AI研修の助成金|人材開発支援助成金の条件と申請の流れ

AI研修の助成金|人材開発支援助成金の条件と申請の流れ

この記事の要点

  • AI研修で主に使うのは人材開発支援助成金の2コース
  • 汎用的なプロンプト研修は令和8年8月3日から事業展開等リスキリング支援コースの対象外
  • 計画届は研修開始の6か月前から1か月前まで。期限の数え方と準備の確認リストは本文に

AI研修に使える国の助成金としてまず確かめたいのは、厚生労働省の人材開発支援助成金です。中心になるのは「事業展開等リスキリング支援コース」と「人材育成支援コース」の2つ。どちらも、受講する社員の職務に直接関連する10時間以上の研修であること、研修開始の1か月前までに計画届を出すことが条件です。

社員のAI研修を外部に依頼しようとしていて、助成金を使えるかを契約前に判断したい経営者・役員の方に向けた記事です。読み終わる頃には、自社の研修が対象になりそうか、いつまでに何を出せばよいか、いくら戻る見込みかを判断できる状態を目指します。

この記事では、2コースの条件、令和8年8月の改正で変わった点、申請の流れ、費用の計算例、依頼先の選び方を扱います。研修そのものの費用の決まり方は、AI研修の費用の内訳と見積もり依頼文で解説しています。

Contents / 目次
  1. AI研修で主に使うのは人材開発支援助成金の2コース
  2. 令和8年8月3日から対象外になったAI研修
  3. AI研修の助成金の申請の流れ
  4. いくら戻るかの計算と、依頼先の選び方
  5. AI研修の助成金で不支給や法令違反につながる4つの進め方
  6. AI研修の助成金でよくある質問

AI研修で主に使うのは人材開発支援助成金の2コース

人材開発支援助成金とは、会社が雇用する社員に職務に関連した訓練を計画どおりに受けさせたとき、訓練経費と訓練中の賃金の一部を国が助成する制度です。人材開発支援助成金には人への投資促進コースもあり、ITスキル標準などでレベル3・4に当たる高度なデジタル人材を育てる訓練や、定額制(サブスクリプション型)の研修サービスを使う訓練などが対象です。この記事では、業務でAIを使う研修を外部の講師や研修会社に依頼するときに使う2コースを扱います。

助成率が高いのは事業展開等リスキリング支援コースです。新規事業の立ち上げなどの事業展開、社内のDX(デジタル技術で業務や事業のやり方を変えること)やGX(脱炭素の取り組み)、会社の人事と人材育成の計画に基づいて3年以内に担当させる予定の職務のための訓練が対象です。最後の訓練は今の職務とは別の職務に向けたものに限られ、中小企業は計画の内容を認定経営革新等支援機関に事前に確認してもらう必要があります。パンフレットでは「令和8年度末までの時限措置」とされています。

項目事業展開等リスキリング支援コース人材育成支援コース(人材育成訓練)
経費助成率(中小企業)75%45%(正規雇用の社員)
賃金助成(中小企業・1人1時間)1,000円800円
経費助成率(大企業)60%30%(正規雇用の社員)
経費助成の限度額(中小企業・10時間以上100時間未満)1人1訓練30万円1人1訓練15万円
向いているAI研修DXや新規事業に伴い、担当業務でAIを使う訓練今の職務の知識と技能を高める訓練

出典は厚生労働省「人材開発支援助成金」のページにある各コースの詳細版パンフレット(令和8年8月3日以降の計画届が対象・2026年10月13日時点)です。人材育成支援コースは、研修後に賃金を一定以上上げるなどの要件を満たすと助成率が上がり、非正規雇用の社員はさらに高い率になります。

AI研修の助成金の条件は6つ

2コースに共通する主な条件は次の6つです。1つでも欠けると支給されません。

  • 受講者:自社の雇用保険の被保険者であること(パート・アルバイトも被保険者なら対象)
  • 内容:受講者の職務に直接関連する訓練であること
  • 時間:研修の時間が合計10時間以上であること
  • 形式:通常の業務を離れて行う訓練(OFF-JT)であること
  • 期限:研修開始日の6か月前から1か月前までに計画届を労働局へ出すこと
  • 費用:研修費を会社が支給申請までに全額負担し、研修中の賃金を払うこと

計画届の前には、研修や人事の担当課長などを「職業能力開発推進者」に選び、「事業内職業能力開発計画」を作って社員に知らせておく必要もあります。

研修の中身を職務に結びつけるには、どの業務のどの作業をAIで行うかが先に決まっていなければなりません。そこが社内で決めきれない場合は、AIに任せる業務の洗い出しの相談から始める進め方もあります。

この章の結論。助成率を見る前に、受講者・10時間・計画届の期限の3つを満たせるかを確かめます。ここで外れると、どちらのコースも使えません。

令和8年8月3日から対象外になったAI研修

2026年8月3日以降に出す計画届では、汎用的なプロンプトの作り方を学ぶ研修は、事業展開等リスキリング支援コースの対象外です。

厚生労働省の改正のお知らせ「令和8年8月3日からの変更点について」(PDF)は、対象と対象外を次のように分けています。

判定お知らせに載っている例理由
助成対象生成AIを活用して商品提案書の構成案作成、文章生成、修正方法を学ぶ営業担当者向けの訓練営業担当者の具体的な業務に直結している
助成対象外生成AIを利用するために汎用的なプロンプトの作り方を学ぶ訓練特定の業務への具体的な適用が無い
助成対象外DXの概念、デジタル技術の概要、データ活用の考え方を学ぶ訓練共通知識の習得にとどまる

つまり「全社員向けのChatGPT入門」は通りにくく、「経理担当者が請求書の照合をAIで行う研修」のように、受講者の職種と研修後の作業が結びついた研修なら対象になり得ます。お知らせは、訓練内容に沿って受講者を選んでいるかも確認する点に挙げています。

改正前に契約した研修には経過措置があります。研修会社が主催する研修(事業外訓練)で、研修会社との契約や申込みを2026年8月2日以前に済ませていた場合は、計画届を8月3日以降に出しても、対象外の訓練の判定は改正前の支給要領に従います。自社が主催する研修(事業内訓練)では、講師への謝金など対象経費の契約・申込み・発注のうち1つでも8月2日以前なら同じ扱いです。どちらも、契約日や申込日が分かる書類を計画届に添えます。判断がつかない場合は、計画届を出す前に管轄の労働局に相談してください。

職務に直結したカリキュラムの書き方

計画届に添えるカリキュラムは、受講者の職務と研修後の作業が読み取れる形で書きます。研修会社に案を依頼するときも、次の形で返してもらうと判定しやすくなります。

訓練名:営業担当者向け 生成AIを使った提案書作成の訓練
対象者:営業部の法人営業担当 5名(雇用保険被保険者)
研修後に行う作業:毎週の提案書の構成案作成・本文作成・修正
時間:12時間(3時間×4回・平日の所定労働時間内)
1回目:提案書の構成案をAIで作り、自社の過去の提案と比べて修正する
2回目:顧客の課題メモから本文を作り、事実と数字を確認する
3回目:社外に出せない情報の扱いと、入力前の伏せ方を決める
4回目:担当顧客1社の提案書を完成させ、上長の確認を受ける

案はAIでも作れます。業務一覧を渡して「職種ごとに、研修後に毎週行う作業と、その作業を練習する演習を書き出して」と頼めば、たたき台になります。そのうえで、各回の内容が「職種を問わない共通知識」になっていないかを、担当者がパンフレットの対象外の例と1行ずつ照らします。

この章の結論。研修名ではなく、受講者の職種と研修後の作業で判定されます。カリキュラムの各回に「誰が・研修後に何をするか」が書けない研修は、契約前に内容を見直します。

AI研修の助成金の申請の流れ

申請は、計画届を出してから研修を行い、研修終了後に支給申請をする順番です。研修を始めてから計画届を出すことはできません。

ステップ1。研修の日程から計画届の期限を逆算する

計画届を出せるのは、研修開始日の6か月前から1か月前までです。パンフレットの例では、研修開始が7月30日なら提出できるのは1月30日から6月30日までです。計画届を出したあとに開始日などを変える場合の手続きは、詳細版パンフレットで確かめ、開始日を動かす前に管轄の労働局に相談してください。

ステップ2。社内の準備をする

計画届の前に済ませることは次のとおりです。

  • 推進者:職業能力開発推進者を選ぶ
  • 社内計画:事業内職業能力開発計画を作り、社員に知らせる
  • 受講者:雇用保険の加入と、担当している職務を確かめる
  • 日程:研修の時間を合計10時間以上確保する
  • 時間帯:所定労働時間内に組む(時間外や休日に行った分は賃金助成が出ない)
  • 研修会社:支給申請に必要な書類に協力してもらえるかを確かめる

ステップ3。計画届を管轄の労働局に出す

カリキュラム、受講者の一覧、研修会社との契約書や申込書の写しなどを添えて出します。必要な様式は詳細版パンフレットの「計画届時に必要な書類」に一覧があります。

ステップ4。計画どおりに研修を行い、記録を残す

出勤簿と受講の記録、研修費の支払いの証明を残します。研修費は、支給申請までに会社が全額を払っておく必要があります。

ステップ5。研修終了日の翌日から2か月以内に支給申請する

2コースとも、支給申請の期限は研修終了日の翌日から2か月以内で、パンフレットには「厳守」とあります。期限を過ぎると支給されません。

この章の結論。最初に決めるのは研修の開始日です。開始日が決まれば、計画届の期限と支給申請の期限が決まり、研修会社との契約をいつまでに結ぶかも決められます。

いくら戻るかの計算と、依頼先の選び方

戻る額は「研修費×経費助成率」と「賃金助成の単価×所定労働時間内の研修時間」の合計です。仮に、中小企業が社員10人に12時間の研修を受けさせ、研修費が1人10万円だった場合で計算します。

1人あたり事業展開等リスキリング支援コース人材育成支援コース
経費助成10万円×75%=7万5,000円10万円×45%=4万5,000円
賃金助成1,000円×12時間=1万2,000円800円×12時間=9,600円
合計8万7,000円5万4,600円
10人の合計87万円54万6,000円

研修費100万円と研修中の賃金は、先に会社が払います。助成金は審査を経て後から支給されるもので、支給されない可能性もあります。

厚生労働省のパンフレットは、制度について「人材開発支援助成金は、申請事業主が訓練経費を全て負担する等支給要件を満たした場合に、訓練経費の一部等を助成する制度です。」と書いています。

研修の効果の見積もり方はAI研修の費用対効果の計算表で扱っています。

研修会社主催か、自社主催で講師を招くか

依頼の形は2つあり、助成金の条件が違います。研修会社が企画・主催する研修は「事業外訓練」です。民間の研修会社が行う事業外訓練の要件は詳細版パンフレットの事業外訓練の説明に定められており、定款や登記簿の事業目的に教育訓練事業が書かれている法人であることが条件として挙げられています。

自社が企画・主催し、外部の講師を招く研修は「事業内訓練」です。社外の会場で行っても事業内訓練に当たります。

講師の要件と講師への謝金の上限は詳細版パンフレットに定められています。契約前に、講師の経歴と謝金の額をパンフレットの該当箇所と照らし合わせてください。

自社が主催する研修(事業内訓練)で助成の対象になるのは、集合形式の研修と、その場で質疑応答ができる同時双方向型のオンライン研修です。eラーニングは研修会社が提供する研修として対象になり得ますが、経費助成だけで、賃金助成は出ません。事業展開等リスキリング支援コースでは、2026年8月3日以降に出した計画届に基づくeラーニングの研修は、1人につき1年度1回までに変わりました。実施形式を決める前に、該当するコースの詳細版パンフレットで規定を確かめてください。

自社で行う作業と依頼する作業

自社で行うのは、研修で扱う業務と受講者を決めること、推進者の選任、日程の確保、研修費の支払いと記録です。依頼するのは、職務に合わせたカリキュラムの作成と講師、支給申請に要る書類への協力です。助成金の申請書の作成や提出の代行は、社会保険労務士に依頼します。

助成金を使う本番の研修の前に、AIで何をするかを経営者と社員で話し合う機会を作りたい場合は、経営者と社員で考えるAI活用研修(120分)から始める進め方もあります。120分の研修は10時間の条件を満たさないので、助成金の対象とは別に考えてください。講師に依頼する作業の分け方はAI研修の講師派遣の分担表にまとめています。

この章の結論。研修会社主催なら定款の事業目的を、自社主催なら講師の経歴と謝金の上限を、契約前に確かめます。

AI研修の助成金で不支給や法令違反につながる4つの進め方

つまずきは、研修の中身より手続きと費用の扱いで起きます。次の4つは、不支給や法令違反につながる、AI研修で特に起きやすい進め方です。

研修会社と申し込んでから計画届を考える

研修会社の空き日程に合わせて開始日を決め、申し込んだあとに助成金を調べると、開始の1か月前を過ぎていることがあります。期限を過ぎた計画届に基づく研修は支給されません。開始日は、計画届を出せる日から逆算して決めます。

AIツールの利用料を研修費に含める

研修とAIツールの導入をセットにした提案で、ツールの費用も研修費として申請できると説明されることがあります。パンフレットは「AI研修費用は対象経費ですが、AIツール導入費用は対象経費ではありません。」と注意しています。見積書は研修費とツール費を分けてもらいます。

「実質無料」の提案に乗る

パンフレットは、研修後のアンケートの協力金や、研修会社が紹介した会社への営業協力の対価で研修費が戻る仕組みを、会社の負担を実質的に減らしたものとみなし、経費助成の対象外としています。不正受給とされると、会社名や代表者名が公表される場合があります。

研修会社に申請手続きを任せる

社会保険労務士法第27条により、社会保険労務士でない研修会社が報酬を得て申請手続きを代行することは禁じられています。「申請は無料で代行します」という場合も、受講料に手続きの対価が含まれるとみなされれば問題になるとパンフレットは書いています。

この章の結論。契約前に、開始日と計画届の期限、見積書の研修費とツール費の区分、申請を誰が行うかの3点を書面で確かめます。

AI研修の助成金でよくある質問

2時間のAI研修を5回に分けて、合計10時間にしてもいいですか?

回数を分けても、計画した研修の時間を合計して10時間以上あれば時間の条件は満たせます。ただし、移動時間など対象にならない時間は除いて数えます。受講者は、そうして数えた研修時間の8割以上に出席する必要があります。また内容が職種を問わない汎用的なプロンプトの研修だと、時間を満たしても事業展開等リスキリング支援コースの対象外です。人材育成支援コースでも、職種を問わず職業人として共通して必要となる内容の訓練は対象外とされています。全日程を計画届に書いて出します。

パートの事務スタッフもAI研修の助成金の対象になりますか?

自社の雇用保険の被保険者であれば対象になり得ます。人材育成支援コースでは、非正規雇用の社員の経費助成率は正規雇用の社員より高く設定されています。研修は所定労働時間内に行い、その時間の賃金を払うことが賃金助成の前提です。

研修で使う生成AIの有料プランの費用も助成されますか?

AIツールの導入費用は、研修費としては申請できません。見積書では研修費とツール費を分けてもらい、扱いに迷う費用は、計画届を出す前に管轄の労働局に相談してください。

自治体のDX人材育成の補助金と、人材開発支援助成金を両方使えますか?

同じ研修・同じ経費に複数の制度を使う場合、併給できないことがあるとパンフレットに書かれています。両方を検討するときは、自治体の制度の窓口と管轄の労働局の両方に、同じ研修に使えるかを計画の前に確かめてください。

まずは、予定しているAI研修の開始日を決め、その1か月前の日付をカレンダーに書き込んでください。研修が定着する条件はAI研修が意味ないと言われる理由と依頼前の質問8つで確かめられます。

職務に直結したカリキュラムでAI研修を行いたい方は、AI活用研修のページからご相談ください。人材開発支援助成金を活用する場合は、貴社が主催する社内研修として、要件に合わせた研修プランを組み立てます。弊社は講師として伺います。どの業務をAIで行うかから決めたい場合は、AI導入支援でもご相談いただけます。

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