SaaS棚卸しで月10万円のムダを削る情シス1人の整理術
「いつの間にかSaaSが増えていて、毎月いくら払っているのか誰も全体を把握していない」。情シスを1人で兼任していると、こんな状態になりがちですよね。請求書を並べてみたら、同じような機能のツールが3つも契約されていた、退職した人のアカウントがまだ生きていた、というのはよくある話です。
この記事では、社内に散らばったSaaSを棚卸しして、月10万円規模のムダを削るための具体的な手順を、現場目線でお伝えします。AIをどこで使うと作業が一気に楽になるのか、逆にAIに任せてはいけない部分はどこか。情シスが1人でも回せるやり方に絞って解説します。
結論。情シス1人がまずやるべきは「集める・並べる・捨てる」の3つ

先に結論からお伝えします。SaaSのムダを削る作業は、難しく考える必要はありません。やることは大きく3つだけです。「契約情報を集める」「一覧に並べて見比べる」「使われていないものを捨てる」。この順番で進めれば、月額のムダはかなりの確率で見つかります。
ポイントは、いきなり高機能な管理ツールを導入したり、AIに「うちのSaaS整理して」と丸投げしたりしないことです。まずは人の手で情報を集めるのが先で、AIはそのあと「並べる」「見比べる」作業を高速化する相棒として使います。順番を間違えると、かえって時間がかかったり、機密情報を漏らしたりするので注意が必要です。
なぜ今これをやる価値が高いのか。理由は2つあります。ひとつは、ほぼすべてのSaaSにAI機能が乗ったことで「とりあえず契約」が増え、気づけば似たツールが乱立しやすくなっているから。もうひとつは、社員が会社に無断でAIツールを使うシャドーAI、つまり情シスが把握していないAI利用が、セキュリティ上の大きな課題になっているからです。棚卸しは、コスト削減とセキュリティの両方に効く一石二鳥の取り組みなんです。
まずは、この3ステップが全体のどこに位置するのかを一覧で見てみましょう。
| ステップ | やること | AIの役割 | 人がやること |
|---|---|---|---|
| ①集める | 請求書・カード明細・各ツールの管理画面から契約情報を集める | 使わない(機密が多いため人手で) | 情報の収集と確認 |
| ②並べる | ツール名・用途・金額・利用者数を一覧表にする | 表の整形、重複の洗い出し | 用途のグループ分けの最終判断 |
| ③捨てる | 重複・未使用・退職者アカウントを解約/削除する | 削減候補のリスト化と理由づけ | 解約の意思決定と現場への確認 |
ここが肝心。AIは「並べる」「候補を出す」までが担当で、「捨てる」という最終判断は必ず人が行います。AIの提案を鵜呑みにして解約すると、実は重要な業務で使われていた、という事故につながります。
SaaS棚卸しの具体的なやり方。5ステップとAIの使いどころ

ここからは実際の手順です。さきほどの3つをもう少し細かく分けると、現場では5つのステップで進めるのが分かりやすいです。読みながら、自社の状況に当てはめてみてください。
ステップ1。契約情報を「お金の出口」から集める
最初にやるのは、契約しているSaaSを全部洗い出すことです。ここで一番確実なのは、機能から探すのではなく「お金の出口」から逆算することです。具体的には、法人クレジットカードの利用明細、経理が持っている請求書、銀行の引き落とし履歴。この3つを突き合わせると、毎月・毎年お金が出ていっているサービスがほぼ漏れなく見つかります。
さらに、シングルサインオン(社員が1つのIDで複数サービスにログインする仕組み)を使っているなら、そのログイン履歴も突き合わせます。お金は出ているのにログインがゼロなら、それは使われていないツールの候補です。逆に、ログインはあるのに経理が把握していないものは、現場が個別に契約したシャドーITの可能性が高いです。
ステップ2。一覧表に並べる(ここでAIが活躍する)
集めた情報を、1枚の表に並べます。この表づくりこそ、AIが一番役に立つ場面です。請求書のPDFや明細をコピーして、ChatGPTやClaude、Geminiといった生成AIに貼り付け、「次の情報を表に整理して。列はツール名・用途・月額・契約形態・利用者数」と指示するだけで、バラバラだった情報がきれいな一覧に整います。
ただし、ここで絶対に守ってほしいルールがあります。AIに渡していいのは「ツール名・用途・概算金額」など、漏れても致命傷にならない情報だけにすることです。顧客リスト、ログインIDやパスワード、契約書の生データといった機密情報は貼り付けないでください。AIに渡す情報は最小限にとどめる、というのが鉄則です。AI活用の前提となる社内ルールについては「AIセキュリティ」超入門の記事でも詳しく解説しているので、あわせて読んでみてください。
ステップ3。重複と「実は使っていない」を見つける
表ができたら、AIに「この一覧の中で機能が重複しているツールと、利用者数が少ないツールを指摘して」と聞いてみましょう。チャットツール、オンラインストレージ、タスク管理、Web会議。このあたりは部署ごとにバラバラに契約されていることが多く、AIに見比べてもらうと「実質同じ用途のツールが3つある」といった重複がすぐ浮かび上がります。
判断に迷ったとき用に、削減候補かどうかを見分けるチェックリストを用意しました。1つでも当てはまれば、解約や統合を検討する価値があります。
- 90日以上ログインがない:誰も使っていない可能性が高い。利用者に確認のうえ解約候補
- 機能が他のツールと8割かぶっている:どちらかに寄せれば、片方の月額がまるごと浮く
- 契約上限より実際の利用者がずっと少ない:プランのダウングレードで支払いを減らせる
- 契約者が退職・異動している:誰も管理していない「幽霊契約」。セキュリティ上も危険
- 無料版で足りる使い方しかしていない:有料の機能を一度も使っていないなら見直し対象
ステップ4。捨てる前に現場へ一声かける
削減候補が出たら、すぐ解約せず、必ず使っていそうな部署に一声かけます。「このツール、来月解約しようと思うけど困る人いますか」と聞くだけです。この一手間を飛ばすと、「実は毎月の請求書発行に使っていた」といった隠れた利用が後から噴出し、信頼を失います。解約の意思決定そのものは人がやる、という原則をここでも守ってください。
ステップ5。ルールを決めて「また増える」を防ぐ
最後に、棚卸しを一度きりで終わらせないための仕組みを作ります。新しくSaaSを契約するときは情シスに申請する、AIツールは会社が承認したものを使う、といった簡単な運用ルールを決めておくだけで、半年後にまた散らかるのを防げます。このルールの叩き台も、AIに「中小企業向けのSaaS利用申請ルールの草案を作って」と頼めば、たたき台が数分で出てきます。あとは自社に合わせて手直しするだけです。
もし手作業の表づくりに限界を感じたら、SaaS管理に特化したツールという選択肢もあります。たとえばマネーフォワード Adminaの公式ブログでは、SaaS棚卸しの考え方やシャドーAI対策の手法が詳しく紹介されています(2026年06月13日時点)。ただし、これらのツール導入はあくまで次の段階です。まずは無料の生成AIと表計算ソフトで手を動かしてみるのが、コストもかからず一番の近道です。
棚卸しでどこまで効果が出るか。コスト削減と運用の変化

では、実際に棚卸しをやるとどれくらい効果があるのか。気になりますよね。ここでは期待できる変化を、なるべく具体的にお伝えします。
まずコスト面です。一般的に、100名規模の企業がSaaSの棚卸しをすると、年間で120万〜360万円ほどの無駄なライセンス費用を削減できるとされています。月額に直すと10万〜30万円。内訳の多くは「重複ツール」と「使われていないアカウント」です。1ユーザー月1,500円のツールでも、使っていない席が20も30もあれば、それだけで月数万円が静かに溶けていきます。これを止めるだけで、効果は十分に体感できます。
次に、情シス自身の手間も減ります。棚卸しと同時にヘルプデスクの一次対応をAIに任せる仕組みを作った企業では、よくある問い合わせの4〜6割をAIが一次回答でさばき、情シスの割り込み対応が月10〜20時間ほど減ったという例が報告されています。棚卸しで作った「どのツールを誰が使っているか」の一覧は、こうしたFAQ自動化の土台にもなります。社内の情報を横断的に検索できる仕組みづくりは社内情報のAI図書館(RAG活用)の記事でも掘り下げているので参考にしてください。
成果を出している企業に共通しているのは、棚卸しを「コスト削減」だけで終わらせていない点です。浮いた予算と時間を、本当に必要な攻めのツールや、業務をシステム化する取り組みに回している。つまり、ムダを削るのはゴールではなく、次の一手のための原資づくりだと捉えているんです。この発想の切り替えができると、社内での説得もぐっと楽になります。
数字の見せ方がカギ。経営層に報告するときは「ツールを3つ解約しました」ではなく「年間◯◯万円の固定費を削減し、その分を◯◯に回せます」と、お金の流れで語ると一気に伝わります。
よくある失敗と回避法

ここからは、現場で実際によく見かける失敗を紹介します。先に知っておくだけで、同じ落とし穴を避けられます。代表的なものを4つ取り上げます。
失敗1。棚卸しせずにAIへ丸投げする
一番多いのが、何も準備せずにAIへ「うちのSaaS、整理して」と聞いてしまうパターンです。AIは自社の契約状況を知りませんから、当たり障りのない一般論しか返ってきません。結果、「それっぽいけど役に立たない答え」をもらって満足してしまい、肝心のムダは1円も削れません。回避法はシンプルで、先に人が請求書や管理画面から情報を集め、その実データをAIに渡すことです。AIは0から答えを作る道具ではなく、こちらが集めた材料を整える道具だと考えてください。
失敗2。機密情報をAIに貼ってしまう
作業を急ぐあまり、契約書のPDFをまるごとAIに貼ったり、顧客情報が含まれた明細をそのまま投げたりするのも危険な失敗です。社外のAIサービスに入力した情報が、どう扱われるか分からないまま外に出てしまうリスクがあります。回避法は、AIに渡す情報を「ツール名・用途・概算金額」に限定すること。漏れても困らない情報だけを使い、心配な場合は社員名やID部分を消してから貼る、というひと手間をルール化しておくと安心です。
失敗3。AIの判断を鵜呑みにして解約する
AIが「このツールは使われていないので解約候補です」と言ったから、確認せずに解約してしまう。これも痛い失敗です。AIは利用ログの数字だけを見て判断しているので、「月1回だが決算期に絶対必要」といった文脈までは分かりません。AIの判断はあくまで「候補出し」と割り切り、最終的に捨てるかどうかは、使っている部署に確認したうえで人が決める。この一手間が、業務を止めない最大の防御策です。
失敗4。情シスだけで進めて現場に嫌われる
管理部門が良かれと思って勝手にツールを統合した結果、現場から「使い慣れたものを取り上げられた」と反発される。これもよくある光景です。コスト削減は正しくても、進め方を間違えると協力が得られなくなります。回避法は、棚卸しの段階から現場を巻き込むこと。「このツール、最近使ってますか」と聞いて回るだけで、現場は「自分たちの意見を聞いてくれた」と感じ、解約への納得感がまるで変わります。AIで効率化できるのは作業であって、人間関係の調整は人がやる仕事だと心得ておきましょう。
現場で見えた落とし穴と、正直な妥協点
ここまで手順を紹介してきましたが、教科書通りにいかない部分も正直にお伝えします。ここを知っておくかどうかで、棚卸しが続くか、途中で挫折するかが分かれます。
まず、SaaS管理ツールを入れれば全部自動で解決する、という期待は持ちすぎないほうがいいです。確かに便利ですが、ツールが正しく動くには「どのカードでどのツールを契約しているか」といった初期設定を人が入れる必要があり、結局その下準備が一番大変だったりします。月額のかかる管理ツールを入れた結果、削減額より管理コストのほうが高くついた、という本末転倒も実際にあります。社員数が数十名規模なら、まずは無料のAIと表計算ソフトで十分回せる、というのが現場で見えた本音です。
もうひとつ、見落とされがちなのが「年契約のタイミング」です。月単位で解約できると思っていたら年契約で、解約を申し出ても次の更新月まで料金が発生し続ける。棚卸しで削減候補を見つけても、すぐにはお金が浮かないケースは珍しくありません。だからこそ、各ツールの契約更新月を一覧にメモしておき、更新の1〜2か月前に判断する、というスケジュール管理が地味に効いてきます。
そして一番難しいのが、シャドーITやシャドーAIへの向き合い方です。「無断で使っているツールを全部禁止する」という対応は、一見正しそうで、実は逆効果になりがちです。現場は不便になると隠れて使うようになり、かえって把握できなくなります。正解は「禁止」ではなく「把握して、良いものは公式に承認する」こと。社員が「このツール便利だから会社で契約してほしい」と言いやすい雰囲気を作るほうが、結果的にムダもリスクも減ります。
SaaS棚卸しは、一度やれば終わりではありません。契約は放っておくとまた増えます。半年に一度は同じ手順で見直す前提で、最初から「繰り返せる仕組み」として設計しておくのが、長い目で見て一番ラクです。ここを軽く見ると、1年後にまた同じ作業をゼロからやり直すことになります。
こうした「どこまで自分たちでやって、どこからツールやプロに頼るか」の線引きは、会社の規模や体制によって本当に変わります。判断に迷ったら、全体像を整理する考え方としてAIシステム化の成功ロードマップの記事も役に立つはずです。
よくある質問
SaaS棚卸しは情シスが1人でも本当にできますか
できます。社員数が数十名規模なら、請求書とカード明細を集め、生成AIで一覧表に整えるだけで大半は進みます。最初の1回に丸1日かければ、月額のムダはかなり見つかります。完璧を目指さず、まず一覧化から始めるのがコツです。
どのAIツールを使えばいいですか
ChatGPT、Claude、Geminiなど、普段使っている生成AIで十分です。表の整理や重複の洗い出しは、どれも問題なくこなせます。専用のSaaS管理ツールは、ツール数が多くて手作業が限界になってから検討すれば大丈夫です。
機密情報をAIに入れてしまうのが不安です
その不安は正しいです。AIに渡すのは「ツール名・用途・概算金額」だけにして、顧客情報やパスワード、契約書の生データは入れないでください。漏れても困らない情報に限定する、というルールを最初に決めておけば安全に使えます。
解約したいのに年契約で減らせません。どうすれば
各ツールの更新月を一覧にメモし、更新の1〜2か月前に解約判断をするのがおすすめです。今すぐ減らせなくても、次の更新で確実に止められます。来期の予算計画に「削減予定額」として織り込んでおくと社内も動かしやすいです。
まとめ。まずは1枚の一覧表から始めよう
SaaSのムダ削りは、特別な知識がなくても「集める・並べる・捨てる」の3ステップから始められます。AIは並べる作業と候補出しを高速化してくれる相棒で、最終判断は人がやる。この線引きさえ守れば、情シス1人でも月額のムダは確実に減らせます。まずは請求書を並べて、1枚の一覧表を作るところからやってみてください。
とはいえ、ここまで読んで「棚卸しの先にある仕組み化まで一気にやりたい」「自社だけで線引きを判断するのは難しそう」と感じた方もいると思います。そんなときは、コレットラボのAI業務システム化支援にお気軽にご相談ください。いきなり契約ではなく、まずは現状を一緒に整理するだけでも大丈夫です。AI業務システム化の詳細はこちらからお話を聞かせてください。
30分の無料相談
現状をお聞きし、優先順位を一緒に整理します。
予約する →