AI研修は意味ないと言われる理由|定着の条件と依頼前の質問8つ
この記事の要点
- 意味ないと言われる原因は、研修の前後に決めることが抜けている点
- 定着の条件は5つ。題材・ツール・情報の線引き・管理職・研修後30日
- 依頼前に研修会社へ確認する8つの質問と、回答の読み方を本文で解説
AI研修が「意味ない」と言われるとき、原因は研修当日の内容だけではありません。次の5つが決まらないまま受講すると、翌週から業務でAIを開く理由がなくなります。
- 題材にする業務
- 会社として使ってよいツール
- 入力してよい情報
- 管理職の理解
- 研修後30日の進め方
この記事は、社員向けのAI研修を外部に依頼するか検討している経営者・役員・院長・施設長に向けて書いています。読み終わる頃には、研修会社に何を確認し、社内で何を先に決めるかを判断できるようになります。
金額の内訳はAI研修の費用と内訳8項目、受講人数ごとの回収の計算はAI研修の費用対効果の出し方で解説しています。この記事では金額には触れず、研修が業務で使われるかどうかの判断に絞ります。
Contents / 目次
AI研修が意味ないと言われる理由と、研修前に決める5項目
AI研修が意味ないと言われるのは、研修で学んだことを翌日の業務で使う条件がそろっていないからです。研修の中ではAIを使えても、会社のパソコンで使ってよいツールがなく、入力してよい情報も分からなければ、受講者は業務でAIを使いません。
AI研修とは、社員が生成AIを業務で使えるように、仕組み・使い方・情報の扱い方を学ぶ研修です。学ぶ内容が同じでも、次の5項目が研修前に決まっているかどうかで、研修後に使われるかどうかが変わります。
| 研修後に起きること | 起きやすい条件 | 研修前に決めること |
|---|---|---|
| 演習はできたのに、自分の業務では使えない | 題材が一般的な例文だけ | 題材にする業務と文書(職種ごとに1つ) |
| 翌週から誰もAIを開かない | 会社として使ってよいツールとアカウントがない | 使うツールと契約形態 |
| 入力してよいか迷い、使わなくなる | 入力してよい情報の線引きがない | 入力してよい・伏せれば入力してよい・入力しない、の3段階 |
| 上司に「作業をしていない」と見られる | 管理職が研修の内容を知らない | 管理職の受講、または社員の研修への同席 |
| 効果を説明できず、次の予算を決められない | 研修後の予定も記録もない | 研修後30日の予定・担当・記録する項目 |
5項目は、研修会社ではなく自社で決める項目です。研修会社はたたき台や選択肢を示せますが、どのツールを契約するか、どの情報を入力しないかは、会社が責任を持って決めることだからです。
ただ、入力してよい情報の線引きは、社内だけでは決めきれないことがあります。AIが入力内容をどう扱うかを知らないまま線を引くと、必要以上に禁止して誰も使わなくなるか、何も決めずに各自の判断に任せる形になりがちです。
社員が個人でAIを使い始めていて、入力してよい情報がまだ決まっていない場合は、経営者と社員で受けるAI研修で、AIの仕組みと情報の扱い方を同じ場で学び、導入するかどうかを決める進め方もあります。
生成AI研修の効果と、研修後30日に記録する項目
生成AI研修の効果は、受講直後のアンケートの満足度では判断できません。研修の目的は社員が業務でAIを使うことなので、確かめるのは研修後の利用状況です。研修後30日のあいだに、次の4つを記録しておくと効果を説明できます。
- 使った人数:研修後2週間と4週間の時点で、業務でAIを1回以上使った受講者の数
- 使った業務:議事録、メールの下書き、社内文書の要約など、どの業務で使ったか
- 確認で修正した点:AIの出力のどこを修正したか(数字の誤り、社内用語、敬語など)
- 使わなかった理由:ツールがない、入力してよいか分からない、時間がない、のどれか
4つ目の「使わなかった理由」を見れば、次に決めることが分かります。
- ツールがない:アカウントを用意する
- 入力してよいか分からない:情報の線引きを決める
- 時間がない:使う業務を絞り込む
削減できた時間まで数字で示したい場合は、研修の前に対象業務の所要時間を測っておく必要があります。測り方はAI業務効率化の効果を数字で出す方法で解説しています。
この章の結論。研修の効果は、研修当日ではなく研修後30日の記録で判断します。記録する項目を研修前に決めておけば、追加の研修やツールの契約を検討するときの判断材料になります。
定着するAI研修の5つの条件
定着するAI研修は、研修当日の内容と、研修の前後の準備の両方がそろっています。ここでは、研修会社の提案書や打ち合わせで確かめられる5つの条件を、理由と確認の仕方とあわせて説明します。
1. 題材が受講者の業務文書
演習の題材が一般的な例文だと、受講者は研修の中ではうまく使えても、自分の議事録や見積書で使う段階で止まってしまいます。研修の文書と業務の文書が違うと、AIに何を渡せばよいかを自分で考え直す必要があるからです。
研修前に、職種ごとに「毎週作っている文書」を1つずつ出してもらい、演習の題材にしてもらうのが確実です。社外秘の部分は、取引先名や金額を記号に置き換えたサンプルで足ります。
2. 会社として使ってよいツールとアカウント
研修で使ったツールを会社で使えないと、翌日から続けられません。個人の無料アカウントは社員個人が契約しているものなので、そのまま業務で使い続けると、会社の管理の外でAIが使われることになります。
研修前に、どのツールを、法人向けプランと個人アカウントのどちらで使うかを決めておきましょう。法人向けプランで会社が利用状況をどこまで確認できるかは、サービスと契約の種類によって違うため、各サービスの公式情報で確認が必要です。プランによる違いはAIの法人プランと個人プランの違いで比較しています。
3. 入力してよい情報の線引き
入力してよい情報が決まっていないと、慎重な社員ほどAIを使わなくなります。研修の中で、自社の文書を例に次の3段階で線を引いておくと、受講者は迷わずに使えます。
- 入力してよい:自社サイトに公開済みの情報、社外秘を含まない社内文書
- 伏せれば入力してよい:取引先名・個人名・金額を記号に置き換えた議事録やメール
- 入力しない:個人情報、未公表の業績や数字、取引先と秘密保持を約束している情報
どの情報をどの段階に入れるかは、業種や取引先との契約によって変わります。社内ルールのたたき台には生成AI社内ルールのサンプルと12項目のひな形を使えます。
4. 管理職と経営者の受講
社員が業務時間にAIを使っていても、研修の内容を知らない上司からは、作業をしていないように見えることがあります。上司に止められると、受講者は研修で学んだことを使えません。
管理職が別日に短時間の研修を受けるか、社員の研修に同席すれば、「この業務ではAIを使ってよい」と上司から伝えられます。経営者が受講すると、ツールの契約や情報の線引きをその場で決められます。
5. 研修後30日の進め方と担当
研修後の進め方が決まっていないと、受講者は忙しい時期にAIを使う機会を後回しにします。研修の前に、次のような30日の予定と担当を決めておきましょう。推進担当とは、社内でAIの使い方の相談を受ける窓口です。
| 時期 | すること | 担当 |
|---|---|---|
| 研修後1週目 | 研修で題材にした業務で、AIを1回以上使う | 受講者 |
| 2週目 | 使えた例と止まった例を、朝礼やチャットで共有する | 推進担当 |
| 3〜4週目 | よく使う依頼文と確認項目を、社内の1つの文書にまとめる | 推進担当 |
| 30日目 | 記録した4項目を見て、ツール追加・ルール修正・追加研修のどれに進むかを決める | 経営者 |
30日で使われ方が見えてきたら、その先の定着の進め方は生成AIが社内で使われない原因と90日で定着させる進め方で解説しています。
この章の結論。5つの条件は、自社で決めることと、研修会社に依頼できることに分かれます。依頼前に、自社で決めることがどこまで決まっているかを確かめておきましょう。
- 自社で決めること:題材にする業務と文書の選定、会社として使うツールと契約形態、入力してよい情報の最終決定、管理職と経営者の受講、研修後30日の予定と担当
- 研修会社に依頼できること:選んだ文書を使った題材づくりと研修当日の内容、研修の中で作る情報の線引きのたたき台
依頼前に研修会社へ確認する8つの質問
依頼前に確認したいのは、研修当日の内容よりも、研修の前と後に研修会社が何をするかです。次の8つの質問への回答を比べれば、自社の条件に合う研修かどうかを契約前に判断できます。
| 質問 | 回答で確かめること |
|---|---|
| 1. 研修の前に、受講者の業務をどのように伺いますか | 事前の聞き取りがあるか。アンケートか打ち合わせか |
| 2. 演習の題材を、自社の文書に差し替えられますか | 差し替えの範囲と、社外秘を伏せたサンプルでも対応できるか |
| 3. 研修で使うツールを、社内で使うツールに合わせられますか | 社内で契約している、または契約予定のツールで演習できるか |
| 4. 入力してよい情報の線引きを、研修の中で扱いますか | 一般的な注意だけか、自社の文書を例に線引きのたたき台まで作るか |
| 5. 管理職や経営者向けの内容はありますか | 別の回を設けるか、同席で対応するか。上司が判断する内容まで扱うか |
| 6. 受講者が自分で操作する時間は、研修の中にどれだけありますか | 講義と演習の時間配分。AIの出力を確認して修正する練習があるか |
| 7. 研修後の質問は、いつまで、どの方法で受け付けますか | 期間、窓口(メール・チャット・打ち合わせ)、追加費用の有無 |
| 8. 研修の効果は、何を、いつ確かめる設計ですか | 受講直後のアンケートだけか、研修後の利用状況まで確かめるか |
回答は、良し悪しではなく自社の目的に合うかどうかで読みます。たとえば題材が共通の例文でも、目的が「AIの仕組みと危ない使い方を全社員が知ること」であれば合っています。題材の差し替えや研修後の対応が必要なのは、研修の翌週から特定の業務で使ってほしい場合です。
研修会社が具体的に答えられるように、依頼の段階で次の社内情報を伝えておきましょう。未定の項目は「未定」と書いて送れば、何が決まっていないかを研修会社と共有できます。
【AI研修の依頼にあたっての社内情報】
・受講者:[職種と人数。例:事務3名、営業5名、管理職2名]
・社内で使っているAIツール:[ツール名と契約形態。未定なら「未定」]
・題材にしたい業務:[例:会議の議事録、見積もりの送付メール、社内報]
・入力を禁止している情報:[例:顧客の個人情報、取引先との契約金額。未定なら「未定」]
・研修後に期待すること:[例:翌月から議事録の下書きをAIで作る]
・研修後の社内の担当:[推進担当や確認役の役職。未定なら「未定」]
研修会社によって、1の事前の聞き取り、2の題材の差し替え、7の研修後の対応の扱いが違うことがあります。見積もりでは、この3つが含まれているかを確かめてください。研修会社に依頼するか、業務の仕組みづくりまで含めてAI導入支援の会社に依頼するかで迷う場合は、ITベンダー・コンサル・研修会社の比較表で依頼先の種類を比べられます。
この章の結論。8つの質問は、研修の前後の対応を確かめるためのものです。社内情報を先に伝えておけば、各社の回答を同じ条件で比べられます。
AI研修が意味ないまま終わる5つの条件と、依頼する範囲
AI研修が意味ないまま終わるのは、研修の内容と自社の使い方がずれたまま進んだ場合です。次の5つは、AI研修で起きやすい失敗の条件と、その防ぎ方です。
| 起きる状況 | 起きること | 防ぎ方 |
|---|---|---|
| 研修の大半がプロンプトの書き方と画面操作 | ツールの画面や機能が変わると教材と合わなくなり、「習ったとおりにならない」と止まる | 何を材料として渡し、出力のどこを確認するかの練習があるかを確かめる(質問6) |
| 職種の違う全社員を、同じ演習で一度に受講させる | 事務・営業・現場で作る文書が違い、演習がどの職種の業務にも当てはまらない | 職種ごとに題材か回を分ける(質問2) |
| 最初に使う業務を決めずに研修を終える | 慎重な社員は使わず、意欲のある社員は個人アカウントで使い始める | 研修の最後に、最初に使う業務とツールを1つずつ決める |
| 効果を受講直後のアンケートだけで判断する | 満足度が高くても翌月の利用状況が分からず、追加研修やツールの契約を判断できない | 研修後30日の記録項目を研修前に決める(質問8) |
| AIの出力を確認する役を決めない | 誤った数字や実在しない制度名を含む文書が、そのまま社外に出る | 確認役と確認する項目(数字・固有名詞・社外に出す文)を決める |
1つ目のプロンプトの書き方は、研修の一部としては役に立ちます。ただ、指示文の言い回しより、何を材料として渡し、出力のどこを確認するかという進め方のほうが、ツールが変わっても使い続けられます。
3つ目の個人アカウントでの利用は、シャドーAIと呼ばれます。シャドーAIとは、会社が把握していないアカウントやツールで、社員が業務にAIを使っている状態のことです。対策はシャドーAI対策とルール化の手順で解説しています。
5つ目は、ハルシネーションへの備えです。ハルシネーションとは、AIが事実と異なる内容をもっともらしく出力することです。数字・固有名詞・社外に出す文の3つは、AIの出力をご自身で確認してから使うと、研修の中で決めておきましょう。
自社で行う範囲と、研修会社に依頼する範囲
AI研修では、研修の設計と当日の内容は研修会社に依頼できます。研修を業務で使うための決定は自社で行います。分けると次のとおりです。
- 自社で行うこと:題材にする業務と文書の選定、使うツールの契約、入力してよい情報の最終決定、確認役の指名、研修後30日の記録
- 依頼できること:研修の設計と演習、自社の文書を使った題材づくり、情報の線引きのたたき台、研修後の質問対応
研修のあと、議事録づくりや見積もりの下書きなどの業務を1つ選んで、社員が毎回同じ手順でAIを使える形にしたい場合は、1業務を仕組みにするAI導入支援という進め方もあります。AIが行う作業と社内で確かめる作業に分けて、社員が使う入力フォームと手順書まで作ります。
この章の結論。失敗の5つの条件は、どれも研修の前か研修の最後に防げます。依頼先を選ぶときは、自社で行う範囲を決めたうえで、残りを研修会社がどこまで担えるかを8つの質問で確かめましょう。
AI研修の効果と依頼に関するよくある質問
研修を受けた社員が「入力してよい情報が分からない」と言って使っていません。もう一度受講させるべき?
もう一度受講させる前に、入力してよい情報の線引きを会社として決めるのが先です。使わない理由が知識ではなくルールの不在なら、同じ研修を受けても状況は変わりません。自社の文書を3段階に振り分け、全員に共有してから使い始めてください。
無料版のAIで社員に受講させても、研修の意味はある?
AIの仕組みや操作を知る目的なら意味はあります。ただ、研修の翌日から業務で使ってほしいなら、会社として使うツールと契約形態を研修前に決めてください。入力内容の扱いは、各サービスの設定と規約で確認が必要です。
半日のAI研修と、数か月の伴走型の研修は、どちらを選べばいい?
題材にする業務が決まっていて、研修後に社内で確認役を立てられるなら、短時間の研修と社内での30日の運用で進められます。どの業務から使うかを決められない場合や、社内に確認役がいない場合は、研修後も相談できる伴走型のほうが途中で止まりにくくなります。
研修の題材用に社内の文書を研修会社へ渡すとき、何に気をつければいい?
取引先名・個人名・金額を記号に置き換えたサンプルを渡してください。演習に必要なのは文書の形と作り方なので、実名や実際の数字がなくても進められます。受け取った文書の保管と削除の方法は契約前に確認し、必要なら秘密保持契約を結んでおきましょう。
経営者だけが先にAI研修を受けても意味はある?
意味があります。ツールの契約や入力しない情報を決めるのは経営者なので、先に受講すれば、社員の研修前に「研修前に決める5項目」(題材・ツール・情報の線引き・管理職・研修後30日)の多くを決められます。社員に使い方を伝える役まで経営者が担うのは負担が大きいため、社員の研修は別に設けるか、推進担当に任せる形が進めやすくなります。
まずは今日、社員が業務でAIを使っているかどうかと、会社として使ってよいツールが決まっているかを確かめてみてください。研修後に社内で進める担当を決めたい場合は、AI推進担当を3か月で育てる手順が次の一歩になります。
ここまで読んで、題材にする業務や入力してよい情報を社内だけで決めきれないと感じた方は、コレットラボの少人数で行う社員向けの生成AI研修をご覧ください。いま社内でAIがどう使われているかを伺うところからでも大丈夫です。気軽にご相談ください。
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