広告の費用対効果の出し方|ROAS計算と指標の見方・目安
この記事の要点
- 費用対効果はROAS(売上÷広告費×100)とCPAの2本で出せる
- 目安は業界平均ではなく自社の粗利率から出す。早見表を本文に掲載
- 数字が合わない原因の大半は計測もれ。失敗5パターンと防ぎ方を解説
広告にいくら使って、いくら返ってきているのか。数字は見ているけれど「これって良いの、悪いの」が判断できない。そんな状態で止まっている方は多いです。
この記事では、広告の費用対効果の出し方を、計算式・目安の決め方・指標の読み方の順で解説します。月10万円〜100万円くらいの広告費を扱っていて、レポートの数字を自分で判断できるようになりたい経営者・広報・営業担当の方に向けた内容です。
読み終わる頃には、スプレッドシート1枚で自社のROASを出し、「この広告は続けるか止めるか」を自分の言葉で説明できる状態を目指します。なお、コンバージョン計測タグの設置手順そのものはこの記事では扱わないので、まだ計測が入っていない方はフォーム送信をコンバージョン計測する設定手順|GA4とGTMを先に読んでから戻ってきてください。
Contents / 目次
広告の費用対効果の出し方は、ROASとCPAの2本で足ります
広告の費用対効果を出すのに必要な計算は、実質2本だけです。ROASとCPA、この2つを媒体ごと・月ごとに並べれば、判断に必要な材料はそろいます。
ROAS(Return On Advertising Spend)とは、広告費に対してどれだけの売上が返ってきたかを示す指標です。計算式は「売上 ÷ 広告費 × 100」で、単位はパーセントです。広告費20万円で売上60万円なら、60 ÷ 20 × 100 で ROAS 300%になります。
もうひとつのCPA(Cost Per Acquisition)は、1件のコンバージョンを取るのにいくらかかったかを示す指標です。「広告費 ÷ コンバージョン数」で出します。広告費20万円で問い合わせが10件なら、CPAは2万円です。
売上が広告に直接ひもづく通販や予約なら主役はROAS、問い合わせや資料請求がゴールのBtoBなら主役はCPAになります。まずは自社がどちらの型かを決めてください。
費用対効果でよく出てくる指標の違い
ROAS、ROI、CPA、CPO、LTV。似た言葉が並ぶので、先に整理しておきます。違いは「分子に売上を置くか、利益を置くか」と「1件あたりで見るか、全体で見るか」の2軸だけです。
| 指標 | 計算式 | 何が分かるか | 使いどころ |
|---|---|---|---|
| ROAS | 売上 ÷ 広告費 × 100(%) | 広告費が何倍の売上になったか | 通販・予約・EC。売上が直接ひもづく場合 |
| ROI | 利益 ÷ 広告費 × 100(%) | 広告費が何倍の利益になったか | 原価率が商品ごとに違う場合 |
| CPA | 広告費 ÷ コンバージョン数 | 1件の獲得にいくらかかったか | 問い合わせ・資料請求がゴールのBtoB |
| CPO | 広告費 ÷ 受注(購入)件数 | 1件の受注にいくらかかったか | 申込みと受注が分かれる商材 |
| LTV | 1顧客あたりの生涯粗利 | 1人のお客さまが最終的にいくら残すか | 定期購入・継続契約・リピート前提 |
ROASとROIの違いは「売上で見るか、利益で見るか」です。ROASは売上を基準に、ROIは利益を基準に算出します。粗利率が低い商材ほど、ROASが良く見えても実際は赤字、ということが起きます。
ポイント。ROASだけを追うと「売れているのに儲かっていない」状態に気づけません。最初にROASを出し、そのあと必ず粗利率をかけて確認する。この2段構えを癖にしてください。
用語そのものをもう少し丁寧に押さえたい方はWeb広告の基本用語一覧|CPC・CVR・ROASをお金の流れで理解もあわせてどうぞ。ここから先は、計算できる前提で進めます。
費用対効果の目安と平均。他社の数字ではなく自社の粗利率から決める

「広告の費用対効果の目安はどれくらいですか」という質問には、業界平均ではなく自社の損益分岐点ROASで答えるのが正解です。理由はシンプルで、目安は粗利率で決まるからです。
損益分岐点ROASとは、粗利だけで広告費をちょうど回収できるROASのことです。計算式は「1 ÷ 粗利率 × 100」です。粗利率30%なら、1 ÷ 0.3 × 100 で約333%。ROASが333%を下回ると、売上から出た粗利で広告費をまかなえていない状態です。ここで注意したいのは、この333%はあくまで粗利と広告費だけを見た分岐点だという点です。人件費や決済手数料などの販管費は入っていないので、333%あれば黒字、という意味ではありません。
粗利率別の損益分岐点ROAS早見表
自社の粗利率に近い行を見てください。ここが「これ以上下がったら止める」の線になります。
| 粗利率 | 損益分岐点ROAS | 利益を残す目標ROASの例 | 近い商材の例 |
|---|---|---|---|
| 10% | 1,000% | 1,400%以上 | 物販の卸・低粗利の再販 |
| 20% | 500% | 700%以上 | 仕入れ型のEC |
| 30% | 約333% | 470%以上 | 一般的な小売・飲食 |
| 50% | 200% | 280%以上 | 自社製造の商品・施術サービス |
| 70% | 約143% | 200%以上 | 制作・コンサル・ソフトウェア |
右列の「目標ROAS」は、損益分岐点をおよそ1.4倍した数字を並べただけの計算例です。適正な上乗せ幅を示すものではありません。広告以外の販管費(人件費・決済手数料・送料)が乗るぶん、損益分岐点ちょうどを目標にすると事業としては赤字になります。上乗せ幅は、自社の販管費が売上に対して何%かを出して、その分だけ乗せてください。
「ROAS300%以上が健全」「500%を超えたら優秀」といった目安をネットでよく見かけますが、算出条件(粗利率・広告費に何を含めたか・計測期間)が書かれていない平均値は、自社の判断材料になりません。他社の平均を目標に置くのはやめて、自社の粗利率から逆算してください。
BtoBで売上が広告にひもづかない場合の目安の出し方
問い合わせから受注まで数か月かかるBtoBは、ROASが計算できない期間が長く続きます。この場合は、受注1件の粗利から逆算してCPAの上限を決めます。
やり方は掛け算1本です。「受注1件の粗利 × 商談化率 × 受注率」で、コンバージョン1件あたりの期待粗利が出ます。
- 受注1件の粗利:30万円
- 問い合わせが商談になる率:20%
- 商談が受注になる率:25%
- 1問い合わせあたりの期待粗利:30万円 × 0.2 × 0.25 = 1万5,000円
この場合、CPA1万5,000円が損益分岐点です。目標CPAはここから販管費のぶんを引いて決めます。ROAS側の早見表と同じ考え方で、上乗せ(または割り引き)の幅は自社の販管費率から出してください。商談化率も受注率も、営業の記録から出せる数字です。感覚で置かず、直近半年の実績を数えてください。
受注データを広告側に返して精度を上げたい場合は、オフラインコンバージョンのインポート手順|Google広告で商談計測で具体的な流れを解説しています。
ROASを計算する5ステップ。スプレッドシート1枚で完結します

ここからが実作業です。専用ツールは要りません。Googleスプレッドシート1枚と、広告管理画面の数字、受注データの3つで完結します。かかる時間は、集計する媒体の数や受注データの持ち方で変わります。
ステップ1 集計する期間と単位を決める
最初に「月次・媒体別」で固定してください。週次だと数字が暴れて判断を誤ります。日次は運用の監視には使いますが、費用対効果の判断には向きません。
もう1つ決めるのが、コンバージョンをいつの月に計上するかです。広告管理画面の集計は、コンバージョンが発生した日ではなく、その前のクリックやインプレッションの日に戻して計上する場合があります。
計上日の基準は媒体と設定で変わるので、使っている媒体のヘルプで確認してください(Google広告ならGoogle広告ヘルプのコンバージョン数の計上方法)。
一方、会計上の売上は入金や納品の月です。この2つは必ずズレます。広告の評価は管理画面の基準、事業の評価は売上計上ベースと決めて、混ぜないでください。
ステップ2 広告費に何を含めるかを決める
ここが一番つまずくところです。広告費を「媒体に払った金額」だけにするか、周辺費用まで入れるかで、ROASの数字は変わります。変わり幅は手数料率や制作費の大きさ次第なので、自社の数字で両方を出して比べてください。
おすすめは2種類のROASを並べて持つやり方です。
- 媒体ROAS:媒体に払った広告費だけで計算する。運用の良し悪しを判断するための数字
- 事業ROAS:媒体費+代理店手数料+クリエイティブ制作費+ツール費で計算する。続けるか止めるかを判断するための数字
代理店に依頼している場合、手数料の料率は契約によって違います。自社の契約書に書かれた率を確認してください。計算例として、広告費100万円・売上350万円(媒体ROAS 350%)で、手数料が広告費の20%=20万円、制作費とツール費が合わせて10万円だとします。事業ROASは 350万 ÷(100万+20万+10万)× 100 で約269%です。粗利率30%の損益分岐点である約333%を下回るので、粗利で広告関連の支出を回収できていません。制作費やツール費をいくら計上するかで数字は変わるので、必ず自社の実額を入れて計算してください。
ステップ3 売上とコンバージョン数を取ってくる
広告管理画面のコンバージョン値をそのまま使うのは、ECやネット予約のように購入金額が自動で送られている場合だけにしてください。それ以外は、自社の受注台帳・レジデータと突き合わせて売上を入れます。
集計に必要なのは次の5項目です。この5つがそろえば、ROASもCPAも出ます。
- 媒体名(Google検索、Meta、Yahoo、など)
- 広告費(税抜で統一する)
- コンバージョン数(購入数、または問い合わせ件数)
- 売上(税抜。BtoBは受注金額)
- クリック数(あとで原因を分解するときに使う)
ステップ4 スプレッドシートに数式を入れる
下の数式をそのままコピーして貼ってください。A列に月、B列に媒体、C列に広告費、D列にCV数、E列に売上を入れた前提です。2行目のセルに入れて、下にコピーすれば動きます。
// Googleスプレッドシート用。1行目は見出し、2行目からデータを入れる
// A列=月 B列=媒体 C列=広告費 D列=CV数 E列=売上(税抜)
// ROAS(%) 売上 ÷ 広告費 × 100
=IF(C2=0, "", ROUND(E2/C2*100, 0))
// CPA(円) 広告費 ÷ CV数
=IF(D2=0, "", ROUND(C2/D2, 0))
// 客単価(円) 売上 ÷ CV数
=IF(D2=0, "", ROUND(E2/D2, 0))
// 粗利ROAS(%) 粗利で見た費用対効果 [0.35 を自社の粗利率に変更]
=IF(C2=0, "", ROUND(E2*0.35/C2*100, 0))
// 損益分岐点ROAS(%) 1 ÷ 粗利率 × 100 [0.35 を自社の粗利率に変更]
=ROUND(1/0.35*100, 0)
// 判定 粗利で広告費を回収できているか
=IF(C2=0, "", IF(E2*0.35/C2>=1, "黒字", "赤字"))
// 事業ROAS(%) 手数料20%と制作費を足して計算
// [F2に制作費、0.2 を実際の手数料率に変更]
=IF(C2=0, "", ROUND(E2/(C2*1.2+F2)*100, 0))
粗利率の「0.35」は必ず自社の数字に置き換えてください。ここを直さないまま使うのが、実際に一番よくある事故です。
ステップ5 毎月見る場所をチェックリストで固定する
計算は続かないと意味がありません。月初に短時間で、下の6項目だけ見る運用にしてください。
- 広告費:先月と比べて増減20%以上なら理由を書き出す
- CV数:先月と比べる。10件未満なら率の変化は判断材料にしない
- ROAS(媒体):目標を超えているか。下回った媒体に印をつける
- ROAS(事業):手数料・制作費込みで黒字か
- CPA:目標CPAの範囲内か。上振れしていれば原因を次章の順で分解
- 計測の健全性:CV数が急にゼロ、または前月の2倍以上になっていないか
集計と一次分析はAIに任せて、判断だけ人がやる
数字を並べるところまではAIが得意です。スプレッドシートの表をそのまま貼って、次のような短い指示を出せば、悪化している箇所の候補は十分出てきます。作り込んだ長いプロンプトは要りません。
あなたはWeb広告の運用担当です。下の月次データを見て、
費用対効果が悪化している箇所を3つ、根拠の数字つきで挙げてください。
そのうえで、来月試す打ち手を優先順位つきで3つ提案してください。
・粗利率 [35%などを入力]
・目標ROAS [自社の目標値を入力]
・データ [媒体/広告費/CV数/売上/CPC/CVR の表を貼る]
判断に足りないデータがある項目は、推測せず「データ不足」と書いてください。
あとはAIと対話しながら、自社の事情に合わせて詰めていけば十分です。
大事なのは、出てきた答えのどこを人が確認するかです。次の3点は必ず自分で見てください。
- 母数:「CVRが1.2%→0.8%に悪化」と言われても、CV数が3件と2件の話なら誤差です。件数を必ず確認する
- 計算の前提:広告費に手数料が入っているか、売上が税込か税抜か。AIは貼られた数字を疑いません
- 止める判断:「この媒体を止める」「予算を寄せる」の最終決定は人がやる。AIの提案は選択肢の一覧として扱う
出した数字の見方。指標は分解して読むと打ち手が決まります
ROASが目標を下回ったとき、「クリエイティブを変えよう」といきなり手を動かすのは遠回りです。ROASは3つの数字の掛け算に分解できるので、どこが落ちたかを先に特定します。
分解式はこうです。売上はクリック数×CVR×客単価、広告費はクリック数×CPC。この2つを割ると、クリック数が消えてROAS = CVR × 客単価 ÷ CPCだけが残ります。つまり費用対効果を動かすレバーは、CVR・客単価・CPCの3本しかありません。
数字を入れて動きを見てみる
具体的な数字で確認します。CPC100円、CVR2%、客単価1万円のとき、CPAは100 ÷ 0.02で5,000円、ROASは1万円 ÷ 5,000円で200%です。
| 変えた条件 | CPA | ROAS | 効き方 |
|---|---|---|---|
| 基準(CPC100円・CVR2%・客単価1万円) | 5,000円 | 200% | — |
| CVRを2%→3%に改善(+50%) | 約3,333円 | 300% | 変化率のぶんだけROASが上がる |
| 客単価を1万→1.3万円に(+30%) | 5,000円 | 260% | CPAは変わらずROASだけ上がる |
| CPCを100→80円に(-20%) | 4,000円 | 250% | 下げすぎると質の悪い流入が増える |
この表で気をつけたいのは、3行とも変化させた幅がそろっていないことです。ROAS = CVR × 客単価 ÷ CPC という式の上では、3つの要素はどれも同じだけ効きます。CVRを50%改善すればROASも50%上がり、客単価を30%上げればROASも30%上がる。表でCVRの行が一番伸びて見えるのは、単に変化幅を大きく置いたからです。
ですから見るべきは「どの指標が偉いか」ではなく、自社ではどれを何%動かせそうかです。CPCは競合の入札で決まる部分が大きく、自社の努力で動かせる幅は限られます。一方CVRはランディングページと広告文の一致度で決まる部分が大きく、手を入れられる余地が残っていることが多い。費用対効果の相談を受けて中身を見ると、広告アカウントより先にページを直したほうが早い、というケースもよくあります。
見る順番を固定する
毎月の点検は、次の順で上から見てください。上の項目が壊れていると、下の数字は読んでも意味がありません。
- CV数が計測できているか。ゼロや異常値ならまず計測の確認
- CVR。落ちていればページ・オファー・流入キーワードの質を疑う
- CPC。上がっていれば競合の入札やキーワードの拡張しすぎを疑う
- 客単価。落ちていれば安い商品ばかり売れている。セット販売や送料無料ラインの見直し
- 媒体間の配分。ROASの良い媒体に寄せる。ただし急に動かさない
目標ROASをAIの自動入札に渡すときの注意
Google広告には、目標広告費用対効果(目標ROAS)を指定してAIに入札を任せる方法があります。どういう仕組みで、どのキャンペーンで使えるのかは、Google広告ヘルプの目標広告費用対効果入札の説明を読んでください。設定手順や設定できる条件は、Google広告ヘルプの目標広告費用対効果(ROAS)の設定ページで確認できます。
運用側で決めておきたいのは、目標値をいじる頻度のルールです。実績のROASを起点に置き、変えたら判断日をカレンダーに書いて、それまでは触らない。学習期間の扱いや、変更後にどのくらい様子を見るかは媒体のヘルプで確認したうえで、社内のルールにしてください。
AIに任せていい範囲と、人がやる範囲。入札単価の調整・配信面の最適化・組み合わせのテストはAIのほうが速くて正確です。一方、コンバージョンの定義(何を成果とみなすか)、粗利率、目標値の設定、止める判断は人の仕事です。ここを渡してしまうと、AIは「安く取れる質の低いコンバージョン」を増やす方向に走ります。
費用対効果の計算でよくある失敗5つと、その防ぎ方

計算式は単純なのに、出てきた数字が実態と合わない。その原因はほぼ決まっています。現場で繰り返し見かける5パターンを挙げます。
失敗1 二重計測でコンバージョンが水増しされている
起きやすいのは、タグを直接ページに貼ったあと、Googleタグマネージャーからも同じタグを配信しているケースです。サイトのリニューアルや担当者交代のあとに見かけます。同じコンバージョンが二重に記録されると、CV数は多く、CPAは安く、ROASは高く見えます。タグの重複がないかはGoogle広告ヘルプのコンバージョントラッキングのトラブルシューティングで確認できます。
この状態で「順調だ」と判断して予算を増やすと、損失が拡大します。
防ぎ方は、月次点検の最初に「広告管理画面のCV数」と「実際の問い合わせ件数・受注件数」を突き合わせることです。管理画面と実件数はもともと一致しないので、ズレていること自体は異常ではありません。見るべきは、そのズレ幅が毎月だいたい同じかどうかです。これまで管理画面が実件数の1.1倍前後で推移していたのに、ある月だけ1.5倍に跳ねた、といった変化が出たら計測の設定を疑ってください。実装面の対処はGoogle広告コンバージョン設定をGTMで実装|二重計測を防ぐ手順にまとめています。
失敗2 広告費に媒体費しか入れていない
起きる状況は、代理店のレポートをそのまま自社の費用対効果として扱っているときです。レポートに載るのは媒体に払った金額だけで、手数料・バナー制作費・LP制作費・計測ツール代は入っていません。
結果として、レポート上はROAS350%で好調なのに、決算では広告関連の支出が全然回収できていない、という食い違いが生まれます。
防ぎ方は、ステップ2で書いた事業ROASを毎月あわせて出すことです。レポートの数字を疑うのではなく、レポートは運用の評価、事業ROASは継続判断、と役割を分けて持ってください。
失敗3 母数が少ないのに率で判断している
起きる状況は、月のCV数が5件前後の状態で「先月はCVR2.0%、今月は1.2%だから悪化した」と結論づけるケースです。
CV数が数件の世界では、1件増減しただけで率が大きく動きます。そこに反応して広告文やターゲティングを毎月いじると、AIの学習がリセットされ、かえって成果が安定しません。
防ぎ方は、判断のルールを先に決めておくことです。ステップ5のチェックリストと同じ基準にそろえて、月のCV数が10件を下回るあいだは率の変化を判断材料にせず、件数と累計の傾向(3か月移動平均)で見る。変更は月1回までにする。この2つを決めておくだけで、無駄な迷走が減ります。
失敗4 成果地点の定義が甘く、質の低いCVが増える
起きる状況は、資料ダウンロードや電話タップをすべて同じ「コンバージョン」として1本にまとめているときです。
結果として、CPAは下がりROASも良く見えるのに、営業が商談にできないリードばかりが溜まります。数字が良いのに売上が増えない、という一番やっかいなパターンです。
防ぎ方は、成果地点ごとに分けて集計し、商談化率をコンバージョンの種類別に出すことです。どの成果地点が商談につながっているかが見えれば、入札や広告文をどこに寄せるかを判断できます。媒体側でコンバージョンごとに価値を設定できる場合は、その値を入札に渡す方法もあります。設定できるかどうかと手順は、使っている媒体のヘルプで確認してください(Google広告ならGoogle広告ヘルプのコンバージョン値の設定)。
失敗5 学習期間中に判断してしまう
起きる状況は、配信開始や入札戦略の変更から数日で「効果が出ていない」と判断して、設定を戻したり止めたりするケースです。
自動入札には学習期間があり、その扱いは媒体ごとに決められています。Google広告の場合の学習期間の長さと、変更が学習にどう影響するかはGoogle広告ヘルプの自動入札についてで確認してください。短い間隔で設定を変え続けると、いつまでも評価できないまま費用だけが出ていきます。
防ぎ方は、変更したらカレンダーに「判断日」を書き込むことです。どのくらいの期間を空けるかは媒体のヘルプに書かれた学習期間の説明にそろえ、それまでは日次の数字を見ても手を出さない、と決めてしまうのが確実です。
使う側の落とし穴。計測は完璧にならない前提で運用する

ここからは、教科書には書かれにくい話をします。2026年の今、広告の計測は「全部は取れない」というのが前提です。これを認めないまま数字を追うと、どこかで必ず矛盾に突き当たります。
管理画面の数字と、実際の売上は一致しません
取りこぼしが起きる場面は、たとえば次のようなものです。
- ブラウザ側のCookieの扱いが変わったとき
- アプリから外部ブラウザに遷移したとき
- 同意管理ツールで計測が止まっているとき
- スマホで見て、パソコンで申し込むなど端末をまたいだとき
逆に、媒体側が実測できなかったぶんを補って表示する仕組みもあります。どの数値が実測で、どの数値が補完されたものかは媒体のヘルプで確認できます(Google広告ならGoogle広告ヘルプのコンバージョン モデリングについて)。いずれにせよ、管理画面の数字と実際の受注件数は一致しないものとして扱ってください。
現実的な運用は、2本立てにすることです。
- 広告管理画面の数字:運用の改善に使う相対値
- 会計・受注台帳の数字:事業判断に使う絶対値
月次で両方を並べ、ズレ幅を把握しておいてください。たとえば管理画面のCV数が実件数の1.2倍で安定している、といった形です。大事なのは倍率そのものではなく、その倍率が月ごとに安定しているかどうかです。安定しているなら、それを補正係数として使って判断すれば十分実用になります。逆に、これまで一定だった倍率が急に変わった月は、計測側で何かが起きたサインとして確認してください。
同意管理まわりの計測もれを減らす実装については同意モードの設定手順|CMPとGTMで計測もれを防ぐ実装の全体像で扱っています。
代理店レポートを見るときの3つの確認点
外注している場合、レポートの読み方で判断が変わります。次の3つは毎回確認してください。悪意の話ではなく、単に立場が違うだけです。
- 広告費の定義:手数料込みか、媒体費のみか。ROASの数字の意味が変わる
- コンバージョンの中身:資料DLとお問い合わせが合算されていないか。内訳を出してもらう
- 間接効果の扱い:「認知に貢献した」という説明が出たら、何の数字で測ったのかを聞く。指名検索数や直接流入の推移など、確認できる指標が返ってくるなら健全です
内製と外注、どこで線を引くか
費用対効果の計算そのものは、外注すべき仕事ではありません。粗利率も受注データも社内にしかないので、自社でやったほうが早く、正確です。この記事のスプレッドシートは、まさに社内でやる部分です。
一方、キャンペーン構造の設計、計測の実装、入札戦略の切り替え判断は、経験差がそのまま結果に出ます。特に計測の実装は、一度ズレると数か月分のデータが使えなくなるので、最初だけプロに入ってもらう価値が大きい部分です。
役割分担のパターンは内製化と外注のハイブリッド戦略|Web広告の役割分担5モデルで整理しているので、自社に近い形を探してみてください。
正直に言うと、少額予算では費用対効果が安定しません
月5万円、CV数が月に数件という規模では、ROASもCPAも月ごとに大きく振れます。これは運用が下手なのではなく、母数の問題です。
この規模でやるべきなのは、細かい最適化ではなく「1媒体に絞って、データが溜まる状態を作る」ことです。複数媒体に分散させると、どの媒体も学習が進まないまま終わります。判断も、月次ではなく3か月の累計で行ってください。
媒体をどう選ぶかで迷っている方は、費用対効果の高い広告媒体の選び方|ROASで比べる手順と指標に比較の手順をまとめています。
よくある質問
ROASとROIはどっちを見ればいいですか
日々の運用判断はROAS、続けるか止めるかの判断はROIで見るのがおすすめです。ROASは売上基準なので反応が早く、媒体やキャンペーンの比較に向いています。ただし利益は分からないので、月末に粗利率をかけて確認してください。商品ごとに原価率が大きく違う場合は、最初からROIで統一したほうが混乱しません。
配信を始めてどれくらいで費用対効果を判断していいですか
自動入札を使っている場合は、まず媒体が示す学習期間が終わるまで待ってください。Google広告の学習期間はGoogle広告ヘルプの自動入札についてに書かれています。そのうえで、CV数が判断に足りる件数(率で見るなら月10件以上)に届いてから評価するのが安全です。ただし例外があり、コンバージョンがゼロのまま続く場合は計測の異常を疑って、その時点で確認してください。それ以外は途中で設定をさわらないほうが結果は良くなります。
費用対効果を出すのに有料ツールは必要ですか
媒体が1〜2つで、集計が手作業でも回っているうちは、スプレッドシートで十分です。媒体が増えて集計の手間が膨らんできたら、効果測定ツールの検討時期です。判断基準は「集計にかかる人件費がツール代を上回るか」。ツールを入れても、粗利率と目標値を決めるのは人の仕事なので、そこは変わりません。
実店舗で、来店の売上が広告にひもづきません
来店を直接測るのは難しいので、代わりに「経路案内のクリック」「電話タップ」「予約完了」を成果地点にして、そこからの来店率を店頭で数える方法をとります。ただし来店が月に数件しかない規模では、聞き取りの結果は月ごとに大きく振れます。1か月分だけで換算率を決めず、数か月ぶんを累計してから使ってください。それでも精度には限界があるので、出した売上はあくまで推定値として扱い、判断は3か月の累計で行うのが安全です。
目標ROASを達成しているのに、売上が伸びません
目標を高く設定しすぎている可能性があります。目標値の高さが配信量や入札にどう影響するかは、Google広告ヘルプの目標広告費用対効果入札の説明を読んで、使っている媒体の仕様として確認してください。そのうえで、効率と規模はトレードオフになる前提で、どちらを優先する時期なのかを先に決めてから目標値を触ってください。変えるときは一度に大きく動かさず、変更後の判断日を決めてから触るのが安全です。
まずは今月分だけ、5つの数字を並べてみてください
今日できる最初の一歩は簡単です。広告管理画面を開いて、先月の「広告費」と「コンバージョン数」の2つをメモする。それだけで、CPAはその場で計算できます。あとは自社の粗利率を思い出せば、続けるべきかどうかの当たりはつきます。
そこまでやってみて「そもそも計測が合っていない気がする」と感じたら、Web広告の効果測定のやり方|3ステップで始めるを次に読んでみてください。数字が信用できない状態のままでは、どんな計算をしても判断を誤ります。
計算はできても「この数字をどう読んで、次に何をすればいいのか」で止まってしまう。そこが一番むずかしいところです。自社のアカウントを一緒に見ながら整理するだけでも道筋は見えてくるので、気になった方は気軽に声をかけてください。現状の数字を整理するところからでも大丈夫です。
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