生成AI社内ルールのサンプル|A4一枚12項目のひな形と決め方
この記事の要点
- 生成AIの社内ルールはA4一枚12項目で足りる。条文ひな形を全文掲載
- 入力禁止情報は6カテゴリを別紙に分ける。本体と分けると改定が速い
- 自社で決める分岐は4つ。失敗例5つと合わせて本文で解説
生成AIの社内ルールは、A4一枚・12項目で作れます。必要な12項目は下の表のとおりです。この12項目を埋めれば、現場が自分で判断できる状態になります。
この記事が扱うのは、社員が日々生成AIを使うときの利用ルール、つまり規程の条文項目だけです。会社としての倫理方針や対外的な姿勢の示し方はAI倫理ガイドラインの作り方(A4一枚・2週間で初版)、すでに勝手に使われている状態をどう止めるかはシャドーAI対策|中小企業の放置リスクとルール化手順で扱っています。
想定しているのは、従業員10〜100人ほどで情シス専任がいない会社です。読み終わる頃には、コピーして[ ]を埋めるだけのひな形と、自社で決めないといけない4つの分岐が手元に残ります。
Contents / 目次
生成AI社内ルールのサンプルは、この12項目をA4一枚に書けば動き出す
生成AIの社内ルールに必要な項目は12個です。ボリュームのある規程集をゼロから作る必要はありません。下の表の「決めること」を1行ずつ埋めれば、それがそのまま第1条から第12条になります。
| 項目(条文の順番) | 決めること | 迷ったときの目安 |
|---|---|---|
| 1. 目的 | 何を防ぐために作るのか | 情報漏えいと誤情報の社外流出の2つに絞る |
| 2. 適用範囲 | 誰に・どの端末に適用するか | 業務委託と個人端末を含めるかを明記 |
| 3. 用語 | 生成AI・出力物の定義 | 1文ずつで十分。長い定義は不要 |
| 4. 利用してよいツール | 許可するツールと契約形態 | 別紙1の一覧に切り出す |
| 5. 例外申請 | 一覧にないツールを使う手順 | 申請先・承認者・有効期間の3点 |
| 6. 入力してよい情報 | 入れてはいけない情報の線引き | 別紙2のリストに切り出す |
| 7. 出力物の確認 | 誰が事実確認して責任を持つか | 「下書き扱い」と書くのが要 |
| 8. 第三者の権利 | 著作権・作風の指定の可否 | 公開前の類似チェックを義務化 |
| 9. 社外公表時の扱い | AI利用を明記するかどうか | 方針を1つ選んで書き切る |
| 10. 記録と報告 | 何を残し、事故時にどうするか | 自己申告を不利益に扱わないと明記 |
| 11. 違反時の取り扱い | 就業規則とどうつなぐか | 社労士・弁護士の確認前提で書く |
| 12. 改定 | いつ・誰が見直すか | 3か月ごと+ツール仕様変更時 |
本体・許可ツール一覧・入力禁止リストの3つに分けて作る
ここが、他社のサンプルをそのまま写すと失敗する一番の分かれ目です。生成AIのルールは「1枚の規程」にまとめず、本体(12条)、別紙1「許可ツール一覧」、別紙2「入力禁止情報リスト」の3つのファイルに分けてください。
理由は改定の速さです。生成AIのツールは仕様もプランも頻繁に変わります。全部を1枚に書くと、ツールを1つ足すたびに規程そのものの改定手続きが必要になり、決裁を待つ間に現場が勝手に使い始めます。
別紙に分けておけば、別紙1の更新は管理部門の判断だけでできる、と第12条に書けます。本体は半年〜1年変わらない、別紙は月単位で変わる。この速度差を前提に設計するのが、生成AIのルールづくりの実務です。
ポイント。入力してよい情報の線引きそのもので迷っている段階なら、先にAIに入力してはいけない個人情報|線引きと社内ルールの作り方を読んでから、この記事の別紙2に取りかかると早いです。
つまりこの章で押さえるのは、次の2つです。
- 12項目を埋める
- 変わりやすい部分を別紙に逃がす
この2つができていれば、あとは条文の言い回しを埋めるだけになります。
そのまま使える生成AI社内ルールのサンプル条文(A4一枚版)
ここからは、コピーして[ ]を埋めるだけで使えるひな形です。ステップ1から5の順に、自社の事情を入れていってください。全文は最後にまとめて載せています。
ステップ1. 目的と適用範囲を、それぞれ1文で決める
最初に決めるのは、このルールで何を防ぐかです。欲張らず「情報漏えい」と「誤情報の社外流出」の2つに絞ってください。目的が5つも6つもあるルールは、現場が要点を覚えられません。
適用範囲でつまずくのは、たいてい次の2点です。
- 業務委託・派遣スタッフを含めるか
- 個人のスマホやパソコンでの利用を含めるか
含めるなら、その人たちに読ませる手順もセットで決めないと、書いただけで終わります。
ステップ2. 使ってよいツールを「許可リスト型+例外申請」で決める
ツールの決め方は、禁止するものを並べる禁止リスト型ではなく、使ってよいものを並べる許可リスト型にしてください。生成AIは新しいサービスが毎月出るので、禁止リストは書いた翌週から穴が空きます。
許可ツール一覧(別紙1)は、ツール名だけを書いても意味がありません。契約形態と、どこから使うか(入り口)まで書き分ける必要があります。次の5列で作ります。
| ツール名 | 契約形態 | 許可する入り口 | 使ってよい用途 | 入れてよい情報 |
|---|---|---|---|---|
| [例]ツールA | 法人契約 | ブラウザ | 文章の要約・たたき台作成 | 社内一般まで |
| [例]ツールB | 法人契約 | 会社端末のデスクトップアプリ | 長文資料の読み込み・整理 | 社内一般まで |
| [例]ツールC | 会社アカウント | 会社が導入済みの業務ソフト内 | 社内資料の作成補助 | 社外秘まで |
| [例]個人の無料アカウント | 契約なし | — | 業務利用は不可 | 入力不可 |
「入り口」の列は面倒に見えますが、実務では効きます。同じサービスでも、ブラウザから使うか、アプリから使うか、別のソフトに組み込まれた機能から使うかで、ログインしているアカウントが違うことがあるからです。どの入り口を許可したのかを書いておかないと、社員が別ルートで同じサービスを使い、会社が契約していないアカウントで入力してしまいます。
契約形態やプランごとのデータの扱いは、記事や社内文書に書き写さず、必ず各サービスの提供元の公式ページで確認してください。たとえばGoogle Workspaceについては生成 AI のセキュリティ、コンプライアンス、プライバシー | Google Workspaceで、データ保護の考え方が公開されています。ここは仕様が変わる部分なので、別紙1に「確認先URL」と「確認日」の欄を作り、誰がいつ確認したかだけを残すのが安全です(2026年8月11日時点)。
ステップ3. 入力禁止情報を6カテゴリで具体的に書く
入力してはいけない情報は、最低6カテゴリを名指しで書いてください。「機密情報は入力しない」という一文だけでは、現場は何が機密か判断できません。判断できないと、安全側に倒して誰も使わなくなるか、面倒になって全部入れるかのどちらかになります。
別紙2は、禁止するだけでなく「こう加工すれば使える」まで書くのがコツです。ここまで書いて、はじめて現場が業務を止めずに済みます。
| 区分 | 具体例 | そのまま入力 | 加工すれば使える形 |
|---|---|---|---|
| 顧客情報 | 取引先の社名・担当者名・案件の詳細 | 不可 | 社名をA社、担当者名を担当者に置き換える |
| 個人情報 | 氏名・住所・電話番号・メールアドレス・顔写真 | 不可 | 該当箇所を削除し、属性(40代・製造業)だけ残す |
| 社内機密 | 未公開の商品仕様・図面・原価・仕入先 | 不可 | 数値を伏せ、構成の相談だけにする |
| 未公開の財務情報 | 決算前の売上・利益・資金繰り表 | 不可 | 実数を倍率や概算に置き換える |
| 契約書の全文 | 取引基本契約・NDA・業務委託契約 | 不可 | 条文の一般的な書き方だけを質問する |
| 人事評価情報 | 評価シート・面談記録・給与・健康情報 | 不可 | 評価コメントの書き方の相談にとどめる |
受託業務では、顧客との契約に「再委託や外部サービスへのデータ提供の制限」が入っていることがあります。この場合に社内ルールと契約のどちらが優先されるかは、契約書の文言によって変わります。案件を受けたときのチェック項目に「生成AI利用の可否」を1行足し、判断に迷う契約は法務や顧問弁護士に確認してください。
ステップ4. 出力物は「下書き扱い」と書き、確認者を決める
出力の条文で必ず入れるのは、「生成AIの出力物は下書きとして扱う」という一文です。この一文があるかないかで、事故が起きたときの責任の所在がまるで変わります。
確認するのは、事実・数値・固有名詞の3つです。生成AIは、それらしいけれど存在しない情報を作ることがあります(ハルシネーション)。仕組みと防ぎ方は生成AIのハルシネーションはなぜ起きる|業務で防ぐ5つの手順で詳しく書いています。
社外に出す文書については、確認者を役職で指定します。「担当者が確認する」だけだと、担当者が自分で書いて自分で確認する形になり、実質チェックが働きません。
ステップ5. 記録・違反時・改定サイクルを決めて締める
最後の3条は、忘れられがちですが運用が続くかどうかを左右します。特に大事なのは、入力してはいけない情報を入れてしまった社員が、すぐ報告できる設計にすることです。
報告を理由に不利益な扱いをしない、と条文に書いてください。書かないと、事故は隠され、発覚するのは取引先からの指摘のときになります。
改定は「3か月ごと」と「利用ツールの仕様変更時」の2軸で。日付と担当部署を条文に入れておかないと、誰も見直しません。
生成AI利用ルールのひな形(コピー用・全文)
ここまでの内容をつないだ全文です。[ ]の中を自社の言葉に置き換えて使ってください。
法的な効力を持つ社内規程として運用する場合は、就業規則や秘密保持契約との関係を社会保険労務士・弁護士に確認したうえで確定させてください。
生成AI利用ルール(A4一枚版ひな形)
制定日 2026年 月 日 / 改定日 年 月 日
管理部門 [総務部] / 相談窓口 [総務部・内線○○]
第1条(目的)
本ルールは、[会社名]の従業員が業務で生成AIを利用する際の、
使ってよいツール、入力してよい情報、出力物の取り扱いを定め、
情報漏えいと、誤った情報の社外流出を防ぐことを目的とする。
第2条(適用範囲)
本ルールは、[正社員・契約社員・パート・派遣社員・業務委託先]が、
[会社支給の端末および個人端末]を用いて業務のために生成AIを
利用するすべての場合に適用する。
第3条(用語)
生成AIとは、入力した指示(プロンプト)に応じて文章、画像、音声、
プログラムなどを自動で作り出すサービスをいう。
出力物とは、生成AIが作成した文章、画像、コード等をいう。
第4条(利用してよいツール)
別紙1「許可ツール一覧」に記載したツールのみ利用できる。
一覧にないツールを利用する場合は、第5条の申請を行い、
承認を得てから利用する。
第5条(例外申請)
申請先は[総務部]、承認者は[部門長]とする。
申請には、ツール名、利用目的、入力する情報の区分、契約形態、
利用期間を記載する。承認の有効期間は原則[3か月]とし、
継続する場合は再申請する。
同一ツールの申請が[3件]を超えた場合、[総務部]は
別紙1への追加を検討する。
第6条(入力してよい情報)
別紙2「入力禁止情報リスト」に該当する情報は入力しない。
別紙2に「加工すれば使える形」が示されている場合は、
その加工を行ったうえで入力できる。
判断に迷う場合は入力せず、相談窓口に確認する。
第7条(出力物の確認)
生成AIの出力物は下書きとして扱う。
利用者は、事実、数値、固有名詞について一次情報で確認したうえで
使用する。社外に提出する文書は、[部門長]の確認を経る。
第8条(第三者の権利)
特定の作家名、企業名、既存作品の作風を指定して生成しない。
画像、文章、音声を社外に公開する前に、既存の著作物と
類似していないかを確認する。
第9条(社外公表時の取り扱い)
社外に公開する制作物における生成AIの利用については、
[方針を1つ選ぶ/AI利用を明記する・明記しない・掲載媒体の
規定に従う]。
第10条(記録と報告)
[社外提出物の作成]に生成AIを用いた場合は、使用ツール名と
日付を[案件フォルダの作業記録]に残す。
入力してはいけない情報を入力した場合、または誤った出力物を
そのまま使用した場合は、直ちに相談窓口へ報告する。
報告したこと自体を理由に、不利益な取り扱いは行わない。
第11条(違反時の取り扱い)
本ルールに反した場合は、[就業規則第○条]に基づき対応することが
ある。本条の運用にあたっては、就業規則および秘密保持契約との
整合を確認する。
第12条(改定)
本ルールは[3か月]ごと、および利用ツールの重要な仕様変更が
あった時に見直す。改定は[総務部]が起案し、[経営会議]で
決定する。別紙1および別紙2の更新は[総務部]の判断で行い、
更新日を記載のうえ社内に周知する。
例外申請は、専用システムを作らなくても社内フォーム1枚で回せます。記載してもらう項目は次の6つです。
- ツール名と提供元:正式名称で書いてもらう。略称だけだと別サービスと取り違える
- 契約形態:個人の無料/個人の有料/法人契約/API のどれか
- 利用目的と業務:「調査」ではなく「競合3社の公開情報の要約」まで具体的に
- 入力する情報:別紙2のどの区分に触れるか、触れないか
- 利用期間:開始日と終了予定日
- 代替手段の有無:許可済みツールでできない理由
この章の結論として、ひな形を埋める作業そのものはそれほど時間がかかりません。時間がかかるのは条文づくりではなく、次の章で扱う4つの分岐を社内で決めるところです。
中小企業がAI導入を止めずにルールを決める2週間の進め方
ルールづくりに何か月もかけないでください。決裁者を含めて2回の会議、合計2時間で決め切るのが現実的です。長引くほど現場は待てず、勝手に使い始めます。
自社で決めるべき4つの分岐
他社のサンプルをコピーしても埋まらないのが、この4つです。会議で議論するのはここだけにしてください。
| 分岐 | A案 | B案 | こう決めると失敗が少ない |
|---|---|---|---|
| 誰に許可するか | 全社員に一律 | 部署・担当者を限定 | 50人未満なら全社一律。限定すると管理台帳が要り、かえって手間が増える |
| ツールの決め方 | 許可リスト型 | 禁止リスト型 | 許可リスト型+例外申請。禁止リストは新サービスに追いつけない |
| 個人端末での利用 | 認める | 会社端末のみ | 営業が多い会社は認めたうえで、会社アカウントでのログインを条件にする |
| 社外公表時のAI明記 | 明記する | 媒体の規定に従う | 受託制作がある会社は「媒体と契約の規定に従う」。自社発信中心なら方針を1つに固定 |
2週間のタイムライン
担当者1人が動く前提で、実際に回る段取りです。
- 1日目。この記事のひな形をコピーし、[ ]のうち会社名・部署名など事実だけを埋める(30分)
- 2〜3日目。現場3〜5人に「いま何のツールを何に使っているか」を聞き、別紙1のたたき台を作る。ここで初めて実態が見える
- 4日目。第1回会議60分。4つの分岐だけを決める。条文の言い回しは議題にしない
- 5〜7日目。決まった内容をひな形に反映し、別紙2の「加工すれば使える形」の列を自社の業務に合わせて書く
- 8日目。第2回会議60分。決裁者が読み上げて確認し、その場で確定させる
- 9〜10日目。就業規則・秘密保持契約との関係について、顧問の社会保険労務士または弁護士に第11条を見てもらう
- 11〜14日目。全社に周知。30分の説明会を1回開き、ひな形と別紙2を配って質問を受ける
設計の考え方の全体像を押さえたい場合は、Microsoftが公開している組織の AI 戦略を設定するためのガイダンス(Cloud Adoption Framework)のような、ユースケースの特定から責任あるAI戦略の構築までを整理した資料も参考になります。ただし、これは大企業向けの枠組みを含むので、そのまま写さず自社の規模に合わせて削ってください。
2週間で決め切るための要点は1つです。会議で扱うのは4つの分岐だけにして、条文の文言は担当者が書いて持ち込む。この分業にすると、決裁者の時間を2時間しか使わずに済みます。
生成AI社内ルールでよくある失敗5つと、その防ぎ方
ここからは、ルールの条文そのものが原因で起きる失敗です。作った直後は気づかず、3か月後に「誰も守っていない」という形で表面化します。
失敗1. 「機密情報は入力禁止」の一文で終わっている
いちばん多いのがこれです。何が機密かの定義を書かずに禁止だけすると、現場の担当者は毎回上長に確認するはめになります。確認が面倒になった時点で、聞かずに入れるか、使うのをやめるかのどちらかに転びます。
防ぎ方は、別紙2に6カテゴリを名詞で書き、「加工すれば使える形」まで示すことです。判断を現場に押しつけず、リストを見れば答えが出る状態にします。
失敗2. 公開ガイドラインを写して、自社にない部署名や承認者が残る
自治体や大企業が公開しているガイドラインは参考になりますが、そのまま写すと「情報システム部に申請する」「AI倫理委員会が審査する」といった、自社に存在しない組織が条文に残ります。申請先が実在しないルールは、その日から誰も使いません。
防ぎ方は単純で、配布前に[ ]と固有名詞を全文検索して1つずつ潰すことです。承認者は「AI管理責任者」のような新しい役職名を作らず、既にある職位(部門長・総務部長)を当ててください。新しい役職を作ると、その任命だけで1か月止まります。
失敗3. ツール名だけを許可し、無料版と法人契約を区別していない
同じサービス名でも、個人の無料アカウント、個人の有料アカウント、法人契約、APIでは、適用される利用規約やプランが分かれていることがあります。入力したデータがどう扱われるかは提供元の公式ページで確認する必要があり、ツール名だけを許可すると、社員は自分の個人アカウントで会社の情報を入力し、それがルール上は「許可されている」状態になります。
防ぎ方は、別紙1に契約形態と入り口の列を作り、契約形態ごとの扱いを提供元の公式ページで確認して確認日を残すことです。あわせて「個人の無料アカウントでの業務利用は不可」の行を明示的に置いてください。書いていない=禁止、では現場に伝わりません。
失敗4. 出力物の確認者が決まっておらず、責任が宙に浮く
誤った数字が入った資料が社外に出たとき、「AIが書いたので」と言われて誰も責任を取れない状態になります。取引先から見れば、資料を作った過程で生成AIを使ったかどうかは分かりません。社内で確認者を決めていなければ、誰が事実確認をすべきだったのかも後から特定できません。
防ぎ方は、第7条に「出力物は下書きとして扱う」と「社外提出物は部門長が確認する」の2文を必ず入れることです。この2文があれば、確認は既存の承認フローに乗ります。新しい承認ルートを作らないのがコツです。
失敗5. 禁止条項ばかり厚く、代わりの手段が書かれていない
禁止だけを並べたルールは、業務を止めます。止まった業務は、個人アカウントで水面下に潜るだけです。第6条に「加工すれば使える形」を書き、第5条の例外申請を軽くしておくことが、そのまま防止策になります。
すでに水面下で使われている疑いがあるなら、ルールの整備と並行してシャドーAI対策の3ステップ|禁止せず情報漏洩を止める仕組みの手順を先に回してください。
この章の判断材料。5つとも、原因は「抽象的に書いた」ことです。条文を書き終えたら、入社3か月の社員に読ませて「これを読んで判断できるか」を聞いてください。判断できない箇所が、そのまま形骸化する箇所です。
規程だけでは足りない部分と、現場での妥協点
正直に書きます。12項目のルールを作っても、カバーできない領域が3つ残ります。ここを知らずに「規程を作ったから安心」と考えるのが、いちばん危ない状態です。
AIエージェントが入ると、入力の線引きだけでは足りなくなる
AIエージェントとは、目標を渡すと自分でタスクを分解して実行するAIのことです。ここまでのルールは「人がAIに何を入力するか」を前提に作られていますが、エージェントはメール送信やファイル更新まで自分で実行します。入力の線引きだけでは、決めるべきことが足りません。
先回りして、第4条か第7条に1条足しておいてください。決めるのは3点です。
- 権限の範囲:読み取りだけから始める。書き込み・送信・公開・支払いは別扱いにする
- 人が止める場所:社外への送信、公開、金銭が動く操作は必ず人の承認を挟む
- 記録:いつ・どのエージェントが・何を実行したかのログを残す
懲戒の根拠にしたいなら、就業規則とのつなぎ方は専門家の確認が要る
第11条で「違反した場合は就業規則に基づき対応する」と書いても、それだけで処分ができるとは限りません。社内規程を懲戒の根拠として機能させるには、就業規則との関係や周知の手続きが関わってきます。ここは記事の情報で自己判断せず、社会保険労務士・弁護士に確認してください。
就業規則そのものをAIに読ませて点検する場合の線引きは、就業規則のAIチェック手順5ステップ|社労士確認の線引きで整理しています。どこまでAIに任せ、どこから専門家に渡すかの判断が具体的に書いてあります。
ISMSやPマークを運用中なら、既存の情報分類に合わせる
すでに情報セキュリティの認証を取っている会社が、生成AI用に新しい情報区分を作ってしまうケースがあります。「社外秘」と「AI入力不可」が別々に存在すると、現場は2つの分類を突き合わせる必要が出て、運用が止まります。
妥協点として、生成AI用の新しい区分は作らず、既存の情報資産分類に「生成AIへの入力可否」の列を1つ足すだけにしてください。管理表が1枚で済み、監査のときの説明も楽になります。
ひな形づくり自体をAIに任せる範囲
条文の言い回しを整えたり、抜けている項目を指摘させたりする使い方は有効です。一方で、4つの分岐(誰に許可するか、個人端末を認めるか等)は自社の事情でしか決まらないので、AIに決めさせないでください。会社としての姿勢を文書にする話はAI倫理ポリシーの作り方|4原則と6ステップで社内に定着で扱っています。
この章で押さえるのは、規程は「人が入力する場面」までしかカバーしないという限界です。エージェントを使い始める前に権限と停止条件の1条を足す、懲戒に使うなら専門家に見てもらう。この2つを予定に入れておけば、あとから作り直しになりません。
社内ルールを決めると何が変わり、何は変わらないか
ルールを整えた会社で最初に変わるのは、現場の判断にかかる時間です。「これ入れていいですか」という確認が上長に飛ばなくなり、別紙2を見ればその場で答えが出るようになります。
実務でよくあるのは、使い始めてからルールを整えるという順番です。先にルールを用意できていれば、現場は迷わずに済みます。
この差は、取引先からのセキュリティチェックシートで効いてきます。「生成AIの利用ルールはありますか」「入力禁止情報を定めていますか」という設問に、規程の条番号で答えられるかどうか。答えられる状態にしておくと、先方の確認が一往復で終わります。
例外申請の件数が、次の改定のデータになる
運用が始まったら、例外申請の記録を捨てないでください。これがルールの精度を測る、いちばん安上がりな指標になります。
- 同じツールの申請が3件を超えた:現場に必要なツールなので、別紙1に昇格させる
- 申請がゼロのまま3か月:ルールが読まれていないか、そもそも生成AIが使われていない。周知か活用支援のどちらかが必要
- 申請が毎週来る:許可リストが狭すぎる。業務の実態に合っていない
ルールを作っても、使われる量は増えない
ここは率直に書いておきます。社内ルールは「安心して使える状態」を作るものであって、「使いたくなる状態」を作るものではありません。ルールを配った翌月に利用者が増える、という期待はしないでください。
使われるようにするには、業務ごとの使いどころを見せる、成果を共有する、といった別の取り組みが要ります。そちらは生成AIが社内で使われない原因と90日で定着させる現場の進め方で扱っています。ルールと定着は、別々に手を打つものだと考えてください。
まとめると、ルールを決めて変わるのは判断の速さと、取引先への説明力です。利用が広がるかどうかは別の話なので、両方を同じ施策でやろうとしないのが現実的です。
生成AIの社内ルールについてよくある質問
他社が公開している生成AIのガイドラインを、そのままコピーして使ってもいいですか
構成の参考にするのは問題ありませんが、そのままは危険です。自社にない部署名や承認者、使っていないツール名が残り、申請先が存在しないルールになります。コピーするなら、固有名詞をすべて[ ]に置き換えてから埋め直してください。
社員が5人の会社でも規程は必要ですか。口頭で伝えるだけではだめですか
文書にしてください。理由は懲戒のためではなく、取引先から「ルールはありますか」と聞かれたときに出すものが要るからです。5人ならA4一枚で十分で、別紙2の6カテゴリだけでも先に配れば形になります。
入力禁止の情報を社員が入れてしまったことが後から分かったら、どうすればいいですか
まず入力内容と利用したアカウント、日時を記録します。そのうえで、利用したサービスの提供元が示しているデータの取り扱いと、削除の方法を公式ヘルプで確認してください。顧客情報が含まれる場合は、社内だけで判断せず、契約先への報告要否を法務や顧問弁護士に確認します。
生成AIで作った文章を社外に出すとき、AIを使ったと書く必要はありますか
一律の答えはありません。掲載する媒体の規約や、取引先との契約で求められる場合があるので、まずそちらを確認してください。そのうえで自社の方針を1つに決め、第9条に書き切ります。案件ごとに担当者が迷う状態にしないことが要点です。
ルールを作ったあと、どのくらいの頻度で見直せばいいですか
別紙1の許可ツール一覧は月1回、規程本体は3か月ごとが目安です。加えて、使っているツールに大きな仕様変更があったときは、その都度別紙を更新します。本体と別紙を分けておけば、この頻度でも運用が回ります。
今日の最初の一歩
まずは5分で終わることから始めてください。この記事の別紙2の6カテゴリ(顧客情報・個人情報・社内機密・未公開の財務情報・契約書の全文・人事評価情報)をそのままコピーして、社内チャットに「当面この6つは入力しないでください」と流すだけでいいです。規程が完成するまでの2週間、これが穴を塞ぎます。
そもそもどの業務から生成AIを使い始めるかで迷っているなら、AI導入は何から始めるか|中小企業が失敗しない最初の1業務を先に読むと、ルールで縛る範囲も決めやすくなります。
ここまで読んで、4つの分岐を社内で決め切れそうにない、既存のセキュリティ規程との整合が不安、という段階でしたら、一度お話を聞かせてください。現状の業務とツールの使われ方を整理するだけでも、どこから手を付けるべきかははっきりします。無理に導入をすすめることはしませんので、気軽にご相談ください。
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