広報業務をAIエージェントで自動化|権限表と公開前の確認10項目

広報業務をAIエージェントで自動化|権限表と公開前の確認10項目

この記事の要点

  • AIに渡すのは事実シートだけ。載っていない数字は【要確認】で止める
  • AIの権限は読むことと下書きの保存まで。送信と公開の権限は人が持つ
  • 公開前の確認は10項目。解禁日時と代表者コメントは人が原文と照合

広報業務をAIエージェントで自動化するときは、AIに任せる範囲を「社内の資料を読み、下書きを保存するところまで」にします。送信・投稿・公開の権限は人が持ちます。AIが使ってよい情報は「事実シート」にまとめておき、シートに書いていない数字や日付が必要になったら、AIは書かずに【要確認】と印を付けて止まるように指示します。

この記事は、プレスリリース・社内報・SNS投稿を1〜2人で回している広報担当者と経営者の方に向けて書いています。AIで下書きを速く作りたいけれど、誤った数字や解禁前の情報が外に出るのは避けたい、という方が対象です。読み終わる頃には、どの工程をAIエージェントに任せ、誰がどこで確認するかを決めて、直近のリリース1本で試せる状態を目指します。

扱うのは、工程の分け方、AIに与える権限、AIが止まる条件、公開前の確認です。プレスリリースの文章そのものをAIに書かせるコツはプレスリリースをAIで書く4ステップで解説しています。

Contents / 目次
  1. 広報業務でAIエージェントに任せる工程と人が握る工程
  2. AIエージェントで広報の下書きを自動化する6ステップ
  3. 広報のAIエージェント化で起きやすい失敗と防ぎ方
  4. 自動化で変わる広報の仕事と効果の測り方
  5. 見積書に出ないコストと外部に任せるときの確認点
  6. 広報のAIエージェント化でよくある質問
  7. 直近のリリース1本から始める

広報業務でAIエージェントに任せる工程と人が握る工程

AIエージェントに任せるのは「材料を集める」「下書きを書く」「照合結果を添える」の3つです。人が握るのは「どれを出すか選ぶ」「原文と照合する」「社外に出す」の3つです。分ける基準は、その作業の結果が社外の人に届くかどうかです。

AIエージェントとは、目標を伝えると、必要な資料を自分で読み、作業の順番を決め、結果を自分で確かめながら進めるAIの仕組みです。チャット型のAIでは、1回やり取りするたびに人が次の指示を出します。AIエージェントは、指定したフォルダの資料を読み、下書きを書き、事実と照合するところまで続けて進めます。

人の指示を待たずに進むぶん、どこで止まるかを先に決めておかなければいけません。決めていないと、推測で埋めた数字が下書きに残ったまま、次の工程に回ってしまいます。

広報の工程AIエージェントに任せる部分人が握る部分
ネタ集め社内チャット・営業日報・製品の更新履歴から候補を拾い、一覧にするどの話題を発信するか選ぶ
プレスリリース事実シートをもとに本文の下書きと見出し案を作る数字・日付・コメントの照合、配信するかの判断、配信操作
社内報各部署の報告を読み物の形に下書きする登場する社員への掲載確認
SNS投稿リリースから媒体別の短い投稿文案を作る投稿文の確認、投稿と予約の操作
メディアリスト公開情報から候補と、前回からの変更点を洗い出す連絡するかの判断、記者とのやり取り
掲載報告掲載記事の要約と社内共有文の下書き成果の評価と次の打ち手
取材・危機対応想定問答の下書きまで回答内容、謝罪の判断、発言

表の右列は、どれも間違えたときに社外の人が影響を受ける作業です。記者に届いた数字やSNSに出た投稿は、あとで訂正しても最初の情報が残ります。そのため、AIの性能が上がっても、社外に出す操作は人だけが行うという線は動かしません。

工程を分けて権限を決める作業は、日々のリリース対応と並行すると後回しになりやすい部分です。広報の担当者自身がAIで下書きと確認を回せるようになりたい場合は、講師と1対1で学ぶ広報のAI活用研修(オンライン)で、自社の広報業務を題材に進め方を身につける方法もあります。役割の分け方をもっと細かく知りたい方は、AI広報の自動化で人に残る仕事も参考にしてください。

この章の結論。AIエージェントの仕事は、下書きフォルダに保存するところまでです。これを決めておけば、次のステップで権限と確認の担当者を割り当てられます。

AIエージェントで広報の下書きを自動化する6ステップ

進め方は、次の6ステップです。

  1. 工程を1つ選ぶ
  2. 事実シートを作る
  3. 権限を絞る
  4. ループと止まる条件を書く
  5. 公開前に2段階で確認する
  6. 差し戻しを記録する

最初は直近のリリース1本を題材に、1工程だけで試します。

ステップ1 自動化する広報業務を1つ選ぶ

最初に自動化するのは、次の3条件をすべて満たす工程1つです。条件から外れる工程を最初に選ぶと、試行錯誤のあいだに誤りが社外に出るおそれがあります。

  • 回数:月に2回以上発生する。回数が少ないと、指示を改善する機会が足りない
  • 材料:書くための材料が、社内に文書で残っている(取材メモ、日報、製品資料など)
  • 止められる:公開前に人が読んで止められる。即時の返信が要る工程は対象外

3条件に合いやすいのは、社内報の下書き、掲載記事の要約と社内共有、取材メモからのリリース下書きです。記者への個別連絡、危機対応、SNSのコメントへの返信は後回しにします。

工程を選んだら、入力と出力を1行ずつ書き出します。たとえば「入力=製品担当が書いた更新メモと事実シート。出力=プレスリリース本文の下書き、見出し案3つ、照合結果の表」です。この2行が、ステップ4でAIに渡す指示の土台になります。

ステップ2 AIが使ってよい事実を事実シートに書き出す

事実シートとは、その案件でAIが使ってよい数字・日付・名称・コメントだけを並べた表です。AIエージェントは、足りない情報を推測で埋めて文章をつなげようとします。事実シートがあれば、AIが自分の下書きを照合する基準になり、担当者が確認するときの基準にもなります。

次の型を、案件ごとにコピーして使ってください。スプレッドシートでも文書ファイルでもかまいません。

【事実シート】
案件名:
用途:プレスリリース/社内報/SNS/Webのお知らせ(該当するものを残す)
報道解禁日時:2026年__月__日(_)__時__分
  ※未定なら空欄のまま。空欄のあいだ、AIは書き始めない
正式名称:
  商品・サービス名=
  会社名・部署名=
  登場する人の氏名と肩書き=
表記ルール:例)社名は「株式会社〇〇」、サービス名は全角カタカナ
数字と出典(1行に1つ):
  数値=____/出典=____(社内資料名、または公開資料のURL)/確認した人=____
代表者コメント(本人が確認した原文だけ。AIは言い換えない):

問い合わせ先(部署・担当者・電話・メール):
使ってはいけない表現:例)根拠資料が無い「業界初」「唯一」「No.1」
※未発表の取引先名、交渉中の価格や条件など、AIに渡さない情報はこのシートに書かない

数字の行に「確認した人」の欄があるのは、公開前の照合で「この数字は誰が確かめたか」をすぐ追えるようにするためです。出典を書けない数字は、シートに載せません。載せなければ、AIは【要確認】で止まります。

どの情報ならAIに読ませてよいかの区分がまだ決まっていない場合は、先に生成AIに社内データを読ませる前の機密区分の決め方を読んでから、このシートに書く範囲を決めてください。

ステップ3 AIの権限を「読む」と「下書きの保存」に限る

AIエージェントに与える権限は、指定したフォルダを読むことと、下書きフォルダに保存することの2つだけにします。メールの送信、配信サービスへの入稿、SNSへの投稿、Webサイトへの公開の権限は与えません。

権限対象の例AIエージェント人
読む事実シート、取材メモ、文体の見本指定したフォルダだけ許可すべて
下書きの保存下書きフォルダ新しいファイルとして保存だけ許可(既存ファイルの上書きはしない)許可
社外に出すメール送信、配信サービスへの入稿、SNS投稿、Web公開、記者への連絡許可しない承認者の承認後に担当者が行う

権限を決めたら、下書きフォルダの共有範囲も確かめます。共有してよいのは、社内の広報担当者と承認者だけです。制作会社や代理店と共有しているフォルダを保存先にすると、解禁前の下書きが社外から見えてしまいます。

使うAIは、会社名義のアカウントで、入力した内容が学習に使われるかどうかの設定を確認できるものを選びます。プランによる違いはAIの法人プランと個人プランの違いで整理しています。

権限表のとおりに動かすには、指示文で頼むだけでは足りません。AIが指示どおりに動かないこともあるので、フォルダとアカウントの側で、できない状態を先に作っておきます。設定するのは次の4つです。

  • フォルダを2つに分ける:「AI読み取り用」と「AI下書き用」のフォルダを新しく作り、事実シート・取材メモ・文体の見本は読み取り用にだけ入れる。ドライブ全体や部署の共有フォルダはAIに読ませない
  • AIをつなぐアカウントの権限:AIや自動化ツールを接続するアカウントには、読み取り用フォルダを「閲覧のみ」、下書き用フォルダを「編集可」で共有する。それ以外のフォルダは共有しない
  • 連携するアプリ:AIや自動化ツールにつなぐのは、ファイルの保存先だけにする。メール、配信サービス、SNS、Webサイトの管理画面のアカウントはつながない。接続の画面で権限の範囲を選べる場合は、いちばん狭いものを選ぶ
  • 上書きの防止:事実シートや取材メモの原本は閲覧のみのフォルダに置くので、AIは書き換えられない。下書き用フォルダでは、ファイル名に日付と時刻を入れて新しいファイルとして保存させる(例「下書き_新サービス発表_20261002_0930」)。保存先のストレージで、変更履歴から前の状態に戻せるかも確かめておく

設定が終わったら、試しにAIへ「読み取り用フォルダの事実シートを書き換えて」「このメールを送って」と頼み、できずに止まることを確かめます。できてしまった場合は、そのアカウントかアプリに権限が残っています。共有設定と接続中のアプリの一覧を見直してください。

フォルダに新しいファイルが入ったらAIを動かす、毎朝決まった時刻に動かす、といった自動化は、Zapier・Make・Google Apps Scriptなどの自動化ツールとAIを組み合わせて作れます。Googleドライブを保存先にしている場合の流れの例は、次のとおりです。

  1. きっかけ。「AI読み取り用」フォルダに、新しい事実シートが追加されたときに動かす。ZapierやMakeでは、Googleドライブの特定のフォルダにファイルが追加されたことをきっかけに設定できる
  2. 読み込み。追加された事実シートと、同じフォルダの取材メモの本文を取り出す
  3. AIへの依頼。ステップ4の指示文と、取り出した本文をまとめてAIに送る
  4. 保存。返ってきた下書き・照合結果の表・【要確認】の質問リストを、「AI下書き用」フォルダに日付と時刻入りのファイル名で新しく保存する
  5. 社内への通知。広報担当者に、社内チャットで「下書きを保存しました」とファイルの場所を知らせる。通知の宛先は社内の担当者だけに固定する

毎朝決まった時刻に動かしたい場合は、Google Apps Scriptの時間主導型トリガーを使い、前回の実行以降に追加されたファイルだけを対象にします。時刻は1時間の幅で決まり、たとえば午前9時に設定すると、9時から10時までのあいだでApps Scriptが選んだ時刻に毎日動きます。組み終えたら、架空の数字で作った事実シートを1つ入れて試します。下書き用フォルダに新しいファイルができ、読み取り用フォルダの原本が変わっていないことを確かめてから、実際の案件で使い始めてください。

その場合も、流れの最後は「下書き用フォルダに保存し、担当者に社内で通知する」までにして、送信や投稿の手順を同じ流れに入れません。

設定画面の場所や選べる権限の範囲はツールやプランごとに違い、変わることもあるので、組むときは各ツールの公式ドキュメントで確認してください。

ステップ4 観測から検証までのループと止まる条件を書く

AIエージェントへの指示で大事なのは、うまい文章を書かせる言い回しではありません。何を見て、何を書き、何と照合し、どこで止まるかという流れです。次の6段階の流れを、指示にそのまま書きます。

  1. 観測。指定フォルダに、新しい事実シートと材料が入ったかを確かめる
  2. 計画。事実シートの「用途」欄を見て、どの媒体向けに何を書くかを決める
  3. 実行。下書きを書く
  4. 検証。下書きに出てくる数字・日付・固有名詞を、事実シートと1つずつ照合する。「使ってはいけない表現」も探す
  5. 反復。合わない箇所を直して、もう一度照合する
  6. 引き渡し。下書き・照合結果の表・【要確認】の質問リストを下書きフォルダに保存し、担当者に知らせる

止まる条件も、同じ指示の中に書きます。これが無いと、AIは情報が足りなくても推測で最後まで書いてしまいます。

  • 解禁日時が空欄:書き始めずに、日時が未定だと担当者に知らせる
  • シートに無い情報が必要:数字・社名・人名は書かずに【要確認】と入れ、質問リストに加える
  • 照合が2回続けて合わない:直すのをやめ、合わない箇所を示して人に引き渡す
  • 社外秘の印があるファイル:読まずに、そのファイルがあったことだけを報告する

指示文の出発点として、次のたたき台を使ってください。[ ]の中を自社の内容に書き換え、あとはAIと対話しながら、自社の媒体や表記ルールに合わせて足していきます。

あなたは[会社名]の広報の下書き担当です。
目的:[フォルダ名]に入った事実シートをもとに、[用途]の下書きを作ってください。
使ってよい情報は事実シートに書かれていることだけです。
シートに無い数字・日付・社名・人名が必要になったら、書かずに【要確認】と入れ、最後に質問リストを付けてください。
代表者コメントは、事実シートの原文をそのまま使ってください。原文が無ければ空欄にしてください。
解禁日時が空欄なら、書き始めずにその旨を報告してください。
書き終えたら、数字・日付・固有名詞を事実シートと1つずつ照合し、結果を表にして添えてください。
照合が2回続けて合わない場合は、直すのをやめて報告してください。
保存先は[下書きフォルダ]だけです。送信・投稿・公開は行わないでください。

AIから下書きが返ってきたら、本文より先に照合結果の表を見ます。表の中に「一致」ばかりが並んでいて、本文の数字の個数と表の行数が合わない場合は、照合を省いた数字があります。本文の数字に蛍光ペンで印を付け、表の行と1つずつ対応させてください。

ステップ5 公開前の最終確認を担当者と承認者の2段で行う

公開前の確認は2段に分けます。1段目は担当者で、下書きの事実が原文と合っているかを照合します。2段目は承認者で、社外に出すかどうか、出す時期はいつかを決めます。1人で両方を行うと、照合に集中しているあいだに「今この内容を出してよいか」の判断が抜けます。

担当者が見るのは、次の10項目です。AIが添えた照合結果の表は参考にしますが、表の結果を信じて確認を省くことはしません。

  • 解禁日時:本文・メールの件名・配信の予約設定の3か所で、同じ日時になっているか
  • 正式名称:商品名・社名・部署名・肩書きが、事実シートと1字ずつ一致しているか
  • 数字:すべての数字に出典があり、単位(%・件・円・税込か税別か)が合っているか
  • 日付と曜日:曜日をカレンダーで確かめたか。AIの書いた曜日をそのまま使わない
  • 代表者コメント:本人が確認した原文と一致し、AIが言い換えていないか
  • 未公開の情報:解禁前の提携先・価格・発売日が、他の媒体向けの下書きに混ざっていないか
  • 最上級の表現:「初」「唯一」「No.1」に、社内で示せる根拠資料があるか
  • 写真と画像:写っている人の掲載許可があるか。AIで作った画像なら社内ルールの扱いに沿っているか
  • 問い合わせ先:電話番号とメールアドレスが今使っているものか
  • 【要確認】の残り:本文に【要確認】が1つも残っていないか

承認者が見るのは、次の3点です。

  • 会社としてこの内容を言ってよいか
  • このタイミングで出してよいか
  • 問い合わせが来たときに誰が答えるか

承認したら、承認者名と日時を下書きファイルの冒頭に書き残し、そのあとで担当者が配信や投稿の操作を行います。

ステップ6 差し戻しを記録して事実シートと指示を直す

担当者や承認者がAIの下書きを差し戻したら、その理由を1行ずつ記録します。記録が無いと、同じ誤りを毎回直すことになり、AIエージェントの下書きの精度も上がりません。

日付/案件名/媒体/差し戻した箇所/理由の区分/直した先
2026-10-02/新サービス発表/プレスリリース/導入社数/事実違い(古い数字)/事実シートに「数字は今月の資料から」と追記
理由の区分:事実違い・表記・言い回し・未公開情報・その他
直した先:事実シート・指示文・使ってはいけない表現・直していない

月に1回、理由の区分ごとに件数を数えます。同じ理由が2回出たら、事実シートの項目か指示文に1行足します。「直していない」が続く理由は、AIに任せる範囲から外すことも検討します。

この章の結論。6ステップのうち、読んだその日に始められるのは、ステップ2の事実シートとステップ5の10項目です。この2つがあれば、AIエージェントをまだ組んでいなくても、チャット型のAIで同じ流れを試せます。

広報のAIエージェント化で起きやすい失敗と防ぎ方

広報の自動化で起きやすい失敗は、AIに渡す材料と保存先の設定から生まれます。文章の出来よりも、古い情報が混ざる経路や、社外から見える経路を先にふさぐことが先決です。

過去のリリースを文体の見本に渡すと古い数字が混ざる

自社らしい文体を覚えさせようとして、過去のプレスリリースをそのまま読ませるケースです。この条件だと、当時の従業員数・拠点数・価格・終了したキャンペーン名が、新しい下書きに入り込むことがあります。見本の数字は本文になじんでいるので、読み返しても気づきにくい誤りです。

防ぐには、見本として渡す過去のリリースの数字と固有名詞を「〇〇」に置き換えてから渡します。見本のフォルダと事実シートのフォルダも分け、指示文に「見本は文体の参考だけに使い、数字や名称は使わない」と書きます。

代表者コメントをAIに作らせると本人が言っていない発言が残る

コメント欄が空いていると、AIはそれらしいコメントを書きます。そのまま配信すると、記者がリリースを引用したとき、代表者が言っていない言葉が本人の発言として記事に載ります。掲載後に訂正を頼んでも、転載された記事やSNSには残ります。

防ぐには、コメント欄に入れてよいのは本人が確認した原文だけ、と指示文に書きます。原文が無いときは空欄のまま返させます。言い回しの案が欲しい場合は、本文とは別のファイルに「コメント案」として出させ、本人が選んで直した文を事実シートに書き戻します。

下書きの保存先が社外と共有されていて解禁前に見える

制作会社や代理店と共有しているフォルダを、AIの保存先にしてしまうケースです。AIエージェントが、保存先フォルダの共有範囲まで確かめてくれることは前提にしないでください。この条件では、解禁前の発表内容が、社外の人の画面に表示されます。

防ぐには、ステップ3で保存先を社内限定のフォルダに決め、共有の設定画面で共有相手を目で確かめます。社外に渡すのは、承認が済んだファイルを人がコピーしてからにします。

リリースは確認したのにSNS版の確認を省いてしまう

1つの事実シートから、リリース・Webのお知らせ・SNS投稿をまとめて作らせたときに起きます。リリース本文の確認で力を使い切り、短いSNS版は流し読みで済ませてしまう、という流れです。短文にすると「〜を解決」「業界初」のように言い切りが強くなりやすく、予約投稿の時刻が解禁時刻より前になっていることもあります。

防ぐには、ステップ5の10項目を媒体ごとに1回ずつ使います。SNS投稿の確認観点はSNS炎上を防ぐAI投稿前チェックの手順でも詳しく扱っています。

AIにWeb検索を許すと出典の分からない市場データが入る

「市場の背景も書いて」と頼み、AIエージェントにWeb検索の権限を与えたときに起きます。検索で拾った数字は、出典が解説記事やまとめサイトだったり、年が古かったりします。そのまま本文に入ると、リリースの中で出典を示せない数字になります。

防ぐには、検索結果を本文に直接入れさせず、「参考候補」として別のファイルに出典URLつきで出させます。その中から、公的機関やメーカー公式の資料で確かめられたものだけを、人が事実シートに書き足します。AIがもっともらしい誤りを書く仕組みは生成AIのハルシネーションはなぜ起きるかで解説しています。

この章の結論。5つの失敗のうち3つは、AIが読む材料・保存先・検索の範囲を決めるところで防げます。残りの2つは、代表者コメントの扱いを指示文に書くことと、10項目を媒体ごとに使うことで防げます。文章の出来を直すより先に、この設定と確認の進め方を見直してください。

自動化で変わる広報の仕事と効果の測り方

AIエージェントに下書きを任せると、担当者の仕事は「白紙から書く」から「照合して判断する」に移ります。変化を数字で確かめるには、導入前の2〜3本で「着手から承認までの時間」を測っておく必要があります。

1つ目の変化は、担当者が最初に向き合うのが白紙ではなくなることです。事実シートを書き終えた時点で下書きが届くので、担当者の時間は照合と、記者に何をどう伝えるかの判断に使えます。

2つ目は、差し戻しの理由が記録として残ることです。ステップ6の記録と事実シート、指示文がそろっていれば、担当者が異動や退職で替わっても、次の人が同じ流れで下書きを回せます。広報の仕事が1人の頭の中にしか無い状態から抜け出せます。

時間の変化は、次のような計算で見積もります。以下はあくまで仮の数字です。

仮に、プレスリリース1本の下書きに3時間かかっていて、AIの下書きを照合して直す形に変えて1時間になったとします。月に2本なら、月4時間が照合と判断に使える時間になります。

実際の数字は会社ごとに違うので、次の3つを測って確かめてください。

  • 着手から承認までの時間:事実シートを書き始めた時刻から、承認者が承認した時刻まで
  • 差し戻しの回数:1本あたり、担当者と承認者が何回差し戻したか
  • 【要確認】の件数:AIが止まった件数。多い場合は事実シートの項目が足りていない

【要確認】の件数は、少なければよいとは限りません。0件が続くときは、AIが推測で埋めていないかを疑い、照合結果の表を読み直します。測り方をさらに詳しく知りたい方はAI業務効率化の削減時間の測り方を参考にしてください。

効果が出にくいのは、発表が月1本より少ない会社です。事実シートの作成と確認にかかる時間は本数に関係なく発生するので、本数が少ないと下書きで短縮できる時間が小さくなります。その場合は、社内報や掲載報告など、回数の多い工程から始めます。

この章の結論。効果を判断するには、導入前後で「着手から承認までの時間」「差し戻しの回数」「【要確認】の件数」の3つを比べます。導入前の数字が無いと、良くなったかどうかを説明できません。

見積書に出ないコストと外部に任せるときの確認点

広報のAIエージェント化にかかる費用は、AIの利用料だけではありません。事実シートを書く時間、承認者の時間、差し戻しの記録を読み返す時間が毎月かかります。この3つは見積書には載らないので、導入前に社内の誰が担当するかを決めておきます。

承認者が1人しかいない会社の進め方

担当者と承認者を同じ人が兼ねる会社では、2段階の確認が1回にまとまりやすくなります。この場合は、下書きを作った当日には承認せず、翌朝にもう一度読みます。数字の照合だけは、営業や経理など別の部署の人に事実シートと本文を並べて見てもらいます。発表の内容を知らない人のほうが、単位や桁の違いに気づきやすいからです。

外部の会社に任せる前に聞く5つの質問

AIエージェントの構築や広報の運用を外部に依頼する場合、「配信まで全自動」という提案は、どこで人が止めるのかを先に確認します。次の5つを質問し、答えを契約書か手順書に残してもらいます。

  1. 送信・投稿・公開の権限は、誰のアカウントが持つのか
  2. AIが読むフォルダの範囲はどこまでか。社外秘の資料は含まれないか
  3. 下書きの保存先はどこで、社外の誰と共有されるのか
  4. 差し戻しを誰が記録し、指示文を誰が直すのか
  5. 契約が終わったとき、指示文・事実シート・差し戻しの記録は自社の手元に残るのか

5番目の答えが「残らない」の場合、契約を終えた時点で、下書きを回す仕組みを社内でゼロから組み直すことになります。

AIを使ったことを社外にどう説明するか

取引先や記者から、発信にAIを使っているかを聞かれることがあります。そのときに説明できるのは、どこまでAIが書き、どこを誰が確かめたかという流れです。

ステップ5の承認者名と日時、ステップ6の差し戻しの記録は、この説明の材料になります。記録が残っていれば、「下書きはAIが作り、数字とコメントは担当者が原文と照合し、承認者が承認してから配信した」と、案件ごとに具体的に答えられます。

この章の結論。社内で進めるか外部に任せるかを決める前に、事実シートを書く人、承認する人、記録を読み返す人の3人を決めてください。3人が決まらない場合は、外部に任せる範囲を広げるより先に、自動化する工程を減らします。

広報のAIエージェント化でよくある質問

記者に「このリリースはAIで書いたんですか」と聞かれたら、どう答えればいい?

下書きにAIを使ったかどうかより、誰が何を確かめたかを答えるのが実務的です。「下書きはAIで作り、数字と日付と代表者コメントは担当者が原文と照合し、責任者が承認しました」と言えるように、承認者名と日時を下書きに残しておくと、案件ごとに具体的に答えられます。

解禁前の新製品情報を、AIエージェントに読ませても大丈夫?

会社名義のアカウントで入力内容の学習利用の設定を確かめ、社内ルールで入力してよい区分に入っている場合に限ります。そのうえで、未発表の取引先名や交渉中の条件は事実シートに書きません。下書きの保存先が社内限定かどうかも、配信前に必ず確認してください。

プレスリリースの配信サービスへの入稿まで、AIエージェントに任せてもいい?

入稿画面への入力を補助させることはできても、配信の確定と予約日時の設定は担当者が行います。予約日時を1日間違えると、解禁前に記者へ届いてしまい、配信後に取り消すのは難しくなります。AIには入稿用の原稿ファイルを作らせるところまでにしておくと安全です。

社内ルールを作るとき、参考になる公的な資料はある?

デジタル庁が、行政での生成AIの調達と利活用についてのガイドラインを公開しています。行政機関向けの資料ですが、自社のルールにどんな項目を入れるかを考える材料になります。広報の部分は、この記事の10項目と組み合わせてください。

直近のリリース1本から始める

今日できる最初の一歩は、直近に出したプレスリリースを1本開き、中に出てくる数字・日付・固有名詞にすべて印を付けることです。印を付けた項目を書き出せば、それがこの記事の事実シートの最初の1枚になります。AIエージェントを組むのはそのあとで大丈夫です。

社内でAIを使うときのルールがまだ無い場合は、生成AI社内ルールのサンプルを下敷きにすると、入力してよい情報の範囲を先に決められます。

ここまで読んで、工程の分け方や権限の設定を社内だけで進めるのは手が回らないと感じた方は、今の広報の流れを伺うところからご相談ください。AIが行う作業と社内で確かめる作業に分けて、入力フォームと手順書まで作るAI導入支援・DX支援を行っています。

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