生成AIの社内研修の内容と選び方|自社で教えるか外部講師か

生成AIの社内研修の内容と選び方|自社で教えるか外部講師か

この記事の要点

  • 研修内容は全員共通・業務演習・推進担当の3層で決める
  • 社内に教えられる社員がいなければ、全員共通の層と初回の組み立ては外部に、演習の題材選びと研修後の継続は社内で受け持つ
  • 社内講師の時間の試算と契約前の質問7つを本文に掲載

生成AIの社内研修で教える内容は、全員に共通する「情報の扱いと回答の確かめ方」、部署ごとの「業務を題材にした演習」、社内で質問を受ける「推進担当の育成」の3層に分けると決めやすくなります。社内にAIを教えられる社員がいない会社では、全員共通の層と初回の組み立てを外部講師に依頼し、演習の題材選びと研修後の継続を社内で受け持つ分け方が現実的です。

研修の実施を任せる立場の経営者・役員・院長の方に向けた記事です。読み終わる頃には、研修で何を教えるかと、社内と外部のどちらに任せるかを、自社の条件で決められる状態を目指します。

社員に操作を教える順番そのものは社内研修でAI業務効率化を教える順番で扱っています。研修費の項目ごとの内訳はAI研修の費用と内訳8項目をご覧ください。

Contents / 目次
  1. 生成AIの社内研修で教える内容は3層。社内と外部の分け方の早見表
  2. 社内研修の内容を決める4つのステップ
  3. 自社で教えるか外部講師に依頼するか。判断の5条件
  4. 契約前に送る質問と、研修が業務につながらない条件
  5. 生成AIの社内研修についてよくある質問

生成AIの社内研修で教える内容は3層。社内と外部の分け方の早見表

社内研修の内容は、受講する全員に共通する層、部署ごとの業務演習の層、推進担当の層の3つに分けます。層ごとに、社内の社員で教えられる条件が違うためです。

層教える内容社内で教えられる条件外部講師に依頼したほうがよい条件
全員共通AIの回答が誤る理由、入力してよい情報の区分、回答の確かめ方、社内ルール社内ルールが文書になっていて、説明できる担当者がいる社内ルールがまだ無い。経営者自身もこれから学ぶ
業務演習議事録・見積書の添え状・問い合わせへの返信など、部署の実際の文書でAIに依頼し、回答を確かめる題材を出せる担当者と、回答の良し悪しを判断できる担当者が部署にいる演習の組み立て方が分からない。題材を選ぶ基準が無い
推進担当社内の質問への答え方、ルールの改訂、効果の記録毎週の業務でAIを使い続けている社員がいる推進担当を初めて決める

研修内容で最初に決めるのは、全員共通の層です。入力してよい情報やアカウントの扱いは会社ごとに違うので、社内ルールが決まっていないと、講師は一般論しか話せません。

全員共通の層には、どのアカウントで使うかという会社の決まりも含めます。

指示文の型を覚える時間は短くて構いません。この記事では、自社の文書でAIに依頼し、回答の誤りを見つける練習に時間を多く割く組み方をおすすめします。受講者が、研修後に自分の業務で使う場面を思い浮かべやすいためです。

経営者自身もAIを使い始めたばかりで、社員に何を守ってもらうかが決まっていない場合は、経営者と社員で考えるAI活用研修で、入力した情報がどう扱われるかと、契約・設定・社内ルールのどこを確かめるかを経営者と社員が一緒に学んでから、社内ルールを決める進め方もあります。

この章の結論。研修内容は3層に分け、社内ルールに関わる全員共通の層から決めます。層ごとに社内で教えられる条件が違うので、社内か外部かは研修全体ではなく層ごとに判断できます。

社内研修の内容を決める4つのステップ

研修内容は、受講者の分け方、研修の前提になる決まり、演習の題材、研修後に見る数字の順に決めます。この順番にすると、外部講師に依頼する場合も見積もりの条件がはっきりします。

ステップ1。受講者を業務で分ける

受講者は役職ではなく、AIで扱う文書の種類で分けます。同じ課長でも、営業の提案書を書く担当者と、経理の照合を行う担当者では演習の題材が違います。

  • 全員共通の層:AIを業務で使う可能性がある全員。経営者も含める
  • 業務演習の層:文書を作る業務が多い部署から1〜2部署
  • 推進担当の層:部署ごとに1人。質問を受ける時間を業務として割り当てられる社員

ステップ2。研修の前に情報の区分と使うAIを決める

研修の2週間前までに、入力してよい情報を「そのまま入力してよい」「社名・個人名を伏せれば入力してよい」「入力しない」の3つに分けた表を作ります。あわせて、演習に使うAIのサービスと、会社として契約するプランを決めます。

表の作り方は生成AI社内ルールの12項目のひな形に、プランの違いはAIの法人プランと個人プランの違いにまとめています。

ステップ3。演習の題材を部署ごとに3つ選ぶ

題材は、次の3つの条件をすべて満たす文書から選びます。

  1. 毎週1回以上、作るか読む機会がある
  2. 出来上がった文書の良し悪しを、部署の担当者が判断できる
  3. 個人情報を含まないか、伏せても演習に使える

営業なら訪問後のお礼メールの下書き、総務なら社内通知の文面、製造なら日報からの不具合の抜き出し、といった選び方です。外部講師に依頼する場合も、この題材を事前に渡すと、演習が受講者の業務に合います。

ステップ4。研修後に見る数字を研修の前に決める

研修の前に、ステップ3の題材1件あたりの所要時間を記録しておきます。研修の1か月後と3か月後に同じ業務の時間を記録すると、研修の前後を比べられます。測り方はAI業務効率化の削減時間の測り方をご覧ください。

4つのステップで決めた内容は、次の設計シートに書き込みます。外部講師に依頼する場合は、このシートを見積もりの依頼に添えます。

【研修の設計シート】
研修の目的:[例:見積書の添え状と提案書の下書きにかかる時間を減らす]
対象の業務:[部署名と業務名を3つまで]
受講者:全員共通の層[人数]/業務演習の層[部署と人数]/推進担当[氏名]
使うAI:[会社として契約するサービスとプラン]
入力してよい情報:[社内ルールの該当箇所]
演習の題材:[部署ごとに3つ。社名・個人名は伏せる]
研修前に記録する数字:[題材1件あたりの所要時間]
研修後に記録する時期:[例:研修の1か月後と3か月後]
質問の窓口:[推進担当の氏名と連絡方法]

この章の結論。設計シートが埋まれば、研修で何を教えるかは決まっています。埋まらない欄があれば、その欄が外部講師と一緒に決める作業になります。

自社で教えるか外部講師に依頼するか。判断の5条件

この記事で目安として提案するのは、次の5つの条件を満たす数で、外部に任せる層を決める分け方です。4つ以上なら社内で教え、3つなら全員共通の層だけを外部に依頼し、2つ以下なら初回は外部講師に依頼します。調査に基づく基準ではないので、自社の事情に合わせて区切りを調整してください。

  • 社内ルール:入力してよい情報の区分が文書で決まっている
  • 使い続けている社員:毎週の業務でAIを使い、誤った回答に気づいた経験がある社員がいる
  • 時間の割り当て:その社員に、準備と質問対応の時間を業務として割り当てられる
  • 業務のまとまり:受講者の業務が1〜2種類にまとまっている
  • 目的:経営者が、どの業務の時間を減らすかを決めている

社内講師にかかる時間の試算

社内で教える場合の費用は、担当者の時間です。次の表は仮の数字で置いた試算例です。

作業仮の時間
研修資料と演習問題の作成20時間
当日の全員向け講義(1回)3時間
部署ごとの演習(1.5時間×2部署)3時間
研修後1か月の質問対応10時間
社内ルールと資料の改訂4時間
合計40時間

外部講師の見積もりと比べるときは、この合計に担当者の時給を掛けた金額を並べます。金額だけでなく、40時間分の本来の業務が止まることも判断に入れます。教える準備は、AIを使い慣れた担当者にとっても初めての作業です。

外部講師の費用が変わる要素

外部講師の見積もりは、次の要素で上下します。見積もりを比べるときは、各社でこの要素の条件をそろえます。

  • 人数と回数:全員を1回で受講させるか、部署ごとに分けるか
  • 事前の打ち合わせ:自社の業務や社内ルールを伺う回数
  • 演習の作り込み:汎用の演習か、自社の題材で作るか
  • 教材の利用:研修後に資料を社内研修で使えるか
  • 研修後の対応:受講者の質問を受ける期間と回数
  • 形式と移動:対面かオンラインか。対面なら講師の移動費

自社で行う作業と依頼する作業

外部講師に依頼しても、社内ルールの決定、演習の題材の選定、研修前後の時間の記録は自社で行います。講師に依頼するのは、全員共通の層の講義と、題材をもとにした演習の組み立て、推進担当が質問に答えられるようになるまでの支援です。講師派遣で依頼する作業の分け方と準備は講師派遣で依頼する作業と準備のチェックリストで解説しています。

研修のあとで、1つの業務をAIで回す仕組みまで作りたい場合は、AIに任せる業務の洗い出しから始めるAI導入支援で、入力フォームと社員向けの手順書づくりまでご相談いただけます。

この章の結論。社内か外部かは層ごとに判断し、5条件を満たす数は、どの層を外部に任せるかを決める目安に使います。満たす条件が3つなら、全員共通の層だけを外部に依頼し、業務演習と推進担当の層は社内で受け持ちます。外部講師の見積もりは、社内講師の時間に時給を掛けた金額と並べて比べます。

契約前に送る質問と、研修が業務につながらない条件

外部講師に依頼すると決めたら、契約の前に次の質問を送り、回答を各社で比べます。回答が具体的かどうかで、自社の業務に合わせた研修を組めるかが分かります。

研修会社に送る質問の文面

【研修のご相談にあたっての質問】
1. 研修の前に、当社の業務や社内ルールを伺う打ち合わせはありますか。回数と、費用に含まれるかを教えてください。
2. 演習の題材に当社の文書を使えますか。社名・個人名を伏せた資料をお送りする場合、受け取った資料の保管と削除の扱いを教えてください。
3. 演習で使うAIは、当社が契約したサービスとアカウントを使えますか。
4. 研修の資料と演習問題を、次回から当社の社内研修で使えますか。使える場合の条件を教えてください。
5. 受講者の人数や時間が変わった場合、見積もりのどの項目が変わりますか。
6. 研修後に受講者からの質問を受ける窓口はありますか。期間と回数を教えてください。
7. 講師が担当した研修のうち、当社と近い業種・部署の業務を題材にしたものを教えてください。

研修が業務につながらない3つの条件

次の3つは、研修内容の決め方が原因で、研修後に業務でAIが使われにくくなる条件です。

社内ルールを決めないまま全員研修を始める場合。講師は一般的な注意しか話せず、受講者は自社で何を入力してよいか分からないまま研修を終えます。ステップ2の表を研修の2週間前までに作り、講師に渡します。

演習を講師が用意した架空の題材だけで行う場合。受講者は演習の業務と自分の業務を結びつけられず、翌週から使う場面が見つかりません。質問の2番で自社の文書を使えるかを確かめ、伏せ字にした題材を事前に渡します。

演習に使うアカウントを決めないまま研修を行う場合。受講者が演習のために個人のアカウントを作り、研修後もそのまま業務に使い続けることがあります。会社として契約するプランを研修の前に決め、演習ではそのアカウントを使います。

助成金を使う場合の日程の決め方

人材開発支援助成金の人材育成支援コースと事業展開等リスキリング支援コースでは、訓練開始日の6か月前から1か月前までに、訓練の計画届を労働局に提出します。手続きの詳細は、厚生労働省の人材開発支援助成金のページにあるコースごとのパンフレットで案内されています。

手続きの期限から逆算すると、希望の時期に研修を始められないこともあります。助成金を使うかどうかは、研修会社を選ぶ前に決めます。

条件はAI研修の助成金の条件と申請の流れで解説しています。

この章の結論。契約前の7つの質問で、自社の題材とアカウントで研修を組めるかを確かめます。3つの条件のどれかに当たる場合は、研修の日程より前に解消します。助成金を使う場合は、計画届の期限から逆算して研修の日程を決めます。

生成AIの社内研修についてよくある質問

生成AIの社内研修は、全員を集めた1回で終えても大丈夫ですか?

全員共通の層は1回でも組めます。業務演習は部署ごとに分けたほうが、題材が受講者の業務に合います。全員向けの講義を1回行い、その後に部署ごとの演習を1〜2時間ずつ行う組み方なら、全員を長時間集めずに済みます。

外部講師の研修資料を、次から社内講師が使ってもいいですか?

契約の内容によります。研修資料の著作権をどちらが持つか、社内研修でどこまで使ってよいかは、研修会社との契約で決まります。翌年から社内で教える予定があるなら、見積もりの段階で利用の条件を確かめ、契約書に書いてもらいます。

助成金を使う場合、研修内容の決め方は変わりますか?

変わります。人材開発支援助成金は、訓練時間が10時間以上であることなどが要件です。事業展開等リスキリング支援コースでは、令和8年8月3日の改正で、生成AIを利用するために汎用的なプロンプトの作り方を学ぶ訓練が助成の対象外になりました(経過措置があります)。営業担当者が、生成AIを使った商品提案書の構成案の作成や文章の修正を学ぶ訓練のように、特定の業務に直結した内容は対象として例示されています。要件は改正で変わることもあるので、研修内容を決める前に厚生労働省の人材開発支援助成金のページで最新の要件を読み、自社が主催する計画として要件に合うかを管轄の労働局に確かめます。

推進担当は、社内でいちばんAIに詳しい社員にすればいいですか?

詳しさだけで決めないほうが安全です。推進担当の仕事は、部署の業務を知ったうえで質問に答え、社内ルールを改訂することです。業務を理解していて、質問対応の時間を業務として割り当てられる社員を選びます。育て方はAI推進担当の育て方をご覧ください。

まず、社内で週に1回以上作っている文書を、部署ごとに1つずつ書き出してみてください。それが演習の題材の候補になります。研修のあとに業務で使い続けてもらう進め方は生成AIを社内で90日で定着させる進め方で扱っています。

研修で何を教えるか、自社の社員だけで教えられるかの見極めが難しいと感じた方は、経営者と社員で考えるAI活用研修の内容をご覧ください。全員共通の層のうち、AIの仕組み・依頼の伝え方と回答の確かめ方・情報の扱いを学ぶ120分の研修です。事前の打ち合わせで担当業務やAIの利用経験を伺い、研修の内容を作成します。自社の文書を使った演習は、別途ご相談いただけます。

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