AIで新人教育・広報研修を自動化|自社資料で作る手順と採点表
この記事の要点
- 自社資料を読ませたAIに、質問対応・小テスト・添削の一次対応を任せる
- 最初の手順は、資料を3区分に分けてAIに読ませない情報を決めること
- 古い版の資料を混ぜると誤答する。防ぎ方と採点表は本文に掲載
新人教育や広報研修をAIで自動化するなら、AIに任せるのは「資料に書いてあることへの質問対応」「小テストの作成」「記述課題の一次添削」の3つです。材料は、社内にある表記ルール、業務マニュアル、過去のプレスリリースで足ります。合否の判断と、取材や電話の場での指導は先輩社員が行います。
この記事は、毎年または不定期に新人・中途社員が入り、そのたびに先輩が同じ説明と添削を繰り返している会社の、教育担当者と広報責任者に向けて書いています。この記事では、自社の資料から学習の仕組みを作る6つの手順と、自社に合わせて書き換えて使える採点表・指示文・小テスト作成コードを紹介します。
扱うのは「新人に業務を教えるためにAIを使う」話です。社員にAIの使い方そのものを教える研修については、AI業務効率化を社員に教える順番|社内研修の進め方と判断ポイントで解説しています。
Contents / 目次
新人教育のAI化で任せるのは、質問対応・小テスト・添削の一次対応
新人教育をAIで自動化するときは、「資料に答えが書いてある仕事」をAIに移し、「判断が要る仕事」を先輩に残します。この線引きを先に決めておくと、仕組みを作る範囲がはっきりし、先輩の手が空く時間も見積もれます。
新人が先輩に聞く質問の中には、「社名の正式表記はどれですか」「日付は和暦と西暦のどちらですか」のように、表記ルールやマニュアルを開けば答えが載っているものがあります。こうした質問は、資料を読ませたAIが24時間答えられます。一方で「この取材依頼は受けていいですか」のように、会社の方針や相手との関係で答えが変わる質問は、資料だけでは答えられません。
教育の場面ごとに、AIに任せる部分と先輩・上司が行う部分を分けると次のようになります。
| 教育の場面 | AIに任せる部分 | 先輩・上司が行う部分 |
|---|---|---|
| 日々の質問 | 表記ルール・マニュアル・過去事例に書いてあることへの回答と、根拠の箇所の提示 | 資料に無い質問への回答と、その答えを資料に書き足すこと |
| 知識の確認 | 資料からの4択問題の作成、解説文の作成 | 問題の正解が資料と合っているかの確認、出題範囲の決定 |
| 文章の添削 | 採点表に沿った一次採点と、修正が必要な箇所の指摘 | 点数の最終確認、公開してよいかの判断 |
| 実務の練習 | 記者役・問い合わせ客役を演じるロールプレイの相手 | ロールプレイ後の振り返りと、実際の取材・電話への同行 |
| 到達度の判断 | 小テストの点数と提出履歴の集計 | 独り立ちさせるかどうかの判断 |
この表の左側は、どれもAIが自社資料を読めることが前提です。つまり、仕組みの出来を決めるのは使うツールよりも、AIに読ませる資料の中身と、資料を最新に保つ担当者の有無です。
資料を読ませる前に、どの資料をAIに入れてよいかを決める作業があります。取引先名の入った文書や未発表の情報が混ざっていないかを確かめる手順は、生成AIに読ませる社内データの洗い出し方|機密区分の決め方で詳しく解説しています。
資料の仕分け、到達目標、採点表づくりは、教える側の先輩が本業と並行して行うと手が止まりがちです。教育担当の手が空かず着手できない場合は、AI導入支援・DX支援のページをご覧ください。業務システム化のプランでは、AIに任せる作業と担当者が判断する箇所をまとめた社員向け手順書も作ります。
自社資料で学習システムを作る6つの手順
学習システムは、資料の仕分けから始めて、2週間の試験運用で終わる6つの手順で作ります。プログラミングが必要なのは手順4の小テスト作成だけで、それもコードを貼り付けて実行するだけです。
ステップ1。資料を集めて、AIに読ませてよいものを3区分に分ける
最初に、新人教育で使っている資料を1つのフォルダに集め、AIに読ませてよいかどうかで3つに分けます。広報であれば、表記ルール、プレスリリースの型、過去のリリース、SNS投稿の確認手順、取材対応の流れ、よくある問い合わせと回答が主な材料です。
| 区分 | 資料の例 | 扱い |
|---|---|---|
| 公開済み | 過去のプレスリリース、会社案内、Webサイトのお知らせ | そのまま読ませてよい |
| 社内限定 | 表記ルール、業務マニュアル、文書のテンプレート、NG表現の一覧 | 会社名義のアカウントで、入力データが学習に使われない設定を確認してから読ませる |
| 読ませない | 取引先名入りの見積もりやメール、個人情報を含む対応記録、未発表の新商品情報 | 読ませない。事例として必要なら、固有名詞を消した要約を人が作ってから入れる |
このとき、同じ資料の古い版は必ずフォルダから外します。表記ルールの旧版と新版が両方あると、AIは旧版のほうを根拠に答えることがあります。ファイル名の先頭に改定日を付け(例「2026-04_表記ルール」)、どれが最新かを一目で判別できるようにしておくと、差し替えのときも迷いません。
入力してよい情報の線引きを社内ルールとしてまだ決めていない場合は、生成AI社内ルールのサンプル|12項目のひな形・情報区分表と決め方を先に使うと、仕分けの基準をそろえられます。
ステップ2。配属3か月後に「できること」を書き出す
次に、新人が一定期間のあとに何をできるようになればよいかを、「〜できる」の形で5〜8項目書き出します。これが小テストの出題範囲と、記述課題の採点基準のもとになります。ここが曖昧なままだと、AIが作る問題も「資料に書いてあることを満遍なく聞く」だけになり、業務で使う知識に絞れません。
広報の新人を例にすると、次のような書き方になります。
【広報 新人 配属3か月後の到達目標】
1. 表記ルールに沿って、お知らせ文(400字程度)を書ける
2. プレスリリースの型に沿って、新商品のリリース案を書ける
3. SNS投稿の前に、確認リストの項目を自分で確かめられる
4. 取材依頼の電話を受けて、聞き取る項目を漏れなく記録できる
5. 社内から届いた掲載依頼を、受けてよいか判断に必要な情報をそろえて上司に相談できる
【確かめ方】
1〜2 … 記述課題を採点表で採点し、合計点が[基準点]以上
3 … 小テストで[基準点]以上
4〜5 … ロールプレイ後に先輩が確認
項目ごとに「どうやって確かめるか」まで書くのがポイントです。確かめ方が決まっていない項目は、AIで教えても身についたかどうか判断できません。
ステップ3。AIチューターを作る(ツールの選び方と指示文)
AIチューターとは、自社資料だけを根拠に新人の質問へ答える、先輩役のAIのことです。作り方は大きく3つあり、新人の人数と資料の量で選びます。
| 作り方 | 向いている条件 | 注意点 |
|---|---|---|
| Gemini Notebook(旧 NotebookLM)に資料を読み込ませる | Google Workspaceを使っていて、資料をもとに答えてほしい。根拠の箇所も一緒に示してほしい | 共有できる範囲や使える機能はアカウントの種類で違うため、Gemini Notebookの公式ヘルプで確認する |
| Claudeのプロジェクト、ChatGPTのプロジェクト、GeminiのGemに資料と指示文を登録する | 先輩役の話し方や添削の方法まで指示文で決めたい。新人が数名程度 | 個人プランか法人プランかで入力データの扱いと管理機能が違う。Claudeのプロジェクトをほかのメンバーと共有できるのはTeam・Enterpriseプラン。ChatGPTのGPTsは個人向けのプラン(Free・Go・Plus・Pro)では新しく作れず、提供を終える予定のため、資料と指示文はプロジェクトに登録する。GeminiのGemは、個人のGoogleアカウントでは2026年11月、WorkspaceのBusiness・Enterpriseでは2027年3月に提供が終わり、スキルに自動で移行される。機能の名前と仕様は変わることがあるため、各社の公式ヘルプ(Claudeのプロジェクト/ChatGPTのGPT/GeminiのGemからスキルへの移行)で確認する |
| Difyなどで社内RAGを構築する | 資料が多い、複数部署で使う | 構築と保守に手間がかかる。資料の分け方で回答の精度が変わる |
RAG(検索拡張生成)とは、AIが答える前に社内資料から関係する箇所を探し、その箇所をもとに回答を作る仕組みのことです。どの方法も考え方は同じで、違うのは手軽さと管理のしやすさです。
プランごとの違いはAIの法人プランと個人プランの違いで比べています。
指示文は、次のseed(たたき台)から始めて、AIと対話しながら自社の状況に合わせて詰めてください。
あなたは当社広報チームの、新人向けの先輩役です。
登録した資料([表記ルール・プレスリリースの型・過去のリリース・NG表現の一覧])だけを根拠に答えてください。
資料に書いていないことは「資料にありません。[先輩の名前]さんに確認してください」と答えてください。
答えの最後に、根拠にした資料名と見出しを書いてください。
新人が文章を見せてきたら、直す必要がある箇所を3つまで挙げ、理由を添えてください。書き直した全文は出さないでください。
このseedで大事なのは最後の1文です。AIに全文を書き直させると、新人はそれを写すだけになり、自分で書く力が身につきません。指摘だけを返させ、書き直しは新人自身が行う形にします。
作ったら、先輩が答えを知っている質問を10個ほど投げて確かめます。見るのは次の3点です。
- 根拠:答えの最後に書かれた根拠の資料名が正しいか
- 資料に無い質問:「資料にありません」と返すか
- 旧版:旧版の内容で答えていないか
ステップ4。小テストをAIに作らせ、Googleフォームに流し込む
知識の確認には、資料から作った4択の小テストを使います。問題文はAIに作らせ、Googleフォームへの登録は次のコードで自動化します。まず、AIに次のように依頼して問題を作ります。
添付の[表記ルール]から、新人向けの4択問題を10問作ってください。
出力は表形式で、列は「問題文/選択肢1/選択肢2/選択肢3/選択肢4/正解の番号/解説」の順にしてください。
解説には、根拠になった資料の見出しを書いてください。
資料に書いていないことは問題にしないでください。
出てきた問題は、そのまま使わずに先輩が確かめます。確認するのは次の4点です。
- 正解:正解の番号が、最新版の資料の記述と合っているか
- 選択肢:正解と言える選択肢が2つ以上ないか
- 出題範囲:ステップ2の到達目標に関係する問題になっているか
- 解説:根拠の見出しが実在し、新人が読み返せる書き方になっているか
確認した問題をGoogleスプレッドシートに貼り付け、次のコードを実行すると、採点つきの小テスト(Googleフォームのテスト)ができます。
/**
* スプレッドシートの問題一覧から、Googleフォームの小テストを作るスクリプト
*
* 前提:
* - Googleスプレッドシートの「拡張機能」→「Apps Script」に貼り付けて使う
* - シート名「問題」の1行目を見出しにし、2行目から問題を入れる
* A列=問題文 / B〜E列=選択肢1〜4 / F列=正解の番号(1〜4) / G列=解説
* - 選択肢は B列から詰めて入れる(3択なら E列を空にする)
* - 初回の実行時に、フォームとスプレッドシートへのアクセス許可を求められる
*/
function createQuizForm() {
const SHEET_NAME = '問題'; // [ここを自社のシート名に変更]
const FORM_TITLE = '広報 新人テスト 第1回'; // [ここをテスト名に変更]
const sheet = SpreadsheetApp.getActiveSpreadsheet().getSheetByName(SHEET_NAME);
if (!sheet) {
throw new Error('シート「' + SHEET_NAME + '」が見つかりません');
}
const rows = sheet.getDataRange().getValues().slice(1); // 見出し行を除く
const form = FormApp.create(FORM_TITLE, true); // true=回答を受け付ける公開状態で作る
form.setIsQuiz(true);
// 誰の回答か分かるように、最初に名前の欄を置く
form.addTextItem().setTitle('お名前').setRequired(true);
rows.forEach(function (row, i) {
const question = String(row[0]).trim();
if (!question) return; // 空行は飛ばす
const answerNo = Number(row[5]);
const lineNo = i + 2; // シート上の行番号(エラー表示用)
// 正解の番号が1〜4で、その列に選択肢が入っているかを確かめる
if (!(answerNo >= 1 && answerNo <= 4) || !String(row[answerNo]).trim()) {
throw new Error(lineNo + '行目:正解の番号が空欄の選択肢を指しています');
}
const item = form.addMultipleChoiceItem();
const choices = [];
for (let c = 1; c <= 4; c++) {
const text = String(row[c]).trim();
if (text) {
choices.push(item.createChoice(text, c === answerNo));
}
}
item.setTitle(question)
.setChoices(choices)
.setRequired(true)
.setPoints(1);
// 間違えた人にだけ解説を表示する
const explanation = String(row[6]).trim();
if (explanation) {
item.setFeedbackForIncorrect(
FormApp.createFeedback().setText(explanation).build()
);
}
});
Logger.log('回答用URL:' + form.getPublishedUrl());
Logger.log('編集用URL:' + form.getEditUrl());
}
実行すると、作成したフォームのURLが実行ログに出ます。つまずきやすいのは、正解の番号の列に「③」や「選択肢3」のような数字以外が入っているケースです。F列は半角の数字だけにしてください。共有ドライブで管理する場合は、作成後にフォームの保存場所を確かめて移動してください。コードで使っている setIsQuiz・createChoice・setFeedbackForIncorrect などの仕様は、Apps ScriptのFormAppリファレンス(Google公式)で確認できます。
選択式の問題だけでなく、アプリの形で新人が遊びながら覚える仕組みにしたい場合は、Vibe Codingで作る新入社員クイズアプリの手順も参考になります。
ステップ5。記述課題の採点表を作り、AIに一次採点させる
お知らせ文やプレスリリースを書く力は、4択では確かめられません。記述課題を出し、採点表に沿ってAIに一次採点させ、先輩が最終確認します。採点表があると、AIの採点がぶれにくくなり、先輩ごとに添削の基準も変わりにくくなります。
お知らせ文の課題なら、採点表は次のような形です。項目と基準は自社の表記ルールに合わせて書き換えてください。
| 評価項目 | 3点 | 2点 | 1点 |
|---|---|---|---|
| 必要な情報 | 日時・場所・対象・申込方法・問い合わせ先がすべてある | 1つ欠けている | 2つ以上欠けている |
| 表記ルール | 違反がない | 1〜2か所の違反 | 3か所以上の違反 |
| 表現 | 根拠を示せない「No.1」「業界初」などの表現がない | 誇張ぎみの表現が1か所ある | 根拠のない最上級表現がある |
| 読みやすさ | 1文の長さと段落の分け方が自社の基準内 | 基準を超える文が1〜2文ある | 基準を超える文が3文以上ある |
AIへの依頼は次のseedから始めます。
あなたは広報チームの添削担当です。
次の採点表に沿って、新人が書いたお知らせ文を採点してください。
[採点表を貼り付け]
項目ごとに、点数とその点数にした理由を1〜2文で書いてください。
修正が必要な箇所は、元の文を引用して指摘してください。書き直した全文は出さないでください。
最後に、先輩が確認したほうがよい点があれば挙げてください。
[新人のお知らせ文を貼り付け]
先輩が確かめるのは、2点をつけた項目と「表現」の項目です。2点は判断が分かれやすく、「表現」は根拠の有無を社内の事実と照らさないと判定できないためです。3点と1点がはっきり付いた項目は、理由の欄を読むだけで確認を終えられます。
ステップ6。2週間試して、答えられなかった質問を資料に足す
最後に、新人1人で2週間試験運用します。この期間の目的は、AIが答えられなかった質問を集めて、資料の抜けを見つけることです。新人には、AIチューターに聞いた質問のうち、答えが無かったものや答えに納得できなかったものを、次の形で記録してもらいます。
| 日付 | 質問 | AIの答え | 資料にあったか | 対応 |
|---|---|---|---|---|
| [日付] | 取材の写真に社員が写る場合、本人の了承はどう取るか | 資料にありません | なし | 先輩が回答し、取材対応マニュアルに追記 |
| [日付] | 英語の社名表記は「Co., Ltd.」でよいか | 旧版の表記で回答 | 新版にあり | 旧版をフォルダから削除 |
週に1回、先輩がこの記録を見て、資料への追記と差し替えを行います。2週間たったら、次の項目を確かめて本運用に移ります。
- 資料の抜け:記録された質問のうち、資料に追記すべきものをすべて追記したか
- 旧版の混在:旧版を根拠にした回答が、差し替え後に出なくなったか
- 小テスト:新人が間違えた問題の中に、問題文や正解の誤りがなかったか
- 採点:AIの一次採点と先輩の最終採点で、点数が2点以上ずれた項目がなかったか
- 更新担当:表記ルールが改定されたときに、AIの資料を差し替える担当者を決めたか
この章の結論。学習システムの中身は、仕分けた資料、到達目標、採点表の3つです。ツールはあとから替えられますが、この3つは自社でしか作れず、次の新人にもそのまま使えます。
AIで新人教育を仕組みにするときの、5つの失敗パターン
AIを使った新人教育の失敗は、AIの性能よりも、読ませる資料と課題の出し方から起きます。どれも仕組みを作る段階で防げるので、手順を進める前に目を通しておいてください。
表記ルールの旧版と新版を両方読ませると、旧版で答える
共有フォルダをまるごとAIに読ませる場合、改定前の表記ルールや、以前の社名で書かれたマニュアルが一緒に入ります。すると、新人が質問したときにAIが旧版の記述を根拠に答え、新人はそれを正しいと信じて文書を書きます。
防ぐには、AIに読ませるフォルダを教育用に別に作り、各資料は最新版1つだけを置きます。ファイル名の先頭に改定日を付け、資料を改定したら古いファイルを消すところまでを、改定作業の手順に含めてください。
過去のプレスリリースを全部お手本にすると、古い言い回しまで真似る
過去のリリースを何年分もまとめてAIに読ませ、「これを参考に書き方を教えて」と指示した場合、終了したサービス名や、今は使わない言い回しまでお手本として扱われます。新人は、AIが示した例をそのまま自分の文書に取り入れます。
お手本として読ませるリリースは、先輩が選んだ5〜10本に絞ります。そのうえで、ファイル名を「お手本_」と「参考_」に分け、指示文に「書き方の例として示すのはお手本だけ」と書いておきます。
AIに全文を書き直させると、新人が書く力を身につけない
添削を依頼したときに、AIが修正済みの全文を返す設定のままだと、新人はそれをコピーして提出します。提出物の出来は良くなりますが、3か月たっても自分では書けない状態が続きます。
ステップ3とステップ5のseedのように、「書き直した全文は出さない」「修正箇所を引用して指摘する」を指示文に入れてください。新人が自分で書き直した版を、もう一度AIに採点させる流れにすると、書き直しの練習にもなります。
選択式の小テストだけで判断すると、現場で書けない
4択の小テストは自動で採点でき、点数も集計しやすいので、到達度の判断をこれだけで済ませたくなります。ただ、4択で満点を取れても、実際にお知らせ文を書くと必要な情報が抜けることがあります。選択肢を見て正解を選ぶことと、白紙から書くことは別の力だからです。
小テストは知識の確認に使い、「書ける」「対応できる」を確かめる項目は記述課題とロールプレイで判断します。ステップ2で、到達目標ごとに確かめ方を決めておくのはこのためです。
資料に無い質問に、AIがそれらしい答えを返す
AIは、資料に答えが無い質問にも、一般的な知識からもっともらしい答えを作ることがあります。たとえば自社に写真掲載の同意ルールが無いのに、一般的な手順を自社のルールのように答えると、新人はそれに従って取材先とやり取りします。
指示文で「資料に無いことは『資料にありません』と答える」「根拠の資料名と見出しを書く」の2点を必ず指定し、根拠の書かれていない答えは使わないよう新人に伝えます。AIがもっともらしい誤りを返す仕組みと業務での防ぎ方は、生成AIのハルシネーションはなぜ起きる|業務で減らす5つの手順で詳しく解説しています。
この章の結論。5つの失敗のうち4つは、資料の置き方と指示文の2か所で防げます。フォルダに最新版だけを置くことと、指示文に「全文を書き直さない」「資料に無いことは答えない」を入れることを、作る前に決めておいてください。
学習システムを入れたあとに変わること
仕組みが動き始めると、先輩への質問のうち資料で答えられるものがAIに移り、先輩は判断が要る質問と実務の同行に時間を使えるようになります。どのくらい変わったかは、入れる前から記録を取っておくと比べられます。
記録しておくとよい数字は次の3つです。
| 記録する数字 | 記録の仕方 | 分かること |
|---|---|---|
| 先輩への質問件数 | 1週間、新人から受けた質問を先輩が正の字で数える | 資料で答えられる質問が、どれだけAIに移ったか |
| 記述課題の再提出回数 | 課題ごとに、合格までに何回出し直したかを記録する | 採点表と一次添削で、書く力がつく速さが変わったか |
| 独り立ちまでの日数 | 配属日から、先輩の確認なしで出稿を任せた日までを数える | 教育期間そのものが短くなったか |
先輩の時間がどのくらい空くかは、仮の数字で見積もれます。仮に、先輩が新人の質問対応に1日30分使っていて、そのうち半分が資料に答えの載っている質問だとします。その半分をAIが受け持てば1日15分、20営業日で約5時間です。
自社の数字に置き換えるときは、1週間分の質問を「資料に答えがあるか」で分けて数えると、見積もりの根拠になります。削減時間の測り方の詳細はAI業務効率化の効果を数字で出す方法で解説しています。
数字に出にくい変化もあります。1つは、先輩ごとに教える内容がばらつかなくなることです。採点表と資料が同じなので、Aさんに教わった新人とBさんに教わった新人で、表記の癖が変わりません。
もう1つは、ステップ6の記録が、そのまま資料の足りない箇所の一覧になることです。新人が質問するたびに資料が厚くなるので、2人目、3人目の新人を迎えるときほど、先輩が準備する時間は短くなります。中途社員が不定期に入る会社でも、同じ仕組みをそのまま使えます。
この章の結論。効果を確かめるには、仕組みを入れる前の1週間から質問件数を数えておくことが必要です。入れたあとに数え始めると、比べる元の数字がありません。
導入前に知っておきたい、手間とお金がかかる場所
AIで新人教育を仕組みにするとき、いちばん時間がかかるのはツールの設定ではなく、資料を書き足す作業です。見積もりや計画に入りにくい部分なので、始める前に見込んでおいてください。
資料になっていない知識の書き起こし
新人教育で教えている内容のうち、「このメディアの記者には電話より先にメールを送る」のような判断は、先輩の頭の中にしか無いことがあります。AIは読ませた資料しか根拠にできないので、書かれていない知識は教えられません。
書き起こしの負担を軽くするには、先輩に30分ほど話してもらい、その録音を文字起こししてAIに要点をまとめさせ、先輩が確認して資料にする方法があります。ベテランの判断を資料にする手順は、ベテランのノウハウをAIに移す進め方で解説しています。
資料を差し替える担当者の時間
表記ルールやマニュアルを改定したとき、AIに読ませている資料も差し替えないと、仕組みはすぐに古い内容を教え始めます。差し替えにかかる手間は資料の量や使うツールによって変わりますが、どちらにしても担当者が決まっていないと誰も行いません。改定の手順書に「教育用フォルダの差し替え」を1行加え、担当者の名前を書いておくのが確実です。
AIで教えにくい広報の仕事
記者からの急な電話、SNSでの批判的な反応への対応、社内の掲載依頼を断る場面など、相手と状況で正解が変わる仕事は、資料とAIだけでは教えきれません。AIに記者役を演じさせてロールプレイの練習はできますが、実際の対応の良し悪しは先輩が横で聞いて判断します。この部分は、AIを入れても先輩の同行が残ると考えて計画してください。
この仕組みが向く会社と、先に資料化が必要な会社
毎年新人が入る会社や、中途社員が不定期に入る会社は、一度作った資料と採点表を繰り返し使えるので、仕組みにする価値があります。反対に、新人の受け入れが数年に1回で、教育用の資料がほとんど無い会社は、AIの設定より先に資料を書き起こすことが必要です。その場合も、ステップ1とステップ2だけ先に行っておけば、次の採用のときにすぐ仕組みに移れます。
外部の研修コンテンツを使う場合の確認点
研修会社やeラーニングの教材を使う場合は、契約前に「表記ルールや業務手順が変わったとき、誰がどう修正するか」を確認してください。成果物が動画やPDFだけの場合、社内で修正できず、改定のたびに追加の依頼が必要になることがあります。自社の資料を自社のアカウントで読ませる形なら、修正は社内で完結します。
この章の結論。費用よりも見込んでおくべきなのは、資料を書き起こす時間と、改定のたびに差し替える担当者です。この2つを決めてから始めれば、ツールが替わっても仕組みは残ります。
新人教育・広報研修のAI化でよくある質問
研修資料がほとんど無い会社でも、AIで学習の仕組みは作れますか?
作れますが、最初の作業は資料の書き起こしになります。先輩が新人に口頭で説明している内容を録音し、文字起こししてAIに要点をまとめさせ、先輩が確認して資料にします。表記ルールとよくある質問の2つから始めると、AIチューターを動かせる分量になります。
動画のマニュアルしか無い場合、AIに読ませられますか?
動画の音声を文字起こしして、テキストの資料にしてから読ませるのが確実です。画面操作の説明は文字だけだと伝わりにくいので、手順ごとに画面の写真を添えた資料にします。動画そのものは、新人が手順を見返す教材として残しておきます。
新人がAIチューターに聞いた内容を上司が見るのは、監視にならないですか?
記録を何に使うかを、始める前に新人へ伝えておくことが大切です。資料の足りない箇所を見つけるために使い、人事評価には使わないと明言します。記録するのは答えが無かった質問だけにすると、新人も気兼ねなく質問できます。
広報経験のある中途社員にも、同じ仕組みを使えますか?
使えます。経験者の場合、一般的な広報の知識より、自社の表記ルールや社内の承認の流れを覚えることが課題になります。小テストの出題範囲を自社固有のルールに絞り、記述課題は1回目から本番に近い題材にすると、早く独り立ちできます。
まずは今日、新人から受けた質問を思い出し、そのうち社内の資料に答えが載っているものがいくつあるかを数えてみてください。その数が、AIに移せる仕事の目安になります。広報の業務そのものを担当者に依存しない形にしたい場合は、広報の属人化をAIで解消する3ステップもあわせて読んでみてください。
資料の仕分けや採点表づくりまで手が回らない、どの業務から仕組みにするか決めきれない、という場合は、AI導入支援・DX支援のページで、相談の進め方をご覧ください。初回の相談では、現在の状況と目指す変化を伺い、取り組むテーマの候補と進め方を一緒に考えます。対象の業務や作るシステムが決まる前から、ご相談いただけます。
仕事で使えるAI活用情報をLINEで
AIの活用ポイントと、DX・AXコラムをお届けします。登録後のアンケートでは、活用例や指示文、業務に使える資料、社内導入の情報など、受け取りたいテーマを選べます。
通常は金曜日12:10、週0〜1回程度の配信です。コラムのお知らせは、アンケート未回答でも受け取れます。
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