事業計画書のAIプロンプト|幹部と共有する指示文の型と確認欄

事業計画書のAIプロンプト|幹部と共有する指示文の型と確認欄

この記事の要点

  • 指示文は固定欄・差し替え欄・確認欄の3部で作る
  • 数字と固有の事実は資料からだけ書かせ、無い箇所は要確認と書かせる
  • 確認欄は8項目。表のひな形と失敗の4つの型は本文で解説

事業計画書のAIプロンプトは、幹部全員が同じ指示文を使い、AIが書いた文の根拠を確認欄で確かめる形にすると、幹部会議で検討できる下書きになります。AIに任せるのは章立てと文章の下書きです。売上目標・投資額・採用人数のような数字と、自社が選ばれている理由は、経営者と幹部が決めます。

自分の業務でAIを使えるかを試そうとしている経営者・役員の方に向けた記事です。読み終わる頃には、幹部と共有する指示文と、下書きを確かめる表を、自社用に書き換えられる状態を目指します。

事業計画書を一から作る流れ全体は、事業計画書をAIで作成する手順と、経営者が決める数字で解説しています。この記事では、そのうち「幹部で使う指示文」と「下書きの確かめ方」を扱います。

Contents / 目次
  1. 事業計画書のAIプロンプトは固定欄・差し替え欄・確認欄の3部で作る
  2. 幹部と共有する指示文の作り方。4ステップ
  3. AIの下書きを幹部で確かめる確認欄の作り方
  4. 事業計画書をAIで作るときの失敗と防ぎ方
  5. 自社で試す作業と、会社として仕組みにする作業
  6. 事業計画書のAI作成でよくある質問

事業計画書のAIプロンプトは固定欄・差し替え欄・確認欄の3部で作る

幹部と共有する事業計画書のAIプロンプトは、毎回変えない「固定欄」、章ごとに入れ替える「差し替え欄」、AIの出力を幹部が確かめる「確認欄」の3部に分けて作ります。プロンプトとは、AIに渡す指示文のことです。

幹部がそれぞれ自分の言葉でAIに指示すると、同じ「市場分析」の章でも、前提にした数字や書き方が担当者ごとに変わります。持ち寄った下書きを1つの計画書にまとめようとしても、章と章の数字が合いません。固定欄で前提と書き方のルールをそろえ、差し替え欄で章ごとの依頼だけを変えれば、誰が使っても同じ前提で書かれた下書きが集まります。

部分書く内容決める担当変えるタイミング
固定欄会社の概要、計画の期間、提出先、前期の主要な数字とその定義、書き方のルール経営者計画を立て直すとき
差し替え欄章の名前、その章で答える問い、渡す資料、出力の形章を担当する幹部章ごと
確認欄根拠が要るAIの記述、根拠資料、確認者、判定担当幹部が記入し、経営者が最終判断下書きを作るたび

AIに任せられるのは、章立ての案、文章の下書き、抜けている観点の指摘です。経営者と幹部が決めるのは、売上・利益・投資額・採用人数の数字、その数字の前提、顧客が自社を選んでいる理由、施策の担当と期日です。

AIで下書きを作ったからといって、融資の審査や補助金の採択に通るわけではありません。提出先に計画の中身と根拠を説明するのは経営者です。この記事の確認欄は、その説明ができる状態かを下書きの段階で確かめるためのものです。

この章で決まるのは、指示文を「誰が・どの部分を・いつ変えるか」です。次の章から、各部分の中身を作ります。

幹部と共有する指示文の作り方。4ステップ

ステップ1。AIに入力してよい情報を決める

指示文を書く前に、AIに入力してよい情報を決めます。事業計画書の材料には、取引先別の売上や未発表の人事のように、社外に出してはいけない情報が混ざるためです。

区分例扱い
入力してよい公開済みの会社概要、自社サイトの事業説明、業界の公開統計そのまま入力する
加工して入力する前期の売上・粗利の合計、部門別の構成比、受注と失注の理由の記録取引先名を伏せ、合計か比率にして入力する
入力しない取引先別の売上と取引条件、従業員の個人情報、未発表の人事・M&A・価格改定、NDA(秘密保持契約)の対象の情報AIには入力せず、幹部が下書きに書き足す

入力した内容がAIの改善に使われるかどうかは、サービス、プラン、設定によって扱いが違い、規約の改定で変わることもあります。幹部が個人のアカウントで試すなら、使うサービスの公式ヘルプとプライバシーポリシーで入力内容の扱いを確かめてから使い始めます。

取引先との契約で気をつける点はChatGPT業務利用のリスクと、取引先情報・NDAの線引きで詳しく解説しています。

幹部がすでに個人のアカウントでAIを使い始めていて、入力してよい情報が社内で決まっていない場合は、経営者と担当者で学ぶAI活用研修で、会社の情報を入力する前の確認方法を先に学ぶ進め方もあります。

ステップ2。固定欄の指示文を書く

固定欄には、会社の前提と、すべての章に共通する書き方のルールを書きます。次のたたき台の[ ]を自社の内容に書き換えて使ってください。あとはAIと対話しながら、自社の状況に合わせて詰めていきます。

# 役割
あなたは中小企業の事業計画書の下書きを作る担当です。

# 会社の前提(固定欄)
- 業種と主な商品・サービス [例 法人向けの設備保守と定期点検]
- 計画の期間 [例 2027年4月から3年間]
- 提出先と目的 [例 金融機関への説明と、社内の幹部会議]
- 読み手 [例 当社の事業を知らない金融機関の担当者]
- 前期の売上 [金額](税抜。決算書の売上高)

# 書き方のルール
1. 数字・社名・固有の事実は、この指示文と一緒に渡す資料にあるものだけを使う。
2. 資料に無い数字や事実が必要な箇所は、文を作らずに[要確認・何が必要か]と書く。
3. 各文の末尾に根拠ラベルを付ける。資料にある内容は[資料・資料名]、一般的な考え方は[一般]、推測は[推測]。
4. 「見込まれる」「期待できる」と書くときは、何を根拠にそう言えるかを同じ文に書く。
5. 出力は見出しと箇条書きで、1つの章を800字以内にする。

根拠ラベルとは、AIが書いた1文ごとに、その内容の出どころを示す印のことです。ラベルがあれば、幹部は[推測]と[一般]の文から確かめればよく、全文を同じ重さで読む必要がなくなります。

ルール2は、禁止ではなく「代わりに何をするか」を書いています。Anthropicは、Claudeのプロンプトの書き方の公式ガイドのうち、書き方の推奨をまとめたページ(Prompting best practices)で次のように勧めています。

Anthropicの公式ガイド。”Tell Claude what to do instead of what not to do.”(やらないことより、やることを伝える)

同じページの、長い資料の扱い方をまとめた節(Long context prompting)は、長い資料を、質問・指示・例よりも前に置くよう勧めています。決算書の要約や過去の計画書のような長い資料を渡すなら、資料を先に貼り付け、そのあとに固定欄と差し替え欄の依頼を続けます。

指示文は共有フォルダの1つの文書で管理し、幹部はそこから写して使います。口頭やチャットで回すと、ルールの1行が抜けた版が出回ります。

ステップ3。章ごとの差し替え欄を作る

差し替え欄には、その章でAIに答えさせる問いを1〜2文で書きます。「市場分析を書いて」のような依頼では、どの会社にも当てはまる文章が返ってきます。

章AIに答えさせる問い渡す資料担当の例
市場と顧客主な顧客はどの業種か。その業種の需要は増えているか減っているか業界の公開統計、自社の顧客業種の構成比営業の幹部
競合と自社の強み顧客が自社を選ぶ理由を3つ。競合と比べて弱い点を2つ受注・失注の理由の記録、顧客アンケートの要約営業の幹部
SWOT強み・弱み・機会・脅威を各3つ。経営者が書いていない弱みも挙げる上の2章の確認済みの下書き経営者
数値計画の前提売上を顧客数・単価・回数に分けたとき、各要素の前提として何が要るか前期の実績(合計か比率)経理・財務の幹部
実行計画施策ごとに必要な担当・期日・人員の抜けはどこか幹部会議の決定事項各担当の幹部
要約計画書を最初に読む担当者が知るべき5点は何か確認欄を通った各章経営者

SWOTとは、自社の強み・弱みと、外部の機会・脅威を4つに分けて書き出す方法です。数値計画の章では、AIに売上の数字を作らせず、前提の分け方と抜けている前提の指摘だけを依頼します。数字は幹部が表計算ソフトで計算します。数字をAIに渡すときの線引きは資金繰り表をAIで見直すときに入力してよい数字も参考になります。

# 今回の依頼(差し替え欄)
章 競合と自社の強み
答える問い 顧客が当社を選ぶ理由を3つ、競合と比べて弱い点を2つ挙げてください。
渡す資料 前期の受注・失注の理由の記録(取引先名は伏せてあります)
出力の形 理由ごとに「根拠となる記録の該当箇所」と「金融機関の担当者が質問しそうな点」を添える

ステップ4。AIに下書きを点検させる

章の下書きができたら、下書きを書かせたときとは別の依頼として、AIに点検させます。次の例のように、下書きを読む立場と、一覧にしてほしい指摘の種類を指定します。

次の下書きを、当社の事業を初めて知る金融機関の担当者の立場で点検してください。
1. [推測][一般]のラベルが付いた文のうち、資料で裏づけが要るものを挙げる
2. 根拠が書かれていない「見込まれる」「期待できる」を挙げる
3. 章と章で食い違っている数字や表現を挙げる
4. 読み手が質問しそうな点を5つ挙げる
下書きの文は書き換えず、指摘だけを一覧にしてください。

AIの点検で見つかるのは、文と文の食い違いと根拠の抜けです。前提の数字が自社の実態と合っているかは、AIには判断できません。ここまでで指示文は完成し、残るのは幹部が確かめる工程です。

AIの下書きを幹部で確かめる確認欄の作り方

確認欄は、AIの下書きのうち根拠が要る記述を1行ずつ書き出し、根拠資料・確認者・判定を記入する表です。次の8項目を列にすると、誰がどの文を確かめたかが幹部会議で分かります。

  1. 章の名前
  2. AIの記述(該当する1文をそのまま写す)
  3. 根拠ラベル(資料・一般・推測・要確認)
  4. 根拠資料の名前と該当箇所
  5. 確認者
  6. 確認日
  7. 判定(採用・修正・削除)
  8. 修正後の文、または幹部のコメント

記入例を示します。社員30名の設備保守会社という架空の例で、8項目のうち主な列だけを載せています。

章AIの記述ラベル確認者判定修正後の文・コメント
市場と顧客主要顧客である食品工場の点検需要は、今後も増加が見込まれる推測営業部長修正前期の食品工場向けの点検件数は前々期より増えた[資料・点検台帳]。今後の需要は主要顧客の設備更新の予定を確かめてから書く
数値計画の前提単価は毎年3%上昇する一般経理部長削除単価の改定は来期の価格交渉で決まるため、前期の単価のまま計算する
競合と自社の強み故障の連絡から24時間以内に訪問できる点が選ばれる理由である資料営業部長採用受注理由の記録の該当箇所を添付

確認欄を運用するときの決まりは、次の4つです。

  • 数字を含む文:元の資料と1字ずつ照らし合わせ、合計や増減率は表計算ソフトで計算し直す。元の数字が合っていても、AIの文中の計算が違うことがある
  • 判定が修正の文:修正後の文は確認者が書く。AIにもう一度書かせると、根拠の無い言い回しに戻ることがある
  • 要確認が残った章:幹部会議の資料に入れない。何の資料が足りないかを議題にする
  • 要約の章:確認欄をすべて通った章だけを渡して作らせる

AIがもっともらしい誤りを書く理由と減らし方は、生成AIのハルシネーションが起きる理由と業務で減らす手順で解説しています。確認欄を下書きのたびに残しておけば、翌期に計画を見直すとき、どの前提が実績と合わなかったかを行ごとに振り返れます。確認欄の8項目がそろえば、幹部会議で「この数字の出どころは」と質問されても、表の行を指して答えられます。

事業計画書をAIで作るときの失敗と防ぎ方

幹部が個別に指示文を作ると、章ごとに前提の数字が食い違う

営業の幹部は前期の売上を税込で、経理の幹部は税抜でAIに渡す、という条件だと、市場の章と数値計画の章で売上の金額が合わなくなります。AIはどちらの数字も資料どおりに書くため、点検でも食い違いの原因までは分かりません。固定欄に「前期の売上 [金額](税抜。決算書の売上高)」のように、数字の定義まで書いておけば防げます。

AIに売上予測を任せると、業界の一般的な伸び率が前提になる

自社の実績を渡さずに「3年後の売上を予測して」と依頼すると、AIは一般的な成長率を当てはめた数字を返します。文章としては筋が通っているので、そのまま計画の数字に使われやすい点が危険です。[一般]のラベルが付いた数字は計画に使わない、と確認欄の決まりにし、売上は顧客数・単価・回数に分けて、各要素を自社の実績から幹部が決めます。

補助金の公募要領を渡さずに書かせると、審査の観点と合わない構成になる

補助金の申請に使う計画書をAIに一般的な構成で書かせると、公募要領が求める項目の順番や様式と合わない下書きになります。最新の公募要領の審査の観点を資料として渡し、章立てをその順に作らせます。様式と要件は、各補助金の事務局のサイトに載っている最新の公募要領で確かめてください。申請書の下書きの進め方は補助金申請書をAIで下書きする手順にまとめています。

読みやすい文章のまま面談に臨むと、根拠を質問されて答えられない

AIの下書きは文章が読みやすいため、経営者自身が根拠を確かめないまま提出してしまう条件がそろいます。面談で「この伸び率の根拠は」と質問されたとき、答えられるのは確認欄を書いた幹部です。ステップ4で出てきた「質問しそうな点」を幹部に割り振り、それぞれが自分の言葉で答えを書いておきます。

4つの失敗はどれも、AIの文の出どころを確かめないまま次の工程に進んだときに起きます。固定欄の数字の定義と、確認欄の判定を省かないことが防ぎ方です。

自社で試す作業と、会社として仕組みにする作業

経営者が事業計画書の1章を試すところまでは、この記事の指示文と確認欄で進められます。幹部全員で毎期の見直しに使う、毎月の試算表から計画との差を出す、といった使い方に広げるなら、会社としての仕組みにします。

自社で試す作業会社として仕組みにする作業
経営者が1章を下書きさせ、確認欄で確かめる幹部全員が同じ指示文と資料を使えるよう、版を管理する
固定欄を自社用に書き換える毎月の試算表と計画の差をAIで書き出し、幹部会議の資料にする
入力してよい情報の区分を決める法人向けのプランに切り替え、利用のルールを社内に周知する

毎月の試算表をAIで読む問いの立て方は経営相談をAIで行うときの試算表を読む問いの型で、プランの選び方はAIの法人プランと個人プランの違いで解説しています。

計画と実績の集計のように毎月くり返す作業を仕組みにするなら、繰り返す集計を仕組みにするAI導入支援という進め方もあります。AIに任せる処理、実行のタイミング、幹部が確認する内容を決めたうえで設計・開発し、導入後も改善していきます。

事業計画書のAI作成でよくある質問

事業計画書をAIで下書きしたことは、金融機関に伝えたほうがいいですか?

伝えるかどうかより、記載した数字と根拠を経営者が説明できるかが問われます。提出先に独自の決まりがある場合は、補助金なら公募要領、融資なら金融機関の案内で確かめてください。確認欄を残しておけば、根拠を質問されたときに資料を示せます。

決算書のPDFをそのままAIに読ませてもいいですか?

取引先名など入力しない情報が含まれていないかを先に確かめます。PDFの図や表まで読めるかはサービスとプランによって違うため、各サービスの公式ヘルプで確かめてください。表の数字は文字に書き出して添えると、読み取りの誤りを確かめやすくなります。

幹部によってChatGPTとClaudeを使い分けても、事業計画書はまとめられますか?

同じ固定欄と差し替え欄を使えば、まとめられます。サービスによって文の長さや言い回しが変わるため、確認欄は同じ表に記入し、要約の章は1つのサービスで作ります。入力内容の扱いの設定は、サービスごとに各幹部が確かめてください。

数値計画の表の作成もAIに依頼していいですか?

表の列や行の案、抜けている費用項目の指摘は依頼できます。売上や利益の数字そのものは、幹部が自社の実績をもとに表計算ソフトで計算します。AIの文中の計算は、元の数字が合っていても誤ることがあるためです。

まずは、前期の売上を「税込か税抜か」まで添えて、固定欄の1行目に書いてみてください。指示文の記号の使い方を詳しく知りたい方は、プロンプトの記号とマークダウンの使い分けが次の一歩になります。

幹部で使う指示文は作れても、毎月の数字の集計や資料の受け渡しまで社内で続けるには手間がかかります。コレットラボの計画と実績の集計を仕組みにするAI導入支援では、まず業務と実現したいことを伺い、優先するテーマを一緒に決めます。いまの進め方をお話しいただくだけでも大丈夫です。

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