士業(税理士・社労士)

税理士事務所向け|同じ質問に何度も答えるのを、やめる

顧問先からの質問を1つの窓口で受けて、事務所が過去に答えた内容から下書きを作ります。ただし送信ボタンを押すのは必ず人です。答えたものは事務所の回答集に貯まり、次からは顧問先が自分で見つけられます。所長に判断が集中している状態を変えます。

解決したい課題
同じ質問に何度も答えている/所長に判断が集中している
提供内容
AI業務システム化/LINE活用

「これ、経費で落ちますか」

顧問先から、今日も同じ質問が来ます。先月も答えました。半年前にも答えました。答えたのは所長で、そのときのやりとりはメールの奥に埋まっています。

だから職員は所長に聞きます。所長がまた答えます。同じ答えを、何度も一から作っています。

質問はLINEでも、メールでも、電話でも来ます。担当者ごとのやり方で受けているので、誰が何と答えたかは残りません。担当が代わると、また一から聞き直しになります。

質問の窓口を1つにまとめて、答えたものを次の人も使える形で残す。そういう仕組みを作ります。画面で順に説明します。

先にお伝えしておくこと

士業は、AIの使い方をいちばん慎重に決めないといけない業種です。作るときに外さない線を3つ決めています。

  • AIに答えを送らせません。 税理士でない人が税務相談に応じることは、税理士法で認められていません。AIに答えさせて自動で送るのは、この線を越えかねません。送信ボタンを押すのは必ず人にします
  • もとの無い文章を作らせません。 AIがやるのは、事務所がこれまでに答えた内容をさがして文章の形にするところまでです。出典が付かない下書きは出しません
  • 顧問先の数字を回答集に書きません。 他社の事情が混ざると事故になります。貯めるのは、どの会社にも当てはまる手順までです

この3つを守ると、できることは狭くなります。それでいいと思っています。士業でいちばん困るのは、間違った答えが速く届くことです。

顧問先側の画面

1. 送る前に、自分で見つけられるようにする

いちばん良い質問対応は、質問が来ないことです。

よくある質問を、顧問先が見られる場所に置きます。「領収書はいつまでに送ればいいですか」「試算表はいつ届きますか」。この手の質問は、事務所の答えがすでに決まっています。

ここに出すのは、事務所がこれまでに答えた内容だけです。AIに一般的な説明を書かせて並べると、事務所の運用と食い違ったときに困ります。

探しても見つからないときは、その場から質問を送れます。「調べてから聞く」を強いる作りにはしません。

2. 自動では返信しないと、先に書く

質問を送る画面です。分類を選んで、内容を書いて、レシートの写真を付けられます。

ここでいちばん大事なのは、下の1行です。

回答は、担当者が内容を確認してからお送りします。自動では返信しません。

すぐ返事が来ないことを、先に伝えておきます。期待を作らないのも設計のうちです。 「送ったのに返ってこない」と思われるのは、翌日きちんと答えるより悪いことです。

急ぎの人のために、電話番号と受付時間も同じ画面に出します。

3. 誰が答えて、誰が確認したかを書く

翌営業日の朝、回答が届きます。

回答の下に、担当者の名前と、確認した税理士の名前が入ります。士業でいちばん大事なのは、ここです。誰の判断なのかが分からない回答は、顧問料を払って受け取るものではありません。

関係するQ&Aへのリンクも添えます。次に同じことが起きたときは、聞かなくても済むようにするためです。

この回答は、次に出てくる下書きの画面から送ったものです。人が確認するまで、この吹き出しは出ません。

4. 残っている資料だけが見える

質問と同じ窓口に、資料のやりとりも来ます。別々の仕組みにすると、顧問先が使い分けを覚えることになります。

お預かりしたものはチェックが付いて消えていきます。残っているものだけが見える状態にします。「何を送ったか」を顧問先に思い出させないのが目的です。

次にいつお知らせが来るかも書いておきます。催促が突然来ると角が立ちます。

事務所側の画面

5. LINEもメールも電話も、同じところで受ける

質問の一覧です。経路が違っても、ここに集まります。電話で受けたものは、職員がメモを入れて同じ列に並べます。

状態は4つだけです。未回答、下書きができている、税理士の確認待ち、回答済み。「誰かが持っているけど誰も動いていない」状態をなくすための4つです。

この画面から自動で返信することはありません。AIがやるのは下書きを作るところまでで、送るかどうかは人が決めます。

6. 下書きに、送信ボタンを付けない

ここがこの仕組みの中心です。

画面は3つに分かれています。左がいただいた質問、真ん中が下書き、右がその下書きのもとです。

右を見てください。事務所が過去に答えた2件と、回答集から1件が並んでいます。この3件を材料に文章の形にしただけで、AIが税務の判断をしているわけではありません。もとが無ければ、下書きは作りません。

そして「金額の基準」の部分に印が付いています。改正で変わるところなので、過去の回答だけでは判断できません。分からないことを分からないと出すのが、この画面のいちばん大事な仕事です。

下のボタンを見てください。「そのまま送る」は押せません。押せるのは「下書きを保存」と「税理士に確認を依頼」だけです。

これは書き忘れではありません。 税理士でない人が税務相談に応じることは税理士法で認められていないので、確認が済むまで送信できない作りにしています。ここを「便利だから」で外すと、仕組みごと使えなくなります。

7. 3回聞かれたら、答えを1つにまとめる

答えた内容が、事務所の回答集に貯まります。

並び順は聞かれた回数の多い順です。「飲食代の扱い」が14回。事務所全体で、今月14回も同じことを説明しています。

3回来たら1つにまとめて、顧問先に公開します。公開すると、次からは顧問先が自分で見つけられます。この画面の「公開で解決した質問 42件」が、事務所に来なかった質問の数です。

ただし、顧問先ごとの数字や事情は書きません。 他社の事情が混ざると事故になります。書けるのは、どの会社にも当てはまる手順までです。

8. 何を聞かれて何と答えたかが、1社分つながる

顧問先カードです。質問と回答の履歴が、時刻つきで並びます。

担当が代わっても、前と違うことを言わずに済みます。 税務調査のときや、顧問先との行き違いが起きたときに、「あのとき何とお答えしたか」を出せる状態にしておきます。

下の「この顧問先によく出てくる話題」も見てください。飲食代の扱いを、この会社からだけで4回聞かれています。

同じことを何度も聞かれているなら、こちらの説明が足りていないということです。 次の訪問でまとめて伝える材料になります。

9. 催促は自動でも、電話をかけるかは人が決める

月次の資料が集まらない。士業でいちばん詰まるところです。

顧問先80社のうち、そろったのが51社、一部だけが22社、まだ来ていないのが7社。どこで止まっているかが1枚で分かります。

お知らせは自動で送ります。ただし、3回送って届かない顧問先は一覧のいちばん上に出して、電話をかけるかどうかを人が決めます。 自動の催促を繰り返しても、届かない先には届きません。

10. 速さではなく、誰が答えられるようになったかで見る

数字の画面です。ここは、見る指標の選び方そのものが提案です。

出しているのは4つ。今月の質問件数、職員だけで返せた割合税理士に上がった件数、回答集に追加した件数。

職員だけで返せた割合が78%、税理士に上がったのが23件です。前月は51件でした。所長の手元から28件分の確認が消えています。

返信までの速さは、あえて出していません。速く返すことを目標にすると、確認を飛ばす力が働きます。士業で速さを指標にしてはいけません。

どのくらい効くのか

計算で出せるところを出してみます。

同じ質問に答える時間。 「飲食代の扱い」が今月14回。1回の回答に、調べて書いて送るまで12分かかるとして、14回で2時間48分です。上位5件を合わせると49回、9時間48分。ここが丸ごと消えるわけではありませんが、公開したぶんは減ります。

所長の確認。 税理士に上がる件数が51件から23件に減っています。1件の確認に15分として、28件分で7時間。所長の月7時間分です。所長の時間はいちばん高いので、ここが効きます。

質問そのものの数。 12月の138件から、1月は106件に減っています。よくある質問で42件が解決して、事務所には来ていません。

資料の催促。 顧問先80社に月1回ずつ電話をかけると、1社5分でも6時間40分です。お知らせを自動にすると、電話が要るのは止まっている7社だけになります。

ここまでの合計より大事なのは、所長でなくても答えられる質問が増えたことです。時間の話ではなく、事務所の形が変わる話です。

ここに挙げた数字は、顧問先80社ほどの事務所を前提にした試算です。実際の効果は、顧問先の数・業種・関与の深さによって変わります。

導入について

顧問先側にアプリは入れません。 LINE の友だち追加だけです。メールで送りたい顧問先はメールのままで大丈夫です。今のやり方を変えさせないところから始めます。

事務所側はブラウザです。 いまお使いのパソコンでそのまま開けます。

会計ソフトは置き換えません。 記帳も申告もこれまでどおりです。この仕組みが担当するのは、質問の受け付けと、回答の下書きと、回答集だけにします。

期間の目安は2〜3ヶ月です。 いちばん時間を使うのは、過去の回答を読める形にするところです。メールや個人のメモに散らばっているものを集めます。ここは事務所ごとに事情が違うので、既製品では合いません。

確認のルールも一緒に決めます。 どこからが税理士の確認が要る質問か。職員がそのまま返していい範囲はどこまでか。ここを決めずにツールだけ渡すと、いちばん危ない使い方をされます。

同じ仕組みが効く業種

同じ質問が繰り返し来て、答えるのに資格や経験が要る商売なら、そのまま応用できます。

  • 社労士事務所 — 手続きの期限と必要書類。社会保険労務士法にも同じ業務の制限があります
  • 行政書士・司法書士事務所 — 申請の手順と添付書類
  • 設計事務所・測量 — 図面や現場についての問い合わせと、資料のやりとり
  • 保険代理店 — 手続きの案内と、給付の請求に必要なもの
  • ソフトウェアの保守窓口 — 同じ問い合わせが繰り返し来て、答えるのに製品知識が要る

「答えられる人が限られていて、その人の時間が足りない」商売は、考え方が同じです。

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