AI研修の選び方|研修会社を比べる7項目と依頼前に決める目的
この記事の要点
- 選ぶ前に、研修後にAIで行う業務を1つと担当者を決める
- 研修会社は7項目で比較。確かめる質問と答えの見分け方を表で掲載
- 使われない研修になる原因は、題材・使うAI・情報ルールのずれ
AI研修を選ぶときは、研修会社を比べる前に「研修のあと、どの業務を、誰がAIで行うようになるか」を1文で決めます。そのうえで、次の章の表にある7項目で研修会社を比べると、受けたのに使われない研修を避けられます。
社員向けのAI研修を外部に依頼するか検討している経営者・役員・院長の方に向けた記事です。読み終わる頃には、研修会社への問い合わせで何を確かめ、返ってきた答えのどこを見ればよいかが分かります。
この記事で扱うのは次の4つです。
- 依頼前に決める目的
- 7項目の比較表と問い合わせ文
- 費用と助成金の確認点
- 研修が使われなくなる条件
社内で講師を立てて教える進め方は生成AIの社内研修の内容と選び方で解説しています。
Contents / 目次
AI研修の選び方の結論。目的を決めてから7項目で比べる
AI研修は「目的を1文で書く→受講者と対象の業務を決める→7項目で研修会社を比べる」の順で選びます。順番を逆にして、カリキュラムの見た目や講師の肩書きから選ぶと、自社の業務と結びつかない研修になりやすいためです。
ここでいうAI研修とは、社員が生成AIを業務で使えるようにするための研修のことです。生成AIとは、ChatGPT・Gemini・Claudeのように、指示した内容に合わせて文章や画像などを作るAIを指します。
研修会社を比べる7項目と、問い合わせで確かめることは次の表のとおりです。右の列は「この答えが返ってくれば具体的に考えている」と判断できる返答の例です。
| 比べる項目 | 確かめること | 具体的な答えの例 |
|---|---|---|
| 1. 内容の調整 | 自社の業務を演習の題材にするか。事前の聞き取りがあるか | 「事前に対象の業務を伺い、演習の題材に使います」 |
| 2. 使うAIとプラン | 研修で使うAIとプランが、社内で使うものと同じか | 「御社が契約する予定のプランで演習します」 |
| 3. 情報の扱い | 入力してよい情報の線引きを研修の中で扱うか | 「社内ルールのひな形を用意し、研修中に決めていただきます」 |
| 4. 形式と人数 | 対面かオンラインか、講義と演習の時間配分、1回の人数 | 「講義と演習の時間配分を、提案書に分けて記載します」 |
| 5. 講師 | 自社の業種・業務についての質問に答えられるか | 「事前に質問を受け付け、研修の中で回答します」 |
| 6. 研修後の支援 | 質問の窓口と、使われているかの確認があるか | 「研修の数週間後に、利用状況を一緒に確かめます」 |
| 7. 費用の内訳 | 含まれる作業と別料金の作業が分かれているか | 「事前の聞き取り・教材・交通費を分けて記載します」 |
「AI研修は意味ない」と言われるのは、研修の中身より、研修の前後が決まっていないときです。次の3つが欠けると、研修で覚えた操作を翌週に使う理由がありません。
- 研修後に使う業務が決まっていない
- 使ってよいAIが決まっていない
- 入力してよい情報が決まっていない
理由の詳しい分析はAI研修は意味ないと言われる理由と依頼前の質問8つにまとめています。
依頼前に決める目的と、研修会社への確かめ方5ステップ
依頼前に決めることを、次の5つのステップで進めます。ステップ1の目的シートを埋めておけば、研修会社への問い合わせ文はそのまま書けます。
ステップ1. 研修のあとAIで行う業務を1つ書く
最初に、研修のあとAIで行うようになる業務を1つだけ選びます。「全社のAI活用」のように広く書くと、研修会社は汎用の内容しか提案できません。次の目的シートを埋めてから、研修会社に連絡してください。
【AI研修の目的シート】
1. 研修のあと、AIで行うようになる業務(1つ)
例)お客様からの問い合わせメールへの返信の下書き
2. その業務を行う担当者と人数
例)営業事務 3名
3. いまの1件あたりの時間(研修前に3件測る)
例)1件 約20分
4. 研修のあとに見る数字と時期
例)4週間後に、同じ業務の1件あたりの時間と、AIを使った件数
5. AIに入力しない情報
例)お客様の氏名・電話番号・見積金額
6. 使うAIとプラン(決まっていなければ「未定」)
7. 研修の内容と社内ルールを決める責任者(経営者・役員)
ステップ2. 受講者と、AIの使い方を決める人を決める
受講者には、対象の業務を行う担当者に加えて、AIの使い方を決める経営者か役員を入れます。社員だけが受けると、研修の中で「この情報は入力してよいか」という質問が出ても、その場で決められる人がいません。
経営者と社員が同じ回に受けて、入力する情報の扱いや試す業務を話し合いたい場合は、120分の経営者と社員で考えるAI活用研修で、導入するかを決める材料を少人数でそろえる進め方もあります。導入方針の策定や社内規程の作成は、この研修には含みません。
ステップ3. 研修で使うAIとプランを先に決める
研修で使うAIとプランは、研修会社に連絡する前に決めます。研修では有料プランの機能を使い、社内では無料版を使う、という組み合わせになると、研修で使った機能の一部が社内では使えないことがあります。
プランは、入力した内容の扱いと管理機能で選びます。ChatGPTの場合、入力した内容がモデルの改善に使われるかはプランと設定で変わります。
最新の扱いはOpenAIの公式ヘルプHow your data is used to improve model performanceで確かめてください。法人プランとの違いはAIの法人プランと個人プランの違いで比べています。
IPAの情報セキュリティ10大脅威 2026では、組織編の3位に「AIの利用をめぐるサイバーリスク」が初めて入りました。会社が使うAIを決めないまま研修だけ受けると、従業員が個人のアカウントで業務に使い、会社が把握できない状態になりかねません。
ステップ4. 7項目の質問を送り、答えを表に書き出す
候補の研修会社には、同じ問い合わせ文を送ります。質問をそろえると、答えを7項目の表に並べて比べられます。
件名:AI研修のご相談(受講予定[〇]名・[〇]月実施希望)
[研修会社名]
ご担当者様
社員向けのAI研修を検討しています。次の点を、
提案書かメールでお教えいただけますでしょうか。
・研修後に変えたい業務は「[業務名]」です。この業務を演習の題材にできますか
・研修で使うAIとプランは何ですか。当社は[ツール名・プラン名/未定]の予定です
・入力してよい情報の線引きや社内ルールは、研修の中で扱いますか
・講義と演習の時間配分と、1回あたりの人数を教えてください
・講師は、事前に当社の業務についての質問を受けていただけますか
・研修後の質問の窓口と、利用状況の確認はありますか
・見積もりに含まれる作業と、別料金になる作業を分けてお示しください
希望時期:[〇月]/受講予定:[〇名]/形式:[対面・オンライン]
提案書が複数届いたら、比較表の下書きはAIに任せられます。ChatGPTやClaudeに提案書を渡し、次の指示を出発点にしてください。提案書に秘密保持の取り決めがある場合は、会社で契約した法人プランで扱います。法人プランをまだ契約していなければ、取り決めの対象になっている部分を伏せてから渡すか、その提案書はAIに渡さず、ご自身で表に書き出します。
添付した研修会社の提案書を読み、次の7項目で比較表を作ってください。
項目:内容の調整/使うAIとプラン/情報の扱い/形式と人数/講師/研修後の支援/費用の内訳
各セルは提案書に書かれている内容だけで埋め、書かれていない項目は「記載なし」と書いてください。
各セルに、根拠にした提案書のページか見出しを添えてください。
AIが作った表は、根拠のページを開いて数か所を照らし合わせます。「記載なし」のセルは、そのまま研修会社への追加の質問になります。
ステップ5. 研修後に見る数字を研修前に測る
研修の効果は、研修前と研修後に同じ業務を同じ方法で測って比べます。研修の4週間後に、次の2つを測ってください。
- 1件あたりの時間:目的シートの3番と同じ方法で、もう一度測る
- AIを使った人数:対象の担当者のうち、週1回以上AIを使った人を数える
削減時間を費用と比べる計算はAI研修の費用対効果の出し方で示しています。
この章の結論。目的シートと問い合わせ文がそろえば、研修会社の答えを同じ7項目で比べられます。答えが「記載なし」のまま埋まらない会社は、自社の業務に合わせた研修を設計していない可能性があります。
AI研修の費用が変わる内訳と、人材開発支援助成金の確認点
AI研修の費用は、時間と人数に加えて、自社向けにどこまで内容を変えるかで大きく変わります。見積もりを比べるときは、合計額より、次の作業が含まれているかを見てください。
- 事前の聞き取り:対象の業務を聞き取り、演習の題材を作る作業。含まれないと汎用の教材になる
- 教材と演習の作成:自社の業務に合わせた演習の作成。既製の教材を使うだけなら安くなる
- 時間・回数・人数:1回の時間、実施回数、1回あたりの受講者数
- 講師の交通費:対面の場合の移動費と宿泊費。見積もりに含まれるか、別料金かを確かめる
- 研修後の支援:質問の窓口や利用状況の確認。別契約になっていないか確かめる
見積書に出ない費用もあります。
- 受講者の勤務時間:仮に10名が2時間受講すれば、20時間分の業務が止まる
- 研修後に使い続けるAIの利用料:研修費と違い、毎月かかる
項目ごとの見方はAI研修の費用と内訳8項目で詳しく比べています。
助成金を使う場合は、厚生労働省の人材開発支援助成金のページで、最新のパンフレットと要件を先に確かめます。人材育成支援コースでは、主に次の点を確認してください。要件は改正で変わるため、申請前に必ず最新の資料と照らし合わせます。
- 計画届の期限:訓練開始日の6か月前から1か月前までに提出する
- 訓練時間:10時間以上。2時間前後の研修1回では満たさない
- 事業内訓練と事業外訓練:事業主が企画・主催すれば、外部講師を招いても事業内訓練になる。研修会社などの教育訓練機関が企画・主催する研修は事業外訓練で、支給の要件が異なる
- 費用の扱い:助成されるのは訓練経費などの一部で、研修の費用が全額戻るわけではない
助成の対象にならない訓練も、コースごとに決まっています。たとえば事業展開等リスキリング支援コースでは、令和8年8月3日からの改正で、特定の業務に当てはめない「生成AIを利用するために汎用的なプロンプトの作り方を学ぶ訓練」が助成対象外になりました(経過措置があります)。一方、営業担当者が生成AIを使って商品提案書の構成案作成・文章生成・修正方法を学ぶ訓練は、業務に直結するとして助成対象の例に挙がっています(厚生労働省令和8年8月3日からの変更点について)。「AI研修なら対象になる」とは言えません。
助成金の対象になるかは、研修会社ではなく、自社が主催する訓練の計画として要件に合うかを労働局に確かめます。計画届は訓練開始日の1か月前までに出すので、助成金を前提にすると、研修を始められるのは早くても計画届を出してから1か月後です。申請の流れはAI研修の助成金の条件と申請の流れで解説しています。
「AI研修は意味ない」になる条件と、研修会社に任せる作業
研修が使われなくなるのは、研修会社の選び方より、選ぶ前に決めていなかったことが原因になる場合です。AI研修に特有の3つの条件と、防ぎ方を挙げます。
汎用の講座を選ぶと、翌週の業務で使う題材が無い
「ChatGPTの基本操作」のような既製の講座だけを選ぶと、演習の題材が架空の会社の文章になりやすくなります。受講者は操作を覚えても、自分の業務のどこで使うかを研修の外で考える必要があり、そこで止まります。防ぐには、問い合わせの1つ目の質問で「自社の業務を題材にできるか」を確かめ、題材に使う資料(個人情報を外した過去のメールなど)を研修前に用意します。
研修のAIと社内で契約するプランが違うと、覚えた操作が使えない
研修会社が自社で契約したプランで演習し、受講者の会社は別のプランを使う場合、ファイルの読み込みや共有など、研修で使った機能が社内では使えないことがあります。プランごとに使える機能は、ChatGPTなら公式のChatGPTの料金プランのページで比べられます。
防ぐには、ステップ3で決めたプランを研修会社に伝え、そのプランで演習してもらいます。プランが未定なら、研修の中で比べてもらう依頼もできます。
入力してよい情報を決めずに受けると、使わないか個人で使うかに分かれる
研修で「機密情報は入力しないでください」とだけ伝わると、受講者は何が機密か判断できません。慎重な担当者は使わなくなり、そうでない担当者は個人のアカウントで使い始めます。
防ぐには、入力しない情報を具体的に書いた社内ルールを研修前に作るか、研修の中で決めます。ひな形は生成AI社内ルールのサンプルにあります。
研修会社に任せる作業と社内に残る作業
研修会社に任せられるのは、教えることと題材づくりまでです。どの業務で使うか、何を入力してよいかを決めるのは社内に残ります。
| 作業 | 担当 |
|---|---|
| 対象の業務と目的を決める | 社内(経営者・役員) |
| 使うAIとプランを決めて契約する | 社内 |
| 入力してよい情報を決める | 社内(ひな形は研修会社が用意できる) |
| 業務の聞き取りと演習の作成 | 研修会社 |
| 研修の実施と質問への回答 | 研修会社 |
| 研修後の数字を測る | 社内(確認の支援は研修会社に依頼できる) |
研修のあと、1つの業務でAIを使う仕組みまで作りたい場合は、研修とは別の依頼になります。AI導入支援・DX支援では、業務と実現したいことを伺って優先するテーマを決め、その業務に合う仕組みを設計・開発します。
この章の結論。使われない研修を防ぐ鍵は、題材・使うAI・入力してよい情報の3つを研修前に社内で決めることです。研修会社は、この3つについて質問したときの答えの具体さで見分けられます。
AI研修の選び方でよくある質問
AI研修は動画のeラーニングと講師が来る研修、どちらを選べばいい?
目的で分かれます。全社員にAIの仕組みと入力しない情報を同じ内容で伝えるなら、動画の講座が向いています。特定の業務でAIを使えるようにしたいなら、自社の業務を題材に演習できる講師つきの研修が向いています。動画で基礎をそろえてから演習に進む組み合わせもあります。
AI研修の前に、ChatGPTなどの法人プランを契約しておくべき?
契約まで済ませる必要はありませんが、使うプランは研修前に決めておきます。研修で使うプランと社内で使うプランが違うと、研修で覚えた機能が社内で使えないことがあります。予定のプランを研修会社に伝え、そのプランで演習してもらいましょう。
人材開発支援助成金を使えば、AI研修の費用はかからない?
かからないわけではありません。助成されるのは訓練経費などの一部で、研修の費用が全額戻るわけではありません。計画届は訓練開始日の6か月前から1か月前まで、訓練時間は10時間以上などの要件もあります。最新の要件は厚生労働省の人材開発支援助成金のページで確かめ、自社の計画が要件に合うかは労働局に確かめてください。
社員が5人の会社でも、研修会社にAI研修を依頼する意味はある?
人数より、AIで変えたい業務が決まっているかで判断します。少人数なら、社長と社員が同じ回に受けて、入力してよい情報をその場で決められます。業務が決まらないうちは、社長が自分の業務でAIを試し、変えたい業務が見えてから依頼すると、研修の題材がはっきりします。
まずは、研修のあとAIで行いたい業務を1つ選び、その業務の1件あたりの時間を3件分だけ測ってみてください。講師を招く研修で社内が準備する作業は、AI研修の講師派遣の分担表と準備チェックリストで確かめられます。
研修会社を比べる前に、どの業務から始めるか、何を入力してよいかを決めきれないと感じた方は、経営者と社員で考えるAI活用研修のページをご覧ください。120分の研修で、事前打ち合わせで伺った担当業務をもとに、AIの仕組み・依頼の伝え方・入力する情報の扱いを説明し、どの業務から試すかを講師と話し合います。自社の資料を使う演習をご希望の場合は、初回のご相談で伺います。導入方針の策定や社内規程の作成は、研修に含みません。
仕事で使えるAI活用情報をLINEで
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