過去のプレスリリースをAIで最新版に更新する手順|差分だけ直す
この記事の要点
- 過去リリースの更新は全文書き直しではなく「変わった事実だけ差し替える」運用設計
- AIに渡すのは正しい現在地データ。出力は必ず人が事実確認してから公開
- 更新対象の洗い出し・差分抽出・確認関門の3つを仕組み化すれば、毎月の定例タスクとして回せる(短縮できる時間は本数や社内データの整い方で大きく変わる)
数年前に出したプレスリリースが、今も検索結果やAIの回答に顔を出している。でも中身は旧社名、終了したサービス名、古い実績数値のまま。こんな状態に心当たりはありませんか。
放置すると、見込み客やAIが「古い情報」を正しい情報として拾い続けます。この記事では、過去のプレスリリースをAIで「最新版」に更新する仕組みと、その具体的な手順をお伝えします。読み終えるころには、何から手をつければいいかが見えているはずです。

Contents / 目次
結論。過去リリースの自動更新は「差分だけ直す運用」を仕組み化すること
過去リリースの自動更新とは、古いプレスリリースをAIに丸ごと書き直させることではありません。変わった事実だけを最新の情報に差し替え、最新版として再公開する運用のことです。ここを取り違えると、せっかくの実績や文脈まで作り替えてしまい、別の事故を生みます。
まず押さえてほしいポイントは3つです。この3つを仕組みにできれば、過去の発信が「古い負債」ではなく「使える資産」に変わります。
- 更新対象の洗い出しと優先順位づけ:すべてを直すのではなく、今も読まれている・誤解を生むリリースから手をつける
- AIに渡す「正しい現在地」データの整備:現在の社名・サービス名・数値・URLを一覧にしておき、AIが何を正解にすればいいか迷わないようにする
- 公開前に最終確認するチェック関門:AIの出力をそのまま公開せず、事実・法務・トーンを自社で確認してから差し替える
「AIに任せる」と聞くと全自動を想像しがちですが、現実は違います。この記事で言う「自動更新」も、全自動ではなく半自動の運用を指します。AIが得意なのは、古い表現の検出と書き換え案づくりという「面倒だけど頭は使う作業」です。最終判断は人が握る。この線引きこそが、安全に回し続けるための土台になります。
下の表は、よくある「全文をAIに任せるやり方」と「差分だけ直す運用」の違いを整理したものです。どちらを選ぶかで、結果が大きく変わります。
| 観点 | 全文を丸ごとAIに書き直させる | 差分だけ直す運用(推奨) |
|---|---|---|
| 変わるもの | 文章全体。実績や文脈まで作り替わる | 古くなった事実だけ。元の趣旨は残る |
| 事故のリスク | 高い。事実の捏造や誇張が混ざりやすい | 低い。確認すべき箇所が限定される |
| 確認の手間 | 全文を読み直す必要がある | 差し替えた箇所だけ見ればよい |
| 向いている場面 | たたき台を一から作るとき | 過去の発信を最新に保ちたいとき |
ここで言う「最新版に更新する」とは、たとえば次のような作業です。
- 旧サービス名を現行名に直す
- 終了したキャンペーン情報に注記を入れる
- 古い受賞・導入実績の数値を現在の数字に更新する
- リンク切れのURLを差し替える
地味ですが、ここが整っているだけで会社の印象は大きく変わります。
具体的なやり方。更新対象の洗い出しから差し替えまでの手順
結論から言うと、進め方は「更新対象の洗い出し→現在地データの整備→差分の抽出→AIで改訂案づくり→人の確認→差し替え」という流れです。順番に見ていきましょう。

ステップ1。更新対象を洗い出して優先順位をつける
最初にやるのは、過去リリースの一覧化です。配信した年月、タイトル、掲載先URL、テーマをスプレッドシートに並べます。数が多ければ、まず直近3年分から始めれば十分です。
次に優先順位をつけます。すべてを一度に直す必要はありません。優先すべきは次の順番です。
- 今も検索やSNSからアクセスがある、または自社サイトに残っているもの
- 旧サービス名・旧料金・終了した取り組みなど、誤解を生む情報を含むもの
- 会社の信頼に直結する実績・受賞・導入社数などの数値を含むもの
アクセスがほぼゼロで誰も見ていない古いリリースは、後回しで構いません。限られた時間を、効果の大きいところに集中させるのがコツです。
ステップ2。AIに渡す「正しい現在地」を一覧にする
ここが一番大事な準備です。AIは「今の正解」を知りません。だから、現在の正しい情報を一覧にして渡す必要があります。これを情報整理シートと呼びます。
シートに入れる項目は、たとえば次のようなものです。そのまま流用できる雛形として使ってください。
| 項目 | 旧情報(過去リリース) | 現在の正しい情報 |
|---|---|---|
| 会社名・部署名 | 旧○○事業部 | 現○○本部 |
| サービス名 | 旧名称 | 現行名称 |
| 料金・プラン | 当時の金額 | 現在の表記(または「最新は公式で確認」) |
| 実績数値 | 導入○社 | 最新の導入○社 |
| 役職・担当者 | 当時の役職 | 現在の役職 |
| URL・連絡先 | 旧URL | 現行URL |
この対応表があると、AIは「どこを・何に直せばいいか」を迷わずに判断できます。逆にこれがないと、AIは古い情報をそれらしく書き換えてしまい、かえって間違いを増やします。準備の丁寧さが、そのまま仕上がりの精度になります。
ステップ3〜4。差分を抽出し、AIに改訂案を作らせる
準備ができたら、過去リリースの本文と情報整理シートをAIに渡し、「古くなっている箇所を見つけて、最新版の改訂案を作って」と頼みます。いまのAIは、ざっくり頼めば自分で考えて改訂案を作ってくれます。
出発点として、こんな短い指示文(seed)から始めると良いでしょう。あとはAIと対話しながら、自社の状況に合わせて詰めていけば十分です。
あなたは広報担当者です。
これから[過去のプレスリリース本文]と[現在の正しい情報の対応表]を渡します。
やってほしいこと
1. 本文の中で、対応表と食い違う「古い情報」を箇条書きで指摘する
2. それぞれを最新版に直した改訂案を示す(元の趣旨や実績の文脈は変えない)
3. 事実が確認できない箇所は勝手に直さず「要確認」とマークする
注意
・新しい事実を創作しない
・誇張表現や根拠のない数値を足さない
・直した理由を一言ずつ添える
ポイントは、AIに「直していい箇所」と「触ってはいけない箇所」をはっきり伝えることです。特に「確認できないことは創作せず要確認と書く」と指示しておくと、暴走を防ぎます。
この作業を「仕組み」として回すコツは、毎月の決まった日に複数のリリースをまとめて処理することです。情報整理シートを一度作っておけば、あとは過去リリースの本文を差し替えて同じ指示文を使えば、何本でも同じ手順で改訂案が作れます。更新対象の洗い出し→改訂案づくり→確認のサイクルを毎月の定例タスクとしてカレンダーに登録しておくと、無理なく続けられます。
ポイント。AIに渡す前に、未公開情報や個人名はマスキングしておきましょう。利用するサービスの設定や規約で、入力データの扱い(学習に使われるかどうか)も確認しておくと安心です。挙動はサービスやプランによって異なります。社内ルールの作り方はAIに入力してはいけない個人情報|線引きと社内ルールの作り方でも解説しています。
ステップ5。公開前に内容を確認してから差し替える
AIの改訂案ができたら、必ず人の目で確認します。AIの精度は完璧ではなく、もっともらしい間違いを混ぜることがあるからです。確認するのは次の観点です。
- 事実の正確さ:数値・社名・日付・URLが現在の情報と一致しているか
- 誇張の有無:「業界初」「No.1」など根拠が必要な表現が足されていないか
- 法的なチェック:景品表示法・薬機法など、表現に問題がないか
- トーンの一致:元のリリースや自社らしい言葉づかいから外れていないか
確認が済んだら、改訂版を差し替えます。配信サービスの掲載ページを修正できるかはサービスごとに確認し、修正できない場合は自社サイトに「最新情報」として再掲する、注記を加える、といった形で対応します。古い版には「この情報は○年○月時点のものです」と一文添えるだけでも、読者の誤解はぐっと減ります。
取り組むとどう変わるか。古い発信が「資産」に変わる
過去リリースの更新を仕組み化すると、これまで放置していた発信が会社の資産に変わります。具体的には、検索やAIに古い情報が引用される事故が減り、問い合わせ前の見込み客に「ちゃんと管理されている会社だ」という印象を与えられます。

変化の中心は、作業時間の圧縮です。1本のリリースを人が手作業で見直すときは、次のような手順を踏みます。
- 過去資料を探す
- 現在の数字を調べ直す
- 古い表現を文章として直す
差分抽出と改訂案づくりをAIに任せれば、ご自身で行うのは確認と差し替えだけになります。どれだけ短縮できるかはリリースの本数・内容や社内データの整い方によって大きく異なりますが、定型的な調べ物と書き直しの負担を減らせるのが大きな利点です。
こうした定型作業をAIに任せる考え方は、広報以外の業務にも応用できます。
いきなり全社展開を狙わず、小さな範囲で型を作るのがおすすめです。まずは過去リリース10本を最新化する、という限定したゴールから始め、確認手順とチェック項目を固めてから対象を広げます。最初から完璧を目指さず、回しながら精度を上げていく。これが結局いちばん早い進め方です。
似た発想で統計データを最新に保つ取り組みは、ホワイトペーパーの統計をAIで自動更新でも紹介しています。あわせて読むと、過去資産を活かす全体像がつかめます。
よくある失敗と回避法。起こりやすい3つのミス
この取り組みは、やり方を間違えると逆効果になります。起こりやすい失敗を3つ挙げ、それぞれの防ぎ方をお伝えします。

失敗1。AIに丸投げして全文を書き直させてしまう
「とりあえず最新にして」とだけ頼み、AIに全文を作り直させるケースです。すると、元のリリースにあった実績や文脈まで作り替えられ、ありもしない事実が混ざります。読み手は気づかず、誤情報が新たに広がってしまいます。
防ぐには、本記事の手順どおり「古い箇所だけを差し替える」指示にすることです。AIには対応表を渡し、「確認できないことは創作せず要確認と書く」と明示します。直した箇所と理由をセットで出させれば、確認も一瞬で終わります。
失敗2。現在地データを用意せず、AIの記憶任せにする
情報整理シートを作らないまま「最新の情報に直して」と頼むと、AIは自分の推測で古い情報を埋めます。AIは自社の現在の正解を知らないので、当然です。結果、もっともらしいけれど間違った数値や名称が並びます。
回避策はシンプルで、ステップ2の対応表を必ず先に作ることです。手間に感じるかもしれませんが、ここを飛ばすと確認作業が増えます。正しい現在地を渡してから改訂を頼む。この順番を崩さないでください。
失敗3。人の最終確認を省いて公開してしまう
AIの出力がきれいだと、つい確認せず公開したくなります。ところが、事実誇張・景品表示法・薬機法・引用の同意といった点は、AIには判断しきれません。ここを飛ばすと、せっかくの更新が新しいトラブルの種になります。
防ぐには、確認を「気づいた人がやる」ではなく、決まった担当と項目で必ず通す関門にすることです。先ほどのチェック観点をリスト化し、確認した人がチェックを入れてから差し替える。たった数分の作業で、大きな事故を防げます。
AIの精度は完璧ではありません。100%自動化を前提にすると、必ず生じる確認作業を見落として「思ったより楽にならない」と感じてしまいます。残りの確認は自社で行う、という前提で設計してください。
使う側の落とし穴。仕組み化する前に知っておきたい注意点
ここからは、仕組み化する前に知っておきたい注意点をお伝えします。先に結論を言うと、この仕組みは「自動化」よりも「運用ルールづくり」のほうが大事です。
まず、ツールを入れれば解決すると考えてしまう落とし穴があります。プレスリリース系のAIサービスは数多くありますが、どれを使っても「何を正解とするか」を決めるのは人です。社内に現在の正しい情報がバラバラに散らばっていると、どんなツールも力を発揮できません。自動化の前に、社内の正しい情報を1か所にまとめておく必要があります。
次に、配信済みのリリースには、後から修正できない部分があるという点です。PR TIMESの公式ヘルプ「配信後のプレスリリースを修正したいです。」によると、PR TIMESのサイトに掲載されたリリースは管理画面から修正でき、編集の期限はありません。一方、メディアへ送ったメールは修正も再送もできません。転載先メディアの記事は管理画面からは修正できず、PR TIMESのサポート窓口を通じて修正を依頼する形になり、すべてのメディアが応じるとは限りません(2026年10月10日時点)。どこまで修正できるかは、サービスごとに確認が必要です。
配信サービスで修正できない場合は、「自社サイト上で最新版を示す」「注記を添える」という形になります。この前提を知らずに始めると、「直したいのに直せない」と手が止まってしまいます。
利用中のサービスで編集ができるかどうかは、各社の規約や管理画面で先に確認しておくと安心です。
内製と外注の切り分けも悩みどころです。手順そのものは、AIに慣れた担当者が1人いれば社内で回せます。ただし、対応表の設計、チェック項目の整備、運用を続ける体制づくりは、最初の型づくりでつまずきやすい部分です。最初の仕組みづくりだけ外部の力を借り、回し方を覚えてから内製に切り替えるのが、コストと定着のバランスが取りやすい選び方です。
最後にコストの見落とし。AIツールは更新が早く、料金や規約、機能が変わることがあります。「気づいた人が対応」では抜けが出るので、月1回、更新の有無と影響を点検するタスクを運用に組み込んでおくと安心です。
撤退を判断するときも、ツール費用だけでなく、利用率と現場の満足度を合わせて見ることをおすすめします。AI定着の進め方は生成AIが社内で使われない原因と90日で定着させる現場の進め方でも詳しく扱っています。
よくある質問
過去のプレスリリースって、本当に直す価値があるの?
今もアクセスがあるリリースなら価値があります。古い社名や数値が検索やAIに引用され続けると、誤情報が広がります。まずは閲覧されているものや誤解を生むものから優先して直すのがおすすめです。
AIに任せれば全部自動でやってくれるの?
完全自動にはできません。AIが得意なのは古い箇所の検出と改訂案づくりまでです。事実確認や法的なチェックは自社で行う前提で設計してください。確認を省くと、新たな間違いを公開してしまう恐れがあります。
配信サービスに出したリリースは後から直せる?
修正できる範囲はサービスによって異なります。たとえばPR TIMESでは、サイト上のリリースは修正できますが、メディアへ送ったメールは修正できません。修正できない部分が残ることもあります。その場合は自社サイトに最新版を再掲したり、古い版に「○年○月時点」と注記を添える形で対応します。直せる範囲を最初に確認しておくと混乱しません。
専門知識がなくても社内でできる?
手順自体はAIに慣れた担当者が1人いれば回せます。難しいのは対応表の設計や確認ルールづくりです。最初の型づくりだけ外部の力を借り、回し方を覚えてから内製に切り替えると無理がありません。
まとめと、ご相談について
過去のプレスリリースの更新は、特別な技術より「差分だけ直す運用」と「公開前に自社で確認する関門」を仕組みにできるかで決まります。手順は本記事のとおりですが、対応表の設計や確認ルールの整備は、最初の型づくりでつまずきやすいところです。
過去のプレスリリースの事実確認とAIでの改訂を、自社で続けたい方は、コレットラボの広報のAI活用研修(オンライン)をご覧ください。講師と1対1で、自社の広報業務を題材に、元資料から発表日や商品名などの事実を抜き出し、AIの原稿案を確かめる手順を実践します。
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