LLMO対策の実績公開|守秘の線引きと匿名化の判断
この記事の要点
- 公開の可否は3層で決まる。契約で守るもの、許諾があれば出せるもの、許諾なしで出せるもの
- 匿名化は5段階。業種・地域・規模・時期・金額を同時に出すのは2つまで
- 許諾の文面にAIの回答へ引用される可能性を書く。テンプレと公開前チェックは本文に
LLMO対策で公開してよいのは、契約で秘密と決めた情報を除いた部分です。社名や具体的な数値は取引先の書面での許諾があれば出せますし、自社の作業工程・所要時間・つまずいた点は許諾なしで出せます。この3つを分けずに「事例は出せない」と止まってしまうケースがあります。
この記事は、受託や法人取引が中心で、守秘義務があるために実績をWebに出しづらい会社の広報・営業担当者に向けて書いています。読み終わる頃には、いま手元にある1本の案件について「実名で出せるか、匿名で出せるか、書かないか」を自分で判断し、必要なら許諾のメールを送れる状態を目指します。
扱うのは、自社が情報を「公開する側」に立ったときの線引きです。すでに公開した記事がAIに引用された後の権利の話はAI検索と著作権|自社サイトが引用される側の対応と判断軸で解説しているので、そちらが目的の方は先にどうぞ。逆に、取引先からもらった資料をAIに入力してよいかという入力側の話も、この記事では扱いません。
Contents / 目次
LLMO対策で最初に決める、公開してよい情報の3層
公開してよいかどうかは、情報を3つの層に仕分けると判断できます。仕分けの基準は「その情報が誰のものか」の一点です。取引先のものか、取引先と自社の共有物か、自社だけのものかで、必要な手続きが変わります。
LLMO対策とは、ChatGPTやGoogleのAIによる概要のような生成AIの回答に、自社の情報が正しく引用されるようにする取り組みのことです。守秘の線引きが甘いと事故になり、厳しすぎると引用される材料がゼロになります。まずはどこまで書けるかを決めるところから始めます。
| 層 | 中身の例 | 公開の条件 | AI検索での効き方 |
|---|---|---|---|
| 第1層 取引先の情報 | 取引先の売上・原価・顧客リスト・未発表の企画・図面・システム構成 | 公開しない。許諾があっても社内で再検討する | そもそも出さない |
| 第2層 共有の成果 | 社名・ロゴ・案件名・具体的な成果数値・担当者の実名コメント | 取引先の書面での許諾が必要 | 引用の材料になりやすい |
| 第3層 自社の情報 | 自社の作業工程・所要時間・使ったツール・社内で測った工数・失敗して直した経緯 | 許諾なしで公開できる(第1層が混ざっていないか確認) | 許諾ゼロで積み上げられる一次情報 |
ここで多くの会社が損をしています。第2層の許諾が取れないことを理由に、第3層まで一緒に止めてしまうケースです。第3層は自社の情報なので、取引先に断らなくても公開できます。
第1層の判断で迷ったときは、法律上の「営業秘密」に当たるかを目安にできます。要件は不正競争防止法2条6項に定められていて、経済産業省の営業秘密~営業秘密管理指針・逐条解説不正競争防止法~に指針と解説が公開されています。判断の前に、この一次資料で自社の情報が当てはまるかを確認してください。
ただし、実際の契約書には法律上の営業秘密より広く「本件に関して知り得た一切の情報」と書かれていることがよくあります。最終的に効くのは法律の定義ではなく、目の前の契約書の文言です。個別の案件で判断に迷う場合は、契約書を持って弁護士に確認してください。この記事は一般的な考え方の説明で、法律相談の代わりにはなりません。
LLMOとSEOの関係そのものが曖昧な方は、LLMOとAIOとSEOの違いと実務の使い分けを先に読んでから戻ってくると、この後の判断が早くなります。
この章の結論。手元の案件を3層に仕分ければ、「許諾を取りに行く情報」と「今日から書ける情報」がその場で分かれます。まず第3層だけで1本書けるかを見てください。
実績を書くときの匿名化レベル5段階と、残す具体の選び方
匿名化は「実名か伏せるか」の二択ではなく、5段階で考えると決めやすくなります。段階が上がるほど手続きは軽くなりますが、読み手が判断材料にできる具体は減ります。この交換条件を分かったうえで選ぶのが、守秘とLLMO対策の両立です。
| レベル | 書き方の例 | 必要な手続き | 残る具体の量 |
|---|---|---|---|
| L0 実名フル | 「株式会社◯◯様(大分市・製造業)。担当者の△△様のコメント付き」 | 書面での許諾。掲載内容の事前確認も必要 | 最も多い |
| L1 実名+数値の粒度を落とす | 「株式会社◯◯様。月次の集計作業が半日から1時間ほどに短縮」 | 書面での許諾 | 多い |
| L2 業種と規模のみ | 「従業員50名規模の建設会社様の事例」 | 一報を入れて書面で確認するのが安全 | 中くらい |
| L3 複数案件を合成した型 | 「この業種でよくご相談いただく3つのパターン」 | 不要(合成であることを本文に明記) | 中くらい |
| L4 自社データのみ | 「この作業を社内で20件分測ったところ、1件あたり平均◯分でした」 | 不要 | 多い |
注目してほしいのはL4です。取引先の話をいっさいしていないのに、条件と数字が揃った記述としてはL1と同じくらいの中身になります。誰の案件かを書かなくても、測った件数と結果が書いてあれば読み手は判断できます。
L2は安全に見えて、いちばん事故が起きやすいレベルです。業種・地域・従業員規模・時期・金額といった要素は、組み合わせるほど絞り込みの手がかりになります。この記事では、同時に出すのは2つまでを社内の目安として使っています。書いたあとに何個残っているかを必ず数えてください。
数値をどう書くかで引用のされ方が変わるので、成果の書き方そのものは導入事例をAIに引用させる数値の書き方手順も合わせて見てください。母数と期間の書き方だけで、AIの回答に残るかどうかが変わります。
この章の結論。許諾が取れない案件はL3かL4に落とし、取れる案件だけをL0・L1に上げます。全部を実名にする必要はありません。
守秘を守ったまま実績を出すLLMO対策のやり方5ステップ
「llmo 対策 やり方」で探している方が、そのまま今日から動けるように5ステップに分けます。順番が大事です。原稿を書いてから許諾を取りに行くと、書き直しが発生して二度手間になります。
ステップ1 契約書の秘密条項を4か所だけ抜き書きする
最初にやるのは、案件の契約書(NDAや業務委託契約書)を開いて、次の4か所を1枚のメモに書き写すことです。全文を読む必要はありません。
- 秘密情報の定義:「書面に秘密と明示したもの」に限定されているか、「知り得た一切の情報」と包括的に書かれているか
- 除外事由:公知の情報、独自に開発した情報、第三者から適法に得た情報などが除外されているか
- 目的外使用の禁止:秘密保持とは別に「本件業務以外に使わない」と書かれていないか(実績公開はここで引っかかることがあります)
- 存続期間:契約終了後も◯年間続くのか、期限が書かれていないのか
包括型の定義で、目的外使用の禁止があり、存続期間が長い。この3つが揃っている案件は、実名での公開は諦めてL3・L4に切り替えたほうが早いです。
ステップ2 原稿の中から「特定できる要素」を洗い出す
書きたい内容をいったんメモに書き出して、そこから特定につながる要素にマーカーを引きます。洗い出す対象は次の8つです。
- 社名・ブランド名・製品名
- 地域(市区町村まで書くと一気に絞られます)
- 業種と、その業種の中での立ち位置(「県内唯一の」など)
- 従業員数・店舗数・売上規模
- 時期(「昨年の展示会に合わせて」は日付と同じ意味を持ちます)
- 金額(予算・単価・削減額)
- 画面キャプチャ・写真・資料の中に写り込んだ情報
- 担当者の氏名・役職・SNSアカウント
マーカーを引いたら、そのうち何個を残すかを決めます。前の章で書いたとおり、残す要素は少ないほど安全です。
ステップ3 案件ごとに匿名化レベルを決める
レベルを決める基準は「相手に頼む手間」と「書ける具体の量」の釣り合いです。次の順で考えると迷いません。
- 相手が自社サイトに実績を載せている会社:L0かL1を狙う。すでに公表に前向きなので許諾が通りやすい
- 相手が上場企業・官公庁・金融機関:広報の審査が入るので時間がかかる。L2以下で先に公開し、許諾が下りたら差し替える
- 相手が競合との関係を気にする業種:最初からL3にして、複数案件を合成した「よくある型」として書く
- そもそも相手に聞ける関係にない案件:L4に振り切って、自社の工程と数字だけで書く
ステップ4 許諾をメールで取る。確認する5項目と文面例
口頭の「いいですよ」を根拠にしないでください。担当者が異動すると根拠が消えます。メールで残し、次の5項目を必ず含めます。
- どこに載せるか(自社サイトの実績ページ、提案資料、SNSなど範囲を明記)
- どう表記するか(正式社名か、ロゴを使うか、担当者名を出すか)
- 数値をどの粒度で出すか(実数か、割合か、「約」を付けるか)
- 掲載期間と、取り下げの連絡先
- Webで公開する以上、検索エンジンや生成AIの回答に引用される可能性があること
5つ目を書いておくのが今の時代の要点です。「サイトに載せる許可」だけを取ると、後日その内容がAIの回答に出てきたときに「そこまで許可していない」と言われる余地が残ります。
件名:導入事例としての掲載可否のご相談(◯◯の件)
△△株式会社
□□様
いつもお世話になっております。[自社名]の[氏名]です。
先日ご一緒した[案件名]について、弊社サイトの実績ページに
事例として掲載させていただけないかご相談です。
掲載を希望する内容は次のとおりです。
・掲載先:弊社サイトの実績ページ、および営業時の提案資料
・貴社の表記:正式社名/ロゴあり(伏せる形でも対応できます)
・掲載する数値:[例:作業時間が約◯割短縮]
・掲載期間:公開日から。取り下げのご連絡をいただければ即日対応します
なお、Web上に公開するため、検索エンジンの検索結果や、
ChatGPTなどの生成AIの回答の中で本文が引用される可能性があります。
その点も含めてご検討いただけますと幸いです。
原稿は事前にお送りし、ご確認いただいてからの公開といたします。
社名を伏せた形(「◯◯業・従業員◯名規模」等)での掲載も可能ですので、
ご都合の良い形をお聞かせください。
[署名]
この文面のポイントは、断られる前に逃げ道(社名を伏せる案)を用意していることです。相手は「全面的に許可するか、断るか」の二択だと断りやすくなります。
ステップ5 公開前チェックと、公開後にAIの回答を確かめる
公開ボタンを押す前に、次の項目をひとつずつ確認します。上から順に見ていけば5分ほどで終わります。
- 本文:特定要素が2つ以内に収まっているか
- 画像:画面キャプチャに顧客名・メールアドレス・ファイルパス・他タブのタイトルが写っていないか
- PDF:配布資料のファイル情報に作成者名や社内のフォルダ名が残っていないか
- 黒塗り:塗りつぶした画像ではなく、ダミーデータで作り直したものに差し替えたか
- 数値:母数・期間・測り方が本文に書いてあるか
- 許諾:メールの返信を保存し、原稿の最終版を相手が確認済みか
もうひとつ、公開前に生成AIに読ませて特定できるかを試す方法があります。原稿から取引先の情報を抜いた状態で、次のような短い指示を出すだけです。作り込んだ長い指示は要りません。
あなたは競合他社の調査担当です。
以下の文章から、書かれている取引先がどこの会社か推測してください。
推測の根拠になった記述を、原文から抜き出して列挙してください。
特定できない場合は「特定できない」と答えてください。
[ここに公開予定の原稿を貼る]
このチェックに使ってよいのは、社名を伏せた公開予定の原稿だけです。契約書そのものや、伏せる前の資料を入力しないでください。入力内容を学習に使わない設定になっているか、利用規約とサービス側の設定を確認したうえで使ってください。
公開して数週間たったら、ChatGPTに「[業種]で[課題]に強い会社は」と質問し、あわせてGoogle検索で同じ内容を検索してAIによる概要に自社が出るかを見てください。出るとしたら事例の中身まで触れられているかも確認します。この確認の型はChatGPTに自社を正しく答えさせるGEO対策で詳しく解説しています。
この章の結論。契約書の抜き書き、特定要素の洗い出し、レベル決め、メール許諾、公開前チェックの5つを1回やれば、2本目以降は同じ型を使い回せます。1本目にかかる時間を惜しまないでください。
公開できる実績が増えると、AI検索での見え方はどう変わるか
変わるのは「自社が出るかどうか」ではなく、「どういう文脈で紹介されるか」です。事例や数値がないサイトは、AIに紹介されるときも会社概要の言い換えで終わります。条件と数字が入った実績があれば、どの規模のどんな課題に対応したのかまで書かれた材料がサイト上に存在することになります。
サービス紹介ページだけでは、読み手が比べるための材料がありません。どの規模のどんな課題に対応したかが書かれた実績を用意しておくことに意味があるのは、そのためです。
特別な対策が必要になるわけではありません。AI向けの隠しファイルを置くより、公開してよい一次情報を1本増やすほうが効きます。検索エンジン向けにやってきたことの延長線上で考えて構いません。
効果を数える方法。10問テストで前後を比べる
成果を感覚で語らずに済むよう、公開の前後で同じ質問を投げて数える方法をおすすめします。手順はシンプルです。
- 見込み客が実際に打ちそうな質問を10問決める(「◯◯業向けの△△を頼める会社」「◯◯の業務を効率化する方法」など)
- 公開前に、ChatGPTとPerplexityに同じ10問を投げ、あわせてGoogle検索でも同じ内容を検索してAIによる概要を確認し、自社名が出た数を記録する
- 事例を公開してから4週間後、まったく同じ10問を投げて数え直す
- 自社名が出た数だけでなく、「事例や数値に触れた回答が何問あったか」も分けて数える
10問中2問だったものが4問になれば、それが今回の実績公開の成果です。生成AIの回答は毎回まったく同じにはならないので、1回の結果ではなく月次で同じ質問を繰り返して傾向を見てください。測る指標の決め方はAI検索の効果測定指標|月次レポートで迷わない3階層の選び方にまとめています。
この章の結論。実績公開の効果は「10問中何問で自社が出たか」で数えられます。公開する前に必ず1回測っておいてください。後からでは比べようがありません。
守秘まわりでよく起きる5つの失敗と、その防ぎ方
ここに挙げるのは、事例や実績を公開する場面でしか起きない失敗です。どれも実際につまずきやすい箇所です。
失敗1 社名を伏せたのに、条件の組み合わせで特定される
「大分県の従業員30名の金属加工業で、昨年10月に導入」と書いた場合、地域・業種・規模・時期の4つが揃っています。同じ商圏でその業種に接している人が読むと、心当たりのある会社が浮かびます。
さらに、自社のニュースページに「◯◯様を訪問しました」という投稿が残っている場合は、事例ページとその投稿を突き合わせられます。片方だけを匿名にしても意味がありません。
防ぎ方は2つです。ひとつは本文の特定要素を減らすこと。もうひとつは、事例を公開する前に自社サイト全体を自社名+取引先名で検索し、過去の投稿やお知らせに実名が残っていないか確認することです。事例ページだけを匿名にしても、他のページが実名なら意味がありません。
失敗2 秘密保持の存続期間を思い込みで判断する
「契約が終わったからもう書ける」と考えて公開したら、契約書に「契約終了後5年間」と書いてあった、というケースがあります。逆に、期限が切れているのに「一生ダメだと思っていた」と何も出せていない会社もあります。
防ぎ方は、ステップ1の抜き書きを案件ごとに残しておくことです。契約書の該当ページを撮って、案件フォルダに「秘密条項メモ」として1ファイル置くだけで済みます。判断が分かれる書き方だった場合は、公開前に弁護士に確認してください。
失敗3 許諾の範囲にAIの引用が入っていない
「サイトに載せてよい」という許諾だけを取って公開したところ、後日その事例が生成AIの回答に要約されて出てきて、取引先から「そこまでは想定していなかった」と連絡が来る。これはAI検索が広がってから増えている、新しいタイプのすれ違いです。
防ぎ方は、ステップ4の文面のとおり、許諾を取る時点で「検索結果や生成AIの回答に引用される可能性がある」と1行書いておくことです。書いておけば、公開前に相手が判断できます。
失敗4 画像とPDFの中に情報が残る
本文はきれいに匿名化したのに、貼った画面キャプチャに顧客名の一覧が写っている。配布用PDFのファイル情報に、社内フォルダのパスと作成者名が残っている。本文だけ気をつけても、こうした添付物から抜けます。
防ぎ方は、黒塗りで隠さず、ダミーデータを入れた画面を撮り直すことです。隠したい情報を含まない画面をはじめから用意しておけば、塗りつぶしが十分だったかを検証する手間もなくなります。PDFは書き出し後にファイル情報を確認してください。
失敗5 数値を丸めすぎて、事実と違う印象になる
「作業時間を30%削減」とだけ書いたものの、実際は1つの工程を3回測っただけの平均だった。この書き方は、相手から「そんなに減っていない」と言われると説明ができません。生成AIに引用された後だと、訂正が届くまでに時間がかかります。
防ぎ方は、削減率だけを単独で書かないことです。「◯◯の工程を10件分測ったところ、平均◯分から◯分になりました(2026年◯月・自社計測)」のように、母数・期間・誰が測ったかをセットで書きます。この形なら、取引先の確認も通りやすくなります。
この章の結論。5つとも、公開前の5分の確認で防げるものばかりです。特に「他のページに実名が残っていないか」と「画像の中に何が写っているか」の2つは、毎回見てください。
事例を出せない業界の妥協点と、承認フローの現実
ここまで読んで「うちはどうやってもL0・L1は無理だ」と感じた方もいると思います。士業、医療、官公庁案件が中心の会社、受託開発、下請けの立場が続く製造業では、実名の事例はほぼ出せません。その前提で何ができるかを率直に書きます。
実名の事例が1本もなくても、一次情報は作れる
実名事例が作れない会社が取れる手は3つあります。どれも取引先の許諾なしで進められます。
- 自社の作業データを出す:「この作業を社内で何件処理して、平均何分だったか」「どの工程でいちばん差し戻しが起きるか」。自社で測った数字なので誰の許可も要りません
- 相談の型を公開する:複数の案件から共通する相談パターンを抜き出し、「よくいただく3つのご相談」として書く。複数案件を合成したものだと本文に明記します
- 自分で調べたデータを作る:取引先ではなく、業界に向けたアンケートや、公開情報を自社で集計した結果を出す。方法は独自アンケート調査でAIに引用される記事の作り方にまとめています
承認フローが重い会社ほど、先に「型」を作っておく
事例を1本公開するのに、担当営業、上長、法務、先方の担当者、先方の広報と、確認が何段階も必要になることがあります。この状態で毎回ゼロから原稿を書くと、公開まで時間がかかり、途中で誰も追わなくなります。
現実的な妥協点は、最初から社名を伏せた形(L2かL3)で書く型を作っておき、許諾が下りた案件だけ後から実名に差し替える運用です。差し替えるのは社名と数値の粒度だけなので、原稿を書き直す必要はありません。公開を止めるのではなく、公開してから上げていく形にします。
弁護士への確認も、全記事に対して行うのは費用的に現実的ではありません。おすすめは、事例記事の「型」(どこまで書くか、許諾文面はどうするか)を1度だけレビューしてもらい、以降はその型に沿って社内で回す進め方です。型から外れる案件が出たときだけ、あらためて相談します。
AI要約から外す設定は、使いどころが限られる
「公開はするけれど、AIの要約には出したくない」という相談をよく受けます。Google検索セントラルのrobots meta タグの指定とスニペットの管理に書かれているとおり、nosnippetやdata-nosnippetで指定できるのはGoogle検索でのスニペットの表示範囲です。ChatGPTなど他社の生成AIがこの指定をどう扱うかは、各サービスの公式ドキュメントで確認してください。実際の書き方はnosnippetの使い方|AI要約から外す範囲指定とCTRの注意点で解説しています。
ただし、これをLLMO対策の主役にするのはおすすめしません。スニペットが出ないと検索結果での見え方が弱くなり、クリックされにくくなるからです(順位の評価が下がるわけではありません)。使いどころは、期間限定の価格表や、事情があって一時的に露出を抑えたい範囲に限ります。守秘が心配なら、設定で隠すのではなく、そもそも書かない判断のほうが確実です。
なお、社員が書く記事を実名にするか匿名のままにするかも、同じ「どこまで出すか」の判断です。こちらは社員ブログの匿名運用を実名化する判断基準で扱っています。
AIに任せてよいのは、この記事で紹介した特定リスクの洗い出しや、原稿の匿名化の抜けを探す作業までです。どこまで公開するかの経営判断と、契約書の解釈は人がやります。
この章の結論。実名事例が出せない会社でも、自社データ・相談の型・独自調査の3つで一次情報は作れます。承認が重い会社ほど、匿名版を先に公開して後から上げる運用に切り替えてください。
LLMO対策と守秘についてよくある質問
取引先の社名を出さずに「大分県の従業員30名の製造業」と書くのは大丈夫ですか
地域・業種・規模の3つが揃っていて、同じ商圏の人には心当たりが浮かぶ書き方です。要素は組み合わせるほど絞り込みの手がかりになるので、少ないほど安全です。この例なら「九州の製造業」または「従業員30名規模の製造業」まで落とすと安全です。
秘密保持契約の期限が切れていれば、当時の案件を実名で書いてよいですか
期限が切れていても、目的外使用の禁止条項が別に残っていることがあります。また契約上は書けても、相手との関係を考えると一報を入れたほうがよい場面がほとんどです。契約書の該当条項を確認したうえで、判断が分かれる書き方なら弁護士に確認してください。
発注元がすでにプレスリリースで公表している案件なら、実績に書けますか
公表済みの範囲であれば書ける可能性は高いですが、書けるのは「相手が公表した内容と同じ範囲まで」です。相手が触れていない金額・工程・体制を足すと、その部分は新たな開示になります。公表されたページを開いて、書かれている事実だけを使ってください。
一度公開した事例を、後から生成AIの回答に出ないようにできますか
ページを削除したあと、その内容が各生成AIの回答にいつまで残るかは、利用するサービスごとの仕様によります。削除の反映がどう扱われるかは、各サービスの公式ドキュメントで確認してください。いずれにしても、公開前に許諾の範囲を書面で確かめておくほうが確実な守り方になります。
実績を公開する前に、社内の誰が最終確認するべきですか
その案件の担当者と、契約書を持っている人の2人が最低限です。担当者は事実関係を、契約担当は秘密条項と許諾メールを見ます。広報だけで完結させると、契約書を見ないまま公開して事故になりやすいです。
まずは1本、許諾なしで書ける実績から
今日できる最初の一歩は、直近で完了した案件をひとつ選び、この記事のステップ2にある8つの要素のうち、原稿に残すものを絞り込むことです。5分で決まります。そのうえで、全体の進め方をつかみたい方はGEO対策のやり方を7手順で解説|AIに引用される会社の始め方を続けて読んでみてください。
ここまで読んで、「線引きは分かったけれど、社内で誰がどう判断するかを決めるところで止まりそう」と感じた方は、事例記事から進めるGEO対策の支援もあります。いま出せる情報と出せない情報を一緒に洗い出して、1本目の事例記事の型を決めるところからお手伝いできます。いまの状況をうかがうだけでも大丈夫なので、気軽に声をかけてください。
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