ソーシャルリスニングの代行|任せる範囲の分担表と月次報告項目
この記事の要点
- 代行に任せるのは設定・収集・一次判定・報告。対応の判断は社内に残る
- 費用は監視する時間帯と目視確認の量で変わる。見積もりは内訳で比較
- 月次報告はネガティブの中身と連絡までの時間を見る。確認表と指定書は本文に
ソーシャルリスニングの代行で任せられるのは、キーワードの設定、投稿の収集、ポジティブ・ネガティブの一次判定、緊急時の連絡、月次報告までです。見つかった投稿に返信するか、商品や接客を改めるか、弁護士に相談するかは社内で判断します。見積もりでは、ツール代に加えて、「何時から何時まで、どこまで目視で確認するか」で差が出やすくなります。
この記事は、自社名や商品名がSNSでどう語られているかを把握したいものの、社内に担当者がいない経営者・広報責任者の方に向けたものです。読み終わる頃には、複数社の見積もりを同じ条件で並べて比べ、月次報告で何を書いてほしいかを代行会社に指定できるようになります。
扱うのは、外注するかどうかを判断するために必要な範囲です。ツールを選んで自社で分析する方法は、ソーシャルリスニングのツールの選び方とAI分析の進め方で解説しています。
Contents / 目次
ソーシャルリスニングの代行で任せる範囲と社内に残る作業
代行会社が担当するのは、多くの場合、声を「見つけて知らせる」ところまでです。契約によっては、返信の文案作成や投稿まで含むこともあるので、見積もりで範囲を確かめてください。見つかった声を受けて何をするかは、代行会社ではなく自社が決めます。
ソーシャルリスニングとは、SNSやブログ、口コミサイトに投稿された自社・商品・業界についての声を集めて分析し、商品や広報の判断に使う取り組みです。SNS監視(モニタリング)とは、そのうち批判的な投稿や炎上の兆しを早く見つけて知らせることに絞ったサービスを指します。
同じ「代行」でも、監視だけなのか分析まで含むのかで、見積もりの中身が変わります。
作業ごとの分担を表にしました。提案書や契約書で、それぞれの作業がどちらの担当になっているかを確かめてください。
| 作業 | 代行会社の担当 | 社内に残る作業 |
|---|---|---|
| 監視の目的と対象を決める | 案を出す | 何を知りたいかを最終決定する |
| キーワードと除外語の設定 | 設定と毎月の調整 | 社名の略称・旧称・表記ゆれの一覧を作る |
| 投稿の収集 | ツールで収集する | ツール費用が月額に含まれるかを確認する |
| ポジネガ判定と分類 | AI判定と目視での確認 | 分類の基準を承認する |
| 緊急時の連絡 | 契約した時間帯に検知して連絡する | 連絡を受けて判断する担当者を決める |
| 返信・謝罪・公式発表 | 文案の作成まで(契約による) | 出すかどうかと内容を決める |
| 誹謗中傷への対応 | URL・日時・画面の保存と報告 | 弁護士に相談する |
| 月次報告 | 作成と説明 | 改善を担う部署と期限を決める |
表の「社内に残る作業」の列が埋まらないまま契約すると、代行会社から連絡が来ても社内で動けず、月次報告も読まれないままになります。社内に残るのは作業量ではなく、判断の役割です。
自社で見るほうが合う条件とAIでの分類手順
自社名での言及が月に数十件以下で、営業時間外にすぐ動く必要がないなら、代行を契約する前に自社で1か月試す方法があります。週に1回、X(旧Twitter)とGoogleで社名・商品名・略称を検索し、集めた投稿を生成AIに分類させます。
生成AIに貼り付ける前に、アカウント名とプロフィールのURLを消してください。次の指示文は出発点のたたき台です。あとはAIとやり取りしながら、自社の分類に合わせて調整してください。
あなたは広報担当のアシスタントです。
次の投稿は[社名・商品名・略称]で検索して集めたものです。
1. 自社と関係のない投稿を除き、除いた理由を1行で書いてください
2. 残りを「商品」「接客」「価格」「予約・配送」「その他」に分け、
ポジティブ・ネガティブ・どちらでもない、のいずれかを付けてください
3. 皮肉や冗談の可能性がある投稿は「要確認」としてください
[ここに投稿を貼り付け。アカウント名は消しておく]
AIの分類のうち「ネガティブ」と「要確認」は、必ず元の投稿を開いて確かめます。言葉だけでは褒めているように読めても、実際は不満を伝えている投稿を、AIが読み違えることがあるためです。
1か月続けて件数と中身を把握できれば、代行に依頼するときも、任せる範囲を具体的に伝えられます。そもそもSNS・ホームページ・Googleマップのどこに力を入れるかが決まっていない場合は、SNSを含むWeb集客の相談窓口で、どこから始めるかを先に決める進め方もあります。
この章で押さえるのは、代行に任せられるのは「見つけて知らせる」まで(契約によっては返信の文案作成まで)で、対応を決めるのは自社、という線引きです。言及が少ない会社は、自社で1か月試してから任せる範囲を決められます。
ソーシャルリスニングを外注する費用が変わる5つの要素
ソーシャルリスニングを外注する費用は、ツールの利用料に加えて、監視する時間帯と目視で確認する量で見積もりの差が出やすくなります。代行会社ごとに料金の組み方が違うため、金額は同じ条件で見積もりを取って比べます。
見積もりの金額を左右する要素は次の5つです。
| 要素 | 費用が上がる条件 | 見積もり依頼で伝えること |
|---|---|---|
| 監視する時間帯 | 夜間・土日祝を含む、24時間365日 | 平日日中だけか、夜間は緊急時の連絡だけか |
| 対象の媒体 | X・Instagram・TikTok・YouTube・掲示板・口コミサイトと増える | 顧客が書き込む媒体と優先順位 |
| キーワードの数と調整 | 商品が多い、社名が一般的な単語と同じ | 社名・商品名・略称の一覧と除外したい語 |
| 目視で確認する件数 | ヒット数が多く、全件を目視する | 目視はネガティブと要確認だけか、全件か |
| 報告の深さ | 定性分析、競合との比較、報告会の開催 | 報告を誰が、何を決めるために読むか |
目視確認の時間を仮の数字で見積もる方法
監視部分の費用は、確認にかかる時間から見当をつけられます。次の数字はすべて説明のための仮の値です。
- ヒット数を1日200件とし、関係のない投稿を除いた150件を目視する
- 1件の確認に10秒かかるとすると、1日25分になる
- 30日続けると、月におよそ12時間半になる
この時間に代行会社の時間単価を掛けたものが、目視確認部分の費用の目安です。
監視する時間帯も同じ考え方で比べられます。平日9時から18時の監視は週45時間、24時間365日なら週168時間で、待機する時間はおよそ3.7倍になります。夜間は投稿が少なくても、誰かが待機している時間の費用がかかります。
夜間の監視が必要かは、営業時間外の投稿がきっかけで苦情や問い合わせが増えたことがあるかで判断できます。そうした経験が無ければ、夜間は言及件数が急に増えたときだけ通知を受け、確認は翌朝にする組み方もあります。
見積書で確かめる内訳
- 初期設定費:キーワードと除外語の調整が、何か月分含まれるか
- ツール費:月額に含まれるか別請求か。値上げがあるときの条件
- 件数の上限:ヒット数が上限を超えたときの追加料金
- 緊急連絡:電話かメールか。回数や時間帯の制限
- 報告:月次報告書の形式と、報告会の回数
- 契約期間:最低契約期間と、解約時のデータの扱い
この章で押さえるのは、見積もりを合計金額で比べず、監視時間帯・目視の範囲・報告の深さをそろえてから比べることです。条件がそろっていない見積もりは、安いほうが範囲も狭いということがあります。
月次報告で見る7項目と代行会社への指定書
月次報告で見るべきなのは、言及件数の増減よりも、ネガティブな投稿の中身と、検知から連絡までにかかった時間です。件数はキャンペーンやニュース、関係のない投稿の混入でも増減するため、件数だけでは評判が良くなったのか悪くなったのか判断できません。
報告書を受け取ったら、次の7項目がそろっているかを確認してください。
| 項目 | 何が分かるか | 報告書で確かめる点 |
|---|---|---|
| 言及件数の推移 | 話題の量の変化 | 増減の理由が書かれているか |
| ポジネガの比率 | 評判の傾向 | AI判定を目視で確かめた件数と一致した割合 |
| ネガティブ投稿の分類 | 改善を担う部署 | 商品・接客・価格などに分け、代表的な投稿の要約があるか |
| 検知から連絡までの時間 | 緊急時の体制が機能したか | 契約で決めた時間内だったか |
| 対応した投稿と結果 | 返信や改善の効果 | 対応後に言及がどう変わったか |
| キーワードの変更履歴 | 集計の前提 | 変更した月と理由 |
| 競合や業界の話題 | 自社の位置 | 自社と同じ条件で集計しているか |
AIのポジネガ判定の確かめ方
ポジティブ・ネガティブの判定にAIを使う代行会社やツールもあります。AIの判定は、毎月一部を目視で確かめてもらい、その結果を報告書に載せてもらうと信頼できるかを判断できます。
たとえば「待ち時間2時間。さすがですね」という投稿は、言葉だけ見ると褒めていますが、実際は不満です。こうした投稿を仮に100件抜き出して目視で判定し直し、85件がAIと一致すれば一致率は85%です。一致率が月ごとに下がっているなら、判定の設定を見直すよう依頼します。
報告を受けて社内で決めること
月次報告は、読んだあとに改善を担う部署と期限が決まって、はじめて役に立ちます。ネガティブ投稿の分類ごとに、商品なら開発、接客なら店舗責任者、予約なら受付というように、受け取る担当を先に決めておきます。
報告を社内で広く共有した例として、ベルシステム24が公開しているクレディセゾンの導入事例があります。 SNSの声を分析したレポートを要約し、その内容を約1,000人の社員に共有しています。 事例のタイトルは「ソーシャルリスニングを次のアクションに繋げ 『お客様の声が届くブランド』を実現する」です。
批判のうち、改善につなげる意見と相手にしない攻撃の分け方は、SNSの批判を3つの基準で仕分ける方法で解説しています。
見積もり依頼に添える月次報告の指定書
報告書の形式を契約前に指定しておくと、代行会社を比べるときの基準にもなります。次の指定書は、そのまま見積もり依頼に添付できます。[ ]の中を自社の内容に書き換えてください。
【月次報告の指定書】
対象期間:毎月1日〜末日
提出日:翌月[5]営業日まで
読む人:[代表・広報責任者・店舗責任者]
■1ページ目に書くこと
・今月、社内で判断が必要な投稿(件数、要約、元の投稿のURL)
・ネガティブ投稿の分類別の件数(商品/接客/価格/予約・配送/その他)
・緊急連絡の件数と、検知から連絡までの時間
■2ページ目以降に書くこと
・言及件数の推移と、増減の理由
・AI判定を目視で確かめた件数と、一致した割合
・キーワードと除外語の変更内容と理由
・競合[社名]の言及件数と主な話題(自社と同じ条件で集計)
■個人情報の扱い
・報告書にアカウント名は載せない。必要なときは投稿のURLのみ
・収集データの保存期間は[12か月]。契約終了時に削除する
この章で押さえるのは、報告書の1ページ目に「今月、社内で判断が必要なこと」を書かせることです。そうすれば、経営者が数分読めば、動くかどうかを決められます。
SNS監視の代行を契約する前の確認事項
SNS監視の代行を契約する前に社内で決めておくのは、どの名前を拾うか、夜間に見つかったら誰が判断するか、集めた投稿をどう扱うかです。これが決まらないまま始めると、費用をかけても必要な投稿を拾えなかったり、連絡を受けても動けなかったりします。
表記ゆれと略称を集めたキーワード表
社名の正式名称だけを登録すると、略称やひらがな表記、打ち間違いで書かれた投稿を拾えません。SNSの投稿では、「株式会社」を付けない書き方や、商品名を縮めた呼び方が使われることがあります。
代行会社に依頼する前に、次の欄を埋めた一覧を社内で作って渡してください。
- 正式名称:社名、商品名、サービス名
- 略称・通称:お客様や取引先が実際に使う呼び方
- 表記の違い:ひらがな、カタカナ、英字、全角と半角
- 打ち間違い:読み間違えやすい漢字の誤表記
- 旧名称:旧社名、販売を終えた商品名
- 関連する固有名詞:代表者名、店舗名、公式アカウント名、ハッシュタグ
営業や受付の担当者に「お客様は自社を何と呼んでいるか」を尋ねると、社内の資料に無い呼び方が見つかります。
一般名詞と同じ社名の除外設定
社名や商品名が一般的な単語と同じだと、関係のない投稿が大量に混ざり、件数もポジネガの比率も当てにならなくなります。たとえば「さくら」という社名なら、花や人名の投稿まで集計されます。
この場合は、社名と業種・地名・商品名を組み合わせた条件で検索し、「花見」「満開」のような語を除外語に登録します。初月の報告書に、ヒットした件数と除外した件数を載せてもらうと、設定が適切かを判断できます。除外した割合が月を追っても下がらないなら、キーワードの組み方を見直す時期です。
夜間に検知したときの連絡ルール
夜間や休日も監視する契約にしても、連絡を受けて判断する担当者が決まっていなければ、翌朝まで誰も動けません。連絡がメールで担当者の受信箱に届くだけの形は避け、重大度ごとに連絡先と方法を決めます。
次の表は連絡ルールの例です。時間や連絡先は、自社の体制に合わせて契約で決める値です。
| 重大度 | 投稿の例 | 連絡先と方法 | 連絡までの時間(例) |
|---|---|---|---|
| 緊急 | 事故・健康被害・個人情報の流出を示す投稿、急な拡散 | 代表と広報責任者に電話 | 検知から30分以内 |
| 要注意 | 接客や品質への具体的な苦情 | 広報責任者にチャット | 当日中 |
| 通常 | 感想、質問、一般的な不満 | 月次報告に記載 | 翌月の報告時 |
ソーシャルリスニングでできるのは、批判的な投稿の広がりに早く気づくところまでで、拡散そのものを止めることはできません。気づいたあとに社内で最初に決める手順は、SNS炎上時の初動フローとマニュアルの作り方で解説しています。
収集した投稿の個人情報と各SNSの利用規約
収集した投稿には、アカウント名、プロフィール、投稿内容など、特定の個人を識別できる情報が含まれることがあります。公開された投稿の扱いも含め、個人情報保護法上の扱いは個人情報保護委員会が公表しているガイドラインで確認し、社内の個人情報の取扱いルールに合わせてください。
契約では、次の点を書面で決めておきます。
- 保存期間:収集データを何か月保存するか
- 報告書への記載:アカウント名を載せるか、投稿のURLだけにするか
- 再委託:代行会社がさらに別の会社へ作業を委託するか
- 契約終了時:データの削除方法と、削除したことの報告
- 社内での共有範囲:報告書を読める役職と部署
データの集め方も確認が必要です。X(旧Twitter)の利用規約やInstagramの利用規約など、各SNSの利用規約には、自動的な手段によるデータ収集についての定めがあります。代行会社やツールが、各SNSが認める方法でデータを取得しているかを質問し、説明を受けてください。鍵アカウントや非公開の投稿が対象外になることも、あわせて確認します。
誹謗中傷への法的対応と代行会社の担当範囲
誹謗中傷にあたる投稿の削除請求や、投稿者を特定するための手続きは、弁護士に相談する領域です。代行会社が担当するのは、投稿の発見、URL・日時・画面の保存、報告までと、契約書で分けておきます。
画面を保存するときは、投稿のURL、投稿日時、アカウント名、投稿の全文が1つの画像に入るようにします。投稿は削除されることがあるため、見つけた時点の記録が弁護士に相談するときの材料になります。
契約前に代行会社へ送る8つの質問
見積もりを依頼するときに次の質問を送ると、各社の範囲を同じ条件で比べられます。
- 監視する時間帯と、夜間・休日の連絡方法を教えてください
- どのSNS・媒体の投稿を、どこまで遡って取得できますか。取得の方法も教えてください
- ポジネガの判定はAIですか、目視ですか。目視で確かめる件数は月に何件ですか
- キーワードと除外語の調整は、初期費用に何か月分含まれますか
- ヒット件数に上限はありますか。超えた場合の費用を教えてください
- 返信文や公式発表の文案づくりは、範囲に含まれますか
- 収集データの保存期間と、契約終了時の削除方法を教えてください
- 月次報告の見本をいただけますか
この章で押さえるのは、拾う名前の一覧、夜間の連絡ルール、データの扱いを社内で決めてから見積もりを取ることです。この3つが決まっていれば、代行会社の回答を同じ条件で比べられます。
ソーシャルリスニングの外注でよくある質問
SNS監視の代行とソーシャルリスニングの代行は、同じサービスですか?
重なる部分はありますが、目的が違います。SNS監視は、批判的な投稿や炎上の兆しを早く見つけて知らせることが中心で、監視する時間帯が費用を左右します。ソーシャルリスニングは、集めた声を商品や広報の判断に使う分析が中心です。見積もりでは、どちらの比重が大きいかを確認してください。
言及が月に数件しかない会社でも、ソーシャルリスニングを外注する意味はありますか?
分析まで依頼する意味は小さいことがあります。件数が少ないと傾向を読み取れないためです。この場合は、週1回の自社での検索で声を集め、緊急時の連絡だけを代行会社に依頼する組み方があります。新商品の発売やキャンペーンの前後だけ、期間を決めて依頼する方法もあります。
代行会社を変更すると、過去の言及データは引き継げますか?
契約の内容によります。解約時にデータをどの形式で何か月分受け取れるかが契約に書かれていないと、過去の推移と比べられなくなります。契約前に確認し、受け取ったあとの保存期間と削除のルールも社内で決めておきます。個人情報を含むデータなので、社内の取扱いルールに沿って保管してください。
社員の個人アカウントの投稿も、監視の対象にしてよいですか?
社員のプライバシーに関わるため、目的と範囲を先に決めることが前提です。対象にする場合は、何のために、どの投稿を確認するかを社内規程に書き、社員に知らせてから始めます。規程の作り方は社員の発信を守るSNSガイドラインの作り方で解説しています。法的な判断が要るときは専門家に確認してください。
今日できる最初の一歩として、Xの検索窓に社名と略称を入れ、直近1週間の投稿のうち自社に関係するものが何件あり、関係のない投稿が何件混ざるかを数えてみてください。その数が、自社で見るか代行に依頼するかの判断材料になります。投稿の運用もあわせて外注するか検討している方は、SNS運用代行で依頼できる業務と自社に残る仕事の線引きも参考になります。
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