プライバシーポリシーをAIで下書き。法務ページを整える手順
この記事の要点
- 法務ページの「型」は決まっているのでAI下書きと相性が良い
- AIに渡すのは自社の事実情報、AIに任せるのは文章化と抜け漏れチェック
- 公開前の最終確認は人がやる。複雑な取引は専門家に相談する
「プライバシーポリシーと特定商取引法に基づく表記、作らなきゃいけないのは分かってるけど後回しになっている」。中小企業のサイト運営でいちばん放置されがちなのが、この法務ページです。
この記事では、プライバシーポリシーと特定商取引法に基づく表記を、AIに下書きさせて効率よく整える手順を解説します。何をAIに渡し、出てきた文章のどこを人が確認し、どこで専門家に相談すべきか。現場目線で具体的にお伝えします。
書いているのは、株式会社コレットラボ(大分・福岡のAI業務システム化支援)代表の出口宣佳です。中小企業のサイト制作とAI導入の両方を伴走してきた立場から、再現できる道筋にしぼってまとめました。
Contents / 目次
結論。法務ページはAI下書きと相性が良い。ただし最終確認は人がやる

先に結論をお伝えします。プライバシーポリシーや特定商取引法に基づく表記のような法務ページは、AIに下書きさせるのが効率的です。理由は、これらのページが「書くべき項目の型」がほぼ決まっているからです。
つまり、ゼロから文章をひねり出す作業ではなく、決まった枠に自社の事実を当てはめていく作業です。この「型に沿って文章化する」「抜けている項目を指摘する」という仕事は、いまのAIがとても得意とする領域です。
役割分担がすべて。AIに任せるのは「文章化」と「抜け漏れチェック」、人がやるのは「事実の提供」と「最終確認」です。この線引きを守れば、品質を落とさず時間だけ大きく短縮できます。
ここで大事なのは、AIに「考えさせない」ことです。法律の解釈や、自社の取引が法律のどれに当たるかという判断をAIに丸投げすると、もっともらしいけれど誤った内容が混ざります。AIは事実を渡せば整えるツールであって、判断を代わりにしてくれる相手ではありません。
下の表で、2つの法務ページの違いと、AIに任せられる範囲を整理しました。
| 項目 | プライバシーポリシー | 特定商取引法に基づく表記 |
|---|---|---|
| 主に関係する法律 | 個人情報保護法 | 特定商取引法 |
| 必要になる主な場面 | 問い合わせフォーム・会員登録・アクセス解析など個人情報を扱うサイト全般 | 通信販売など、ネット上で商品やサービスを販売・申込受付するサイト |
| 書く内容の性質 | 個人情報の扱い方の方針 | 取引条件と事業者情報の開示 |
| AIに任せられる範囲 | 項目の網羅・文章化・読みやすい整形 | 項目の網羅・記載漏れの指摘・文面の体裁 |
| 人がやるべき範囲 | 記載する事実の確定・最終確認 | 金額や返品条件など事実の確定・最終確認 |
なお、自社のサイトに特定商取引法に基づく表記が必要かどうかは、扱う商品やサービス、販売の形態によって変わります。物販やデジタル商品の販売、サブスクの申込受付などをサイト上で行うなら、原則として表記が必要だと考えてください。判断に迷うときは、消費者庁の公式情報や専門家に確認するのが安全です。
AIで法務ページを下書きする手順。4ステップで進める

ここからは実際の進め方です。手順は大きく4つに分かれます。まず全体像を図で示します。
ステップ1。AIに渡す「自社の事実」を先に集める
最初にやるのは、AIへの入力ではありません。自社の事実情報を手元にそろえることです。ここが下書きの質を決めます。AIは渡された材料以上のことは書けないので、材料が曖昧だと出力も曖昧になります。
プライバシーポリシー用に集めておく情報は、次のとおりです。
- 事業者情報:会社名、所在地、代表者名、問い合わせ窓口の連絡先
- 取得する個人情報:氏名、メールアドレス、電話番号、フォームで集める項目など
- 利用目的:問い合わせ対応、見積もり、メルマガ配信など、何のために使うか
- 外部ツール:Googleアナリティクスなどのアクセス解析、広告タグ、予約システムなど
- 第三者提供の有無:外部に情報を渡す場合があるか、業務委託先に渡すか
特定商取引法に基づく表記用には、取引に関する事実をそろえます。これらは事実そのものなので、必ず自社で正確な値を確定させてください。集めておく項目は、次のとおりです。
- 販売事業者名
- 所在地
- 電話番号
- 責任者名
- 販売価格
- 送料などの追加費用
- 支払方法と支払時期
- 商品の引渡し時期
- 返品やキャンセルの条件
ステップ2。AIに「型」と「事実」を渡して下書きさせる
事実がそろったら、AIに下書きを作らせます。ここでのコツは、長く作り込んだプロンプトを用意しないことです。いまのAIは、ざっくり頼めば自分で整えてくれます。まずは短いたたき台を渡し、対話しながら自社の状況に合わせて詰めていくのが効率的です。
たたき台として渡すプロンプトは、次の程度で十分です。
あなたは中小企業のサイト運営を支援する担当者です。
以下の事実情報をもとに、自社サイトに掲載する
プライバシーポリシーの下書きを作ってください。
【事業者情報】
・会社名:[会社名を入力]
・所在地:[住所を入力]
・問い合わせ窓口:[メール/電話を入力]
【取得する個人情報と利用目的】
・[フォームで集める項目と、その利用目的を入力]
【使っている外部ツール】
・[アクセス解析や広告タグなどを入力]
条件:
・専門用語はできるだけ平易な日本語にする
・項目の抜けがあれば「不足している可能性がある項目」として末尾に列挙する
・事実が不明な箇所は[要確認]と明記し、勝手に埋めない
このプロンプトのポイントは、最後の3行です。「不明な箇所は勝手に埋めず[要確認]と書かせる」よう指示しておくと、AIが事実を創作するのを防げます。出力に[要確認]が並んでいたら、そこは人が事実を入れる箇所だと分かります。
特定商取引法に基づく表記も同じ要領で、事実を渡して整形させます。ただし金額・送料・返品条件のような数字は、AIに考えさせず、必ず自社で確定した値だけを渡してください。
ステップ3。出てきた下書きを人が確認する
ここがいちばん価値のある工程です。AIの下書きは「たたき台」であって、完成品ではありません。次の観点で人が点検します。
- 事実は合っているか:会社名、住所、連絡先、金額、返品条件などが自社の実態と一致しているか
- 勝手に足された内容はないか:渡していない条項や、実態にない記述が混ざっていないか
- 項目の抜けはないか:AIが末尾に挙げた「不足している可能性がある項目」を一つずつ検討したか
- 自社のサイトと矛盾しないか:実際に使っているツールや集めている情報と、文面が食い違っていないか
特に注意したいのが、AIが「ハルシネーション」を起こすことです。かんたんに言うと、AIがもっともらしい嘘を作ってしまう現象です。法律名や条文番号、ありもしない条項を、自信ありげに書いてくることがあります。だから条文番号や法律の引用が出てきたら、そのまま信じず、書かれている内容が自社の実態と合っているかという視点で確認してください。
ステップ4。日付を入れて公開し、更新のきっかけを決めておく
確認が終わったら公開します。このとき、ページの末尾に「制定日」や「最終改定日」を必ず入れてください。法務ページは一度作って終わりではなく、事業内容や法律の変更に合わせて見直すものだからです。日付があると、いつ時点の内容かが読み手にも自社にも分かります。
あわせて、見直すきっかけを決めておくと放置を防げます。たとえば次のようなタイミングで法務ページを見直す、と社内ルールにしておくやり方です。
- 新しいフォームを追加したとき
- 扱う商品を増やしたとき
- 外部ツールを入れ替えたとき
AIで下書きすると何が変わるか。成果のイメージ

AIで下書きすると、いちばん変わるのは「着手のハードル」です。これまで法務ページが後回しになっていた最大の理由は、白紙から書き始めるのが重かったからです。AIがたたき台を出してくれれば、人の仕事は「確認と修正」に変わります。ゼロから書くより、目の前の文章を直すほうがはるかに進めやすいですよね。
成果が出ている進め方には共通点があります。それは、最初から完璧を狙わず、まず下書きを公開できる状態まで一気に持っていくことです。
法務ページが「ない」状態と「とりあえず整っている」状態では、サイトの信頼性が大きく違います。問い合わせフォームの近くにプライバシーポリシーへのリンクがあるだけでも、訪問者は安心して情報を入力できます。
ねらいは時短ではなく着手。AI下書きの本当の価値は、作業時間を縮めること以上に、後回しにしていた法務ページに今日から手をつけられることにあります。
なお、フォームから問い合わせを増やす設計とあわせて整えると効果的です。入力項目の絞り込みについては問い合わせフォームを5項目に減らすBtoBの設計と問い直しでも具体的に解説しています。フォームで集める項目が決まれば、プライバシーポリシーに書く「取得する個人情報」もそのまま固まります。
よくある失敗と回避法。法務ページのAI下書きでつまずく3つ

ここでは、AIで法務ページを作るときに現場でよく見かける失敗を3つ紹介します。どれも「こういう状況で起きる」と分かっていれば防げます。
失敗1。AIの下書きをそのままコピペして公開してしまう
いちばん多いのがこれです。AIが整った文章を出してくるので、つい確認せずそのまま貼り付けてしまう。すると、自社が実際には集めていない情報の記述が残っていたり、使っていないツールの条項が入っていたりします。文面と実態がずれた法務ページは、むしろ信頼を損ないます。
回避策はシンプルで、ステップ3の確認を必ず挟むことです。AIの出力は下書きだと最初から決めておき、「事実と一致しているか」を一項目ずつ目で追ってから公開してください。
失敗2。一般公開のAIに、自社の機密情報を入れてしまう
下書きを作るために、顧客リストや未公開の取引条件、社内資料をそのままAIに貼り付けてしまうケースです。ツールの設定によっては、入力した内容が学習などに使われる可能性があり、機密情報の扱いとしてリスクがあります。
回避策は2つです。まず、法務ページの下書きに必要なのは「公開する前提の情報」がほとんどなので、そもそも社内機密を入れる必要はありません。そのうえで、業務でAIを使うなら、データの取り扱い方針を確認したうえで、入力してよい情報とダメな情報を社内で決めておくのが安全です。
無料の一般向けAIに、顧客の個人情報や未公開の契約内容を入力するのは避けてください。下書き作りに必要なのは公開予定の情報だけです。
失敗3。複雑な取引なのに、AIだけで完結させてしまう
定期購入(サブスク)、海外への販売、個人情報を多く扱うサービスなど、取引が複雑な場合に起こります。こうしたケースは、書くべき内容も注意点も増え、AIの一般的な下書きだけでは抜けや誤りが生じやすくなります。AIは過去の一般的なパターンをもとに文章を作るので、自社固有の事情や最新の法改正までは反映しきれません。
回避策は、難しい取引ほど専門家の確認を惜しまないことです。AIで下書きを作って論点を洗い出すところまでをAIに任せ、その下書きを持って専門家に相談すれば、ゼロから依頼するより打ち合わせもスムーズで、費用も抑えやすくなります。
使う側の落とし穴。AI下書きで「やってはいけない」線引き
ここまで読んで「AIに任せれば法務ページはすぐ整う」と感じたかもしれません。ただ、現場を見てきた立場として、率直にお伝えしたい妥協点があります。
まず、AIは「自社の取引がどの法律に当たるか」を判断するツールではありません。たとえば、自社の販売形態に特定商取引法に基づく表記が必要かどうか、どこまで書けば足りるかは、事業の中身による判断です。AIに「うちは表記が必要ですか」と聞いて返ってきた答えを、そのまま正解として扱うのは危険です。AIが得意なのは、必要だと分かっている項目を文章化することであって、必要かどうかを決めることではありません。
次に、法律は変わります。個人情報保護法は定期的に見直しが行われており、今後も改正が議論されています。
たとえば、個人情報保護法の見直しの動向については、一般財団法人 日本情報経済社会推進協会(JIPDEC)の講演レポートで、罰則や規律が全体として厳しくなる方向性が解説されています。
AIの学習データは過去の情報が中心なので、最新の改正をすべて反映できているとは限りません。だからこそ、出てきた下書きを「今の法律に合っているか」という目で確認する工程が外せないのです。
そして、内製と外注の切り分けです。シンプルな問い合わせフォームだけのサイトなら、AI下書き+自社確認で十分に整えられます。
一方で、決済や定期課金、多くの個人情報を扱うサービスは、最後は専門家のチェックを入れたほうが安全で、結果的に早くて確実です。
「全部自分で」でも「全部丸投げ」でもなく、AIで下準備して人とプロで仕上げる、という組み合わせがいちばん現実的です。
サイトの安全管理という観点では、個人情報を預かる以上、サイト自体の守りも欠かせません。更新や認証の最低限の対策はWordPress乗っ取りを防ぐ更新と二段階認証の最低限設定で解説しています。法務ページの文面と、実際のサイトの安全対策はセットで考えるのがおすすめです。
よくある質問
AIが作った法務ページをそのまま公開しても大丈夫ですか
そのままの公開はおすすめしません。AIの下書きは「たたき台」です。会社名や金額などの事実が正しいか、使っていないツールの記述が混ざっていないかを人が確認してから公開してください。複雑な取引なら専門家のチェックも入れると安心です。
無料のAIでも法務ページの下書きは作れますか
下書き自体は作れます。ただし、ツールによっては入力内容が学習に使われる場合があるため、顧客の個人情報や未公開の契約内容は入力しないでください。下書きに必要なのは公開予定の情報がほとんどなので、機密を入れずに進められます。
特定商取引法に基づく表記は、うちのサイトにも必要ですか
サイト上で商品やサービスを販売・申込受付しているなら、原則として必要だと考えてください。物販やデジタル商品、サブスクの受付などが対象です。判断に迷う場合は、消費者庁「特定商取引法ガイド」や専門家に確認するのが安全です。
法務ページは一度作ったら更新しなくていいですか
更新は必要です。事業内容や扱う情報が変わったとき、法律が改正されたときは見直してください。ページに最終改定日を入れ、フォーム追加や商品追加のタイミングで点検する社内ルールを決めておくと、放置を防げます。
まとめ。下書きはAIに、判断と確認は人とプロに
法務ページは型が決まっているぶん、AIの下書きと相性が良い領域です。自社の事実を渡し、文章化と抜け漏れチェックをAIに任せ、最終確認は人がやる。複雑な取引は専門家に相談する。この役割分担さえ守れば、後回しにしていた法務ページに今日から手をつけられます。
とはいえ、ここまで読んで「自社だけでやり切るのは不安」「AIをどう業務に組み込むか整理したい」と感じた方もいるはずです。コレットラボのAI業務システム化支援では、サイト制作とAI活用の両面から、自社で内製したい会社にもプロに任せたい会社にも合わせて伴走しています。まずは現状を整理するだけでも構いません。気になった方はAI業務システム化の詳細はこちらからお気軽にご相談ください。
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