップ4の指示文に「数字は依頼シートにあるものだけ。無ければ[要確認]と書く」と入れ、チェックリストの1番目に数字の照合を置きます。この2つを組み合わせると、補われた数字は確認の段階で必ず目に入ります。
記者向けの案内文をAIで一括作成すると、どの媒体に送っても同じ文面になる
メディアリストの全員に向けた案内文をAIでまとめて作り、宛名だけ差し替えて送ると、どの媒体に送っても同じ文面になります。記者は、自分の媒体の読者に関係がある話かどうかを見て、案内を読むかを決めると考えられます。媒体ごとの理由が書かれていない案内は、読まれにくくなるおそれがあります。
防ぐには、仕組み化する範囲をリリース本文までに限り、案内文の冒頭の1〜2文は担当者が媒体ごとに書きます。「なぜこの媒体に送るのか」を書く部分は、型にしない工程として業務カードに明記しておきます。
仕組みを担当者のパソコンと個人アカウントに置くと、異動で手順ごと失われる
指示文や手本を、担当者個人のAIアカウントやパソコンのフォルダにだけ保存していると、その担当者が異動や退職をした時点で、仕組みごと失われます。広報の定型作業を仕組み化する目的は、担当が変わっても回る状態を作ることなので、これでは本来の目的が果たせません。
防ぐには、業務カード・依頼シート・指示文・手本・チェックリストの5つを、共有フォルダに置きます。AIのツール側に保存した指示文も、同じ内容を文書ファイルとして共有フォルダに残しておきます。ツールを乗り換えるときも、この文書を移すだけで済みます。
この章の結論。広報の仕組み化でつまずくのは、発表前の情報・古い手本・補われた数字・媒体ごとの文脈・保存場所の5か所です。どれも、仕組み化を始める段階で、業務カード・依頼シート・指示文と手本の中身と、それらの保存場所を決めておけば防げます。
導入前に知っておきたい見積書に出ないコストと向き不向き
広報のAXで費用として見えにくいのは、ツールの料金ではなく、手順を文書にする時間と、それを更新し続ける担当者の時間です。導入を決める前に、次の点を確認しておくと判断がぶれません。
- 最初の1か月の時間:手本選び・表記ルール・チェックリストづくりに、担当者の時間が数時間単位で必要になる
- 法人向けプランの費用:解禁前の情報を扱うなら、会社で管理できるプランが前提になる。違いはAIの法人プランと個人プランの違いで確認できる
- 手順書を更新する担当:社名変更・新サービス追加・役員交代のたびに、手本と表記ルールを修正する人を決めておかないと、指示文が古いまま使われ続ける
向き不向きもあります。プレスリリースの配信が年に数回しかない会社は、仕組み化にかけた時間を取り戻しにくいので、SNS投稿や掲載記事の要約のように回数が多い作業から始めるほうが合っています。また、他部署から材料がほとんど届かない会社では、AIの前に依頼シートを使ってもらうところから始める必要があります。
外部の支援会社に相談するときは、ツールの設定で終わる提案か、業務カードや確認の手順まで作る提案かで結果が変わります。見積もりや提案を比べるときは、次の4点を質問してみてください。
- 最初にどの業務から始めるかを、誰がどう決めるか
- 確認する点を、文書にするか
- 担当者が変わっても回る手順書が、成果物に含まれるか
- 契約が終わったあとも、指示文と手本を自社で使い続けられるか
AIに任せる作業と自社で担う判断の線引きは、広報のAXでも欠かせない論点です。ただ、線引きの結論は業務によって変わるので、この記事ではステップ2の業務カードの「確認する点」に書くことを優先しています。広報の仕事のうち人に残る仕事を洗い出す方法は、AI広報の自動化で人に残る仕事の仕分け手順で詳しく扱っています。
この章の結論。導入の判断は、ツールの料金よりも、手順書を作る時間と更新する担当者を確保できるかで行います。支援会社を選ぶときは、手順書と確認の手順が成果物に含まれるかを確かめます。
広報のAXでよくある質問
紙の資料が多い会社でも、広報のAXから始めていいですか?
始められます。ただし、AIが読めるのはデータになった情報だけです。過去のリリースや商品資料が紙だけで保管されているなら、手本にする2〜3本と最新の会社概要だけを先にデータ化してください。全部の資料をデジタル化し終わるのを待つ必要はありません。
広報担当が1人しかいない場合、確認者は誰にすればいいですか?
配信の最終判断をする上長か、材料を出した部署の担当者を確認者にします。1人で作成と確認を両方行うと、自分で書いた内容の誤りに気づきにくくなります。業務カードの「担当と確認者」の欄に名前を書いておくと、毎回の依頼が迷わずに済みます。
プレスリリースの配信やSNS投稿まで自動にしてもいいですか?
下書きの作成と担当者への通知までは自動にできますが、配信と投稿のボタンは人が押す形を残すことをおすすめします。公開された文章は取り消しても引用や転載が残るためです。予約配信を使う場合も、予約を登録する前に人が確認する工程を業務カードに書いておきます。
他部署が依頼シートを使ってくれないときはどうすればいいですか?
項目を減らすのが先です。最初は「発表内容を1文で・公開日時・数字と出典」の3項目だけにして、残りは広報が聞き取って埋めます。使ってもらえたら、記録シートで短くなった時間を相手の部署に伝えると、次の依頼から項目を増やしやすくなります。
使うAIツールを乗り換えたら、仕組み化をやり直しになりますか?
やり直しにはなりません。業務カード・依頼シート・確認チェックリスト・記録シートは、どのAIツールでもそのまま使えます。移し替えるのは指示文と手本だけです。乗り換えた直後の3回は記録シートを付け直し、出力の癖が変わっていないかを確かめてください。
今日できる最初の一歩として、今月のカレンダーと送信済みメールを見返し、広報で2回以上繰り返した作業を3つ書き出してください。そのうち、この記事の4条件に3つ以上当てはまるものが、最初に仕組み化する業務の候補です。プレスリリースを選んだ方は、次にプレスリリースをAIで書く4ステップを読むと、下書きから配信までの流れを具体的に組み立てられます。
ここまで読んで、業務カードや確認の手順を社内だけで作り切るのは難しそうだと感じた方は、AI導入支援・DX支援についてご相談ください。業務を1つ選び、AIが行う作業と担当者が確かめる作業に分けて、担当者が使う入力フォームと手順書まで作ります。いまの広報の進め方を伺うところからでも大丈夫です。
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