AI研修の講師派遣|依頼範囲の分担表と実施前の準備チェックリスト

AI研修の講師派遣|依頼範囲の分担表と実施前の準備チェックリスト

この記事の要点

  • 費用は講師料だけでなく、事前設計・演習題材・事後フォローで変わる
  • 題材・アカウント・入力ルールの3つは社内で準備。分担表を本文に掲載
  • 契約前に講師へ確認する6つの質問と、見積もり依頼文のひな形を紹介

AI研修を講師派遣で依頼するときは、講師に任せる範囲と社内で準備する範囲を先に分けておきます。講師が担うのは、研修の設計と当日の講義・演習の進行です。

演習に使う業務の題材、受講者のアカウント、AIに入力してよい情報のルールの3つは、社内で用意します。

この3つが欠けたまま当日を迎えると、講義が一般的な例で終わり、研修後の業務で使われにくくなります。

この記事は、社員向けの生成AI研修を外部の講師に依頼しようとしている経営者・役員・院長・施設長の方に向けて書いています。読み終わる頃には、見積もりを依頼する前に社内で決めることと、契約前に講師へ確認することが分かる状態を目指します。

AIツールの操作手順はこの記事では扱いません。研修費用を項目ごとに確かめたい方は、先にAI研修の費用と内訳8項目をご覧ください。

Contents / 目次
  1. 講師派遣のAI研修で費用が変わる7つの条件
  2. 生成AI研修の講師に依頼する範囲と社内に残る作業
  3. AI研修の実施前に社内で決める準備項目5つ
  4. 契約前に講師へ確認する質問とうまくいかない条件
  5. 企業向けAI研修の講師派遣でよくある質問

講師派遣のAI研修で費用が変わる7つの条件

講師派遣のAI研修の費用は、講師が当日話す時間だけでは決まりません。事前の設計と事後のフォローにどれだけ手をかけるかで変わります。見積もりを比べるときは、総額を見る前に、次の7つの条件がそれぞれ含まれているかを確かめてください。

講師派遣型のAI研修とは、外部の講師が自社の会議室や研修会場に来て、社員に生成AIの使い方を教える研修の形です。生成AIとは、指示に応じて文章や画像などを作り出すAIのことで、ChatGPT・Gemini・Microsoft Copilotなどがあります。他社の受講者と一緒に受ける公開講座と比べて、自社の業務を題材にした演習を組めるのが講師派遣の利点です。

条件費用が増える方向見積もりで確かめること
受講人数とクラス数1クラスの上限を超え、同じ内容を複数回行う1クラスの上限人数
時間と回数単発より、複数回の連続講座回と回の間に受講者が取り組む課題の有無
カリキュラムの作り込み既製の内容より、自社の業務に合わせた設計既製の内容から変える範囲
事前ヒアリング部署ごとに業務を聞き取る聞き取りの回数と相手
演習の題材自社の資料をもとに演習を組む題材の加工をどちらが行うか
事後フォロー質問の受付期間が長い、2回目がある質問の受付期間と方法
交通費・宿泊費・機材講師の移動距離が長い見積もりに含まれるか、別に請求されるか

見積書には出てこない社内の費用もあります。仮に、時給3,000円相当の社員20人が3時間の研修を受けるとすると、3,000円×20人×3時間で18万円分の業務時間を研修に使う計算です。講師料を抑えても、演習が自社の業務とかけ離れていれば、この18万円分の時間は業務の改善につながりにくくなります。

研修会社・ITベンダー・コンサルティング会社では、研修後にどこまで関わるかが違います。依頼先の種類で迷っている場合は、AI導入支援の会社の種類を比べた表で違いを確かめておくと、見積もりを比べやすくなります。

この章の結論。見積もりは総額ではなく、7つの条件のどれが含まれているかで比べます。演習の題材と事後フォローが入っているかどうかで、研修後に業務で使われるかが変わります。

生成AI研修の講師に依頼する範囲と社内に残る作業

生成AI研修の講師に依頼できるのは、研修の設計、講義と演習の進行、契約の範囲での質問対応までです。題材の選定、受講環境の用意、社内ルールの決定、研修後の運用は社内に残ります。作業ごとの分担は次のとおりです。

作業講師に依頼する社内で行う
研修の目的と対象者目的の案を出す目的と対象者を決める
事前ヒアリング質問項目を作り、聞き取る回答する社員を決め、時間を確保する
カリキュラム設計する内容を確認し、承認する
演習の題材題材を演習の形に加工する業務資料を選び、顧客名などを伏せる
受講者のアカウント必要な環境を伝える契約・発行し、ログインを確かめる
入力してよい情報のルールひな形を出す社内ルールとして決める
当日の講義と演習進行する会場・機材・通信環境を用意する
研修後の利用契約の範囲で質問に答える使う業務を指定し、利用状況を確かめる

題材を社内で選ぶ理由は2つあります。

  • 講師は社内の業務を知らない:どの作業に時間がかかっているかを知っているのは社内だけです。講師任せにすると、演習は旅行の計画や一般的なメールのような例になります。
  • 外部に渡す資料は会社が決める:どの資料を講師に渡してよいかは、取引先との契約を知っている会社にしか判断できません。

入力ルールも同じで、講師が出せるのはひな形までです。何を「入力しない情報」に入れるかは、契約や業界の規制を把握している経営者や管理職が決めます。

社員が個人でAIを使い始めていて、入力してよい情報がまだ決まっていない場合は、経営者と社員が一緒に学ぶ120分のAI研修で、入力した情報の扱われ方を先に学び、そのあとで社内の入力ルールを決める進め方もあります。

この章の結論。講師に依頼できるのは設計と進行までです。題材・アカウント・入力ルールの3つを社内で決めてから見積もりを依頼すると、各社の提案を同じ条件で比べられます。

AI研修の実施前に社内で決める準備項目5つ

見積もりを依頼する前に、目的・題材・ツール・ルール・会場の5つを社内で決めておきます。この5つが決まっていれば、講師との最初の打ち合わせから、カリキュラムの中身について話し合えます。

ステップ1。研修の目的と対象者を1文で書く

「AIリテラシーを高める」のような目的では、講師はどの業務で演習を組めばよいか判断できません。部署・業務・期限まで入れた1文にします。

[部署]の[職種]が、[業務]を生成AIで[どうする]ことを、研修後[期間]以内に始める。

例)総務部の事務担当が、会議の議事録を生成AIで下書きすることを、研修後2週間以内に始める。

対象者が複数の部署にまたがるときは、部署ごとに1文ずつ書きます。経営者や管理職が研修に参加するかどうかも、この段階で決めます。

ステップ2。演習に使う業務の題材を3つ選ぶ

題材は、次の3つの条件にあてはまる業務から選びます。

  • 頻度:週に何度も発生する
  • 文章を扱う:下書き・要約・言い換えが含まれる
  • 確認できる:AIの出力が間違っていても、社内で気づける

会議の議事録、見積もりに添える説明文、求人票、院内の掲示文などがあてはまります。講師に渡す前に、顧客名・患者名・金額は架空の値に置き換えてください。

部署ごとの作業の書き出しは、生成AIでたたき台を作れます。次のような短い指示から始め、足りない部分はAIとやり取りしながら足していけば十分です。

あなたは業務改善の担当者です。[業種]の[部署名]の担当者が1週間に行う作業を、「作業名/頻度/1回の所要時間/文章を扱うか」の表にしてください。分からない項目は空欄にしてください。

出てきた表は実際の担当者に確認してもらい、頻度と所要時間を実態に合わせて修正します。AIの表は一般的な作業の並びになりやすいため、その会社にしかない作業が抜けていないかを確かめるのは社内の役割です。

ステップ3。研修で使うツールとアカウントを決める

研修で使うツールは、研修後に社員が実際に使うツールと同じにします。講師が普段使うツールに合わせて受講すると、研修後に画面や機能が違って戸惑うことになります。

入力した内容をAIの学習に使うかどうかや、会社がアカウントをまとめて管理できるかは、ツールとプランごとに違います。たとえばMicrosoftは、Microsoft Copilot Chatのエンタープライズ データ保護について、プロンプトと応答を基礎モデルのトレーニングに使わないと公式ページで説明しています。

契約するプランの扱いは、各社の公式の説明で確かめてください。プランごとの違いはAIの法人プランと個人プランの違いで解説しています。

アカウントは研修の1週間前までに発行し、受講者全員がログインできるかを確かめてください。2段階認証を使う場合は、本人確認に使う端末(スマートフォンなど)を、当日に受講者の手元に用意してもらいます。

ステップ4。AIに入力してよい情報のルールを決める

ルールは研修の前に決めます。研修後に決めると、研修中に入力した内容があとから決めたルールに反していた、ということが起こりえます。少なくとも次の3区分は決めておきます。

  • 入力してよい情報:公開済みの自社情報、一般的な文章
  • 伏せれば入力してよい情報:顧客名や金額を架空の値に置き換えた社内資料
  • 入力しない情報:個人情報、取引先から預かった資料、契約で秘密と定めた情報

項目をさらに細かく決めたい場合は、生成AI社内ルールの12項目のひな形を使えます。

ステップ5。会場と機材を確かめる

会場と機材をどちらが用意するかは、契約前に決めておきます。社内で用意する場合は、前日までに次の項目を確かめます。

  • パソコン:受講者1人に1台
  • 通信環境:受講者全員が同時にAIを使っても、Wi-Fiが途切れないか
  • 接続制限:社内ネットワークで、研修で使うAIツールのサイトが遮断されていないか
  • 投影機材:プロジェクターと、講師のパソコンをつなぐケーブル
  • 電源:受講者の席まで届く電源タップ

講師派遣の見積もり依頼文のひな形

5つのステップで決めた内容は、そのまま見積もり依頼文に使えます。複数の会社に同じ文面で依頼すると、見積もりを同じ条件で比べられます。

件名 社員向け生成AI研修(講師派遣)のお見積もりのお願い

[会社名]の[氏名]です。社員向けの生成AI研修を、講師派遣でお願いしたいと考えています。

■研修の目的
[ステップ1で書いた1文]

■受講者
[部署・職種][人数]名。AIの利用経験は[ほぼ無し/一部が個人で利用]

■使用するツール
[ツール名とプラン](アカウントは当社で発行します)

■演習に使いたい業務
1. [業務名]
2. [業務名]
3. [業務名]

■希望する形式
[時間]×[回数]。会場は当社([所在地])

■お見積もりで確かめたいこと
・事前ヒアリング、演習題材の作成、事後の質問対応が含まれるか
・交通費、宿泊費、教材費が含まれるか
・当日登壇する講師のお名前と経歴

この章の結論。目的の1文、題材3つ、ツール、入力ルール、会場の5つが決まれば、見積もり依頼文が書けます。依頼文が書けない項目があれば、そこがまだ社内で決まっていない項目です。

契約前に講師へ確認する質問とうまくいかない条件

契約前には、次の6つの質問で、講師・演習・ツール・資料の扱い・研修後の対応を確かめます。そのうえで、研修の効果が出にくい3つの条件を社内で避けておきます。

契約前に講師へ確認する6つの質問

  1. 当日登壇する講師は、提案や打ち合わせを担当した方と同じですか。
  2. 演習は当社の題材で組めますか。題材の加工はどちらが行いますか。
  3. 研修で使うツールは、当社が契約しているツールと同じものですか。
  4. 研修のために預けた資料は、研修後にどう保管・削除されますか。講師のAIアカウントに入力することはありますか。
  5. 研修資料を社内で再配布したり、録画して新入社員に使ったりできますか。
  6. 研修後の質問は、いつまで、どの方法で受け付けてもらえますか。

1つ目は、提案した講師と当日の講師が違うと、事前ヒアリングの内容が当日に引き継がれないことがあるためです。4つ目と5つ目は契約書に書かれていない場合もあるので、回答をメールで残しておきます。

講師派遣のAI研修がうまくいかない3つの条件

経営者や管理職が参加しない場合。受講者が使い方を覚えても、業務時間中にAIを使ってよいか、どの業務から使うかを現場では決められず、研修後に止まります。冒頭の15分だけでも経営者が参加し、研修後に使う業務と期限を受講者の前で伝えておくと防げます。

AIの利用経験が違う受講者を1クラスにまとめる場合。初めて使う受講者は操作で遅れ、すでに個人で使っている受講者は内容が簡単すぎて集中が続きません。事前アンケートで利用経験を「使ったことがない」「たまに使う」「週に数回使う」の3段階で集め、クラスを分けるか、演習の難しさを2段階用意してもらいます。

研修が1回で終わり、試す期間と質問先が無い場合。研修の翌週に実際の業務で使うと、演習では出なかった疑問が出てきます。そのときに質問先が無いと、元のやり方に戻りがちです。2〜4週間後に短い2回目を入れるか、質問の受付期間を契約に含めます。

自社で行う範囲と、講師・支援会社に依頼する範囲

自社で行うのは、目的の決定、題材の選定、入力ルールの決定、研修後の利用状況の確認です。利用状況は、対象の業務でAIを使った件数を週に1回集計すれば把握できます。講師に依頼するのは、研修の設計、演習の進行、研修後の質問対応です。

研修後に、議事録づくりのような1つの業務をAIで回す形にしたい場合は、研修後の業務を仕組みにするAI導入支援で、AIが行う作業と社内で確かめる作業を分け、社員が使う入力フォームと手順書まで作る進め方もあります。

効果を確かめたい場合は、研修前に対象業務の所要時間を記録しておくと、研修後に同じ業務の時間と比べられます。比べ方はAI業務効率化の削減時間の測り方で解説しています。

この章の結論。6つの質問の回答をメールで残し、経営者の参加・クラス分け・2回目の設定を決めてから契約します。研修後の利用状況の確認は、講師ではなく社内の役割です。

企業向けAI研修の講師派遣でよくある質問

講師派遣と公開講座、オンライン研修はどう使い分ければいいですか?

自社の業務を題材に、部署単位でまとめて受講させたいなら講師派遣が合います。受講者が1〜2人なら公開講座、拠点が離れているならオンラインが向いています。大分・福岡など九州で対面の研修先を探す場合は、九州7県のAI研修の相談先も参考にしてください。

AI研修の講師派遣に、人材開発支援助成金は使えますか?

人材開発支援助成金は、事業主が雇用する労働者に職務に関連した専門的な知識や技能を習得させるための職業訓練などを計画に沿って実施した場合などに、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部などを助成する制度です(厚生労働省の人材開発支援助成金のページ)。AI研修が対象になるかは、研修の内容とコースの要件によります。

研修の日程を確定させる前に、次の3つを行ってください。

  1. 同じページで、最新の支給要領を確認する
  2. 管轄の都道府県労働局へ相談する
  3. 申請に使うカリキュラムや時間割を、講師側が書類で出せるかを確かめる

受講者が10人未満の会社でも、講師派遣を依頼できますか?

依頼先によって、最少の人数や最低料金の条件が違います。見積もり依頼の時点で確かめてください。少人数の場合は、講師が1人ずつの演習を見て回れるので、各自の業務に合わせた質問がしやすくなります。経営者も一緒に受講できる人数です。

AIに詳しい社員を講師にする方法と、外部講師への依頼はどちらがいいですか?

社内の講師は業務をよく知っていますが、入力ルールの設計や演習の組み立ては別のスキルです。推進役がまだいない場合は、1回目を外部講師に依頼して社内の担当者を同席させ、2回目以降を社内で引き継ぐ方法があります。担当者の育て方はAI推進担当の育て方で解説しています。

まずは、研修で扱いたい業務を3つ、メモに書き出してみてください。業務名が3つ出てこない場合は、ステップ2の指示文で部署の作業を書き出すところから始められます。研修後に社内で使われ続けるための進め方は、生成AIを90日で社内に定着させる進め方で解説しています。

ここまで読んで、題材選びや入力ルールの決め方を社内だけで進めるのは難しいと感じた方は、社員向けの生成AI研修のページをご覧ください。いまのAIの使われ方や気になっている業務を伺ったうえで、研修の進め方をご提案します。まずはお気軽にお話をお聞かせください。

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