AI議事録の文字起こしが崩れる原因と直し方|話者混在と専門用語
この記事の要点
- 崩れる原因は4タイプ。症状から切り分ける手順を本文に掲載
- 話者の混在は、発言順のルールとマイクの置き方で大半が減る
- 用語シートと「埋めない」指示で、手戻りの直し作業が減る
AI議事録の文字起こしが崩れる原因は、大きく4つに分けられます。しかもこの4つは対処する場所が違います。どこで崩れているかを取り違えると、ツールを乗り換えても同じ場所で崩れ続けます。
- 話者の混在:録音の段階で減らす
- 専門用語・社名の崩れ:会議前の準備で減らす
- 音量とノイズ:録音の段階で減らす
- 要約の穴:後工程の指示文で減らす
この記事は、社内会議やお客さまとの打ち合わせをAIで文字起こしして、修正に毎回30分〜1時間かけている広報・総務・営業の方に向けて書いています。読み終わる頃には、自社の崩れ方がどのタイプか判定でき、次の会議から使う録音ルールと用語シートを作れる状態を目指します。
扱うのは「複数人の会議」で起きる崩れに限定します。1人でスマホに吹き込んだ音声メモの精度を上げたい場合は音声メモをAIで文字起こし・要約する手順が近いです。録音から清書までの全体の流れを組みたい方は議事録作成を自動化する手順を先に読んでください。
Contents / 目次
AI議事録の文字起こしが崩れる原因は4タイプ。症状で手当てする場所が変わる
結論から言うと、崩れの手当ては「録音の前」「録音のとき」「文字起こしの後」の3か所に分かれます。多くの会社が失敗するのは、全部を「後」で直そうとするからです。手で直す作業は、会議のたびに同じ時間がかかります。前と最中に手を打てば、その分は毎回まるごと消えます。
まず、自社の議事録がどの症状で崩れているかを次の表で見つけてください。
| 崩れ方(症状) | 主な原因 | 効く手当て | 手当てする場所 |
|---|---|---|---|
| 話者が入れ替わる。会議室側の全員が1人にまとまる | 同時発話、声質が近い、集音が片寄っている | 発言前に名前を言うルール、マイクの位置、話者ラベルの一括修正 | 録音のとき+後 |
| 社名・商品名・略語・人名だけが決まって崩れる | AIが学習していない固有名詞。辞書に無い | 用語シートの事前登録、または後工程での置換ルール | 録音の前+後 |
| 全体が薄く均等に崩れる。文の途中が抜ける | 音量不足、空調やタイピングのノイズ、早口 | Web会議ツールの録画音声を使う。マイクを口元に近づける | 録音のとき |
| 要約に無かった決定が載る。逆に決まったことが落ちる | 文字起こし側の穴+指示文が曖昧 | 「聞き取れない箇所を埋めない」指示、決定事項だけ音声で照合 | 後 |
先に押さえること。話者を区切る機能と、誰の発言かを名前まで当てる機能は、製品によって呼び方も対応範囲も違います。事前に声を登録する必要があるのか、登録なしで使えるのか、名前まで割り当てられるのかは、自社で使っているツールの提供元の公式ドキュメントで確認してください。ここを確認しないまま「精度が悪い」と判断すると、そもそも機能として備わっていないものを求めていることがあります。
やることの順番は決まっています。次の3つを上から順に潰してください。
- 音声を良くする(録画音声を使う、マイクを近づける、静かな部屋にする)
- 崩れる語を先に登録する(用語シート1枚。会社名・商品名・略語・参加者名)
- 後工程を型にする(話者ラベルの修正 → 用語の置換 → 整形プロンプト → 決定事項だけ音声照合)
順番が大事なのは、1を飛ばすと2と3の効きが半分になるからです。音が悪い録音は、固有名詞どころか助詞まで落ちます。音声の品質は、あとから取り戻せない唯一の要素です。
この章の結論として、まずは自社の崩れ方を上の表で1タイプに特定してください。それが決まれば、次の章の切り分け手順で「録音を変えるべきか、準備を変えるべきか」が判断できます。
崩れている原因を切り分ける手順。1本の録音で判定できる
原因の切り分けは、過去の録音1本と、その文字起こしデータがあれば3ステップで終わります。新しく会議を録り直す必要はありません。「なんとなく精度が悪い」で終わらせず、次の見方で症状を1つに絞ってください。
話者が混ざっているかを見る方法
話者の混在は、文字起こしの「冒頭5分」と「議論が白熱した箇所」の2か所だけを見れば分かります。この2か所で話者ラベルが正しく振られていれば、話者の区切り自体は機能しています。
会議室に集まった参加者を1台のPCマイクで拾うと、席が遠い人ほど音量が下がり、同じ「話者B」に吸収されます。オンライン参加者だけラベルが正確で、会議室側が全員1人にまとまっているなら、原因は分離の性能ではなく集音の偏りです。
専門用語や社名だけが崩れているかを見る方法
固有名詞の崩れは、同じ語が繰り返し似た誤り方をしているかで見当がつきます。たとえば自社の商品名が別の言葉に化ける箇所が何度も出てくるなら、まず辞書側を疑ってください。
この場合、録音環境をいくら整えても直りません。会議前の用語登録か、後工程の一括置換で片づけるのが正解です。逆に、崩れ方が語ごとにばらばらで一定しないなら、音量やノイズを疑ってください。
音声そのものが悪いかを見る方法
音声の問題は、文字起こしの誤りが特定の語に集中せず、文全体に散っているかで見分けます。助詞が落ちる、文の後半が消える、意味の通らない短文が並ぶ、といった症状が全体に散っていれば音声側です。
判定のコツは、録音を自分で30秒聞いてみることです。人が聞いて聞き取りにくい音は、AIも聞き取れません。エアコンの風、机を叩く音、資料をめくる音は、人間の耳だと無視できますがAIには無視できません。
「精度が悪いからツールを変える」という判断をする前に、この切り分けを必ずやってください。原因が集音の偏りだった場合、乗り換え先でも同じ場所で崩れます。ツールの性能ではなく、マイクの位置や会議室側の集音が原因だったというケースは珍しくありません。
この章の結論として、崩れの原因は「同じ語が繰り返し崩れるか」「誤りが全体に散っているか」の2つの見方でほぼ絞れます。絞れたら、次の章の該当ステップだけ実行すれば十分です。
AI議事録作成方法の手順。崩れる前提で組む5ステップ
ここからは実際の手順です。目指すのは「崩れない文字起こし」ではなく、「崩れても直しが5分で終わる流れ」です。前提として、文字起こしの完全一致は狙いません。狙うのは決定事項と宿題が正しいことです。
ステップ1 会議前に用語シートを1枚だけ作る
用語シートとは、AIが誤変換しやすい語を「読み方」と「正しい表記」のセットで並べた表のことです。会議のたびに作るものではなく、1枚を育てて使い回します。最初は20語もあれば十分に効きます。
入れるのは次の4種類です。
- 取引先名と自社の商品名:漢字の当て方が独特なものを優先。「株式会社」を含む正式表記も入れる
- 社内の略語:「案件番号」を「アンバン」と呼ぶ類の内輪の略語は、まず崩れます
- 参加者の名前と役職:話者ラベルを名前に直すときにも使います
- 業界用語と単位:「掛け率」「歩掛」「才数」のような、業界の外では使わない語
使っているツールに辞書登録の機能があるかどうかは、提供元の公式ドキュメントで確認してください。ある場合はそこに入れます。無い場合でも、この表はステップ4の一括置換にそのまま使えるので無駄になりません。次の形で作ってください。
# 用語シート(列の順番は変えない。表計算ソフトで1枚作って共有フォルダに置く)
# 「よくある誤変換」は、実際の文字起こしから見つけたものを追記していく
読み方(ひらがな) 正しい表記 よくある誤変換 種別
かぶしきがいしゃころっとらぼ 株式会社コレットラボ 株式会社コレクトラボ 自社名
かけりつ 掛け率 書け率/かけ率 業界用語
あんばん 案件番号 暗版/アンバン 社内略語
でぐち 出口(部長) 出口さん/樋口 参加者名
えーぴーあい API エピア/エーピー愛 略語
運用のコツ。「よくある誤変換」列は空欄で始めて構いません。1回目の文字起こしで見つけた崩れをここに写していけば、会議を重ねるたびに自社専用の辞書が育っていきます。最初から完璧な辞書を作ろうとすると、たいてい途中で止まります。
ステップ2 録音の取り方を先に決める
音声の質は録った瞬間に決まるので、ここが一番効きます。会議の形式ごとに、次のとおり決め打ちしてください。
| 会議の形式 | 録音の取り方 | 気をつける点 |
|---|---|---|
| 全員オンライン | Web会議ツールの録画・録音機能を使う | 参加者がそれぞれ自分のマイクで話すため、会議室に集まるより集音が安定します。参加者にはヘッドセットを使ってもらう |
| 全員が会議室(対面) | 録音機かスマホをテーブル中央に置く。周囲から均等に拾える配置にする | ノートPCに内蔵されたマイクは機種によって拾い方が違うので、実際に30秒録って聞いてから決める。資料を置く場所とマイクを分ける |
| 会議室+オンライン(ハイブリッド) | Web会議の録画に加えて、会議室側にも1本置いて二重に録る | この形式が一番崩れる。会議室側の全員が1話者にまとまる前提で、あとで手で振る覚悟をしておく |
そのうえで、会議のはじめに司会が言うことを1文だけ決めておきます。「発言するときは、最初に名前を言ってください」です。これだけで、話者ラベルがずれても後から名前で紐づけられます。実際、会議室側の音声が1人にまとまってしまっても、本文に「営業の田中です」と入っていれば、そこから機械的に振り直せます。
録音の同意も同時に取ります。「記録のため録音してAIで文字起こしします。要約は社内共有にとどめます」と冒頭に言い、議事録にもその1行を残してください。
ステップ3 文字起こしを流す前に、対象を絞る
60分の会議をまるごと流すと、返ってくるテキストはかなりの分量になります。分量は話す速さと人数で大きく変わりますが、全部を読み直して直そうとすれば時間はいくらでも溶けます。
そこで、流す前に「議事録に必要な区間」を決めます。雑談で始まり雑談で終わる会議なら、頭と尻の5分は切って構いません。決定事項が出た時間帯をメモしておき、その前後を優先して確認する段取りにします。会議中に「いま決まりました」と口に出しておくと、その語で検索できるので後の照合が速くなります。
ステップ4 話者ラベルと用語を、順番を守って直す
ここが手戻りの分かれ目です。直す順番を間違えると、直したはずの箇所がもう一度壊れます。次の順で処理してください。
- 話者ラベル(話者A、話者Bなど)を実際の名前に置き換える。冒頭の自己紹介や「営業の田中です」を手がかりにする
- 用語シートの「よくある誤変換」を、長い語から短い語の順に置換する
- 3文字以下の短い語は、前後1文字を含めた形で置換する
- 最後に全文を斜め読みして、意味の通らない文に[要確認]と付ける
3番目が特に大事です。たとえば「エーアイ」を「AI」に直そうとして短い語をそのまま一括置換すると、関係ない箇所まで書き換わって全文が壊れます。「エーアイ議事録」→「AI議事録」、「エーアイツール」→「AIツール」のように、必ず前後を含めた形で置換してください。壊れた全文を直すのは、置換をやり直すより手間がかかります。
置換の前に、元の文字起こしを別名で1本コピーして残してください。置換をやり直したいときに、元データが無いと最初から文字起こしをやり直すことになります。
ステップ5 整形は生成AIに任せ、「埋めない」指示を必ず入れる
整形の段階でいちばん危ないのは、AIが聞き取れなかった部分を文脈から推測して、もっともらしい文に埋めてしまうことです。これが起きると、誰も言っていない決定事項が議事録に載ります。だから指示文には「埋めない」を明示します。
プロンプトは作り込む必要はありません。次のたたき台を出発点にして、あとは返ってきた内容を見ながらAIと対話して自社の形に寄せてください。
あなたは会議の書記です。以下の文字起こしを議事録に整えてください。
前提
・会議名 [会議名を入力]
・目的 [何を決める会議だったかを1行で入力]
・参加者と役職 [氏名と役職を入力]
出力の形
1. 決定事項
2. 宿題(担当者と期限をセットで。期限が話されていなければ「期限未定」と書く)
3. 保留になった論点
4. 発言の要点(発言者ごとに3行以内)
守ること
・聞き取れていない箇所、意味が通らない箇所は書き換えず、原文のまま残して末尾に[要確認]と付ける
・文字起こしに出てこない内容を補わない。推測で文を完成させない
・固有名詞は添付の用語シートの表記に必ず合わせる
・相槌(はい、なるほど、そうですね)は発言として扱わない
整形にどのAIを使うかは、社内で日常的に開いているものに合わせるのが続きます。ブラウザ版で足りるのか、パソコン用のアプリを入れたほうが使いやすいのかは、提供元の公式サイトで対応状況を確認してから決めてください。指示文の型をもう少し詰めたい方はChatGPTで議事録を作る手順と整形プロンプト例も合わせて読んでください。
仕上げに、公開前のチェックを5項目だけ回します。
- 決定事項の音声照合:決定事項に書かれた各項目について、該当箇所の音声を実際に聞いて確認する。ここだけは人が必ず聞く
- 担当者名の確認:宿題の担当者が、話者ラベルの振り間違いで入れ替わっていないか
- [要確認]の残り:[要確認]が付いた箇所を、参加者1人に聞いて埋める
- 金額と日付:数字は誤認識しやすいので、資料やメールと突き合わせる
- 社外に出せない発言:雑談や人事の話が混ざっていないか。共有範囲を決めてから配る
この章の結論として、直しの手間は「用語シート」「録音の置き方」「置換の順番」「埋めない指示」の4点でほぼ決まります。全文の精度を追うのをやめて、決定事項だけ人が音声で確かめる形にすると、1本あたりの確認時間は現実的な長さに収まります。
AI議事録を無料でPCだけでやる場合、どこまでできるか
結論として、無料の範囲でも文字起こしそのものは成立します。ただし、複数人の会議で「誰の発言か」を残すところに無料と有料の差が出ます。無料で回せるかどうかは、次の条件で判断してください。
| 自社の状況 | 無料の範囲で回せるか | 理由 |
|---|---|---|
| 月に2〜3本、1本60分以内。参加者3人まで | 回せる | 話者ラベルを手で振っても、1本あたりの追加作業が短時間で収まる |
| 参加者4人以上で、誰の発言かを記録として残す必要がある | 手作業が増える | 話者の振り直しに時間がかかる。話者を分ける精度が高いツールを検討する段階 |
| 週5本以上の会議を回している | 合わなくなる | 手直しの人件費が、ツール費用を上回りやすい(試算は下記) |
| 人事評価・原価・未公表の取引が含まれる会議 | 使わない | 入力データの取り扱い条件を確認できないサービスに機密会議を通さない |
3行目の判断は、実際に計算してみると納得しやすいです。計算の形はこうです。
「1本あたりの手直し時間 × 時給 × 月の本数」が、話者を分ける機能まで含めたツールの月額を上回るかどうか。上回るなら、有料に切り替えたほうが安く済みます。
手直し時間は会議の音環境と参加人数で大きく変わるので、自社の実測値を入れて計算してください。冒頭で挙げた「毎回30分〜1時間」のように幅がある場合は、短いほうと長いほうの両方で計算します。どちらでも上回るなら、判断はぶれません。
無料の範囲でやる場合は、次の4工程で組みます。
- 会議の録音は、Web会議ツールの録画機能で取る
- 文字起こしは、無料枠のあるサービスに通す
- 話者は、本文中の「〇〇です」という自己紹介を手がかりに手で振る
- 整形は、普段使っている生成AIでやる
この形なら追加費用はかかりません。
逆に、無料枠でつまずきやすいのは1回あたりの時間上限と月あたりの合計時間です。60分の会議が途中で切れて後半だけ別ファイルになると、前半と後半で話者ラベルを突き合わせる手間が増えます。上限は提供元の公式サイトで確認してから、会議の分割位置を決めてください。
ツール選びそのものを比べたい場合はAI議事録アプリの選び方と無料・有料の違い、録音の機材から検討したい場合はAI議事録レコーダーの選び方で整理しています。
この章の結論として、無料で足りるかは「会議の本数」と「誰の発言かを残す必要があるか」の2軸で決まります。月数本で発言者を厳密に残さない会議なら、無料の範囲で十分に回せます。
直しの時間はどこまで減るか。成果の見え方
成果は「文字起こしの精度が何%上がったか」ではなく、「議事録1本あたりの確認時間が何分になったか」で見てください。精度の数字は会議の音環境と参加人数で大きく動くので、社内の判断材料になりません。
減り方には順番があります。次の3段階で考えてください。
- 最初に減るのは、固有名詞を1つずつ手で直す時間:用語シートを作った時点から効き始めます
- 次に減るのが話者の振り直し:マイクの配置と「名前を先に言う」ルールが定着してから効いてきます
- 最後まで残るのが決定事項の音声照合:ここは減らしません。人が聞いて確かめる工程として残します
取り組みがうまくいっている会社に共通しているのは、次の3点です。
- 用語シートの更新担当が1人決まっている:誰の仕事でもない状態にすると、辞書は必ず古くなります。会議のたびに崩れた語を追記する人を決めているかどうかで差が出ます
- 会議の冒頭30秒が儀式になっている:録音の告知と「名前を先に言ってください」の案内を、司会が毎回言う形にしている
- 全文の完璧さを諦めている:議事録に残すのは決定事項と宿題だけと決め、発言録は参考扱いにしている
逆に、現場でよく聞くのが「議事録の直しに1時間かかるなら、聞きながら書いたほうが早い」という声です。これは正しい感覚です。直しに1時間かかっている状態は、AIの使い方の問題ではなく、録音の質か手順の順番が崩れているサインだと考えてください。
2026年時点では、文字起こしと要約の先まで自動で進む形も広がってきています。議事録から宿題を抜き出してタスク管理ツールに登録するところまでを含めて考えるなら、議事録からタスクを自動抽出して担当者に振る手順が参考になります。ただし、抽出の元になる文字起こしが崩れていれば、タスクも崩れたまま登録されます。順番として、まず文字起こしの質を安定させてから自動化を足すほうが確実です。
この章の結論として、成果の指標は「1本あたりの確認時間」に置いてください。精度の数値を追うより、どの工程が何分かかっているかを測るほうが、次に手を打つ場所がはっきりします。
会議の文字起こしで実際に起きる失敗と、その防ぎ方
ここでは、複数人の会議だからこそ起きる失敗を挙げます。1人の音声メモでは起きない種類のものです。
失敗1 冒頭の雑談を含めたまま録り始めて、発言者がずれる
会議開始前の雑談を録音に含めると、まだ全員が着席していない状態の音声が先頭に入ります。そのあと本題に入って参加者が増えると、話者ラベルの割り当てがずれたまま出力されることがあります。
これが起きると、宿題の担当者が別の人になったまま議事録が配られます。防ぐには、録音を「全員が揃って司会が開始を宣言してから」始めることです。すでに録ってしまった場合は、本題が始まった時刻から後ろだけを切り出して、もう一度文字起こしに通してください。
失敗2 ハイブリッド会議で、会議室側の全員が1人にまとまる
会議室に集まった参加者は、1本のマイクを共有することになります。声が遠い人ほど音量が下がり、会議室にいた4人がまとめて「話者C」になります。自分のマイクで話しているオンライン側だけラベルが正確なので、一見きれいに見えるのが厄介です。
防ぎ方は2つあります。会議室側にもマイクを1本追加してテーブル中央に置くか、会議室の参加者が発言するときに名前を先に言う運用にすることです。設備を足せない場合は、後者だけでも実務は回ります。ハイブリッド会議はこの前提で運用設計してください。
失敗3 短い社内略語を一括置換して、関係ない箇所まで壊す
「PJ」「AI」「1課」のような2〜3文字の語を一括置換すると、まったく別の文脈の文字列まで書き換わります。全文が微妙に壊れた状態は気づきにくく、そのまま配られて「この一文、意味が分からない」と指摘されて発覚します。
防ぐには、短い語は必ず前後1文字を含めた形で置換することです。加えて、置換の前に元データを別名で残してください。壊れたことに気づいた時点でやり直せます。
失敗4 要約から先に読んで、聞き間違いをそのまま決定事項にする
要約はきれいな日本語で出てくるので、正しく見えます。ところが元の文字起こしで「200万」が「250万」になっていた場合、要約もそのまま250万と書きます。読む側は、要約の文章が整っているほど疑いません。
防ぐには、金額・日付・数量・担当者名の4つに限って、必ず元の音声か資料と突き合わせるルールにすることです。全文の照合は現実的ではないので、この4項目に絞ります。
失敗5 相槌を発言として拾い、話の主語が入れ替わる
「はい」「なるほど」「そうですね」が独立した発言として記録されると、その前後で話者が細かく切り替わり、誰が何を言ったのかが読み取れなくなります。特に、上司が相槌を多く打つ会議で起きます。
要約の指示文に「相槌は発言として扱わない」と1行入れるだけで大きく改善します。ツール側に不要語を除去する機能があれば、そちらを先に使ってください。
この章の結論として、複数人の会議で起きる崩れは「録音の始めどき」「会議室側の集音」「置換の粒度」の3点に集中します。この3つを先に潰すと、残る失敗は要約段階の確認だけになります。
使ってみて分かる限界と、どこで妥協するか
正直なところ、複数人の会議の文字起こしを「そのまま議事録として配れる状態」まで自動で持っていくのは、まだ難しいです。会議の録音は、静かな部屋で1人が原稿を読む音声とは条件がまったく違います。だから、妥協する場所を先に決めておくほうが実務は回ります。
現場で見えている限界と割り切り方を、率直に書きます。
- 発言録の完全一致は諦める:「言った言わない」を防ぐために全文を正確に残したい気持ちは分かりますが、費用対効果が合いません。残すのは決定事項と宿題、そして根拠になった発言の要旨まで。細部が必要な会議は録音そのものを保管する運用にしてください
- 辞書は放っておくと古くなる:用語シートの更新は誰の担当でもなくなりがちです。新しい取引先や商品名が増えるたびに崩れが復活します。月1回、直近の議事録から崩れた語を追記する時間を5分だけ確保してください
- 声が似た2人は分けきれないことがある:同性で声質が近い参加者がいる会議では、話者ラベルが入れ替わることがあります。その会議だけは名前を先に言う運用を徹底する、と割り切るのが現実的です
- 録音の同意と保存期間を決めていない会社が多い:ツールを入れる前に、録音データを何か月保管して誰が消すのかを決めてください。決めていないと、機密を含む音声が個人のPCに残り続けます
- 機密会議は最初から対象外にする:人事評価、賞与、原価、未公表の取引を扱う会議は、AI議事録の対象から外すと決めるのが早いです。「どのツールなら安全か」の検討に時間を使うより、線を引いたほうが運用が固まります
もう1つ、コストの見落としがあります。会議室のマイクです。ツールの費用ばかり比較して、集音を内蔵マイクのままにしている会社が多いのですが、ハイブリッド会議が主体なら、テーブル中央に置く集音機材のほうが効きます。ツールを上位プランに上げる前に、ここに手を入れたか確認してください。
なお、AIに任せる範囲と人がやる範囲の線引きは、この記事では決定事項の音声照合を人がやる、という1点に絞っています。AI活用全体の役割分担の考え方は生成AIのハルシネーションを業務で防ぐ手順で整理しているので、そちらを参照してください。
この章の結論として、妥協するのは「発言録の完全一致」で、妥協しないのは「決定事項の照合」と「機密会議の線引き」です。この3つの優先順位を社内で共有しておくと、運用ルールがぶれません。
AI議事録の文字起こしでよくある質問
話者A・話者Bのままだと誰の発言か分かりません。あとから名前を振り直せますか
振り直せます。本文中の自己紹介や「営業の田中です」という発言を手がかりに、話者ラベルを名前へ一括置換するのが一番速いです。手がかりが無い場合は、冒頭数分の音声を聞いて声と名前を対応づけてから置換してください。次回以降は、発言前に名前を言う運用にすると作業がほぼ消えます。
日本語の会議に英語の製品名や単位が混ざると、そこだけ崩れます
言語が切り替わる箇所は崩れやすい部分です。対処としては、英語の製品名や略語を用語シートに「読み方(ひらがな)と正しい表記」のセットで登録しておくのが実用的です。日本語と英語が混ざる会議が多い場合は、その切り替えに対応しているかを提供元の公式ドキュメントで確認してから選んでください。
聞き取れなかった部分を、AIが勝手に埋めてしまうことはありますか
要約や整形の工程では起こりえます。文脈からもっともらしい文を作ってしまうため、誰も言っていない決定事項が載ることがあります。指示文に「聞き取れない箇所は書き換えず原文のまま残し、[要確認]を付ける」と明記してください。そのうえで、金額と日付は必ず音声か資料と突き合わせます。
無料の範囲で60分の会議を最後まで文字起こしできますか
1回あたりの時間上限と月間の合計時間に制限があることが多く、途中で切れる場合があります。上限は変わるので、提供元の公式サイトで最新の条件を確認してください。分割する場合は、議論の途中ではなく休憩や議題の切り替わりで切ると、後で突き合わせる手間が減ります。
録音データは残さず、文字起こしだけ保存する運用でも大丈夫ですか
「言った言わない」を確かめる必要がある会議では、録音を一定期間残しておくほうが安全です。文字起こしは崩れている前提なので、後から根拠を確認できなくなります。保存する期間と削除する担当者を先に決めて、期間を過ぎたら消す運用にするのが現実的です。
今日やる最初の一歩
まずは直近の会議の文字起こしを1本開いて、崩れている語を5つだけ書き出してください。それが自社の用語シートの1行目になります。5分で終わりますし、次の会議からすぐ効きます。
そのうえで録音から清書までを通した流れに組み直したい方は、議事録作成を自動化して人は確認だけで回す手順を続けて読んでみてください。
自社の会議形式だとどこで崩れているのか、ハイブリッド会議の集音をどう変えるべきか、機密会議の線引きをどう決めるか。このあたりは会社ごとに事情が違うので、判断に迷ったら現状を整理するだけでも構いません。会議の本数と参加人数、いま何分かけて直しているかを教えていただければ、どこに手を打つのが一番効くかを一緒に整理します。お気軽にご相談ください。
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