生成AI社内ルールのサンプル|12項目のひな形・情報区分表と決め方
この記事の要点
- 禁止事項より先に、使ってよいツール・情報・確認方法を決める
- A4一枚12項目のひな形と、情報の3区分表を本文に掲載
- 「機密は入力禁止」とだけ書いても判断できない。自社の実例を3つずつ書く
生成AIの社内ルールは、A4一枚・12項目で初版を作れます。先に決めるのは「使ってよいツール」「入力してよい情報」「出てきた内容の確認方法」の3つです。禁止事項を並べるより、使ってよい範囲を具体的に書いたほうが、社員は迷わずに使えます。
社員が仕事でAIを使い始めているのに、会社のルールがまだ無い中小企業の経営者や総務担当の方に向けた記事です。本文のひな形を自社の業種と扱う情報に合わせて書き換え、社内に配る初版を決めるところまでを扱います。
個人情報をどこまで入力してよいかの詳しい線引きは、AIに入力してはいけない個人情報の線引きで解説しています。この記事では、ルールの文面と決め方を扱います。
Contents / 目次
生成AI社内ルールに書く12項目と、決める順番
生成AIの社内ルールに書く12項目は、「使う範囲」「入力する情報」「出てきた内容」「運用」の4つのまとまりに分かれます。それぞれの項目で何を決めるか、空欄のまま配ると何が起きるかを次の表にまとめました。
| まとまり | 項目 | 決めること | 空欄のまま配ると起きること |
|---|---|---|---|
| 使う範囲 | 1〜4 | 目的・対象者・指定ツール・使ってよい業務 | 社員が個人の無料アカウントで使い始め、入力した内容を会社が把握できない |
| 入力する情報 | 5〜6 | 入力禁止の情報と、条件付きで入力できる情報 | 「機密」の範囲が社員ごとに違い、取引先の資料がそのまま入力される |
| 出てきた内容 | 7〜9 | 確認方法・公開前の確認・AIに決めさせない業務 | 誤った数字や他社に似た表現が、確認されないまま社外に出る |
| 運用 | 10〜12 | 相談先・誤入力の報告・見直し時期 | 誤入力が起きても報告先が無く、取引先への連絡が遅れる |
最初に決めるのは、項目3の指定ツールです。どのツールを会社アカウントで使うかが決まらないと、項目6の「条件付きで入力してよい情報」の条件が書けません。
- 入力内容を学習に使わない法人プランを指定する場合は、社内資料の一部も入力できます
- 個人の無料版を認める場合は、入力できるのは公開済みの情報に限られます
次に項目5・6の情報区分と、項目10の相談先を決めます。項目7・11は、ひな形の文面を読み合わせて自社の運用に合うかを確かめれば十分です。目的・対象者・見直し時期は、ひな形をほぼそのまま使えます。
初版で完璧を目指さない。12項目のうち、会社ごとに中身が大きく変わるのは項目3・5・6・10の4つです。この4つが埋まれば配れる状態になり、残りは3か月後の見直しで修正できます。
文面を作るより難しいのは、社員が実際の業務で「これは入力してよい情報か」を見分けられるようになることです。社員が個人でAIを使い始めていて、入力してよい情報がまだ社内で決まっていない場合は、経営者と社員で考えるAI活用研修で入力した情報の扱われ方を先に学び、そのあとで社内の区分を決めてルールを配る進め方もあります。
そのまま使える生成AI社内ルールのサンプル(A4一枚)
次のひな形は、社員数が数人から数十人の会社を想定した初版です。[ ]の部分を自社の内容に書き換えれば、そのまま社内に配れます。
生成AI利用ルール(第1版)
[会社名] 施行日[2026年10月1日] 責任者[氏名・部署]
1. 目的
生成AIを安全に使い、文章作成や調べものにかかる時間を減らすためのルールです。
使ってよい範囲を決めるもので、利用を禁止するものではありません。
2. 対象者
正社員・契約社員・パート・アルバイト・派遣社員など、会社の業務に携わる全員。
業務委託先には、契約書でこのルールへの同意をお願いします。
3. 使ってよいツール
会社が指定したツールを、会社が発行したアカウントで使います。
指定ツール[例:ChatGPT Business(会社アカウント)]
メールソフトや文書作成ソフトに組み込まれたAI機能も、このルールの対象です。
新しいツールを使いたいときは、責任者に申請します。
4. 使ってよい業務
メールや文書の下書き/会議メモの要約/企画のアイデア出し/
社内文書の誤字確認/表計算の関数の相談[自社の業務を追記]
これ以外の業務で使いたいときは、責任者に相談します。
5. 入力してはいけない情報(区分C)
・お客様・取引先・社員の個人情報(氏名と連絡先、住所、生年月日、顔写真など)
・取引先から秘密として受け取った資料(図面、見積書、仕様書など)
・未発表の決算数字、価格改定、人事情報
・パスワード、社内システムのログイン情報
[自社で扱う具体例を3つ追記]
6. 条件付きで入力してよい情報(区分B)
社内限りの資料は、指定ツールの会社アカウントで、
会社名・個人名を[A社][担当者]のように伏せた場合に限り入力できます。
7. 出てきた内容の確認
数字・日付・固有名詞・法令・料金は、元の資料や公式サイトで確かめてから使います。
社外に出す文書は、作成者以外の社員がもう一度確認します。
8. 社外に公開するもの
AIが作った文章・画像は、確認を経ずに公開しません。
他社の商品名やロゴ、実在の人物に似た画像、他社の文章に似た表現が無いかを確かめます。
9. AIの出力だけで決めない業務
採用の合否、人事評価、与信、契約の可否、お客様への見積金額は、
AIの出力を参考にとどめ、担当者と上長が決めます。
10. 迷ったときの相談先
責任者[氏名] 連絡方法[社内チャットの○○/内線○○]
入力してよいか分からないときは、入力する前に相談します。
11. 誤って入力したとき
区分Cの情報を入力したときは、その日のうちに責任者へ報告します。
報告したことを理由に処分することはありません。
責任者は、入力した内容の種類・ツール・日時・社外に出たかどうかを記録し、取引先への連絡の要否を判断します。
12. 見直し
このルールは3か月ごと、または指定ツールを追加したときに見直します。
見直しの記録[日付・変更した項目]
入力してよい情報の3区分表
項目5・6で社員が迷わないよう、ひな形と一緒に次の表を配ります。区分の名前より、「どのツールでなら入力できるか」を同じ行に書いておくことが大事です。
| 区分 | 情報の例 | 入力してよい条件 |
|---|---|---|
| A 公開済み | 自社サイトの掲載内容、公開済みのお知らせ、一般的な業界知識 | 指定ツールなら条件なし |
| B 社内限り | 社内会議のメモ、社内向けマニュアル、固有名詞を伏せた営業の相談 | 指定ツールの会社アカウントで、会社名・個人名を伏せた場合のみ |
| C 入力禁止 | 個人情報、取引先から秘密として受け取った資料、未発表の数字、パスワード | どのツールにも入力しない |
取引先と秘密保持契約(NDA)を結んで受け取った資料の扱いは、契約書の文言によって判断が変わります。確認のしかたはChatGPT業務利用の取引先情報とNDAの線引きで解説しています。
この章で押さえるのは、ひな形と3区分表をセットで配ることです。表があれば、社員は条文を読み返さなくても入力の可否を判断できます。
ひな形を自社版に書き換える5ステップ
ひな形を自社版にするには、社内の使われ方を聞き取り、指定ツールと情報区分を決め、説明会で配るまでを5つのステップで進めます。
ステップ1 社内で使われているAIの聞き取り
最初に、社員がいま何のAIを、どのアカウントで使っているかを無記名のアンケートで聞きます。実態を知らずにルールを書くと、現場の使い方と合わない条文になります。アンケートの冒頭には「回答内容で処分はしません」と明記します。
- 仕事で生成AIを使ったことがありますか(はい/いいえ)
- 使ったサービス名(ChatGPT・Gemini・Claude・Copilot・その他)
- 会社のアカウントですか、個人のアカウントですか
- どの業務に使いましたか
- 入力してよいか迷った情報があれば書いてください
5つ目の回答が、項目5・6に書く実例の材料になります。
ステップ2 指定ツールを1つ決め、学習と共有の設定を確認
指定ツールは、まず1つに絞ります。複数を認めると、ツールごとに設定と区分Bの条件を確かめる必要が出てくるためです。
ChatGPT・Claude・Geminiの各社は、法人向けの契約では、入力内容を初期設定ではモデルの学習に使わないと公式に説明しています(2026年10月10日時点)。出典は次のとおりです。
- ChatGPT:OpenAIのエンタープライズ向けプライバシーの説明
- Claude:Anthropicの商用利用規約
- Gemini:Google WorkspaceのAIとプライバシーの説明
プラン名や設定の場所は変わることがあるため、契約前に各社の公式ドキュメントで確かめてください。
選ぶときに確認するのは、次の5点です。
- 契約の名義:会社名義で契約し、管理者が社員のアカウントを発行・停止できるか
- 学習の扱い:入力内容が学習に使われない契約か、または学習を止める設定があるか
- 共有機能:会話を社外に共有できるリンク機能を、管理者が制限できるか
- 退職時の停止:退職・異動のときに、誰がアカウントを止めるか
- 費用:月額×利用人数の費用を、どの部署の予算で持つか
プランごとの違いはAIの法人プランと個人プランの違い、ChatGPTを指定する場合の設定はChatGPTの管理画面で見る6項目で詳しく解説しています。
ステップ3 区分Bと区分Cへの自社の実例の書き込み
項目5・6には、自社で実際に扱っている情報の名前を3つずつ書き込みます。金属加工業なら「取引先から届いた図面」、不動産業なら「お客様の年収と勤務先」のように、社員が毎日目にする書類名で書きます。
この書き換えはAIに下書きを任せられます。ChatGPT・Claude・Geminiのどれでも構いません。次の文面を出発点にして、あとはAIと対話しながら自社の状況に合わせて詰めてください。
あなたは中小企業の総務担当です。
次の「生成AI利用ルール」のひな形を、自社向けに書き換えてください。
・業種[例:金属加工業]
・社員数[例:25人(パート8人を含む)]
・指定ツール[例:ChatGPT Business]
・日常的に扱う情報[例:取引先の図面、見積書、社員の勤怠記録]
条件:12項目とA4一枚の分量は変えない。項目5と6には自社の情報の実例を3つずつ入れる。
「適切に」「十分に」のような、読んだ社員が判断できない言葉は使わない。
[ここにひな形を貼り付ける]
この作業で入力するのは、業種や社員数など区分Aの情報にとどめます。出てきた下書きは、次の4点を確認してから使います。
- 実例の具体性:項目5・6に、社内で実際に使っている書類名が入っているか
- 判断できない語:「適切に」「必要に応じて」が残っていないか
- 分量:項目が13以上に増えていないか、A4一枚に収まるか
- 法令の断定:「〜法で禁止されている」のような、原文を確かめていない言い切りが入っていないか
社内のどこにどんな情報があるかが分からない場合は、生成AIに社内データを読ませる前の棚卸しの手順で先に洗い出してください。
ステップ4 責任者・相談先・報告の流れの決定
項目10の責任者は、社員数が数十人までの会社なら、社長か総務の担当者が兼ねるのが現実的です。相談先は、社内チャットに専用の場所を作ると、質問と回答が記録として残り、ほかの社員も参照できます。
項目11の報告では、「入力した内容の種類」「使ったツール」「日時」「社外に出たかどうか」の4つを聞きます。この4つがそろえば、責任者が取引先への連絡の要否を判断できます。
ステップ5 30分の説明会と区分の判定練習
ルールはメールで送るだけにせず、30分の説明会で配ります。進め方は次のとおりです。
- 前半10分で、12項目を読み合わせる
- 次の10分で、区分の判定練習をする
- 最後の10分で、質問を受ける
判定練習には、次のような例を使います。
| 業務の例 | 区分 | 理由 |
|---|---|---|
| 自社サイトの会社概要を貼り付けて紹介文を作る | A | 公開済みの情報 |
| 取引先名を[A社]に変えた社内会議のメモを要約する | B | 会社アカウントで、固有名詞を伏せている |
| お客様の問い合わせメールを氏名ごと貼り付けて返信案を作る | C | 氏名と連絡先が含まれる |
| 取引先から届いた図面のPDFを読み込ませる | C | 秘密として受け取った資料 |
| 来月の価格改定の案内文を作る | C | 未発表の価格 |
配ったあとは、相談先への質問件数と誤入力の報告件数を月ごとに記録します。記録があれば、3か月後の見直しで、どの項目の書き方が分かりにくかったかを判断できます。
この章で押さえるのは、ルールの文面を決めることよりも、社員が区分を見分けられるようになるまでを1つの作業として進めることです。
守られるルールにするための書き換え例5つ
生成AIの社内ルールは、文面の書き方しだいで、配ったあとに使われなくなります。ここでは、ひな形を書き換えるときに崩れやすい5か所と、その防ぎ方を挙げます。
「機密情報は入力禁止」の一文だけで済ませる場合
何が機密かを社員ごとに判断することになり、一切使わない社員と、取引先の資料まで入力する社員に分かれます。項目5には「図面」「見積書」のように、書類の名前で書きます。
指定ツールを決めずに禁止事項だけを書く場合
業務でAIを使いたい社員は、個人の無料アカウントで使い続けます。入力した内容は会社から見えなくなります。項目3を先に決め、会社アカウントを配ってからルールを施行します。会社が把握していないAI利用への対策はシャドーAI対策とルール化の手順で解説しています。
誤入力に罰則を付ける場合
誤って入力した社員が報告しなくなり、取引先への連絡が遅れます。項目11に「報告したことを理由に処分しない」と書き、報告の期限を「その日のうち」と具体的に決めます。
チャット画面のAIだけを想定する場合
メールソフト・文書作成ソフト・Web会議ツールに組み込まれた要約や文字起こしの機能を、社員はAIの利用だと考えないことがあります。項目3に「組み込まれたAI機能も対象」と明記します。会議の録音をAIに渡すときの確認点はAI議事録の情報漏洩リスクと5項目にまとめています。
対象者を正社員に限る場合
お客様の情報に触れるパートや派遣社員、業務委託先がルールの外に置かれます。項目2は業務に携わる全員を対象にし、業務委託先には契約書で同意をお願いします。
この章で押さえるのは、書類の名前・報告の期限・対象者のように、社員が読んで行動を決められる言葉で書くことです。
生成AIの社内ルールでよくある質問
生成AIのルールは、就業規則にも書き足す必要がありますか?
初版はA4一枚の社内ルールとして配り、運用を始めて構いません。違反を懲戒の対象にしたい場合は、自社の就業規則の懲戒の定めとどう結びつけるかを決める必要があります。厚生労働省のモデル就業規則に、懲戒の種類と事由を定める条文の例があります。就業規則を変更する前に、社会保険労務士へ確認してください。
外注のライターやデザイナーにも、この社内ルールを守ってもらえますか?
業務委託先には就業規則が及ばないため、契約書や発注書に「生成AIを使う場合は当方のルールに従う」「区分Cの情報は入力しない」と書き、同意をお願いします。納品物にAIを使ったかどうかを申告してもらう欄を設ける方法もあります。
無料版しか契約していない会社でも、このひな形は使えますか?
使えます。無料版で使う場合は、次の3点を書き換えます。
- 項目3の指定ツールを「学習に使わない設定をした無料版」にする
- 各ツールで、入力内容を学習に使う設定をオフにする。設定の場所はChatGPTはOpenAIのデータ管理の公式ヘルプ、ClaudeはClaudeのプライバシー設定の公式ヘルプ、GeminiはGeminiアプリの公式ヘルプに載っています。設定の名前は変わることがあるため、公式ヘルプで現在の名前を確かめてから操作します
- 項目6の区分Bを「入力しない」に変更し、入力できる情報を区分Aだけにする
社内資料を扱いたくなった時点で、法人プランへの変更を検討してください。
AIエージェントのように操作まで行うAIを使い始めたら、12項目で足りますか?
足りません。入力する情報に加えて、AIに何を操作させるかを決める項目を1つ追加します。最初は読み取りだけを許可し、メールの送信・ファイルの削除・支払いは、実行の前に必ず社員が確認する形にします。
今日から進める最初の一歩
まずは、ひな形の項目5に、自社で実際に扱っている入力禁止の情報を3つ書き込んでみてください。3つ書けなかった場合は、社内で何を機密として扱うかがまだ決まっていないので、ステップ1の聞き取りから始めます。ルールを配ったあとの教え方は、社員にAIを教える順番と社内研修の進め方で解説しています。
ルールの文面はできたものの、社員に区分の見分け方をどう伝えるかで迷っている場合は、一度お話を聞かせてください。社員向けの生成AI研修では、経営者と社員が少人数・120分でAIの仕組みと情報の扱い方を学び、自社でどこまで使うかを決める材料をそろえます。いまの社内での使われ方を伺うところからでも大丈夫です。
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