広告の効果測定をアンケートで補う方法|設問と集計の手順
この記事の要点
- アンケートで補うのは「知ったきっかけ」と「決め手」の2つに絞る
- 設問テンプレートと集計式を掲載。回答が少ないうちは比率が大きく動く点まで解説
- 自己申告はズレる。ズレ方に3つの癖があり、本文で対処法まで解説
広告の効果測定をアンケートで補うときにやることは、大きく2つです。問い合わせフォームや来店時に「最初に知ったきっかけ」と「申し込みを決める直前に見たもの」を1問ずつ聞き、その回答比率を実際のコンバージョン件数に掛けて、広告起因の件数を推定します。これだけで、管理画面のクリック計測では消えてしまう経路が見えるようになります。
この記事は、月に数万円から数十万円の広告を出していて、「広告を止めていいのか判断できない」と感じている中小企業の経営者・広報・営業担当の方に向けて書いています。読み終わる頃には、明日フォームに追加する設問文と、集まった回答をどう計算して広告の判断に戻すかまで決められる状態を目指します。
扱う範囲はアンケート(調査)の設計と集計に限定します。商談・受注のデータを広告媒体に取り込んで自動入札に効かせる話はオフラインコンバージョンのインポート手順|Google広告で商談計測で解説しているので、システム側で埋められる分はそちらへ。この記事は、システムでは埋まらない「本人しか知らないこと」を扱います。
Contents / 目次
結論。アンケートで聞くのは2問だけで足りる
広告の効果測定をアンケートで補うなら、聞くのは「最初に知ったきっかけ」と「決める直前に見たもの」の2問です。設問を増やすほど回答率は落ちるので、まずこの2問だけをフォームに足してください。この2問で、広告の役割が「入口」なのか「最後のひと押し」なのかが分かれます。
ここを分けて聞く理由は、広告の管理画面が「最後のクリック」しか見ていないからです。実際には、YouTube広告で名前を知り、1か月後に社名で検索して問い合わせた人がいます。管理画面ではこの人は「自然検索の成果」になり、YouTube広告の欄は0のままです。予算を削る判断を、この0だけを見て下してしまうのが一番よくある事故です。
広告の効果測定とは、そもそも何を測ることか
広告の効果測定とは、出したお金に対して「何人が見て・何人が動いて・いくらの成果になったか」を数字で確かめる作業です。このうちWeb広告の管理画面が得意なのは、表示回数・クリック・サイト内で完結したコンバージョンまでで、その先や手前は苦手です。
ここでの「アンケート(調査)」は、その苦手な部分を人に直接聞いて埋める方法を指します。基本のクリック計測がまだ整っていない方は、先にWeb広告の効果測定のやり方|3ステップで始めるを読んでから戻ってきてください。土台がない状態でアンケートだけ足しても、比べる相手がいません。
Webで追える経路と、追えない経路の一覧
自社のどこに穴が空いているかを先に把握しておくと、聞くべきことが決まります。
| 経路 | 管理画面で追えるか | 補い方 |
|---|---|---|
| 広告クリック → その場でフォーム送信 | 追える | 補完不要。タグの設置ミスだけ点検 |
| 広告クリック → 離脱 → 数週間後に社名で検索して申し込み | ほぼ追えない | アンケートで「最初に知ったきっかけ」を聞く |
| スマホで広告を見た → パソコンで申し込み | 条件により消える | アンケートで補う。媒体のログイン計測でも一部は繋がる |
| 広告を見た → 電話で問い合わせ | 追えないことが多い | 電話口で1問聞いて記録する |
| 広告を見た → 実店舗に来た | 追えない | レジや受付で1問聞く。クーポンコードを分ける |
| 広告を見た → 資料請求 → 半年後に受注 | Web単体では追えない | 受注データを媒体に取り込む(オフラインCV) |
| 広告を見て名前を覚えたが、まだ動いていない | 追えない | ブランドリフト調査など、購入前の人に聞く調査 |
先に決めること。表の中で自社に一番当てはまる行を1つだけ選んでください。全部を一度に埋めようとすると設問が10問を超え、回答率が落ちて結局どれも使えない数字になります。
ブラウザのCookie制限が進み、クリック計測で追えない経路が残るのも、アンケートで補う理由の一つです。技術側の対応はリマーケティング広告とCookie規制の現在地|備え方の進め方にまとめています。技術で埋める分と、人に聞いて埋める分は別物なので、両方やるのが現実解です。
この章の結論。自社の穴が「入口が見えない」なら知ったきっかけを、「最後のひと押しが分からない」なら直前に見たものを聞きます。どちらか迷うなら両方1問ずつ、合計2問までにとどめてください。
広告の効果測定の調査は3つの型から選ぶ
広告の効果測定で使われる調査は、大きく3つの型に分かれます。中小企業が自力で始められるのは3つ目の「自社の顧客に聞く型」で、ここから入るのが失敗しにくいです。
| 型 | 何が分かるか | 必要なもの | 向く場面 |
|---|---|---|---|
| ブランドリフト調査(広告に接触した人と、していない人を比べる) | 広告を見たことで認知や好意がどれだけ上がったか | 媒体側の機能、または調査会社 | 認知目的の動画・ディスプレイ広告を大きめの予算で回すとき |
| 前後比較調査(出稿の前と後で同じ質問をする) | 期間全体での認知度の変化 | 調査パネル(ネットリサーチ会社など)を2回分 | キャンペーン期間が明確で、他の施策が動いていないとき |
| 自社の顧客に聞く(問い合わせ・購入時の1問) | 実際に動いた人が、どこで知りどこで決めたか | フォームの設問追加だけ。費用はほぼゼロ | 問い合わせ・来店・購入が月に数十件ある事業のほぼ全部 |
ブランドリフト調査は、広告媒体が提供している機能を使う方法と、調査会社に依頼する方法があります。媒体側の機能は名称も提供条件も変わることがあるため、自社で使えるかどうかは、利用している媒体の公式ヘルプを検索するか、担当の代理店に、その時点の提供条件を確認してください。
前後比較調査は、調査会社のパネル(アンケートに答えてくれる登録会員)に依頼して、出稿前と出稿後に同じ質問を投げる方法です。セルフ型のネットリサーチサービスを使えば少額から実施できますが、料金は設問数と回収数、対象者の出現率で変わるため、各社の公式サイトで見積もりを確認してください(2026年8月11日時点)。
認知度の前後比較は、広告以外の要因(テレビ番組で取り上げられた、競合が撤退した、季節要因)でも動きます。差分をそのまま広告の成果と言い切らず、同じ期間に何をやったかのメモを必ず残してください。
この章の結論。月の問い合わせが数十件あるなら、まず自社の顧客に聞く型から始めます。外部パネルを使う調査は、認知目的の広告に月数十万円以上を投じていて、その判断根拠が他にない場合に検討する順番です。
アンケートで補う手順。設問づくりから集計まで5ステップ
ここからが実作業です。フォームに2問足して、集まった回答を広告の予算判断に戻すまでを、順番に進めます。全部やっても半日かかりません。
ステップ1。測りたい問いを1つに絞る
最初にやるのは、この調査で答えを出したい問いを1つだけ紙に書くことです。「広告全体の効果を知りたい」では設問が決まりません。
- 良い問いの例1:YouTube広告を止めても、問い合わせ数は減らないか
- 良い問いの例2:指名検索で来ている人は、もともと何を見て社名を覚えたのか
- 良い問いの例3:チラシとWeb広告のどちらが来店のきっかけになっているか
問いが決まると、聞くべきことも、判断の基準も自動的に決まります。たとえば1つ目の問いなら、「知ったきっかけでYouTube広告を選んだ人の比率」が判断材料で、それが有効回答の1割を超えるなら止めない、という基準を先に決めておきます。数字が出てから基準を考えると、都合のいい解釈が入ります。
ステップ2。設問文をそのまま作る
設問はコピーして使えるものを用意しました。自社の広告に合わせて選択肢だけ差し替えてください。
Q1(必須・1つだけ選択)当社を最初に知ったきっかけを教えてください。
1. Google・Yahoo!で検索して見つけた
2. 検索結果の上のほうに出ていた広告
3. Instagram・Facebookで流れてきた広告
4. YouTubeの動画の途中で流れた広告
5. 知人・取引先からの紹介
6. 前から名前を知っていた
7. チラシ・看板・DM
8. その他( )
Q2(必須・1つだけ選択)お問い合わせを決める直前に見たものはどれですか。
(選択肢はQ1と同じものを並べる)
Q3(任意・自由記述)決め手になった点を一言で教えてください。
( )
選択肢の作り方で、社内のルールにしておくとよい点を5つ挙げます。
- 「インターネット」「Web」のような大きすぎる選択肢を入れない。ほぼ全員がそこを選び、何も分からなくなります
- 広告の選択肢は媒体名で書く。「バナー広告」ではなく「Instagramで流れてきた広告」と、回答者が思い出せる見た目で書く
- 選択肢の並び順は、広告を上に固めない。回答者は上から選びやすいので、検索や紹介と交互に置く
- 「その他」に自由記述欄を必ず付ける。ここに書かれた言葉が、次の選択肢の候補になります
- 設問文に自社の広告を褒める言葉を入れない。「話題の広告をご覧になりましたか」のような聞き方をすると、見ていない人まで「はい」と答えます
必須にするかどうか。Q1・Q2は必須、Q3は任意が基本です。必須にすれば送信された分については回答が必ず入りますが、フォーム自体の送信数が落ちる可能性があるので、追加した週と前週の送信数は必ず見比べてください。落ちたらQ1だけ必須に戻します。
ステップ3。聞く場所とタイミングを決める
聞く場所は「相手が答えても損をしない瞬間」に置くのが原則です。問い合わせの手前に置くと離脱の原因になります。
| 業態 | 聞く場所 | 実装の方法 |
|---|---|---|
| BtoB・資料請求 | フォームの一番下(送信ボタンの直前) | フォームに選択肢の項目を1つ追加する |
| フォーム送信数を落としたくない場合 | 送信完了ページ(サンクスページ) | 完了ページに1問だけのミニフォームを置く |
| 電話問い合わせが多い | 電話の最後 | 受付メモに選択肢を印刷し、丸を付けて記録する |
| 実店舗 | 会計時・受付時 | レジ横にQRコードを貼る、または口頭で1問聞く |
| ECサイト | 購入完了後のサンキューメール | 1問だけのアンケートリンクを本文に置く |
サンクスページに置く方法は、フォームの送信数に影響しないのが利点です。ただし回答率は下がります。完了ページを離れる前に答えてもらうには、「30秒で終わります」と所要時間を書き、選択肢を1画面に収めてください。
フォームの送信自体がまだコンバージョンとして計測できていない場合は、先にフォーム送信をコンバージョン計測する設定手順|GA4とGTMで計測を通しておくと、アンケートの回答と実件数を突き合わせられるようになります。
ステップ4。個人情報の扱いを先に決める
アンケートで氏名・会社名・メールアドレスなど個人を特定できる情報を一緒に取る場合、その情報を何に使うのかを本人に分かる形で示す必要があります。
個人情報の取り扱いルールは個人情報保護法で定められており、条文の内容や実務上の考え方は個人情報保護委員会が公開している法令・ガイドラインで確認できます。自社の運用が要件を満たしているかは、この一次情報に当たって判断してください。
問い合わせフォームの中で聞く場合は、既存のプライバシーポリシーの利用目的に「サービス改善・広告効果の分析のため」を追記しておくのが実務的な整理です。
決めておくことは3つです。
- 利用目的:「広告と集客の改善のために集計する」と明記する。個別の営業に使うなら、それも書く
- 保管期間:集計に必要な期間だけ持つ。個人が特定できる形での保管は期限を決め、期限が来たら削除する運用にする
- 公表の仕方:設問の近くに一文を置き、詳細はプライバシーポリシーへリンクする
そもそも、この調査で個人情報は要りません。集計に使うのは選択肢の比率だけなので、氏名と紐づけずに集める設計にできるなら、そのほうが管理も楽で安全です。既に問い合わせフォームの中で聞く場合は、問い合わせ内容と一体になるため、集計時に氏名を落としたシートを別に作るのが現実的です。
回答を社内の別目的(例えば営業リストの作成やメルマガ配信)に流用するときは、最初に示した利用目的の範囲に入っているかを必ず確認してください。「アンケートのついでに集めた連絡先をそのまま営業に使う」は、目的外利用になりやすい典型です。
ステップ5。集計して、広告の判断に戻す
集計は割り算2回で終わります。表計算ソフトで十分です。
【手順】
1. 有効回答数を数える(「その他」も含む。空欄は除く)
2. 選択肢ごとの件数を数える
3. 各選択肢の比率を出す
比率 = その選択肢の件数 ÷ 有効回答数
4. 実際のコンバージョン件数に掛けて、推定件数を出す
推定件数 = 期間のCV件数 × その選択肢の比率
【計算例(数字は説明のための仮の値)】
期間のCV件数 = 60件
有効回答数 = 48件
Q1で「YouTubeの広告」を選んだ人 = 9件
比率 = 9 ÷ 48 = 18.75%
推定件数 = 60 × 0.1875 = 約11件
→ 期間のYouTube広告費が11万円なら、1件あたり約1万円の計算になる
ここで必ずセットにしてほしいのが、誤差の幅です。回答が少ないと比率は簡単に動きます。目安は母比率の信頼区間の式で自分で計算できます。前提は「単純無作為抽出・95%信頼水準・母集団の有限修正なし」です。
【誤差の幅(95%信頼水準)の計算式】
誤差 = 1.96 × √( p × (1 − p) ÷ n )
p = 出てきた比率(0〜1)
n = 有効回答数
【計算例1】n=100、p=0.5(比率が50%のとき=誤差が最大になる)
1.96 × √( 0.5 × 0.5 ÷ 100 ) = 1.96 × 0.05 = 0.098 → 約±10ポイント
【計算例2】n=30、p=0.18(30件中およそ5〜6件が選んだとき)
1.96 × √( 0.18 × 0.82 ÷ 30 ) = 1.96 × 0.0701 = 0.137 → 約±14ポイント
※ 比率が50%から離れるほど、誤差の幅は小さくなります。
※ 表計算ソフトなら「=1.96*SQRT(p*(1-p)/n)」で同じ値が出ます。
比率が50%前後(誤差が最大になる場合)の目安を、上の式に当てはめると次のようになります。表の値は、それぞれ p=0.5 を代入した計算結果です。
| 有効回答数 | 比率の誤差の目安(p=50%のとき) |
|---|---|
| 30件 | およそ±18ポイント |
| 50件 | およそ±14ポイント |
| 100件 | およそ±10ポイント |
| 200件 | およそ±7ポイント |
| 400件 | およそ±5ポイント |
どこまで誤差が縮めば判断に使えるかに、決まった基準はありません。誤差の幅を見て、その幅があっても結論が変わらないかを自社で確かめてください。たとえば「10%を超えたら媒体を続ける」と決めているのに誤差が±14ポイントあるなら、その回答数では判断できません。
つまり、30件の回答で「YouTubeが18%だった」と言っても、上の計算例2のとおり誤差は約±14ポイントあり、本当の値は4%程度かもしれないし32%程度かもしれない、ということです。アンケートは月次で一喜一憂するものではなく、四半期でまとめて見るものだと最初に決めておくと、社内の運用が安定します。
自由記述(Q3)は、20件を超えたあたりから手作業の分類がつらくなります。ここはAIに任せると早いです。渡し方は次のくらいの短い指示で足ります。
あなたは調査データの整理担当です。
以下は[業種を入力]の問い合わせ時アンケートの自由記述(決め手)です。
1. 内容が近いものをまとめて、5〜8個の分類名を作ってください
2. 各回答がどの分類かを一覧にしてください
3. 分類ごとの件数と、代表的な原文を2つずつ挙げてください
※原文にない意味を足さないでください。判断に迷ったものは「判断不能」に入れてください。
[ここに自由記述を貼る/ファイルを添付する]
この指示で返ってくるのは、次のような形です。この形になっていなければ、指示の3項目を1つずつ分けて出し直させてください。
【分類ごとの件数】
1. 対応の速さ 12件
2. 価格が安い 9件
3. 実績・事例が近い 7件
4. 担当者の説明が分かりやすい 5件
5. 判断不能 3件
【代表的な原文(分類1「対応の速さ」)】
・「問い合わせた当日に返事が来たから」
・「他社は3日待たされたが、こちらはすぐだった」
【一覧】
回答1 → 対応の速さ
回答2 → 価格が安い
回答3 → 判断不能
(以下、全件)
出てきた分類は、そのまま信じずに次の2点だけ人が見てください。
- 「判断不能」に入った回答を自分で読む:分類しにくい声にこそ、次の広告のヒントが入っていることが多いです
- 分類名が自社に都合よく寄っていないか確認する:「価格が安い」と書かれた回答が「コストパフォーマンスへの評価」という前向きな名前にまとめられていたら、名前を実態に戻します
実施前チェックリスト
公開前に、この7項目を上から確認してください。
- 問いは1つか:この調査で答えを出したい問いを、紙に1行で書けているか
- 設問は2問以内か:Q1・Q2以外を足していないか。任意の自由記述は1問まで
- 選択肢は具体か:「インターネット」のような大きすぎる選択肢が残っていないか
- 並び順は偏っていないか:広告の選択肢が上に固まっていないか
- 利用目的を書いたか:設問の近くに一文を置き、プライバシーポリシーとつながっているか
- 判断基準を先に決めたか:「何%を超えたらどうする」を、数字が出る前に書いたか
- 比較する前週データを取ったか:設問追加の前の週の送信数を控えたか
この章の結論。設問2問・利用目的の一文・集計式・誤差の目安、この4点がそろえば今日から始められます。逆に、判断基準を先に決めていない調査は、数字が出たあとに解釈でもめて使われなくなります。
アンケートを足すと、広告の何が変わるか
一番大きく変わるのは、予算配分の会話です。管理画面のコンバージョン数だけで話していたときは「数字が付いていない媒体を止める」しか選択肢がありませんが、認知経路が見えると「入口として効いている媒体」と「最後を押している媒体」を分けて扱えるようになります。
具体的には、次の3つの判断が数字でできるようになります。
- 指名検索やSNS経由で来ている問い合わせのうち、もともと何がきっかけだったかが分かる。ここに広告が多く出てくるなら、その媒体は成果0ではなく「入口担当」です
- 実店舗・電話に流れている分を推定できる。Web上のコンバージョンだけで費用対効果を計算していた会社は、分母が変わって評価が反転することがあります
- 広告が全く出てこない媒体が分かる。「クリックは多いが誰の記憶にも残っていない」面に払っている費用を止められます
費用対効果の計算そのものを見直したい方は、広告の費用対効果の出し方|ROAS計算と指標の見方・目安で計算式を確認したうえで、分子に「アンケートで推定した件数」を足す形にすると、実態に近い数字になります。
成果が出ている会社に共通しているのは、アンケートの数字を単体で見ていないことです。管理画面のコンバージョン、GA4の経路レポート、アンケートの自己申告、この3つを並べて「食い違っている場所」を毎月1つだけ潰していきます。3つがぴったり一致することはありません。一致させることが目的ではなく、食い違いの理由を説明できる状態にするのが目的です。
期待できる変化の現実的な線。アンケートを足した月に売上が増えることはありません。変わるのは判断の質です。効いていない面への支払いを止め、入口として効いている媒体を残す判断ができるようになるのは、誤差の幅を見ても結論が変わらないだけの回答がたまってからです。何か月かかるかは月の問い合わせ件数によって大きく異なるので、自社の件数から逆算してください。
この章の結論。アンケートは広告を強くする施策ではなく、止める・続けるの判断を間違えなくする仕組みです。効果を語るときは「増えた売上」ではなく「防いだ誤判断」で評価してください。
よくある失敗と回避法。設問と集計でつまずく5パターン
ここからは、実際にアンケートを入れた現場でよく見る失敗です。どれも設問か集計のどちらかに原因があり、後から直すのが大変なので先に潰しておきましょう。
失敗1。選択肢に「インターネット」を入れて、回答がそこに集まる
設問を作るときに選択肢を網羅しようとすると、「インターネット」「Web検索」といった大きな受け皿を入れてしまいます。すると回答の大半がそこに集まり、検索なのか広告なのかSNSなのかが分かりません。集計しても「インターネットが大半」としか言えず、広告の判断材料になりません。
防ぐには、選択肢を回答者の記憶の形に合わせます。人は「リスティング広告」を思い出せませんが、「検索結果の上のほうに出ていた広告」なら思い出せます。媒体名と、見えていた場所をセットで書いてください。
失敗2。回答が集まる前に「この媒体は効いていない」と判断する
アンケートを始めて2週間、回答が12件たまった時点で「YouTubeが0件だから止めよう」と決めてしまう。これが最も多い失敗です。回答が0件でも、それは「本当の比率が0%」を意味しません。
回避策は、開始時に「誤差の幅を計算して、その幅を踏まえても結論が変わらないと確認できるまで、媒体の停止判断には使わない」と社内で決めておくことです。
それまでの数字は、自由記述を読んで次の広告文のヒントを探す用途に限定します。件数と誤差の関係は前章の表を印刷して、集計シートの隣に貼っておくと止まります。
失敗3。広告を出している期間だけ聞いて、比べる相手がない
キャンペーン期間中だけアンケートを設置し、終わったら外してしまうケースです。「広告期間中は3割が広告と回答した」という数字が出ても、広告を出していない平常時に何%だったかが分からないため、その3割が多いのか少ないのか判断できません。
回避策は単純で、設問を常設にすることです。フォームに1問足すだけなのでコストはかかりません。平常時の比率が分かっていると、キャンペーン期間の上振れがそのまま広告の寄与分として読めます。
失敗4。答えた人が偏っていることを忘れて全体の数字として扱う
問い合わせフォームで聞いている限り、答えているのは「問い合わせまで進んだ人」だけです。広告を見たけれど問い合わせなかった人の声は1件も入っていません。
それなのに「当社を知るきっかけは検索が中心」と結論づけると、認知段階で効いている広告を丸ごと見落とします。
回避策は、この調査で分かるのは「申し込んだ人の中での内訳」だと、レポートの1行目に必ず書いておくことです。認知段階まで含めて知りたい場合は、前章の表にある前後比較調査やブランドリフト調査など、まだ動いていない人にも届く手段が別途必要になります。
失敗5。少ない回答を%だけで報告して、社内で数字が一人歩きする
有効回答18件のうち6件を「33%がSNS広告経由」と資料に書くと、読んだ人は母数を見ません。翌月の会議では「SNSが3割」という前提で予算の議論が始まり、実際に回答したのが6人だという事実は誰も覚えていません。
回避策は、%を書くときは必ず「(6件/18件)」と実数を併記するルールにすることです。書式を統一するだけで、数字の重みが正しく伝わります。有効回答が少ないうちは、%を使わず件数だけで報告するのも有効です。
この章の結論。5つとも、原因は「選択肢の粒度」と「母数の扱い」に集約されます。設問の選択肢を回答者の記憶に合わせ、%には必ず実数を添える。この2つを最初のルールにすれば、大半は起きません。
自己申告はズレる。現場での妥協点と限界
ここは率直にお伝えしておきます。アンケートで得られる回答は本人の記憶に基づく自己申告なので、実際の行動とは必ずズレます。ズレをなくすことはできません。できるのは、ズレの癖を知って、その分を割り引いて読むことだけです。
自己申告で起きやすいズレは、次の3つです。
- 直近の接点が過大に出る:人は最後に見たものを覚えています。半年前のYouTube広告で名前を覚えていても、「検索して見つけた」と答えます。入口の広告は実際より小さく出ると考えてください
- 能動的に選んだことにしたがる:「広告に釣られた」より「自分で調べて選んだ」と答えたい心理が働きます。広告全般の数字は、実態よりやや低めに出ます
- 印象に残りやすい媒体に票が寄る:テレビCM・チラシ・大きな看板は思い出しやすいぶん、選ばれやすくなります。Web広告と並べて比較するときは、この差を頭に入れておく必要があります
この癖があるので、アンケートの数字を「正しい実績」として扱うと必ず判断を誤ります。使い方は次の2つに限定してください。
- 0の確認:管理画面に0と出ている媒体が、本当に0なのかを確かめる
- 変化の追跡:時系列で同じ設問を続けて、比率の変化を見る
絶対値ではなく、有無と変化を見るツールだと割り切ると失敗しません。
もう一つ現場で見落とされがちなのが、運用コストです。設問を足すのは5分ですが、回答を毎月集計してレポートにする作業は、担当者が兼務だと後回しになって止まります。止めないコツは、集計を「月末に表計算へ貼り付けて件数を数えるだけ」に固定して、考察は四半期に1回にまとめることです。毎月きれいなレポートを作ろうとすると続きません。
調査会社に外注する場合の妥協点にも触れておきます。ネットリサーチのパネルは、そのサービスに登録している人の集まりです。BtoBで特定の業種の決裁者だけに聞きたい、地方の特定エリアの人だけに聞きたい、といった条件が細かくなるほど、必要な回答数を集めるのが難しくなり費用も上がります。自社の顧客リストに聞ける事業なら、そちらのほうが早く安く実態に近い答えが得られることが多いです。依頼を検討するときは、条件に合う回答者が実際に何人確保できるかを、見積もりの前に必ず確認してください。
なお、この作業のうちAIに任せられるのは自由記述の分類と集計表の作成までです。設問の選択肢をどう切るか、出た数字を広告予算にどう反映するかは、自社の事情を知っている人が決める部分になります。
この章の結論。アンケートの数字は実績値ではなく、ズレる癖のある参考値です。絶対値で語らず、「0だと思っていた媒体が0ではなかった」という発見と、時系列の変化に使ってください。
問い合わせフォームに「どこで知りましたか」を追加すると、送信数が減りませんか
減る可能性はあるので、追加した週と前週の送信数を必ず比べてください。減っていたら、設問を送信ボタンの直前に移す、必須を任意に変える、選択肢を8個以内に絞る、の順で調整します。それでも戻らない場合は、送信完了ページに置き換えてください。回答率は下がりますが、送信数には影響しません。
回答が「インターネットで検索」ばかりで、広告の判断に使えません
選択肢の粒度が大きすぎるのが原因です。「検索して見つけた」と「検索結果の上のほうに出ていた広告」を分けて並べ直してください。それでも検索に集まる場合は、Q2として「検索する前に、当社の名前をどこかで見ましたか」という設問を1つ足すと、入口の広告が浮かび上がります。
アンケートの回答を、Google広告やMeta広告のコンバージョンとして取り込めますか
取り込みの可否と必要な条件は媒体ごとに異なり、仕様も変わるため、利用している媒体の公式ヘルプで最新の要件を確認してください。自動入札に効かせたいなら、アンケートではなくオフラインコンバージョンのインポートを使うのが基本です。アンケートは、そうした計測でつながらなかった経路を推定するための別手段だと考えてください。
アンケートで「広告を見た」と答えた人数と、管理画面のコンバージョン数が合いません
合わないのが普通です。管理画面は最後のクリックだけを数え、アンケートは本人の記憶を数えているので、そもそも数えているものが違います。どちらかが間違いなのではなく、両方の差が「Webで追えていない部分」の大きさを表しています。差の理由を1つずつ説明できる状態を目指してください。
アンケートの回答は、いつまで保管しておけばいいですか
集計に必要な期間だけ持つのが原則です。個人が特定できる情報と一緒に保管しているなら、社内で期限を決めて、過ぎたら削除する運用にしてください。集計用のシートは、氏名や連絡先の列を落として選択肢だけを残せば、長期で持っても管理の負担が軽くなります。
まず今日やる一歩
今日できることは1つです。自社の問い合わせフォームを開いて、この記事のQ1の設問文と選択肢をそのまま貼り付けて、送信ボタンの直前に置いてください。5分で終わります。あとは前週の送信数を控えておけば、来週には影響の有無が分かります。
広告そのものの数字が思うように動いていない場合は、アンケートの前に確認したい箇所があるかもしれません。Web広告で問い合わせが来ない原因|5層で切り分ける点検手順を先に読むと、どこに手を入れるべきかが整理できます。
設問の選択肢をどう切るか、集まった数字をどう予算配分に反映するかは、扱っている商材や検討期間によって変わります。自社のケースで迷ったら、現状の数字を見ながら一緒に整理しますので、気軽にご相談ください。今の管理画面のレポートと、月の問い合わせ件数が分かるだけでも話は進められます。
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