費用対効果の高い広告媒体の選び方|ROASで比べる手順と指標
この記事の要点
- 媒体の優劣は業界平均ではなく自社の粗利率で決まる
- 損益分岐ROASは「100÷粗利率」で一発で出せる
- 比較を壊す失敗は4つ。二重計上と早すぎる判断が最多
「広告費をかけているけれど、どの媒体が一番効いているのか分からない」。この悩みで検索された方に向けた記事です。
結論から言うと、広告媒体の費用対効果は「自社の粗利率から逆算した損益分岐ROAS」と比べて初めて判断できます。世の中の「広告 費用対効果 ランキング」をそのまま使っても、自社の答えは出ません。
この記事では、月10万〜100万円くらいの広告費を動かしている中小企業の担当者・経営者に向けて、指標の選び方、媒体を同じ物差しで並べる手順、インスタ広告やYouTube広告の評価の仕方までを解説します。読み終わる頃には、自社の媒体ランキング表を自分で作れる状態を目指します。なお、CPCやCVRといった用語そのものの意味はWeb広告の基本用語一覧|CPC・CVR・ROASをお金の流れで理解で整理していますので、そこが不安な方は先にお読みください。
Contents / 目次
結論。費用対効果は「損益分岐ROAS」を基準に並べ替える

広告媒体の費用対効果を比べるときの基準は、他社事例でもなく、自社の損益分岐ROASです。ここを決めないまま媒体を比べても、「ROAS300%は良いのか悪いのか」に永遠に答えが出ません。
ROAS(ロアス/Return On Advertising Spend)とは、投じた広告費に対してどれだけの売上を得られたかを示す指標です。
- 計算式:広告経由の売上 ÷ 広告費 × 100
- 単位:%で表す
- 具体例:10万円使って40万円売れたらROASは400%
損益分岐ROASとは、その媒体が赤字か黒字かの境目になるROASのことです。求め方はとてもシンプルで、100 ÷ 粗利率で出せます。粗利率40%の商品なら、100÷0.4=250%。つまりROAS250%を割り込んだ瞬間、その広告は売れば売るほど赤字になります。
粗利率ごとの目安を表にすると、自社がどのラインで戦っているかが一目で分かります。
| 粗利率 | 損益分岐ROAS | 利益を残す目標ROASの例 | 広告費1万円あたり必要な売上 |
|---|---|---|---|
| 30% | 約333% | 400〜450% | 約3.3万円 |
| 40% | 250% | 300〜350% | 2.5万円 |
| 50% | 200% | 240〜280% | 2.0万円 |
| 60% | 約167% | 200〜230% | 約1.7万円 |
| 70% | 約143% | 170〜200% | 約1.4万円 |
※目標ROASの列は、損益分岐に「人件費・制作費・決済手数料などの見えないコスト分の余白」を乗せた例です。乗せる幅は自社のコスト構造によって大きく変わるので、必ず自社の数字で計算してください。
ポイント。この表を見ると分かる通り、粗利率が低い商売ほど必要なROASは跳ね上がります。「ROAS300%だから合格」と言えるのは粗利率が40%以上の会社だけです。同じ数字でも会社によって評価が真逆になる、これが他社の数字を目標にしてはいけない理由です。
やるべきことを整理すると、次の3つに集約されます。
- 基準を決める:粗利率から損益分岐ROASを出し、そこに余白を乗せた目標ROASを設定する
- 物差しを揃える:集計期間・コンバージョンの定義・広告費に含める範囲を全媒体で統一する
- 並べ替えルールを決める:目標ROASに対する達成率で媒体を並べ、増額・維持・縮小を機械的に判断する
広告の費用対効果の指標。ROASとROI・CPAはこう使い分ける
費用対効果を測る指標は1つではありません。ROAS・ROI・CPAは目的が違うので、3つ同時に見て、判断するときだけ主役を1つ決めるのが実務のやり方です。
ざっくり言うと、ROASは「売上の効率」、ROIは「利益の効率」、CPAは「1件あたりの単価」を見る指標です。売上規模を追いたいときはROAS、利益を守りたいときはROI、リード獲得型のビジネスならCPAが主役になります。
なお、ROIの計算式は文献や媒体によって書き方が分かれます。「(利益 − 投資額)÷ 投資額」で表すこともあれば、広告運用の現場では下の表のように粗利ベースで計算することもあります。どの式を使うかより、社内で1つの式に決めて、全媒体に同じ式を適用することが大事です。式が混ざると比較になりません。
| 指標 | 計算式 | 何が分かるか | 主役にすべき場面 | 弱点 |
|---|---|---|---|---|
| ROAS | 広告経由売上 ÷ 広告費 × 100 | 売上を生む効率 | EC・通販・物販 | 原価を無視するので赤字に気づけない |
| ROI(広告費ベースの例) | (売上×粗利率 − 広告費)÷ 広告費 × 100 | 利益が残ったか | 粗利率が商品ごとに違う会社 | 粗利率が正確でないと数字が狂う |
| CPA | 広告費 ÷ コンバージョン数 | 1件獲得の単価 | BtoB・問い合わせ型・来店型 | リードの質を反映しない |
| CPO | 広告費 ÷ 受注件数 | 受注1件の単価 | 商談を挟む商材 | 受注データの連携が必要 |
| LTV | 1顧客の生涯売上(または粗利) | 初回赤字を許容できるか | サブスク・リピート商材 | 算出に半年〜1年の実績が要る |
中小企業でよく見かけるのが、ROASだけを見て「この媒体は優秀」と判断してしまうケースです。値引きクーポン経由の売上や、返品率の高い商品が混ざっていると、ROASは高いのに手元にお金が残っていない、という状態が普通に起こります。
だからROASで媒体を並べたあと、必ずROIで検算する。この二段構えにしておくと、赤字媒体に予算を寄せる事故を防げます。
BtoBで売上が計上されるのが半年後、というビジネスではROASは実質的に測れません。その場合はCPAではなく「商談化CPA」「受注CPO」を主役にしてください。詳しくは後半の落とし穴の章で解説します。
ROASで媒体を比べる手順。スプレッドシートで自社版ランキングを作る

ここが記事の主役です。次の6ステップで、自社の広告媒体ランキング表が作れます。
ステップ1。まず「1件売れたら、いくら利益が残るか」を確定させる
最初にやるのは広告の設定ではなく、電卓です。主力商品・サービスの平均単価と粗利率を出してください。
粗利率=(売上 − 原価)÷ 売上。ここで言う原価には、仕入れ・材料費・外注費・決済手数料・送料まで入れます。ECなら送料無料キャンペーンの負担分、店舗なら施術に使う消耗品まで含めると精度が上がります。
商品が複数あるなら、直近3か月の売れ筋上位3つの加重平均で構いません。ここを「だいたい5割くらい」で済ませると、以降の全部の判断がずれます。
ステップ2。損益分岐ROASと目標ROASを決める
粗利率が出たら、100÷粗利率で損益分岐ROASを計算します。粗利率45%なら約222%です。
そこに、広告費以外にかかっているコストの分だけ余白を乗せて目標ROASにします。ここで乗せる幅は推測せず、自社の直近の実績から計算してください。手順は次の3つです。
- コストを合計する:代理店手数料・制作費・広告に関わる社内担当者の人件費を足す
- 広告費に対する比率を出す:その合計が広告費の何%にあたるかを計算する
- 損益分岐に乗せる:損益分岐ROAS × (1+その比率)で目標ROASにする
仮に合計が広告費の25%だったなら、損益分岐ROAS222%×1.25=約278%。切りよく280%を目標ROASにする、という決め方をします。
ステップ3。全媒体の数字を同じ物差しで集める
比較を壊す最大の原因がここです。媒体ごとに管理画面の集計ルールが違うため、各画面の数字をそのまま横に並べると比較になりません。次の4点を必ず統一してください。
- 期間:暦月ではなく直近28日など、曜日構成が同じになる期間で揃える
- 売上の出どころ:各広告管理画面の自己申告値ではなく、GA4または自社の受注データを正とする
- コンバージョンの定義:何をもって1件とするか(フォーム完了のみ、電話は除く等)を全媒体で同じにする
- 広告費の範囲:媒体費だけか、手数料・制作費まで含めるかを決めて全媒体に同じ扱いを適用する
特に2つ目が重要です。管理画面のCV数を単純に足し上げると、実際の受注件数と合わないことがあります。集計のルールは媒体ごとに違い、更新もされるので、自社が使っている媒体の計上ルールは公式ヘルプで確認してください。そのうえで、Web広告の効果測定のやり方|3ステップで始めるでも触れているとおり、比較の土台はGA4か自社データに一本化するのが鉄則です。
ステップ4。スプレッドシートに計算式を入れて自動で並べ替える
ここまで揃えば、あとは表にするだけです。Googleスプレッドシートに以下の列を作り、2行目以降に媒体を並べてください。計算式はそのままコピーして使えます。
# 1行目のヘッダー(A1から順に入力)
A: 媒体名 / B: 広告費 / C: CV数 / D: 広告経由売上 / E: 粗利率(0.45のような小数)
F: ROAS(%) / G: CPA / H: 広告ROI(%) / I: 損益分岐ROAS(%) / J: 判定
# 2行目に入れる計算式(下方向にコピーして使う)
F2 =IFERROR(D2/B2*100,"")
G2 =IFERROR(B2/C2,"")
H2 =IFERROR((D2*E2-B2)/B2*100,"")
I2 =IFERROR(1/E2*100,"")
J2 =IF(F2="","",IF(F2>=I2*1.25,"増額候補",IF(F2>=I2,"維持","縮小・改善")))
# [ここを自社の値に変更]
# ・E列の粗利率は媒体ごとに商品構成が違うなら媒体別に入れる
# ・J列の 1.25 は目標ROASの余白倍率。ステップ2で出した自社の値に置き換える
# ・CV数が少ない媒体は、判定列を信用せず「様子見」として扱う
あとはJ列(判定)でフィルタをかければ、増額候補・維持・縮小の3グループに媒体が自動で分かれます。これがあなたの会社だけの「広告 費用対効果 ランキング」です。
ステップ5。AIに月次の比較サマリーを作らせて、判断だけ人がやる
表ができたら、読み解きはAIに手伝わせると早いです。数字の集計と異常値の指摘はAIが得意な作業で、逆に「この媒体を止めるか」の意思決定は人がやるべき領域です。ここの線引きをはっきりさせると、月次の運用会議が一気に軽くなります。
やり方は、ステップ4の表をCSVで書き出して、AIに渡すだけです。使うAIは普段お使いのもので構いません。
渡すプロンプトは作り込まなくて構いません。いまのAIは、ざっくり頼めば自分で聞き返してくれます。出発点はこの程度で十分です。
あなたは広告運用のアナリストです。
添付のCSVは当社の媒体別の広告実績です(列=媒体名/広告費/CV数/売上/粗利率/ROAS/CPA/ROI)。
前提
・目標ROASは[280]% ・損益分岐ROASは[222]%
・商材は[業種・商品名を入力]、1件あたり平均単価は[金額を入力]円
やってほしいこと
1. 目標ROASに対する達成率で媒体を並べ替えて表にする
2. 判断を誤りやすい媒体(CV数が少なすぎる、前月から急変している等)を指摘する
3. 予算を付け替えるなら、どこからどこへいくら動かすかを2案出す
4. 各案のリスクも書く
不足している情報があれば、先に質問してください。
大事なのは、出てきた答えをそのまま実行しないことです。人が確認すべきポイントは決まっています。
- 件数の裏取り:AIが根拠にしたCV数が、実際の受注リストと合っているか
- 季節要因:前月比の変化が施策の効果か、繁忙期・閑散期の影響かをAIは知らない
- リードの質:CPAが安い媒体からのリードが、本当に商談になっているか
- 止めた後の影響:その媒体が指名検索や来店の入り口になっていないか
この4点は社内の人間しか判断できません。AIに丸投げできるのは集計と要約まで、と割り切るのが安全です。
ステップ6。予算の付け替えルールを、動かす前に決めておく
最後に、判定結果をどう予算に反映するかのルールを先に決めます。感覚で動かすと検証にならないためです。以下は運用で扱いやすい形の一例なので、自社の予算規模とCV件数に合わせて数字を決めてください。
- 変更幅:1回の増減幅を先に決めて守る。一気に倍にすると学習が崩れて数字が読めなくなる
- 観察期間:変更後は、判断できるだけのCV件数が貯まるまで次の変更をしない
- 撤退ライン:2か月連続で損益分岐ROASを下回り、改善の打ち手を2つ試して変化がなければ停止
- 下限:データが貯まらない金額まで分散させない。1媒体あたりの下限額を決めておく
媒体別の費用対効果の見方。ランキングと平均値の正しい使い方

「広告 費用対効果 ランキング」で上位に出てくる媒体一覧は、参考程度に留めてください。理由ははっきりしていて、媒体の費用対効果は商材・単価・地域・季節で入れ替わるため、普遍的な順位が存在しないからです。
同じように「広告 費用対効果 平均」も扱いに注意が要ります。他社の数字を集めた平均値は、集計対象の企業の粗利率がバラバラである以上、自社の合否判定には使えません。目標は粗利率から逆算する。これが実務的な使い方です。
そのうえで、媒体タイプごとに「何を期待して出すか」は整理できます。役割が違う媒体を同じROASで殴り合わせると、判断を間違えます。
| 媒体タイプ | 期待する役割 | 主役にする指標 | 費用対効果が出やすい条件 |
|---|---|---|---|
| 検索広告(Google・Yahoo!) | 今すぐ客の刈り取り | ROAS・CPA | 検索されている悩み・商品名がある |
| ショッピング広告 | 商品比較段階の獲得 | ROAS | 商品データが整備されたEC |
| SNS広告(Instagram・Facebook) | 需要の掘り起こし | ROAS+新規顧客比率 | 画像・動画で価値が伝わる商材 |
| 動画広告(YouTube) | 認知・比較検討の後押し | 指名検索数・サイト来訪の増加 | 説明が必要/単価が高い商材 |
| リターゲティング | 取りこぼしの回収 | ROAS(ただし過大評価に注意) | 月間のサイト訪問が一定数ある |
インスタ広告の費用対効果はどう見るか
インスタ広告(Instagram広告)の費用対効果は、ROASだけでなく「新規顧客の比率」とセットで見るのが正解です。理由は、リターゲティング配信が混ざるとROASが良く見えるためです。すでに買う気だった人に再表示して獲得したCVも、同じROASの数字として計上されます。
判断を正しくするには、新規獲得を狙う配信と、既存の訪問者に再接触する配信を、別々のキャンペーンに分けて作ります。1つのキャンペーンに混ぜないこと。あとは自社で分かる名前を付けて管理すれば、集計時に切り分けられます。実際にどのターゲティング設定が使えるかは更新されるため、配信設定の項目は利用中の管理画面で確認してください。
そのうえで、新規向けキャンペーンだけを取り出したROASが損益分岐を超えているなら、その媒体は本当に売上を増やしています。逆に、全体ROASは高いのに新規向けだけ見ると赤字、というケースは実際によくあります。
もう一つの注意点は、クリエイティブの消耗スピードです。同じ画像・動画を配信し続けると反応が落ちるため、月に数本の差し替えが前提になります。この制作コストを広告費に含めずに計算していると、実際の費用対効果より良い数字が出てしまいます。Meta広告側の予算の組み方はMeta広告の予算配分と配信スケジュールの考え方で詳しく整理しています。
YouTube広告の費用対効果はどう見るか
YouTube広告の費用対効果を、そのままROASで判断するのはおすすめしません。動画は「見た直後に買う」より「見て名前を覚えて、後から検索して買う」という動き方をするため、最後のクリックだけを評価する集計では成果がほぼゼロに見えるからです。
代わりに見るべきは次の3つです。配信期間中と停止期間で数字を比べると、貢献が見えてきます。
- 指名検索数の変化:会社名・商品名での検索数とクリック数が増えているか
- サイト全体の新規セッション:他媒体を変えていない期間で自然流入が伸びているか
- 他媒体のCVRの変化:検索広告のCVRが上がっていれば、動画が下地を作っている可能性がある
現実的な進め方としては、まず検索広告で刈り取りの型を作り、そこが目標ROASを安定して超えてから、需要を増やす目的でYouTubeを足す順番が失敗しにくいです。少額予算のうちから動画に手を出すと、判断できるだけのデータが貯まる前に予算が尽きます。予算規模ごとの考え方は月10万円のWeb広告で成果は出せる|媒体選びと予算配分の要点もあわせてご覧ください。
きちんと比べられるようになると、何が変わるか
媒体を同じ物差しで比べられるようになると、まず「増やす判断」が怖くなくなります。これが一番大きい変化です。
費用対効果が見えていない会社の広告費は、だいたい横ばいのまま何年も続きます。成果が分からないから増やせず、かといって止めるのも怖いからそのまま、という状態です。逆に、目標ROASを超えている媒体が特定できていれば、そこに少しずつ足していくだけで売上は積み上がります。
もう一つは、無駄の発見です。実務でよく起こるのは、目標ROASを大きく下回ったまま放置されていたキャンペーンに、少なくない予算が流れ続けているというパターンです。ここを止めて勝ち筋に寄せるだけで、広告費を1円も増やさずに全体のROASが改善します。
この記事の考え方を実践する会社に共通しているのは、次の3点です。
- 判断の頻度が決まっている:月1回、同じフォーマットの表で見る。思いつきで見に行かない
- 数字の出どころが一つ:売上はGA4か自社の受注データ、と決めて動かさない
- 止める基準が先にある:撤退ラインを決めてから配信を始めるので、感情で延命しない
他社の改善事例を見るときは、そこで出てくる改善率をそのまま自社の目標にしないでください。元の状態がどれだけ悪かったかで倍率はいくらでも変わるからです。参考にすべきは数字そのものではなく、「どこを直したらどう動いたか」という因果のほうです。
現場での実感。広告の良し悪しは媒体では決まりません、粗利で決まります。粗利率が違う2社が同じ媒体に同じ額を出しても、片方は黒字、片方は赤字になる。この当たり前を最初に確認しておくだけで、無駄な媒体探しがなくなります。
よくある失敗と回避法

ここからは、実際の現場でよく見かける失敗を4つ挙げます。どれも一見それらしく運用できているように見えるので、気づきにくいのが厄介なところです。
失敗1。ROASだけを追いかけて、利益が残らない
起きる状況としては、値引きや送料無料を強めた結果、ROASが目に見えて改善したケースです。管理画面の数字は良くなるので、担当者は成功したと判断します。
ところが決算を見ると利益が減っている。ROASは売上ベースの指標なので、粗利が削れたことを一切教えてくれないからです。
防ぎ方はシンプルで、ステップ4の表にROI列を必ず作ることです。ROASが伸びているのにROIが伸びていない、あるいは下がっているなら、値引きや原価の上昇で粗利が削れていないかを確認してください。
失敗2。各媒体の管理画面のCV数を、そのまま足して比べている
たとえば、Google広告の管理画面で30件、Meta広告で25件、合計55件と出ているのに、実際の受注は38件しかない。数字は説明のための例ですが、この形のズレは現場でよく起こります。各媒体がどこまでを自社の成果として計上するかは媒体ごとの仕様で決まり、更新もされるので、利用中の媒体の公式ヘルプで現在の計上ルールを確認してください。
この状態のまま媒体を比べると、後追いのリターゲティング配信が実力以上に優秀に見えます。その結果、需要を新しく作っている媒体の予算を削って刈り取り媒体に寄せる、という判断につながりやすくなります。
防ぎ方は、比較の土台をGA4か自社の受注データに一本化すること。そして新規向けと再接触向けを分けて集計することです。計測そのものが怪しい場合は、まずフォーム送信をコンバージョン計測する設定手順|GA4とGTMで土台を直してから比較に進んでください。
失敗3。数字が貯まる前に勝敗をつけてしまう
配信開始から1週間、CV3件でROASが低いから停止。これは非常によく起こります。ただ、CVが数件しかない段階の数字は、たまたま1件成約したかどうかで倍以上ぶれます。判断材料としては使えません。
評価を下す前に、まず「何件貯まったら判断するか」を自社で決めてください。件数が少ないうちは表に「観察中」というラベルを付けておき、判定列を見ないようにします。
逆に、CVが数週間で数件しか出ない予算規模なら、そもそも媒体を分散させすぎです。1媒体に集中させてデータを貯めるほうが早く答えが出ます。
失敗4。他社のROAS平均を、自社の目標にしてしまう
「うちの業界のROAS平均はこれくらいらしいので、それを目標にします」。この決め方は危険です。平均を出している母集団の粗利率が分からない以上、その数字が自社にとって黒字なのか赤字なのかが判定できません。
粗利率70%のサービス業と粗利率25%の物販が同じ平均に含まれていれば、その平均値はどちらの会社にとっても意味を持ちません。
防ぎ方は、目標は必ず自社の粗利率から逆算すること。他社の数字は「桁が違いすぎないか」を確認するためだけに使います。
現場の妥協点。自動配信で「媒体比較」は難しくなっている
ここまで手順を書いてきましたが、正直にお伝えすると、媒体ごとのきれいな比較は年々やりにくくなっています。配信先や配信面の選び方をプラットフォーム側に任せる設定が増えてきたためです。
自動化された配信では、1つのキャンペーンの中でどこまでが配信対象になるかは、各社の仕様と更新によって変わります。実際にどう配信されるかは、利用中の媒体の公式ヘルプで現在の仕様を確認してください。そのうえで言えるのは、従来のように「検索広告 対 SNS広告」で比べる前提そのものが崩れてきているということです。
この現実に対して、現場でとっている妥協策は次のとおりです。
- 比較単位を媒体から役割に変える:「新規獲得のキャンペーン群」「再接触のキャンペーン群」で束ねて比較する
- 自動配信は必ず単独で走らせない:比較対象として、手動で管理できる検索キャンペーンを1本残しておく
- 中身を確認してから任せる:自社の管理画面で設定できる範囲を確認し、任せきりにしない
設定できる項目や単位はプラットフォーム側の更新で変わります。実際に触る前に、利用中の媒体の公式ヘルプで現在の仕様を確認してから設定してください。AIに任せる範囲と、人が手綱を握る範囲の線引きがここで決まります。
BtoBはROASを諦めて、別の指標に置き換えるほうが早い
受注までに3か月〜半年かかるBtoBでは、ROASでの媒体比較は事実上できません。広告を出した月の売上に、その広告の成果は載らないからです。
ここで現場が取る方法は、指標を前倒しすることです。具体的には「問い合わせ→商談化→受注」の各段階の率を出しておき、商談化1件あたりのコストで媒体を比べます。受注率が分かっていれば、商談化CPAから逆算して利益が出る上限も決められます。
この計算は、媒体側の機能を使わなくても社内のデータだけで完結します。問い合わせ1件ごとに「どの媒体から来て、商談になったか、受注したか」をスプレッドシートに残しておく。この記録さえあれば、媒体別の商談化CPAも受注CPOも自分で計算できます。まずはここから始めるのが確実です。
見落としがちなコストと、外注する場合の見極め
費用対効果の計算でいちばん抜けやすいのが、媒体費以外のコストです。代理店手数料、バナーや動画の制作費、LPの改修費、そして社内担当者の時間。これらを入れずに計算したROASは、実態より良い数字が出ます。どれくらい甘くなるかは会社ごとのコスト構造次第なので、ステップ2で出した自社の数字で確かめてください。
外注を検討する場合の判断軸も率直に書いておきます。判断は金額の相場ではなく、自社の数字でやってください。手数料や最低契約金額を見積もりで確認し、それを広告費に足したうえで目標ROASを超えられるかを計算する。超えられないなら、計測の設定だけプロに整えてもらい、日々の運用は自社で回すほうが利益が残ります。
逆に、次のような状態なら、時間を買う意味で外注の価値が出ます。
- 媒体が3つ以上に増えた:集計と検証にかかる時間が、自社で回せる範囲を超えている
- 自動配信の中身が読めない:どこに配信されて成果が出ているのかを追い切れない
- 計測が壊れている:そもそも数字が信用できず、比較の土台から直す必要がある
どこを任せてどこを持つかの分け方は内製化と外注のハイブリッド戦略|Web広告の役割分担5モデルで5パターンに整理しています。
効果測定ツールの導入は、広告費がある程度の規模になってからで十分です。広告費に対してツール費の比率が高いと、それだけでROIが崩れます。まずはGA4とスプレッドシートで運用し、手作業の集計が苦しくなってから検討してください。
よくある質問
広告の費用対効果の平均って、結局どれくらいが普通なの?
他社の平均値を自社の目標にはしないでください。粗利率が違えば、同じROASでも黒字にも赤字にもなるためです。粗利率40%なら損益分岐は250%、70%なら約143%。まず自社の粗利率から逆算した数字を基準にしましょう。
インスタ広告は、いくらから試せば費用対効果が判断できますか。
判断に必要なのは金額よりコンバージョン件数です。必要な予算は「判断に使いたいCV件数 × 想定CPA」で逆算してください。想定CPAは業種や商材で大きく変わるので、自社の実績値か、少額でテスト配信して出した数字を使います。それが厳しい場合は媒体を絞り、1つに集中させたほうが早く答えが出ます。
YouTube広告は少額でも意味がありますか。
直接の売上を期待するなら、少額では厳しいです。動画は指名検索や再訪を通じて後から効く媒体なので、成果の確認に数か月かかります。まず検索広告で刈り取りの型を作り、そこが目標ROASを安定して超えてから追加する順番がおすすめです。
目標ROASに届かない媒体は、すぐ止めるべきですか。
すぐには止めません。判断は2か月連続で損益分岐ROASを下回り、かつ改善策を2つ試して変化がなかった時点にしてください。1か月目の数字は季節要因やクリエイティブの消耗でぶれます。止める前に、LPと広告文の言っていることが一致しているかを確認しましょう。
計算した数字が正しいか、どこで検算できますか。
広告経由売上の合計と、会計上の売上を突き合わせてください。広告側の合計が実売上を超えていたら、媒体をまたいだ二重計上が起きています。この場合はGA4か受注データを正として、各媒体の管理画面の数値は参考値に格下げしてください。
まずは粗利率だけ、今日確認してみてください
今日できる最初の一歩は、電卓を叩くことです。主力商品の粗利率を出し、100÷粗利率で損益分岐ROASを計算する。ここまでなら1分で終わります。その数字と、いま出している広告のROASを見比べるだけで、続けるべき媒体かどうかの見当がつきます。
そのうえで「そもそも計測が合っているか怪しい」と感じた方は、Google広告の無駄をなくす5つの見直しポイント|CV計測が最優先を先に読んでおくと、比較の土台から直せます。
数字を並べてみたけれど自社の判断に自信が持てない、複数媒体の集計に毎月時間を取られている、という場合は一度お話を聞かせてください。株式会社コレットラボ(大分・福岡を拠点にWeb集客とAI業務システム化を支援)では、いきなり運用を引き受けるのではなく、現状の計測と数字の整理から一緒に確認しています。契約前に状況を整理するだけでも構いませんので、気軽にご相談ください。
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