AI研修の費用対効果の出し方|受講人数別の回収月数の計算表

AI研修の費用対効果の出し方|受講人数別の回収月数の計算表

この記事の要点

  • 投資額は研修費に受講時間の人件費とツール費を足して出す
  • 効果は受講人数ではなく研修後も使い続ける人数で計算する
  • 元が取れる削減時間の逆算式と人数別の計算表を本文に掲載

AI研修の費用対効果は、次の2つを比べ、効果が投資を何か月で上回るかで判断します。

  • 効果:研修後も使い続ける人数 × 1人あたりの週の削減時間 × 時給換算
  • 投資:研修費+受講時間の人件費+社内の準備時間+ツール費

見積もりの段階では、この式を逆から使います。元を取るには1人あたり週に何分の削減が必要かを出すと、受講人数や研修プランを同じ物差しで比べられます。

研修会社から見積もりを受け取り、発注するか、何人に受講させるかを決める立場の経営者・役員の方に向けた記事です。読み終わる頃には、自社の数字を入れて回収月数を計算し、研修会社に確認する質問を送れる状態を目指します。

研修費用の相場や見積もりの内訳そのものはAI研修の費用相場と内訳で解説しているので、この記事では「研修費用と回収の対応」に絞ります。

Contents / 目次
  1. AI研修の費用対効果を出す計算式と4つの数字
  2. 受講人数別に回収月数を計算する手順
  3. AI研修の費用が変わる項目と、回収への効き方
  4. AI研修の効果として研修後3か月で確かめられること
  5. AI研修の費用対効果が出なくなる4つの条件
  6. 見積もりの比較で見落としやすい3つの前提
  7. 契約前に研修会社へ確認する質問
  8. 自社で行う範囲と研修会社に頼む範囲
  9. AI研修の費用対効果でよくある質問

AI研修の費用対効果を出す計算式と4つの数字

AI研修の費用対効果は、「総投資額」「使い続ける人数」「1人あたりの週の削減時間」「時給換算」の4つの数字がそろえば計算できます。このうち見積もりの段階で決めておくのは、総投資額と時給換算、それに研修前の所要時間の記録の取り方です。使い続ける人数は仮の割合で置き、削減時間は研修前後の記録の差で出します。

費用対効果とは、かけたお金に対してどれだけの効果が返ってきたかを比べたものです。AI研修の場合、効果の大部分は「社員の作業時間が短くなった分」なので、時間を金額に直して比べます。

数字何を入れるか見落としやすい点
総投資額研修費+受講時間の人件費+社内の準備時間+ツール費研修費だけで計算すると、投資が実際より小さく見える
使い続ける人数研修の1〜2か月後も、対象の業務でAIを使っている人受講人数をそのまま入れると、効果が実際より大きく見える
1人あたりの週の削減時間研修前に記録した所要時間と、研修後の所要時間の差研修前に測っていないと、差を出せない
時給換算給与に社会保険料などの会社負担を足し、年間の労働時間で割った額見積もりどうしを比べるときは、同じ額を使う

この4つを使った計算式は次のとおりです。

回収月数の計算式。回収月数 = 最初にかかる投資 ÷(毎月の効果 − 毎月かかる費用)。毎月の効果は「使い続ける人数 × 1人あたりの週の削減時間 × 時給換算 × 約4.33週」で出します。

見積もりを比べる段階では、まだ削減時間が分かりません。そこで、回収したい期間(たとえば6か月)を先に決め、「その期間で元を取るには、1人あたり週に何分の削減が必要か」を逆算します。この逆算した時間を、自社の業務に実際にかかっている時間と比べれば、現実的な見積もりかどうかを判断できます。

この章で押さえるのは、投資の側には研修費だけでなく受講時間の人件費とツール費まで含め、効果の側には受講人数ではなく研修後も使い続ける人数を掛けるという点です。研修費と受講人数だけで計算した場合と比べると、同じ見積もりでも判断が変わります。

受講人数別に回収月数を計算する手順

計算は5つのステップで進めます。研修会社を選ぶ前に始められるのはステップ1〜3で、ステップ4〜5は見積もりが届いてから行います。

ステップ1。研修の題材にする業務を決め、2週間の所要時間を記録する

最初に、AI研修で扱う業務を1〜3つに絞り、その業務に今どれだけ時間がかかっているかを2週間記録します。研修後の削減時間は、この記録との差でしか出せないからです。

題材にする業務は、週に1回以上発生し、文章や表を作る作業が中心のものを選びます。たとえば、議事録の作成、定型メールの下書き、見積書の説明文、日報の集計などです。月末にしか発生しない業務を選ぶと、研修から実務で使うまでに間が空き、使い方を忘れてしまいます。

記録は、対象業務を担当している人に次の表を渡して書いてもらいます。全員が難しければ、担当者のうち2〜3人の記録でもかまいません。

日付業務名件数かかった時間(分)メモ(手が止まった理由など)
9月29日定例会議の議事録145録音を聞き直して発言者を確認
9月29日見積もり送付メール440案件ごとに説明文を書き直し
9月30日週次の日報集計130表記の揺れを修正した

2週間分の合計と1件あたりの平均は、ExcelやGoogleスプレッドシートのSUM関数とAVERAGE関数で出します。ChatGPTやClaudeに表を貼り付けて計算してもらう場合は、社員名を伏せたうえで、出てきた合計と平均をSUM関数・AVERAGE関数の結果と照らし合わせてください。生成AIの計算は誤ることがあり、この数字は回収月数の根拠になるからです。

記録の取り方や、削減時間の出し方をもっと詳しく知りたい方はAI業務効率化の効果を数字で出す方法で解説しています。

どの業務を題材にするかや、研修で使う資料に社内の情報をどこまで入れてよいかを、社内だけで決めるのは難しいものです。社員が個人でAIを使い始めていて、入力してよい情報がまだ決まっていない場合は、経営者と社員で考えるAI研修で、題材の業務と情報の扱い方を先に決める進め方もあります。

ステップ2。投資額を4つの費用に分けて書き出す

次に、研修にかかるお金を4つに分けて書き出します。見積書に載っているのは研修費だけなので、残りの3つは社内で計算します。

  • 研修費:見積書の総額。講師の交通費や教材費が別になっていないか確認する
  • 受講時間の人件費:受講人数 × 1人あたりの受講時間 × 時給換算。研修中は通常業務が止まるので、その分も投資に入れる
  • 社内の準備時間:ステップ1の記録、研修会社との打ち合わせ、社内ルールの作成にかかる時間 × 時給換算
  • ツール費:研修をきっかけに新しく契約するAIツールの利用料。毎月かかる費用として、1人あたりの月額 × 人数で出す

研修費・受講時間の人件費・社内の準備時間の3つは、最初に1回だけかかる投資です。ツール費だけは毎月かかるので、ステップ4の計算表では別の欄に入れます。回収したい期間の総投資額を出すときは、最初の投資にツール費の月額 × 回収したい月数を足します。ツール費を最初の投資にも入れてしまうと、二重に数えることになります。

すでに全社員がAIツールの法人プランを契約済みなら、ツール費は0として計算します。研修に合わせて新しく契約する場合だけ入れます。

ステップ3。研修後も使い続ける人数を控えめに置く

効果の計算には、受講人数ではなく「研修後も対象業務でAIを使い続ける人数」を入れます。研修の直後は全員が使っても、通常業務に戻ると使わなくなる人が出るからです。

見積もりの段階では実際の人数が分からないので、割合を仮に置きます。この記事の計算例では、受講者の60%が使い続けると仮定しています。業種や題材の業務によって大きく変わるので、自社の感覚より少し控えめな数字にしておくと、見込みと実際の差が小さくなります。

ステップ4。表計算の式で、元が取れる削減時間と回収月数を出す

ここまでの数字を、ExcelかGoogleスプレッドシートに入れて計算します。次の一覧のとおり、A列の各セルに項目名を、B列の各セルに数字と式を1つずつ入力してください。[ ]の注記は入力しません。B1〜B8は自社の数字に書き換えます。

【前提】Excel・Googleスプレッドシートのどちらでも動きます。
A列に項目名、B列に数字と式を入れます。B1〜B8とB15が入力欄です。

A1  研修費(見積もりの総額・円)        B1  400000   [ここを自社の値に変更]
A2  受講人数(人)                    B2  10       [ここを自社の値に変更]
A3  1人あたりの受講時間(時間)         B3  6        [ここを自社の値に変更]
A4  時給換算(円)                    B4  3000     [ここを自社の値に変更]
A5  社内の準備時間(時間)             B5  20       [ここを自社の値に変更]
A6  ツール費(1人1か月・円)           B6  3000     [新規契約がなければ0]
A7  回収したい期間(か月)             B7  6        [ここを自社の値に変更]
A8  使い続ける割合(0〜1)             B8  0.6      [60%なら0.6]

A10 最初にかかる投資(円)             B10 =B1+B2*B3*B4+B5*B4
A11 毎月かかる費用(円)               B11 =B6*B2
A12 使い続ける人数(人)               B12 =ROUNDDOWN(B2*B8,0)
A13 元が取れる削減時間(分/1人・週)    B13 =(B10+B11*B7)/B7/(B12*B4*52/12)*60
A14 1日あたりに直すと(分)             B14 =B13/5

A15 研修後に実測した削減時間(分/1人・週) B15 120  [研修後に実測値を入れる]
A16 回収月数(か月)                   B16 =IF(B12*B4*B15/60*52/12>B11,B10/(B12*B4*B15/60*52/12-B11),"回収できない")

B12が0になるとB13がエラーになります。受講人数が少なく、使い続ける割合を低く置いたときに起きるので、その場合は割合を見直してください。B16は、毎月の効果がツール費を下回ると「回収できない」と表示します。

例の数字(10人受講・6か月で回収)を入れると、B13は約105分、B14は約21分になります。つまり、使い続ける6人が、それぞれ1日あたり約21分の作業を短くできれば、6か月で元が取れるという意味です。

この21分を、ステップ1の記録と比べます。題材にした業務に、そもそも1日20分もかかっていないなら、この見積もりでは6か月で回収できません。受講人数を絞るか、題材の業務を増やすか、回収したい期間を延ばすかを検討します。

ステップ5。受講人数別の計算表で見積もりを比べる

受講人数を変えると、元が取れる削減時間がどう動くかを表にしました。数字はすべて次の仮定で計算した例で、実際の相場を示すものではありません。

  • 研修費:40万円(20人までは同じ金額の見積もりと仮定)
  • 受講時間:1人6時間
  • 時給換算:3,000円
  • 社内の準備時間:20時間
  • ツール費:1人1か月3,000円を新たに契約
  • 回収したい期間:6か月
受講人数6か月の総投資額使い続ける人数元が取れる削減時間(1人・週)1日あたり
5人(継続60%)64万円3人約164分約33分
10人(継続60%)82万円6人約105分約21分
20人(継続60%)118万円12人約76分約15分
10人(継続30%)82万円3人約210分約42分

続いて、受講人数別の回収月数です。研修後に実測した削減時間が、1人あたり週60分(1日12分)だった場合と、週120分(1日24分)だった場合の2通りを、上と同じ仮定で計算しました。60分と120分は計算のために置いた例の値です。計算表のB15に60か120を入れたときのB16と同じ値になります。

受講人数最初にかかる投資毎月のツール費使い続ける人数回収月数(週60分削減)回収月数(週120分削減)
5人(継続60%)55万円1.5万円3人約22.9か月約8.7か月
10人(継続60%)64万円3万円6人約13.3か月約5.1か月
20人(継続60%)82万円6万円12人約8.5か月約3.3か月
10人(継続30%)64万円3万円3人約71.1か月約13.3か月

週120分の削減を実測できれば、10人受講は約5.1か月、20人受講は約3.3か月で回収できます。同じ10人受講でも、使い続ける割合が30%に下がると、週120分で約13.3か月、週60分では約71.1か月かかります。

2つの表から、判断に使える点が2つ読み取れます。

1つ目は、受講人数を4倍にしても、元が取れる削減時間は半分程度にしかならないことです。研修費は人数が増えても同じですが、受講時間の人件費とツール費は人数に比例して増えるからです。「人数を増やすほど1人あたりが安くなる」という見積もりでも、回収のしやすさは見た目ほど上がりません。

2つ目は、使い続ける割合が60%から30%に下がると、元が取れる削減時間が2倍になることです。10人受講で1日21分だった目標が、42分に跳ね上がります。受講人数を増やすより、受講した人が使い続ける状態を保つほうが、費用対効果に大きく効きます。

この章で押さえるのは、見積もりを受け取ったら「元が取れる1日あたりの削減時間」を出し、それを題材業務の所要時間と比べることです。この比較で、発注するか、人数を変えるか、題材を増やすかを判断できます。

AI研修の費用が変わる項目と、回収への効き方

AI研修の見積もりは、受講人数・研修時間・内容のカスタマイズ・研修後のフォローの有無で大きく変わります。ただし、費用が上がる項目がそのまま費用対効果を下げるとは限りません。回収にどう効くかは項目ごとに違います。

項目費用への影響回収への効き方
受講人数人数課金なら比例して増える対象業務を持たない人まで含めると、使い続ける割合が下がる
研修時間・日数長いほど増える研修費に加えて、受講時間の人件費も増える
自社業務を題材にしたカスタマイズ事前の打ち合わせ分が増える研修の翌日から実務で試せるため、使い続ける割合が上がることを期待できる(この記事では仮定として扱う)
研修後のフォロー期間と回数に応じて増える使わなくなる人を減らせる可能性がある(この記事では仮定として扱う)
対面かオンラインか対面は講師の交通費が加わることがあるオンラインなら拠点が分かれていても移動時間を減らせる

カスタマイズとフォローは見積もりを押し上げます。ただ、ステップ5で見たとおり、費用対効果に最も効くのは使い続ける割合です。

仮に、安い汎用の研修で継続率が30%、費用は上がっても継続率が60%になる研修があるとすると、後者のほうが回収が早くなる場合があります。見積もりを比べるときは、総額だけでなく、継続率の仮定をいくつに置くかまで含めて計算表に入れてください。

研修だけでなく、導入の設計や運用まで外部に支援してもらう場合の費用の見方はAI導入の伴走支援の費用と研修との違いで比べています。

人材開発支援助成金は回収の計算に入れずに一度出す

AI研修には、厚生労働省の「人材開発支援助成金」を使える場合があります。これは、計画に沿って職業訓練を行った事業主に対して、訓練経費や訓練期間中の賃金の一部などを助成する制度です(出典:厚生労働省「人材開発支援助成金」)。コースの種類、助成の割合、申請の手順は年度ごとに変わるので、金額や要件は同じページの最新の案内で確認してください。

費用対効果の計算では、まず助成金を入れずに回収月数を出します。助成金は、申請が認められ、支給が決まってから入金されるものです。最初から差し引いた金額で計算すると、支給されなかったときや入金が遅れたときに、社内への説明と資金の見通しが両方ずれます。

そのうえで、助成金が支給された場合の回収月数を、2つ目のパターンとして並べます。社内の稟議には両方を載せておくと、「助成金がなくても何か月で回収できるか」が伝わります。

人材開発支援助成金は、訓練の計画を事前に届け出て、その計画に沿って訓練を行うことが助成の前提です。届け出の時期と必要な書類はコースごとに決まっているので、見積もりの段階で厚生労働省「人材開発支援助成金」のパンフレットを確認し、研修会社と労働局にも問い合わせてください。

九州で研修先と助成金を探している方は九州のAI研修と助成金の見方もあわせてご覧ください。

AI研修の効果として研修後3か月で確かめられること

AI研修の効果は、研修後3か月の時点で「使い続けている人数」「題材業務の所要時間」「実測値で出した回収月数」の3つを確かめると、数字で判断できます。研修直後の満足度アンケートだけでは、費用に見合ったかどうかは分かりません。

時期確かめる数字数字から判断できること
研修の1か月後対象業務でAIを使っている人数ステップ3で置いた継続率の仮定より多いか少ないか
研修の2〜3か月後題材業務の所要時間(研修前と同じ表で2週間記録)1人あたりの週の削減時間の実測値
研修の3か月後計算表のB15に実測値を入れた回収月数予定の期間で回収できるか、追加の受講やフォローを発注するか

研修前後で同じ表を使って記録していれば、「議事録1件あたり45分が20分になった」のように、業務ごとの変化を具体的に説明できます。次年度にAI研修を続けるか、対象部署を広げるかを決めるときも、実測した回収月数を根拠に予算を組めます。

研修の準備で題材業務の所要時間を記録し、手が止まる理由をメモしておくと、業務の手順そのものも文書になります。研修の効果が思うように出なかった場合でも、この記録があれば、どの工程でAIを使えていないのかを特定できます。

使い続けている人数が仮定を下回った場合は、研修の内容より先に、入力してよい情報のルールや、題材業務の発生頻度を疑ってください。次の章で、費用対効果が出なくなる条件を具体的に書いています。

この章で押さえるのは、研修後3か月で3つの数字を取れば、効果を感想ではなく回収月数で判断できるという点です。そのためには、研修前の記録と同じ表を研修後にも使います。

AI研修の費用対効果が出なくなる4つの条件

AI研修の費用対効果は、研修の質とは別に、発注する側の準備や受講者の選び方で下がることがあります。ここでは、AI研修に特有の4つの条件と、その防ぎ方を書きます。

研修前に所要時間を記録していないと、削減時間を説明できない

研修の発注を決めてから日程までが短いと、所要時間を記録しないまま研修に入ってしまいます。研修後に「議事録が楽になった」という声は上がっても、何分短くなったかは誰にも分かりません。

その結果、次年度の予算を決める場で費用対効果を説明できず、追加の研修が見送られることがあります。防ぐには、研修の日程を決めた日から2週間の記録を始めることです。研修会社に記録の様式を用意してもらえるか、見積もりの段階で確認しておくと手間が減ります。

全社員を受講させると、使わない人の拘束時間とツール費が積み上がる

社員の間で差をつけたくないという理由から、1期目から全社員を受講させる場合があります。題材業務を持たない社員も6時間拘束され、アカウントの費用もかかりますが、研修後に使う場面がありません。

ステップ5の表のとおり、受講人数を増やしても元が取れる削減時間は比例して下がらず、継続率が下がればむしろ上がります。1期目は題材業務を担当している人に絞り、実測した回収月数を見てから2期目で広げるほうが、投資を回収しやすくなります。

情報の扱い方だけは全員に知ってほしい場合は、短い説明会を別に設けます。この説明会は情報漏えいを防ぐための費用として、時間の削減とは分けて考えます。

入力してよい情報を決めずに研修すると、研修後に使用を止められる

研修で顧客リストや見積書を使った例を見た社員が、翌日から実務でそのまま顧客の情報をAIに入力することがあります。それに気づいた管理部門が社内での利用を止めると、使い続ける人数は0になり、研修費はまったく回収できません。

防ぐには、研修の前に「入力してよい情報」と「入力してはいけない情報」を決め、研修の中で受講者に伝えます。ルールの作り方は生成AI社内ルールのサンプルとひな形を参考にしてください。

研修の後に題材業務が回ってこないと、使い方を忘れる

決算資料や年1回の提案書のように、月末や特定の季節にしか発生しない業務を題材にすると、研修から次に実務で使う日まで数週間空きます。その間に使い方を忘れ、いざ業務が来たときには以前のやり方に戻っています。

防ぐには、週1回以上発生する業務を題材に加えるか、研修の日程を題材業務が発生する直前に合わせます。

この章で押さえるのは、4つの条件のどれもが「使い続ける人数」を減らす方向に働くという点です。発注前に、記録・受講者の範囲・入力ルール・題材業務の頻度の4つを確認しておけば、計算表で置いた継続率を守りやすくなります。

見積もりの比較で見落としやすい3つの前提

計算表の数字が合っていても、前提の置き方を誤ると判断を誤ります。経営者が見積もりを比べるときに見落としやすい前提を3つ挙げます。

削減時間を金額に換算しても、給与の支払いは減らない

削減時間 × 時給換算で出る金額は、「社員が使える時間が増えた分」を金額に直したものです。社員の給与は研修後も同じなので、会社の支出がその分だけ減るわけではありません。

支出として実際に減るのは、残業代、外注費、派遣社員の費用が減った場合です。それ以外の場合は、空いた時間で何をしてもらうかを研修の前に決めておかないと、費用対効果は計算の上だけの数字になります。たとえば「議事録で空いた時間を、商談後のお礼メールを当日中に送る時間に充てる」のように、空いた時間の使い道を業務の名前で決めておきます。

時給換算の置き方を、見積もりどうしでそろえる

時給換算を給与だけで出すか、社会保険料などの会社負担まで含めるかで、効果の金額は変わります。複数の研修会社の見積もりを比べるときに、片方だけ高い時給で計算すると、その研修が有利に見えてしまいます。

社内で1つの時給換算を決め、すべての見積もりに同じ額を入れてください。研修会社が出してきた試算を使う場合も、時給の前提がいくらになっているかを確認し、自社の額に置き換えて計算し直します。

1人あたりの単価は、定員と最低人数を並べて比べる

見積もりには「1人あたり○円」の人数課金と、「1回○円(○人まで)」の固定額があります。1人あたりの単価だけを並べると、固定額の研修は人数を増やすほど安く見えます。

比べるときは、実際に受講させる人数で総額に直し、計算表のB1に入れてください。人数課金の研修には最低人数が決まっている場合があり、固定額の研修には定員があります。受講させたい人数がその範囲に入っているかも確認が必要です。

この章で押さえるのは、計算表の数字を比べる前に、空いた時間の使い道・時給換算・受講人数の3つの前提をそろえることです。前提が違う試算どうしを比べても、どちらが得かは判断できません。

契約前に研修会社へ確認する質問

契約の前に、計算表の数字に影響する点を研修会社に確認します。次の文面をメールにコピーし、[ ]の中を書き換えて使ってください。

件名:AI研修のお見積もりについての確認

[研修会社名]
[ご担当者名]様

お見積もりをありがとうございます。
社内で費用対効果を検討するため、次の点を教えてください。

1. 研修の題材に、[対象業務を入力]を使えますか。
   事前のヒアリングは何回、どなたが行いますか。
2. 研修前に業務の所要時間を記録する様式を、ご用意いただけますか。
3. 研修後のフォローはありますか。期間、回数、方法(質問の受付・再講習など)を教えてください。
4. 研修後の利用状況や削減時間を確かめる方法を、ご提案いただけますか。
5. 見積もりの受講人数の上限と最低人数、人数を増減した場合の金額を教えてください。
6. 研修で使うAIツールのアカウントは、こちらで用意する前提ですか。
7. 人材開発支援助成金の申請に使う書類(カリキュラム・受講記録など)を発行していただけますか。
8. 日程変更とキャンセルの条件を教えてください。

以上、よろしくお願いいたします。
[会社名・氏名]

それぞれの答えは、計算表の次の数字に反映します。

質問答えで変わる計算表の数字
1・3使い続ける割合(B8)。自社業務が題材でフォローがあれば、仮定を下げずに済む
2・4研修後の実測値(B15)を取れるかどうか
5研修費(B1)と受講人数(B2)
6ツール費(B6)
7助成金を入れた2つ目の回収月数を出せるかどうか
8日程がずれたときに、題材業務の発生時期と合わなくなるかどうか

研修会社の提案書そのものの読み方はAI導入提案書の読み解き方でまとめています。

この章で押さえるのは、質問の答えをそのまま計算表に入れ、見積もりどうしを同じ条件で比べることです。答えがあいまいな項目は、控えめな数字で計算しておきます。

自社で行う範囲と研修会社に頼む範囲

AI研修の費用対効果を出すうえで、社内に残る作業と、研修会社に任せられる作業は次のように分かれます。社内に残る作業を研修会社に任せきりにすると、研修後に数字を取れなくなります。

作業自社で行う研修会社に頼める
題材業務の選定最終的に決める候補の洗い出しと向き不向きの助言
研修前後の所要時間の記録記録する記録の様式づくり
入力してよい情報のルール決めて社内に周知するひな形の提示と研修内での説明
研修の実施受講者の日程を確保するカリキュラム作成と講義
研修後の利用状況の確認1か月後・3か月後に数字を取るフォローの中での質問対応

自社で行うのは、数字を取ることと、社内のルールを決めることです。この2つは、研修会社が代わりに行っても社内に定着しません。

対応している研修会社なら、自社の業務に合わせたカリキュラムや記録の様式を用意してもらえます。研修後のフォローがある場合は、使い方の質問にも答えてもらえます。研修のあとに、題材にした業務をAIで毎日回せる形まで作りたい場合は、研修後の1業務を仕組みにするAI導入支援で、入力する情報、AIの処理、人が確認する項目をそろえ、業務専用の入力フォームと社員向け手順書まで作る進め方もあります。

AI研修の費用対効果でよくある質問

受講させられるのが5人程度でも、AI研修の費用対効果は出ますか?

出せますが、1人あたりに必要な削減時間は大きくなります。記事の計算例では、5人受講で1日約33分の削減が必要でした。題材業務を2〜3つに増やして1人あたりの削減時間を積み上げるか、回収したい期間を延ばして計算し直すと、現実的な目標かどうかを判断できます。

営業職のように作業時間で測りにくい部署は、研修の効果をどう見ればいいですか?

時間ではなく、件数や速さで測ります。たとえば、1週間に作れた提案書の数や、問い合わせに最初に返信するまでの時間です。研修前の2週間と研修後の2週間を同じ方法で記録すれば、変化を比べられます。金額に直す場合は、1件あたりの作成時間に換算して計算表に入れます。

人材開発支援助成金を使う予定なら、研修の日程はいつ決めればいいですか?

計画の届け出に必要な期間をさかのぼって決めます。助成金は訓練の計画を事前に届け出ることが前提なので、研修会社から見積もりを受け取った段階で、労働局に届け出の時期を確認してください。要件は年度ごとに変わるため、厚生労働省「人材開発支援助成金」の最新の案内もあわせて確認します。

見積もりが「1人あたり」と「1回あたり」で届いたとき、どう比べればいいですか?

実際に受講させる人数で総額に直してから、同じ計算表に入れます。1回あたりの見積もりは定員を、1人あたりの見積もりは最低人数を確認してください。そのうえで、元が取れる1日あたりの削減時間を並べると、どちらが自社に合うかを同じ物差しで判断できます。

まずは、研修の題材にしたい業務を1つ決め、今週その業務に何分かかったかを担当者に記録してもらってください。研修の後に使い続けてもらう工夫は、生成AIが社内で使われない原因と90日で定着させる進め方で詳しく解説しています。

題材の業務選びや、入力してよい情報の線引きを社内だけで決めるのが難しいと感じたら、コレットラボの回収まで考える社員向けの生成AI研修について、お気軽にご相談ください。お持ちの見積もりや、題材にしたい業務の候補を伺うだけでも大丈夫です。

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