事業計画書をAIで作成する手順|経営者が決める数字と任せる下書き
この記事の要点
- AIに任せるのは構成・文章の下書き・弱点の指摘まで
- 売上や利益の数字は経営者が実績から表計算で作る
- 材料メモ12項目と下書きを確かめる8項目を本文に掲載
事業計画書はAIで作成できます。ただし、AIに任せてよいのは構成案・文章の下書き・弱点の指摘までです。売上や利益の見込み、誰に何を売るか、借りたお金をどう返すかは、経営者が自社の実績から決めます。AIは、渡されていない数字までもっともらしく埋めてしまうためです。
この記事は、融資・補助金・社内の年度計画などで事業計画書が必要になり、AIで作成の時間を短くできるか試したい経営者・役員の方に向けたものです。読み終わる頃には、AIに渡す材料メモを書き、最初の下書きを作って確かめるところまで進められる状態を目指します。
補助金の申請書に絞った書き方は補助金申請書をAIで下書きする手順で解説しています。この記事では、提出先を問わずに使える事業計画書の作り方を扱います。
Contents / 目次
事業計画書でAIに任せる下書きと、経営者が決める項目
AIに任せられるのは、決まった内容を文章にする作業と、抜けや弱点を探す作業です。何を書くか、特に数字と方針は経営者が決めます。事業計画書の項目ごとに分けると、次のようになります。
| 事業計画書の項目 | AIに任せられる下書き | 経営者が決めること・確かめること |
|---|---|---|
| 事業の概要・沿革 | 箇条書きのメモを読みやすい文章にする | 事業の内容、創業の経緯、今後の方向 |
| 顧客と市場 | 顧客像の書き分け、調べるべき統計の候補を挙げる | 主な顧客が誰か、市場の数字の出典 |
| 競合と自社の強み | 比べる観点を挙げる、強みの言い回しの案を出す | 実際に選ばれている理由(受注の記録・顧客の声) |
| 売上・利益計画 | 計算の前提を説明する文章 | 客数・単価・原価率など、数字のすべて |
| 資金計画・返済 | 資金の使い道の説明文 | 必要な金額、自己資金、借入額、返済の原資 |
| 実行計画・体制 | 月ごとの工程表の形にする | 誰が、いつ、何をするか。採用の予定 |
| リスクと対策 | 起こりうるリスクを挙げる | どのリスクに備えるか、売上が下振れしたときの対応 |
経営者が決める項目のなかで、いちばん崩れやすいのが数字です。事業計画書の数字は、次の3つに分けて書きます。
- 実績:決算書や会計ソフトから取れる、過去の確定した数字(例「直近12か月の月平均の来店数400人」)
- 前提:計画を立てるために置いた仮定と、その理由(例「メニュー改定で客単価を3,500円から3,800円にする」)
- 目標:実績と前提から計算した結果として目指す数字(例「来期の売上1,824万円(月400人×3,800円×12か月)」)
AIに材料を渡すときも、数字に「実績」「前提」「目標」のラベルを付け、指示文でラベルを残すように指定します(ステップ2の材料メモとステップ3の指示文に入れています)。AIは数字を文章に書き直すときにラベルを落とすことがあるため、ラベルが無いだけでAIが作った数字だとは決められません。ラベルの無い数字は、材料メモと表計算のファイルにあるかを1つずつ確かめます。
この章の結論。AIには文章と弱点探しを任せ、数字と方針は経営者が持ちます。数字は実績・前提・目標の3つに分けてラベルを付けると、下書きのどの数字を材料と突き合わせればよいかが分かります。
事業計画書をAIで作成する手順
事業計画書をAIで作成する手順は6つです。入力する情報を分け、材料メモを書き、下書きを依頼し、数字を表計算で作り、下書きを確かめ、最後に弱点を挙げさせます。
ステップ1 AIに入力してよい情報と、入力しない情報を分ける
最初に、AIへ入力する情報を3つに分けます。事業計画書の材料には、決算の数字や取引先名、従業員の情報が含まれるためです。
| 区分 | 例 | 扱い |
|---|---|---|
| そのまま入力してよい | 公開済みの会社概要、事業内容、商品の説明 | そのまま渡す |
| 伏せて入力する | 取引先名、取引先別・商品別の売上の内訳、仕入れ先との条件 | 「A社」「主要取引先3社」のように置き換える。金額は[売上(実績):表計算から転記]のようなラベル付きの枠で書かせる |
| 入力しない | 従業員や顧客の個人情報、未公開の契約内容、口座番号、他社から預かった資料 | AIに渡さない |
あわせて、使うAIで入力内容が学習に使われる設定になっていないかを確かめます。学習に使わない設定を選べるかどうかは、サービスとプランによって違います。たとえばOpenAIは、個人向けのChatGPTで入力内容がどう扱われるかをHow your data is used to improve model performanceで、法人向けプランでの扱いをEnterprise privacy at OpenAIで公開しています。
使うサービスの利用規約とヘルプで、最新の内容を確認してください。違いの見方はAIの法人プランと個人プランの違いで解説しています。
社員が個人でAIを使い始めていて、決算の数字や取引先名を入力してよいかが社内で決まっていない場合は、経営者と社員で考えるAI研修で、情報の扱い方を先に決める進め方もあります。
ステップ2 経営者が材料メモを書く
AIに渡す前に、経営者が材料メモを書きます。ここをAIに書かせると、どの会社にも当てはまる計画書になります。文章にする必要はなく、箇条書きで構いません。次の12項目をそのまま使えます。
【事業計画書の材料メモ】
1. 提出先と目的:(例:取引銀行への設備資金の融資申込み/社内の来期計画)
2. 提出先の様式の項目名:(様式があれば、項目名をそのまま書き写す)
3. 事業の内容:何を、誰に、いくらで提供しているか
4. これまでの経緯:創業の年、転機になった出来事
5. 主な顧客:業種・地域・規模と、選ばれている理由
6. 競合:顧客が比べている相手と、比べられたときの違い
7. 実績の数字【実績】:直近3期の売上・粗利・営業利益を入れた表計算のファイル名
8. 来期以降に行うこと:新しい商品・設備・採用など
9. 前提【前提】:単価・客数・原価率をどう見込んだか、その理由
10. 資金:必要な金額、自己資金、借入額、返済の原資
11. 心配していること:うまくいかなかったときに起きること
12. 外せない方針:(例:価格競争はしない、地元での採用を続ける)
7の金額は表計算のファイルに置き、メモにはファイル名だけを書きます。来期の目標の数字も、同じファイルに【目標】のラベルを付けて置きます。AIの下書きでは金額を[売上(実績):表計算から転記]のような枠で書かせ、最後に表計算から転記します。
特に5と6は、受注の記録や顧客から言われた言葉など、自社にしか無い事実で書きます。ここが具体的なほど、AIの下書きも具体的になります。
ステップ3 AIに構成と下書きを依頼する
材料メモができたら、AIに下書きを依頼します。いきなり本文を書かせず、先に構成案を出させて確認してから本文に進むと、提出先の様式からずれません。出発点のたたき台として、次の指示文を使ってください。
あなたは中小企業の事業計画書づくりを支援する担当者です。
添付の材料メモをもとに、事業計画書の下書きを作ってください。
・まず構成案だけを出す。構成は材料メモ2の「様式の項目名」に合わせる
・材料メモ9にある前提の数字(単価・客数・原価率など)は使ってよい。数字の直後に(前提)と残す
・売上・利益などの金額は書かず、[売上(実績):表計算から転記][売上(目標):表計算から転記]のように、ラベル付きの枠で書く
・材料メモに無い数字は書かず[数字:要確認]と書く
・市場規模や業界の動向は断定せず、確かめるべき出典の候補を挙げる
・材料メモに無い強み・実績・取引先名を足さない
・最後に、材料メモで足りなかった情報を一覧にする
あとは出てきた下書きを読みながら、AIと対話して自社の状況に合わせて詰めてください。
ステップ4 数字は表計算で作り、AIには前提の説明を書かせる
売上・利益の数字は、AIではなく表計算で作ります。AIが文章のなかで数字を書き写すときに、桁や年度を取り違えることがあるためです。数字の正しい値は表計算のファイル1つにまとめ、文章へは最後に転記します。
表計算では、売上を「客数×客単価」のように分解し、基本・下振れ・上振れの3つのケースを並べます。次の表は、仮の数字で作った例です。
| ケース(仮の例) | 月の客数 | 客単価 | 月の売上 |
|---|---|---|---|
| 基本(客数は実績の平均、客単価は前提) | 400人 | 3,800円 | 152万円 |
| 下振れ(客数15%減) | 340人 | 3,800円 | 129.2万円 |
| 上振れ(客数10%増) | 440人 | 3,800円 | 167.2万円 |
AIに依頼するのは、この表の前提を文章で説明する部分です。進め方は次のとおりです。
- AIに渡すもの:材料メモの9に書いた客数・客単価の見込みとその理由だけ。月の売上の金額は渡さず、取引先別・商品別の売上の内訳もステップ1のとおり伏せたままにする
- AIに書かせるもの:「客数は直近12か月の平均を基本とし、下振れは繁忙期が来なかった場合を想定」のように、なぜその数字を置いたのかの説明。金額は[売上(目標):表計算から転記]の枠で書かせ、最後に表計算から転記する
- 経営者が確かめるもの:下振れのケースでも返済できるかを、表計算で確かめる
ステップ5 出てきた下書きを8項目で確かめる
下書きが出てきたら、次の8項目を順に確かめます。満たしていない項目が1つでもあれば、その箇所を修正してから先に進みます。
- 文中の数字が、すべて表計算のファイルと一致しているか(桁・単位・年度)
- 実績・受賞歴・取引先名が、すべて材料メモにあるものだけになっているか
- 市場規模や成長率などの外部の数字に、公的統計か公式発表の出典があるか
- 「〜が期待される」「〜と考えられる」で終わる文に、すべて根拠が書かれているか
- 強みの文が、社名を消しても自社のことだと分かる内容になっているか
- 提出先の様式の項目が、空欄なく様式と同じ順番でそろっているか
- 資金の使い道の合計と、借入額と自己資金の合計が一致しているか
- 面談で質問されたとき、すべての文を経営者が自分の言葉で説明できるか
AIがもっともらしい誤りを書く仕組みと防ぎ方は、生成AIのハルシネーションが起きる理由と業務で防ぐ手順で詳しく解説しています。
ステップ6 AIに審査する側の目で弱点を挙げさせる
最後に、AIに読み手の立場で弱点を挙げさせます。修正案は書かせません。修正案まで出させると、AIがまた根拠の無い文を足すことがあるためです。
あなたは[金融機関の融資担当者/補助金の審査員/社外取締役]です。
この事業計画書を読み、根拠が弱い箇所、数字のつながりが合わない箇所、
面談で質問したくなる箇所を、重要な順に10個挙げてください。
修正案は書かないでください。
挙がった10個に、経営者が自分の言葉で答えます。答えられたものは本文に足し、答えた内容は面談の想定問答として残しておきます。材料メモと数字の表を一度作っておけば、翌年の計画や金融機関への途中報告でも、同じ材料から新しい下書きを作れます。
この章の結論。経営者が書くのは材料メモと数字の表、AIが書くのは文章です。下書きは8項目で確かめ、弱点はAIに挙げさせて経営者が答えます。
事業計画書をAIで作るときの失敗と、提出先ごとの確かめ方
事業計画書のAI作成で起きる失敗は、数字・入力する情報・様式・強みの4か所に集中します。どれも、起きる条件が決まっているので事前に防げます。
AIに売上見込みを埋めさせると、面談で根拠を説明できない
材料メモに数字が無いまま「事業計画書を作って」と依頼すると、AIは成長率や売上見込みを自分で書き込みます。その数字を提出すると、面談で「この伸び率の根拠は」と質問されたときに答えられません。指示文に「材料メモに無い数字は書かず[数字:要確認]と書く」を必ず入れ、数字は表計算から転記します。
決算書や試算表をそのまま貼ると、取引先名や個人名まで入力される
決算書の内訳や試算表を丸ごとAIに貼り付けると、取引先名や役員の個人名、借入先の情報まで入力されます。文章を書かせるだけなら、内訳の明細は不要です。表計算で合計だけを出し、AIには[売上(実績):表計算から転記]の枠で書かせれば、明細を渡さずに済みます。
提出先の様式を見ないで作ると、欄に合わない計画書になる
汎用の構成で書かせた事業計画書は、融資や補助金の様式の欄と合いません。欄に合わせて組み替える作業が後から発生し、AIで短くした時間がそこで消えます。様式の項目名を材料メモの2に書き写し、構成を先に合わせます。
強みの文が他社でも通る内容だと、計画書全体が一般論に見える
「顧客第一の姿勢」「きめ細かな対応」のような強みは、AIが書きやすく、どの会社の計画書にも入ってしまいます。読み手に残るのは、受注件数、リピートの割合、顧客から言われた言葉のような自社だけの事実です。社名を消しても通る文は、経営者が具体的な事実に書き換えます。
融資・補助金・社内向けで変わる、確かめる原文
事業計画書の正しい形は、提出先が決めています。AIの要約ではなく、提出先の原文を一次ソースにします。
| 提出先 | 確かめる原文 | AIに渡すもの |
|---|---|---|
| 金融機関の融資 | 金融機関が用意する様式(日本政策金融公庫の創業計画書など) | 様式の項目名と、記入欄の順番 |
| 補助金 | その回の公募要領と審査項目 | 審査項目の見出し。要領の読み込みはAIの要約で済ませない |
| 社内・取引先向け | 自社で決めた書式、前年の計画書 | 前年の計画と実績の差 |
様式は年度や回によって変わることがあります。提出前に、提出先の公式サイトで最新の様式と公募要領を確認してください。補助金の審査項目に沿った書き方は、補助金申請書をAIで下書きする手順にまとめています。
この章の結論。失敗は数字の穴埋め、明細の貼り付け、様式の無視、一般論の強みの4つです。数字の穴埋めと様式の無視は指示文と材料メモに1行足して防ぎます。明細は表計算で合計だけを出して渡し、一般論の強みは経営者が自社の事実に書き換えます。
事業計画書のAI作成でよくある質問
事業計画書に特化したAIツールと、ChatGPTやClaudeのような汎用AIはどちらを使えばいい?
特化型のツールは、質問に答えながら事業計画書を作る流れが用意されています。たとえばbizlyaiは、公式サイトで「いくつかの質問に答えるだけで事業計画書・資金計画書・補助金申請書を自動で作成」と説明しています。提出先の様式の欄に合わせられるかは、ツールごとに公式サイトで確かめてから選んでください。汎用AIは、材料メモと様式の項目名を渡して構成から組み立てられます。どちらでも数字は経営者が確かめます。
決算書のPDFをAIに読ませて、事業計画書の数字を拾わせてもいい?
入力内容が学習に使われない設定を確認したうえでも、拾った数字は必ず決算書と突き合わせてください。読み取りで桁や科目を取り違えることがあります。明細には取引先名も含まれるため、合計の数字だけを表計算に移して使うほうが安全です。
AIで作った事業計画書だと、融資や補助金で不利になる?
AIの利用をどう扱うかは提出先が決めることなので、公募要領や金融機関の案内に作成方法の決まりがないかを原文で確かめてください。どの提出先でも共通するのは、書かれた数字と方針を経営者が説明できることです。説明できない文は提出前に削ります。
毎年の事業計画書の更新にもAIは使える?
使えます。前年の材料メモと計画書、今年の実績の表を渡し、「計画と実績の差と、その理由を説明する文」を下書きさせます。差の理由は経営者が書き足します。材料メモを毎年更新しておくと、前年の材料を使い回せるので、一から書く手間が省けます。
事業計画書のAI作成を、自社で試す段階と会社の仕組みにする段階
最初の1本は経営者が自分で試し、社員に広げる段階や毎月くり返す段階になったら、会社の仕組みにします。段階ごとに決めることは次のとおりです。
| 段階 | 進め方 | 決めること |
|---|---|---|
| 自社で試す | 経営者1人で、社内向けの年度計画を1本作る | 入力しない情報、使うAIとプラン |
| 社員に広げる | 部門長が部門計画の下書きをAIで作り、経営者が確かめる | 誰がどの情報を入力してよいか、誰が確かめるか |
| 毎月くり返す | 月次の実績を入れて、計画との差を説明する文を作る | 入力の形式、確かめる手順、保存先 |
試す段階では、融資や補助金の提出物ではなく社内向けの計画から始めます。誤りがあっても社外に出ないので、6つの手順と8項目の確認を落ち着いて試せます。
毎月の予実の見直しを、決まった入力から下書きまで社内で回したい場合は、コレットラボのAI導入支援で、AIが行う作業と社内で確かめる作業に分け、社員が使う入力フォームと手順書まで作る進め方もあります。
事業計画書をAIで作成する前に、最初に行うこと
まずは材料メモ12項目のうち、1の「提出先と目的」と2の「様式の項目名」だけを書き出してください。この2つが決まると、AIに依頼する下書きの形が決まります。社内でAIに入力してよい情報の線引きを決めるなら、次はAIに入力してはいけない個人情報の線引きと社内ルールの作り方を読んでみてください。
ここまで読んで、事業計画や月次の予実報告をAIで回す仕組みを自社だけで作るのは手が回らないと感じた方は、コレットラボのAI導入支援について、気軽にご相談ください。いまの作り方と、どこで時間がかかっているかを伺うところから始めます。
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