建設業のAI活用事例|最初に試す業務と外部に依頼する作業

建設業のAI活用事例|最初に試す業務と外部に依頼する作業

この記事の要点

  • 最初に試すのは、日報・議事録・見積回答メールなどの書類業務
  • 大手の映像解析は、自社でシステムを開発している会社の事例
  • 2週間の試し方と、契約前に確認する質問6つを本文で解説

建設業でAIを使うなら、中小の建設会社は日報・議事録・安全書類・見積回答メールといった書類業務の下書きから試すと、費用も失敗も小さく済みます。大手ゼネコンが発表しているカメラ映像の解析や施工計画書の自動作成は、自社でシステムを開発している会社の事例です。そのまま真似できるものではありません。

社員10〜100人ほどの建設会社で、AIを導入するかどうか、どこに依頼するかを決める立場の方に向けた記事です。読み終わる頃には、最初に試す業務を1つ決められて、外部に依頼するときに何を確かめればよいかも分かります。

ツールの操作手順はこの記事では扱いません。業界を問わない最初の1業務の選び方は、AI導入で最初の1業務を選ぶ採点表で解説しています。

Contents / 目次
  1. 建設業のAI活用事例から分かる、最初に試す業務
  2. 自社で試す作業と、会社として仕組みにする作業
  3. 建設業のAIを試す最初の2週間の進め方
  4. 建設業のAI活用がうまくいかない条件と、契約前に確認する質問
  5. 建設業のAI活用でよくある質問

建設業のAI活用事例から分かる、最初に試す業務

本記事では、公開されている建設業のAI活用事例を、カメラ映像で現場の状況を判定する「現場を見るAI」と、文章を作る「書類を書くAI」の2つに分けて考えます。積算や数量の拾い出しのように、どちらにも当てはまりにくい業務は、後の表で別に扱います。中小の建設会社が最初に試すなら、書類を書くAIです。現場を見るAIは、カメラや判定の基準を現場ごとに用意し続ける必要があり、自社に開発の体制が無い会社では続けにくくなります。

建設会社が発表している「現場を見るAI」と「書類を書くAI」の事例

国土交通省は2024年4月に「i-Construction 2.0」の策定を発表し、建設現場のオートメーション化を進めています。建設会社からも、カメラ映像とAIを組み合わせた施工管理や現場の監視の仕組みが発表されています。

清水建設はAI施工管理システムの構築に関するニュースリリースで、次のように説明しています。

清水建設の発表。「建設現場に設置したカメラの映像と独自に開発したAI解析技術を用い、施工状況をリアルタイムに自動判定できる『AI施工管理システム』を構築しました。」

東洋建設も、現場の監視業務を効率化する「生成AI映像分析システム」の開発を発表しています。東洋建設のシステムは、市販のクラウド型AIサービスとAPI(ソフトウェアどうしで機能を呼び出す仕組み)で連携して、カメラ映像を分析します。清水建設と東洋建設のどちらも、自社でシステムを開発した事例です。

書類の側の事例もあります。大豊建設は社内向けの生成AI「大豊AI」をAWS上に構築し、業務のさまざまな場面で使っています。その取り組みはAWS公式ブログの大豊建設の生成AI活用事例で紹介されています。大豊AIの使い方のうち、文字起こしから議事録の下書きを作る、メールの文面を作るといった文章の作業は、法人向けのチャットAIでも試せます。社内規程を探す機能は、大豊建設がAWSのAmazon Bedrock Knowledge Basesを使って作ったものです。

施工計画書の事例もあります。大成建設は2025年11月に、入札公告や特記仕様書などの発注情報と社内の技術資料をもとに、土木工事の全体施工計画書の原稿を自動で作る「全体施工計画書作成支援システム」の開発を発表しています。

建設業の業務別、AIに任せる作業と確認すること

中小の建設会社が試しやすい順に、業務ごとの向き不向きを一覧にしました。◎は最初に試せる業務、○は確認する担当者を決めてから試す業務、△は専用の仕組みや開発が必要になる業務です。

業務AIに任せる作業担当者が確認すること最初に試すか
作業日報・週報音声メモや箇条書きを文章にする人数・数量・天候などの数字◎
打合せの議事録録音から決定事項と宿題を抜き出す決定事項と担当者名◎
施主・元請へのメール見積回答や工程連絡の文面の下書き金額・工期・条件◎
KY(危険予知)・安全書類作業内容から危険要因の候補を出すその現場だけの危険、法令の要件○
協力会社の見積書の転記PDFを読み取り自社の様式に移す(AI-OCR)単価・数量の読み違い○
積算・数量の拾い出し図面から数量を拾うすべての数量△
映像による安全・出来形の監視カメラ映像を判定する誤検知と見逃し△

AI-OCRとは、紙やPDFの文字を読み取ってデータにする仕組みに、AIで項目の判別を加えたものです。様式がそろっている書類ほど読み取りが安定します。

この章で押さえるのは、大手の事例をそのまま目標にせず、表の◎から1業務を選ぶことです。

自社で試す作業と、会社として仕組みにする作業

1〜2人の担当者が自分の書類で試すところまでは、自社で進められます。全現場で同じ手順を回すところからは「仕組みにする作業」になり、外部に依頼すると早く進みます。境目は、使う担当者の数と、AIの出力が社外に出るかどうかです。

判断する項目自社で試す会社として仕組みにする
使う担当者現場監督・事務の1〜2人部署全体・全現場
入力する情報施主名や金額を伏せた文章図面・見積・個人情報を含む
出力の行き先社内の下書き施主・元請・役所に出す書類
使うもの法人向けプランのチャットAI入力フォーム・手順書・既存システムとの連携
誤りが出たとき担当者が書き直せば済む提出書類の誤りや情報漏えいになる

建設業のAI活用セミナーと社内研修、どちらを選ぶか

他社の事例を知りたい段階なら公開セミナーで足ります。自社の書類で使い方を決めたいなら社内研修が向いています。公開セミナーは参加者の業務がばらばらなので、自社の日報や安全書類を持ち込んで試す時間がありません。

建設業向けのAIセミナーや研修を選ぶときは、次の3点を確かめてください。

  • 自社の書類を題材にできるか:一般的な例文だけで終わると、現場に戻ってから使い方が分からなくなります
  • AIに入れてよい情報を決める時間があるか:施主の個人情報や図面の扱いを決めないまま使い始めると、あとで止めることになります
  • 職長や現場監督が参加できる時間と形式か:書類を書いているのは現場の担当者です。事務所の担当者だけが受講しても定着しません

経営者と現場の責任者がそろって、AIに入れてよい情報と使い方を先に決めたい場合は、経営者と社員で考えるAI活用研修で、導入するかどうかを決める材料をそろえる進め方もあります。

外部に依頼すると費用は何で変わるか

AI導入を外部に依頼するときの費用は、次の5つで変わります。見積もりを比べるときは、金額より先に、どの項目が含まれているかをそろえてください。

  • 対象業務の数:日報だけか、安全書類や見積回答まで含むか
  • 既存の仕組みとの連携:施工管理アプリ・会計ソフト・Excelの様式とつなぐかどうか
  • 扱う情報の機密度:法人契約の設定、アクセスできる担当者の制限まで行うか
  • 研修の人数と回数:現場への出張や、職長向けの説明会を含むか
  • 運用後の支援:手順書の更新や、うまくいかないときの相談が含まれるか

依頼先の種類による違いは、ITベンダー・コンサル・研修会社の比較表にまとめています。

費用に見合うかは、短くなる時間で考えます。仮に、現場監督5人が日報に1日30分かけていて、AIの下書きで1日15分短くなったとします。5人×15分×月20日で、月25時間です。この25時間を時給に換算した額と、ツールの利用料や依頼費用を比べれば、続けるかどうかを判断できます。

日報や安全書類のように、全現場で同じ手順を回したい業務がすでに決まっている場合は、書類業務のAI業務効率化の相談で、AIが行う作業と担当者が確かめる作業を分けるところから進める方法もあります。

この章で押さえるのは、外部に依頼するのは「全現場で回す」と決めてからでよい、ということです。それまでは自社で試して、時間を測ってください。

建設業のAIを試す最初の2週間の進め方

最初の2週間は、1業務・1現場・1〜2人に絞って試し、かかった時間を記録します。ここで測った数字が、続けるか、外部に依頼するかを決める根拠になります。

ステップ1。対象を1業務・1現場に絞る

次の4つをすべて満たす業務を1つ選びます。日報か打合せの議事録が当てはまりやすい業務です。

  • 頻度:毎日か毎週発生する
  • 型:書く項目が決まっている
  • 影響:誤りがあっても社内で気づける
  • 測定:今の所要時間を記録できる

ステップ2。AIに入力してよい情報を決める

試す前に、入力しない情報を決めて紙1枚で配ります。次のひな形の[ ]を自社の内容に書き換えて使ってください。

【AI利用ルール(試行期間用)】
1. 使うのは会社が契約した法人向けプランのアカウントだけ
2. 入力しない情報
   ・施主、入居者の氏名と住所
   ・未公開の図面、見積金額、協力会社の単価
3. 写真を入れる場合は、表札・車のナンバー・顔が写っていないものに限る
4. AIの出力は下書きとして扱う。提出前に[確認する担当者の役職]が数字と固有名詞を確認する
5. 誤りや困ったことは[記録するシートの名前]に書く

入力した内容をAIの学習に使うかどうかや、管理者が使える機能は、サービスとプランによって違います。契約するサービスの利用規約とプランの説明を公式サイトで確認してください。比べるときの観点はAIの法人プランと個人プランの違いで解説しています。正式なルールにするときは、生成AI社内ルールのサンプルでより詳細な項目まで広げます。

ステップ3。作業日報の下書きをAIに作らせる

現場監督が帰りの車内などで音声メモを残し、その文字起こしをAIに渡して日報の下書きを作らせます。指示文は次のような短いたたき台で十分です。あとはAIと対話しながら、自社の日報の様式に合わせて詰めてください。

あなたは建設会社の現場監督の補助です。
次のメモから、社内向けの作業日報を作ってください。
・項目は「本日の作業」「人員」「天候」「明日の予定」「気づいたこと」
・メモに無い数字や作業は書かない。分からない点は「要確認」と書く

メモ:
[ここに音声メモの文字起こしや箇条書きを貼る]

たとえば、次のメモを渡したとします。

3階スラブ配筋 午前で終わり 鉄筋屋4人 午後から型枠
雨降らず 明日コンクリ打設 ポンプ車8時
隣地のブロック塀にひび 写真撮った

AIはこのメモを、項目ごとに分けた日報の文章にします。担当者が確認するのは、次の3か所です。

  1. メモに無い数字が足されていないか。「ポンプ車1台」「型枠大工3人」のように、AIがもっともらしい数字を補うことがあります
  2. 時刻と予定が正しいか。「8時」がポンプ車の到着時刻なのか打設の開始時刻なのか、メモからは分かりません
  3. 報告が必要な事項が埋もれていないか。隣地のブロック塀のひびは、施主や近隣への説明に関わるので、日報の中で目立つ位置に書きます

ステップ4。2週間後に続けるかを決める

2週間の試行が終わったら、次の4項目を記録して比べます。

  • 所要時間:試す前と試した後の、1件あたりの分数
  • 修正の回数:AIの下書きを担当者が書き直した箇所の数
  • 誤りの種類:数字の補い、固有名詞の誤り、抜けなど
  • 担当者の意見:続けたい理由と、やめたい理由

修正に元の作業と同じくらいの時間がかかっているなら、その業務はAIに向いていません。対象を議事録やメールに変えて、もう2週間試します。時間が短くなっていて、ほかの現場にも広げたいなら、そこが仕組みにする作業へ進む目安です。

この章で押さえるのは、2週間で「所要時間」と「修正の回数」を測れば、続けるか、外部に依頼するかを数字で決められることです。

建設業のAI活用がうまくいかない条件と、契約前に確認する質問

建設業のAI活用は、現場の担当者を巻き込まずに決めたときと、AIの出力をそのまま社外に出したときに失敗しやすくなります。次の4つは、建設業の書類と現場の性質から起きる失敗です。

事務所だけで決めると、現場で使われない

日報や安全書類を書いているのは、職長と現場監督です。事務所の担当者だけでツールを選ぶと、手袋をしたままの入力や、電波の弱い現場、移動中の入力といった条件に合わず、使われなくなります。試行の担当に職長を1人入れて、音声と文字のどちらで入力するかを本人に選んでもらってください。

協力会社ごとに見積書の様式が違うと、転記の確認が増える

AI-OCRで協力会社の見積書を自社の様式に移す場合、様式が会社ごとに違うほど読み取りの誤りが増えます。確認に時間がかかり、手入力より遅くなることもあります。取引の多い協力会社3社の様式から始めて、単価と数量はすべて元の書類と照らしてください。

安全書類をAIの出力のまま提出すると、現場の危険が抜ける

AIは「高所作業」「重機の旋回」のような一般的な危険要因は出せます。一方で、その現場の地形、隣地との距離、重機を置く位置は知りません。法令の要件も最新とは限りません。安全書類と施工計画は、書類ごとに確認する担当者と確認項目を決めてから使ってください。

現場が毎回変わる会社でカメラ解析を入れると、設置費用が現場ごとにかかる

カメラ映像の解析は、カメラと通信を現場に据えて使う仕組みです。工期の長い現場ほど設置の費用を回収しやすく、工期の短い現場を次々に回る会社では、現場ごとにカメラと通信を設置し直す費用がかかります。試すなら、資材置き場や自社の加工場のように、場所が変わらない所から始めます。

外部に依頼する前に確認する質問6つ

AI導入を外部に依頼する前に、次の6つを確認してください。答えがあいまいな項目は、契約後に追加費用になりやすい項目です。

  1. 最初に対象にする業務は何で、試行期間に何を測りますか
  2. 入力した内容がAIの学習に使われない設定になっていますか。その設定を確認するのはどちらの担当者ですか
  3. 今使っている施工管理アプリやExcelの様式を変えずに使えますか
  4. 職長や現場監督への説明・研修は、見積もりに含まれていますか
  5. 手順書と入力フォームは、自社で修正できる形で受け取れますか
  6. 効果が出なかった場合、どの時点で契約を止められますか

提案書を受け取ったあとの読み方は、経営者が契約前に見るAI導入提案書の5つの視点で詳しく解説しています。

この章で押さえるのは、失敗の多くは「誰が入力し、誰が確認するか」を決めないまま始めたときに起きる、ということです。依頼先には、それを一緒に決めてくれるかを確かめてください。

建設業のAI活用でよくある質問

建設業向けのAIセミナーに社員を参加させれば、AI活用は進みますか?

セミナーだけで進むことはまれです。他社の事例を知るには役立ちますが、自社の日報や安全書類で試す時間がないからです。参加したら、社内で1業務を選んで2週間試すところまでを、参加の条件にすると定着しやすくなります。

職長がスマホでの文字入力を苦手にしています。それでも日報にAIを使えますか?

使えます。スマホに話しかけて音声メモを残し、その文字起こしからAIが日報の下書きを作る形なら、文字を打つ必要はありません。現場の騒音で聞き取りが崩れることがあるので、車内や詰所で録音するよう決めておくと安定します。

図面をAIに読ませて、積算や数量の拾い出しまで任せられますか?

汎用のチャットAIが図面の数量を正確に読み取れるとは限らないため、任せる場合でも、すべての数量を担当者が確認する前提になります。数量の拾い出しは積算専用のソフトを検討する業務です。チャットAIに任せるなら、見積書の送付文や条件の説明文など、金額を決めたあとの文章にとどめてください。

建設会社のAI導入に補助金は使えますか?

国や自治体のデジタル化向けの補助金で対象になる場合があります。国の代表的な制度は、デジタル化・AI導入補助金(旧IT導入補助金)です。

デジタル化・AI導入補助金(旧IT導入補助金)の公式サイトでは、対象のツール、申請を支援する事業者、公募のスケジュールを確認できます。

これらは年度ごとに変わるため、申請する年度の公募要領を公式サイトで確認してください。交付決定より前に契約や支払いをすると対象外になる制度もあります。

まずは、現場監督の方に、昨日の日報を書くのに何分かかったかを確認してみてください。その数字が、AIを試したあとに比べる基準になります。外部に依頼するときの見積もりの見方は、AI導入の伴走支援の費用と見積もり内訳で解説しています。

試したい業務は決まったものの、全現場で回す手順や入力ルールを社内だけで決めるのは難しいと感じた方は、お気軽にご相談ください。コレットラボの書類業務のAI業務効率化の相談では、今の書類の流れを伺ったうえで、AIに任せる作業と担当者が確かめる作業を一緒に洗い出します。

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