経営相談をAIで|月次の試算表を読む問いの型と渡す資料

経営相談をAIで|月次の試算表を読む問いの型と渡す資料

この記事の要点

  • 試算表は取引先名を消し、今月の出来事を添えて渡す
  • 問いの型は数字の確認から次に聞く相手までの4段
  • 税額・節税・申告は税理士へ。線引きの表を本文に掲載

経営相談にAIを使うなら、月次の試算表を毎月同じ形で渡し、同じ問いの型で聞く方法が確実です。AIに任せるのは、数字の読み取りと、変化の大きい科目の洗い出しまで。変化の理由を確かめる作業と税金に関わる判断は、経営者と税理士が受け持ちます。

顧問税理士の月次報告を受けていても、試算表の数字を自分の言葉で説明しきれず、AIで読めないか試そうとしている経営者・役員の方に向けた記事です。読み終わる頃には、来月の締めのあとに、どの表から何を消してAIに渡し、返ってきた文のどこを確かめるかを決められる状態を目指します。

AIに向く経営相談の全体像はAIに経営相談できることと専門家に回す相談で解説しています。この記事は、毎月の試算表を題材にした相談に絞ります。

Contents / 目次
  1. 経営相談をAIにするなら、月次の試算表と問いをセットで渡す
  2. 試算表をAIで読む毎月の手順。書き出しから答えの確かめ方まで
  3. AIに聞いてよい経営相談と、税理士に聞く相談の線引き
  4. 試算表をAIに読ませるときにつまずく5つの条件
  5. 自社で試す作業と、会社として仕組みにする作業
  6. 経営相談にAIを使うときのよくある質問

経営相談をAIにするなら、月次の試算表と問いをセットで渡す

経営の相談相手としてAIが役に立つのは、数字を早く並べ直し、「先月と何が違うか」を言葉にする作業です。一方で、なぜ違うのかは試算表に書かれていません。理由についてのAIの答えは、推測にとどまります。

そのため、毎月の相談では次の3つをそろえて渡します。

  1. 月次推移の試算表(損益計算書と貸借対照表)と、前年同月の数字
  2. 今月あった出来事を書いた前提メモ(大口の受注、賞与の支払い、設備の購入など)
  3. 毎月同じ問いの型

問いを毎月そろえると、AIの答えも毎月同じ順に並びます。前月の答えと並べて読めるので、「3か月続けて粗利率が下がっている」のような流れに気づきやすくなります。

相談の中身ごとに、AIに任せることと経営者が確かめることを分けると、次の表になります。

毎月の相談の中身AIに任せられること経営者が確かめること
数字の読み取り売上高・売上総利益・営業利益・現預金などを抜き出して並べる抜き出した金額が試算表と一致しているか
変化の洗い出し前月比・前年同月比で増減の大きい科目を、金額と率で挙げる率の計算が合っているか(電卓で1〜2か所)
変化の理由考えられる理由を「推測」として挙げる営業・製造・経理の担当者に聞き、事実かどうかを確かめる
次の打ち手確認する質問や、検討する選択肢の案を出すどれを実行するか(決めるのは経営者)
税金・申告「税理士に確認する項目」として書き出すまで税理士に相談して判断する

お金の出入りを月ごとに見直したい場合は、試算表ではなく資金繰り表が題材になります。手順は資金繰り表をAIで見直すときに入力してよい数字で解説しています。

試算表をAIで読む毎月の手順。書き出しから答えの確かめ方まで

毎月の流れは5つのステップです。月次の締めが終わり、税理士の月次報告を受ける前に行うと、報告の場で聞く質問を先に用意できます。

ステップ1 会計ソフトから月次推移表を書き出す

会計ソフトの帳票から、損益計算書と貸借対照表の「月次推移表」をExcelかCSVで書き出します。前年同月と比べるので、前期の同じ月まで入る期間を選びます。帳票の名前と書き出しの手順は会計ソフトごとに違うため、各社の公式ヘルプで確かめてください。

PDFしか手に入らない場合は、顧問税理士に月次推移表をExcelで送ってもらえないか相談してみましょう。PDFの表は、AIが読み取るときに列がずれることがあります。

ステップ2 社外に出してはいけない情報を消す

注意したいのは、科目の合計額より、補助科目と摘要に書かれた名前です。売掛金の補助科目に取引先名が並んでいたり、給料手当の補助科目に社員の名前が入っていたりします。AIに渡す前に、次の表に沿って消すか置き換えます。

試算表に含まれる情報AIへの渡し方
取引先名・顧客名(補助科目・摘要)「A社」「B社」の記号に置き換える。対応表は社内だけに保存する
社員ごとの給与・役員報酬の内訳科目の合計額だけにする
銀行名・口座番号・借入の契約書渡さない。借入金は残高の合計だけにする
取引先との契約で開示しないと約束した取引条件渡さない
未公表の事業譲渡・出資の話、取引先の信用情報渡さない

使うAIの設定も確かめます。入力内容を学習に使うかどうかの扱いは、提供元とプランごとに違い、変わることもあります。会社の数字を入れる前に、次の点を提供元の公式ヘルプや利用規約で確かめます。

  • 法人向けプランの場合:契約するプランで、入力内容が学習に使われるかどうか
  • 個人向けプランの場合:入力内容を学習に使わない設定があるかと、その設定の名前

経理の担当者が個人のアカウントでAIに経理のデータを入れ始めていて、入力してよい情報がまだ決まっていない場合は、経営者と社員で考えるAI活用研修で、入力した情報がどう扱われるかと、契約・設定・社内ルールのどこを確かめるかを、経営者と社員が一緒に学べます。

ステップ3 今月あった出来事を前提メモに書く

試算表には「なぜその金額になったか」が書かれていません。前提メモが無いと、AIは数字の動きに合う理由を一般論から組み立てます。3〜5行で足りるので、次のひな形を埋めます。

【対象月】2026年9月
【今月あった出来事】
・[大口の受注・失注、値上げ、新商品など]
・[賞与・退職金・設備の購入など、毎月は出ない支払い]
・[社員の増減、営業日数の違い]
【月次の処理】減価償却費と賞与を毎月に分けて計上しているか [している/していない/分からない]
【科目の使い方】[例 雑収入には毎月の駐車場の賃料収入を入れている]
【今月特に聞きたいこと】[例 粗利率が下がった理由の候補]

ステップ4 問いの型を貼って聞く

置き換え済みの試算表と前提メモを添付し、次の問いの型を貼ります。出発点のたたき台なので、聞きたいことが増えたら4番の後ろに足し、AIと対話しながら自社に合う形に詰めてください。

あなたは中小企業の経営者の相談相手です。
添付の月次推移表(損益計算書・貸借対照表。取引先名は記号に置き換え済み)と前提メモを読み、次の順に答えてください。

1. 読み取った今月の売上高・売上総利益・営業利益・現預金・売掛金の金額(表との照合用)
2. 前月比・前年同月比で変化が大きい科目を5つまで。金額と率を併記
3. 変化について「表の数字から言えること」と「表だけでは分からないこと(推測)」を分けて書く
4. 来週、社内のどの担当者に何を確認すればよいかの質問案を3つ

税金の計算や申告に関わる点は、「税理士に確認する項目」として最後に列挙してください。

答えの形を、架空の数字で示します。売上高が前年同月の1,050万円から1,180万円に、売上原価が610万円から720万円に、販管費が380万円から410万円に増え、売掛金が前月末から330万円増えた会社の場合、次のような答えが返ってきます。

1. 今月 売上高1,180万円/売上総利益460万円/営業利益50万円
2. 売上高 前年同月比+12.4%。売上原価 同+18.0%
   売上総利益率 41.9%→39.0%(2.9ポイント低下)
   営業利益 60万円→50万円。売掛金 前月末比+330万円
3. 表から言えること 売上は増えたが、原価の伸びが売上の伸びを上回った
   推測 仕入価格の上昇か、利益率の低い案件の増加が考えられる。表だけでは区別できない
4. 質問案
   ・営業部長に「9月の受注のうち、粗利率が30%を下回る案件はどれか」
   ・経理担当者に「売掛金の増加は、9月末の請求が多いためか、入金の遅れか」
   ・購買担当者に「主な材料の仕入単価は前年から変わったか」

使えるのは、3番の「表だけでは区別できない」という切り分けと、4番の質問案です。理由の候補を社内の誰に聞けば確かめられるかまで出ていれば、翌週の会議でそのまま使えます。

ステップ5 返ってきた文を元の表で確かめる

AIは表の数字を読み違えたり、率の計算を誤ったりすることがあります。毎月、次の4点を確かめてから答えを使います。

  • 読み取りの一致:1番の金額を試算表と照らす。1つでも違えば、列がずれて読まれている
  • 率の検算:前年同月比と利益率を、電卓で1〜2か所計算する
  • 推測の混入:「表から言えること」に、試算表に無い事実(仕入先の値上げなど)が入っていないか
  • 科目の意味:自社独自の使い方をしている科目を、一般的な意味で説明していないか

AIがもっともらしい誤りを返す理由と減らし方は、生成AIのハルシネーションを業務で減らす手順で解説しています。

この章で押さえるのは、渡す前に「消す」、受け取った後に「確かめる」を毎月同じ手順で行うことです。この2つを決めておけば、誰が試算表を書き出しても、同じ手順で渡して確かめられます。

AIに聞いてよい経営相談と、税理士に聞く相談の線引き

試算表の数字の読み方や、売上・利益の変化について考える相談は、AIに聞いてかまいません。税額の計算、節税の方法、申告内容の判断は、税理士に相談します。

税理士法(e-Gov法令検索)は第2条で、他人の求めに応じて行う税務代理・税務書類の作成・税務相談を税理士業務と定め、第52条で次のように定めています。

税理士法第52条。「税理士又は税理士法人でない者は、この法律に別段の定めがある場合を除くほか、税理士業務を行つてはならない。」

AIの答えは誤ることがあり、税理士の判断に代わるものでもありません。申告や納税に影響する判断はAIに任せず、税理士に相談してください。国税庁の税理士制度のQ&A(税理士の業務)は、税務相談を、税額の計算の基になる事項(課税標準等)について具体的な質問に答えたり意見を述べたりすることと説明し、有償でなくても税理士業務に当たるとしています。そのため、税理士でない外部の会社(AI導入の支援会社を含む)は、その会社の税額の計算に関わる具体的な質問に答えることや、申告書の作成を引き受けられません。

相談の例聞く相手
粗利率が下がった月に、どの科目から見ればよいかAI(答えは試算表で確かめる)
販管費のうち、前年より増えた科目はどれかAI
来期の売上を3通りで置いたときの営業利益AIで試算し、前提の数字は経営者が決める
この支出を経費にするか、資産に計上するか税理士
決算までに何をすれば税金が下がるか税理士
中間申告や納付の金額税理士
給与や残業代の計算方法、就業規則社会保険労務士
取引先との契約の条項弁護士

問いの型の最後に「税理士に確認する項目」を列挙させておくと、AIの答えから税理士への質問リストができます。月次報告の場でそのリストを使えば、税理士との時間を数字の読み上げではなく判断の相談に使えます。

試算表をAIに読ませるときにつまずく5つの条件

次の5つは、渡す試算表の作り方と、AIの使い方の条件によって起きる失敗です。

減価償却費や賞与を月ごとに分けていないと、AIが赤字の理由を作る

減価償却費を決算月にまとめて計上したり、夏・冬の賞与を支給した月にだけ計上したりしている試算表では、その月だけ営業利益が大きく下がります。前提メモが無いと、AIは「その月に費用が急に増えた理由」を一般論から探し、もっともらしい説明を返します。前提メモに月次の処理の有無を書き、分からなければ、月ごとに分けて計上しているかを税理士に確認します。

PDFの試算表を貼ると、列がずれた数字で話が進む

PDFの表は、当月と前月の列を取り違えて読まれることがあります。ずれたまま答えが続くと、増えた科目と減った科目が逆になります。ExcelかCSVで渡し、問いの型の1番で読み取った金額を先に答えさせて、試算表と照らします。

会社独自の科目の使い方を、AIが一般的な意味で読む

「外注費」に応援で来てもらった協力会社の人件費を入れている、「雑収入」に毎月の賃料収入が入っている、といった使い方は試算表から読み取れません。主な科目の使い方を3〜5行のメモにして、前提メモの【科目の使い方】に毎月貼ります。

毎月新しいチャットで始めると、前月の前提が消える

チャットを月ごとに新しく始めると、前月に説明した科目の使い方や出来事をAIは参照できません。使っているAIに前月の資料や指示を続けて参照できる機能があればそれを使い(使えるかどうかはプランによって異なります)、無ければ前月の答えの要点を5行ほどにして毎月貼ります。

経理担当者が個人のアカウントで試算表を入れ始める

経営者がAIで試算表を読み始めると、経理担当者も個人のアカウントで同じことを試す場合があります。会社として使うAIのプランと、試算表を入れてよいアカウントを先に決めます。プランの違いはAIの法人プランと個人プランの違いで比べています。

5つのうち1つ目・3つ目・4つ目は、前提メモに「月次の処理」「科目の使い方」「前月の要点」を書いておけば防げます。残る2つは、渡す形式(ExcelかCSV)と使うアカウントを決めれば防げます。

自社で試す作業と、会社として仕組みにする作業

最初の3か月は、経営者が1人で試す進め方が向いています。月次の締めを3回経験すると、問いの型に足す質問や、メモが要る科目が分かります。

  • 自社で試す作業:月次推移表の書き出し、取引先名の置き換え、前提メモと問いの型での相談、返ってきた答えの確かめ
  • 仕組みにする作業:経理担当者が決まった日に書き出しと置き換えを行い、経営者が確かめて経営会議の資料にする流れ。入力してよい情報のルールと手順書

仕組みにする段階では、書き出すのは経理担当者、確かめるのは経営者、という担当の分け方と、試算表を入れてよいアカウントを決める必要があります。毎月同じ問いで答えを残していけば、前月との違いが同じ形式で並び、経営会議で数字の説明に使う時間を短くしやすくなります。

毎月の試算表の相談を社内の決まった業務にしたい場合は、AI導入支援(DX・AX支援)で、AIへ送信する情報と担当者の確認内容を決め、利用手順に反映する進め方を相談する方法もあります。

経営相談にAIを使うときのよくある質問

経営相談にAIを使うなら、どのAIがおすすめですか?

製品名より、次の3つの条件で選びます。

  • ExcelやCSVを読み込めること
  • 入力が学習に使われない法人向けプランがあること
  • 前月の資料と指示を残しておけること

ChatGPT・Claude・Geminiなどを比べる場合も、3つの条件を満たすかどうかはプランによって違い、変わることもあるため、各社の公式情報で確かめてください。そのうえで、会社で契約できるプランと社内ルールに合うものを選びます。

顧問税理士の月次報告があるのに、AIで試算表を読む意味はありますか?

あります。報告の前にAIで変化の大きい科目と質問案を出しておくと、報告の場で聞くことが決まった状態で臨めます。税理士との時間を、数字の確認ではなく、経費の扱いや決算に向けた判断の相談に使えます。

試算表をAIに入れると、会社の業績が外に漏れませんか?

法人向けプランか学習に使わない設定を選び、取引先名と社員ごとの金額を消してから渡せば、漏れる危険を下げられます。ただ、設定の名前や条件は変わることがあるので、契約前に提供元の公式の説明で確かめ、入れてよい情報を社内で決めておきます。

顧問税理士がいない会社でも、試算表の相談をAIだけで続けられますか?

数字の読み取りや変化の洗い出しは続けられます。ただ、税額の計算や申告の判断はAIに任せません。AIの答えに出てきた「税理士に確認する項目」は、決算や申告の前に税理士へ相談してください。

まずは来月の締めのあと、月次推移表の補助科目にある取引先名を「A社」「B社」に置き換えたファイルを1つ作ってみてください。来期の数字の前提を決める作業は、事業計画書をAIで作成するときに経営者が決める数字で続けて読めます。

自分で試したうえで、経理担当者にも広げる手順や、入れてよい情報のルールを社内だけでは決めきれないと感じたら、AI導入支援(DX・AX支援)でお話を伺います。初回のご相談では、いまの月次の締めの流れと目指す変化を伺い、取り組むテーマの候補と進め方をご相談します。

仕事で使えるAI活用情報をLINEで

AIの活用ポイントと、DX・AXコラムをお届けします。登録後のアンケートでは、活用例や指示文、業務に使える資料、社内導入の情報など、受け取りたいテーマを選べます。

通常は金曜日12:10、週0〜1回程度の配信です。コラムのお知らせは、アンケート未回答でも受け取れます。

LINEでAI活用情報を受け取る(新しいタブで開きます)

個別のご相談

サービスの選び方やご依頼について、ご相談いただけます。

相談する

Read Next / 次に読む

製造業のAI導入事例の読み方|工程別の活用例と外部に依頼する作業
DX・AX

製造業のAI導入事例の読み方|工程別の活用例と外部に依頼する作業

2026.10.27 / 約 13 分

関連記事

DX・AX

士業事務所のAI活用|守秘義務の線引きと研修会社に依頼する作業

更新
DX・AX

AIでインフルエンサーを探す方法|相性の判断ポイントと依頼文の例

更新
DX・AX

大分のAI研修・生成AIセミナー|目的・形式・費用で選ぶ手順

更新
DX・AX

社内報のネタ切れをAIで解消|各部署の報告を読み物に変える手順

更新
DX・AX

Apple Intelligenceで広報の要約・返信をiPhone1台で時短する方法

更新
DX・AX

FAQ自動生成をAIで進める手順|元データの集め方と失敗の防ぎ方

更新
DX・AX

AI感を消す文章の書き方|スタイルガイドと編集チェックリスト

更新
DX・AX

Dify社内RAG構築手順|資料整理と検索設定で精度を上げる方法

更新
DX・AX

契約書のAIチェックは違法か|弁護士法の線引きと社長の確認点

更新
DX・AX

過去のプレスリリースをAIで最新版に更新する手順|差分だけ直す

更新
DX・AX

受付アプリの自作|Vibe Codingで展示会の来場者管理を自動化

更新
DX・AX

Claude Codeで競合分析から記事構成まで自動化する実践手順

更新