ソーシャルリスニングをAIで仕組み化|広報に活かす5ステップ
この記事の要点
- 集めるのは自動、分けるのはAI、決めるのは人
- コピペで動く収集スクリプトとAIへの指示文を掲載
- AIの分類は皮肉と同名他社で外れる。確認箇所は5つ
ソーシャルリスニングをAIで仕組み化するなら、収集は自動、分類はAI、判断は人という分担で、週1回の流れを作るのが現実的です。無料のGoogleアラートとGoogleスプレッドシート、対話型AIがあれば始められます。専用ツールが必要になるのは、X(旧Twitter)での言及が多い場合や、画像の中まで拾いたい場合です。
自社名や商品名がネットでどう書かれているかを広報に活かしたいけれど、毎日検索する時間はない。そんな中小企業の広報担当者に向けた記事です。読み終わる頃には、監視するキーワード、分類のルール、週1回の報告の型が決まり、翌週から回し始められる状態を目指します。
炎上が起きたあとの初動は、この記事では扱いません。そちらはSNS炎上対策|企業の初動フローとマニュアルの作り方で解説しています。
Contents / 目次
ソーシャルリスニングをAIで仕組み化する全体像と役割分担
仕組み化の中身は、「集める」「分ける」「確かめる」「渡す」の4工程を毎週、「見直す」を月1回、決まった人が回せる形にすることです。AIが担うのは、このうち「分ける」工程の下書きだけです。
ソーシャルリスニングとは、SNSやWeb上に書かれた自社・商品・業界についての声を集めて分析し、広報や商品の判断に使う取り組みです。タイムラインを眺める「見る」とは違い、何を拾うかを先に決めて、同じ基準で毎回分けるのが特徴です。
中小企業の広報で回すなら、工程ごとの担当は次の表のように分けます。
| 工程 | やること | 担当 | 頻度 |
|---|---|---|---|
| 集める | Googleアラートで拾った記事をスプレッドシートに自動で追記する。Xは保存した検索条件で目視する | スクリプト(自動)+広報担当 | 自動は6時間ごと、Xは週1回 |
| 分ける | 1件ずつ「対応が要る・広報に使える・社内に共有・記録のみ」の4つに分け、理由を付ける | AI(下書き) | 週1回 |
| 確かめる | AIの分類を元の投稿と見比べ、皮肉・同名他社・画像の中身を広報担当が判断する | 広報担当 | 週1回 |
| 渡す | 対応が要るものは当日中に責任者へ、それ以外は週次報告で各部署へ回す | 広報担当 | 当日/週1回 |
| 見直す | キーワードと除外語、分類の定義を足したり外したりする | 広報担当+責任者 | 月1回 |
この表で難しいのは、実は「分ける」ではなく「集める」と「見直す」です。キーワードの選び方を誤ると、AIに渡す前の段階で無関係な記事が大半を占め、分類の精度以前の問題になります。
収集の設定や分類ルールづくりを社内だけで進めるのが難しい場合は、AI導入支援・DX支援で、AIに任せる作業と担当者が判断する作業を分け、業務専用の入力フォームと社員向け手順書まで作る進め方もあります。
この章の結論。AIに任せるのは分類の下書きだけで、集め方と最終判断は広報担当が決めます。次の章の5ステップは、この表の上から順に作っていく手順です。
ソーシャルリスニングを仕組み化する5ステップ
手順は次の5つです。
- 目的と渡し先を決める
- キーワードを絞る
- 収集を自動にする
- AIで分ける
- 広報担当が確かめて回す
最初の2ステップは紙とペンで済み、3ステップ目で初めてツールを触ります。
ステップ1。何のために聴くかと、声を誰に渡すかを決める
最初に決めるのは、集めた声を何に使い、誰に渡すかです。ここが決まっていないと、集めた記事が溜まるだけで、誰も読まない表ができあがります。
広報で使う目的は、次の3つから選ぶと決めやすくなります。
- 誤情報・苦情の早期把握:事実と違う情報や不満が広がる前に気づき、責任者に知らせる
- 広報ネタ・取材のきっかけ:第三者の紹介記事や好意的な投稿から、発信の材料を見つける
- 商品・営業への声の共有:要望や使いにくさの声を、担当部署に回す
目的を選んだら、次の1文を埋めて、責任者と共有しておきます。
[自社名]について書かれた声を週1回集める。
[誤情報・苦情]は当日中に[広報責任者の名前]へ知らせる。
[要望・使いにくさの声]は週次報告で[営業部・商品担当]へ回す。
[好意的な紹介]は広報の発信候補として記録する。
この1文があると、あとでAIに分類を頼むときも「どの分類が誰向けか」をそのまま指示に使えます。
ステップ2。監視キーワードを5〜10語に絞る
監視するキーワードは、自社にしか当てはまらない固有の語を中心に5〜10語に絞ります。業界の一般語を入れすぎると、収集件数が増えるだけで自社の声が埋もれます。
次の表を埋めていくと、10語前後に収まります。
| 種類 | 入れる語の例 | 入れる理由 | 除外語の例 |
|---|---|---|---|
| 社名 | 正式名、略称、ひらがな・カタカナ読み、よくある誤記 | 略称や誤記で書かれた投稿は、正式名だけでは拾えない | 同名の別会社の地名や業種 |
| 主力商品・サービス名 | 商品名、型番、サービスの通称 | 社名を書かずに商品名だけで語られる声がある | 一般名詞と重なる場合の組み合わせ語 |
| 代表者名 | 代表者のフルネーム | 取材記事や登壇の紹介で名前だけが出る | 同姓同名の著名人の関連語 |
| 業界の話題語 | 2〜3語まで | 業界全体の動きから発信のきっかけを拾う | 求人・広告の定型語 |
| 競合名 | 1〜2社まで | 比較されている場面で自社の名前が出るかを見る | 競合自身の告知 |
社名が一般的な単語と重なる場合は、単独で登録しません。「[社名] [地名]」「[社名] [業種]」のように、組み合わせで登録します。
ステップ3。Googleアラートとスプレッドシートで収集を自動にする
Web上の記事やブログは、Googleアラートを使えば無料で自動収集できます。Googleアラートは、登録したキーワードについて新しい検索結果が見つかると知らせてくれるGoogleの無料サービスです(Googleアラートのヘルプ)。SNSの投稿は、このステップの後半で説明するXの検索で別に確かめます。
メールで受け取ると読まれずに溜まるので、配信先をRSSフィード(更新情報を機械が読める形で配信する仕組み)にして、スプレッドシートに自動で追記します。設定の流れは次のとおりです。
- Googleアカウントにログインした状態でGoogleアラートを開き、ステップ2のキーワードを1つ入力する
- オプションを開き、頻度・言語(日本語)・地域・件数を選ぶ
- 配信先をRSSフィードにして、アラートを作成する
- 一覧に出るRSSのアイコンからフィードのURLをコピーする
- キーワードの数だけ1〜4を繰り返す
オプションの名称や配置は変わることがあります。配信先の選択肢も含め、見つからないときはGoogleアラートの画面で現在の表示を確認してください。
次に、記録用のスプレッドシートを1つ作り、メニューの拡張機能からApps Scriptを開いて、下のコードを貼ります。フィードのURLを書き換え、fetchAlertsを1回実行して動作を確かめたら、createTriggerを1回だけ実行します。以降は6時間ごとに自動で追記されます。
/**
* Googleアラートの RSS を、スプレッドシートに自動で追記するスクリプト
* 前提
* - Googleアラートの配信先を「RSSフィード」にして、フィードのURLを控えておく
* - 記録用スプレッドシートの[拡張機能]→[Apps Script]に貼って使う
* - 初回の実行時に Google アカウントの承認画面が出るので、内容を確認して許可する
*/
// [ここを自社の値に変更]キーワードごとのフィードURL(キーワードの数だけ行を増やす)
const FEEDS = [
{ keyword: '自社名', url: 'https://www.google.com/alerts/feeds/XXXXXXXX/YYYYYYYY' },
{ keyword: '主力商品名', url: 'https://www.google.com/alerts/feeds/XXXXXXXX/ZZZZZZZZ' },
];
// [ここを自社の値に変更]書き込むシートの名前
const SHEET_NAME = '収集';
function fetchAlerts() {
const ss = SpreadsheetApp.getActiveSpreadsheet();
let sheet = ss.getSheetByName(SHEET_NAME);
if (!sheet) {
sheet = ss.insertSheet(SHEET_NAME);
sheet.appendRow(['取得日時', 'キーワード', '公開日時', 'タイトル', 'URL', '抜粋', 'ID', '分類', '確認者', 'メモ']);
}
// すでに記録した ID を集めて、同じ記事を二重に追記しないようにする
const lastRow = sheet.getLastRow();
const known = new Set(
lastRow > 1 ? sheet.getRange(2, 7, lastRow - 1, 1).getValues().map(r => r[0]) : []
);
const ns = XmlService.getNamespace('http://www.w3.org/2005/Atom');
const now = new Date();
const rows = [];
FEEDS.forEach(feed => {
try {
const res = UrlFetchApp.fetch(feed.url, { muteHttpExceptions: true });
if (res.getResponseCode() !== 200) {
console.warn(feed.keyword + ' の取得に失敗しました。ステータス ' + res.getResponseCode());
return;
}
const root = XmlService.parse(res.getContentText()).getRootElement();
root.getChildren('entry', ns).forEach(entry => {
const id = entry.getChildText('id', ns);
if (!id || known.has(id)) return;
known.add(id);
const linkEl = entry.getChild('link', ns);
const href = linkEl && linkEl.getAttribute('href') ? linkEl.getAttribute('href').getValue() : '';
rows.push([
now,
feed.keyword,
entry.getChildText('published', ns) || '',
cleanText(entry.getChildText('title', ns)),
extractUrl(href),
cleanText(entry.getChildText('content', ns)).slice(0, 200),
id,
'', '', ''
]);
});
} catch (e) {
// 1つのフィードで失敗しても、ほかのフィードは続けて処理する
console.error(feed.keyword + ' の処理でエラーが出ました。' + e);
}
});
if (rows.length > 0) {
sheet.getRange(sheet.getLastRow() + 1, 1, rows.length, rows[0].length).setValues(rows);
}
}
// タイトルや抜粋に入っている <b> などのタグと、よく出る文字参照を外す
function cleanText(text) {
return String(text || '')
.replace(/<[^>]+>/g, '')
.replace(/ /g, ' ')
.replace(/"/g, '"')
.replace(/'/g, "'")
.replace(/&/g, '&')
.trim();
}
// Google を経由するリンクから、元のページの URL だけを取り出す
function extractUrl(href) {
const m = String(href).match(/[?&]url=([^&]+)/);
return m ? decodeURIComponent(m[1]) : href;
}
// 1回だけ実行する。6時間ごとに fetchAlerts を動かすトリガーを作る
// ※2回以上実行するとトリガーが重複するので、作り直すときは既存のトリガーを消してから
function createTrigger() {
ScriptApp.newTrigger('fetchAlerts').timeBased().everyHours(6).create();
}
つまずきやすいのは次の3点です。
- URLがメール用のまま:配信先がメールのアラートにはフィードURLがありません。配信先をRSSフィードに変えてからURLをコピーします
- 1件も追記されない:アラートを作った直後は、まだ新しい記事が無いことがあります。数日置いてからもう一度fetchAlertsを実行します
- トリガーが二重に動く:createTriggerを2回実行すると、同じ処理が2本動きます。同じ記事はID列で照合して二重に追記しないようにしてありますが、処理が無駄に2回走るので、トリガーの一覧で1本だけになっているか確かめます
Xの投稿は、Xの検索で別に確かめます。週1回、Xの検索で次のような条件を入れて検索し、保存しておきます。
"[自社名]" OR "[略称]" OR "[読み]" -from:[自社の公式アカウントID] lang:ja since:2026-09-18
この条件は、自社名・略称・読みのいずれかを含む日本語の投稿のうち、自社の公式アカウント以外が指定日以降に書いたものを探す、という意図で書いています。検索条件の書き方は変わることがあるため、使う前と、結果が想定と違うときはXのヘルプ(高度な検索)で確認してください。見つけた投稿は、URLと本文を手でスプレッドシートの同じシートに足します。
X上の投稿をAIに要約させる場合も、要約に出てきた投稿は必ず元の投稿を開いて、日付と中身を確かめてから記録します。
ステップ4。AIで4つに分類し、理由を1文ずつ付けさせる
週1回、その週に追記された行のうち「タイトル・URL・抜粋」の3列だけをコピーし、対話型AIに貼って分類させます。ClaudeやChatGPTが使えます。
AIへの指示は、次の短いたたき台から始めれば十分です。あとはAIと対話しながら、自社の業種や分類の定義に合わせて詰めてください。
あなたは[業種を入力]の会社の広報担当の補助です。
次の表は、今週集めた自社についての記事と投稿です。
1行ずつ、次の4つのどれかに分類し、理由を1文で書いてください。
A 対応が要る(事実と違う情報、苦情、安全や法令に関わる内容)
B 広報に使える(第三者による紹介、好意的な話題、取材のきっかけ)
C 社内に共有する(商品やサービスへの要望・不満・他社との比較)
D 記録のみ(同名の別会社、自社の告知の再掲、関係のない内容)
判断に迷う行は「要確認」とし、どこで迷ったかを書いてください。
元の文に無い事実は足さないでください。
出力は「番号・分類・理由・要確認」の4列の表にしてください。
[ここに今週の行を貼る]
感情分析(ポジティブ・ネガティブの判定)ではなく、渡し先で分ける4分類にしているのが要点です。ポジティブかネガティブかが分かっても、次に誰が何をするかは決まりません。
入力と出力のイメージは次のとおりです。
| 番号 | 貼った抜粋(例) | AIの分類 | AIの理由(例) |
|---|---|---|---|
| 1 | [自社名]の新サービス、説明会で聞いた料金と違う気がする | A | 料金について誤解が広がる可能性がある。事実の確認が要る |
| 2 | 地元の製造業特集で[自社名]が紹介されていた | B | 第三者メディアによる紹介で、発信の材料になる |
| 3 | [自社名]の問い合わせフォーム、スマホだと送信ボタンが押しにくい | C | Webサイトの使い勝手への不満。Web担当に共有する |
| 4 | [自社名と同じ名前の飲食店]のランチがおいしかった | D | 同名の別事業者についての投稿 |
貼る前に、メモ列や社内の対応状況は外しておきます。公開されている投稿でも、会社として入力してよい範囲は先に決めておく必要があります。入力ルールの決め方はChatGPTに機密情報を貼る前に|SNS担当の入力ルール3基準で解説しています。
ステップ5。広報担当が確かめて、当日の対応と週次報告に回す
AIの分類は、そのまま使わずに広報担当が元の投稿と見比べます。特に分類Aは、AIの判定に関係なく全件を広報担当が読みます。
AIの分類が外れやすいのは、次の5か所です。
- 皮肉・反語:「さすが[自社名]、対応が早いですね(3週間待ち)」のような文は、好意的な紹介に分類されやすい
- 略称・社内の呼び名:業界内だけで通じる略称は、AIが別の会社や一般語と取り違える
- 同名の別会社:抜粋だけでは区別できないことがあるため、URLを開いて所在地や業種を確かめる
- 画像・動画の中身:抜粋に出ない写真の中の商品や看板は、AIが見ていない。元の投稿を開く
- 日付:古い記事が再配信されて拾われることがある。公開日時の列で、いつの話かを確かめる
確かめた結果は、次の基準で渡します。
| 状況 | 渡す相手 | いつまでに |
|---|---|---|
| 事実と違う情報が書かれ、共有や引用が続いている | 広報責任者 | 見つけた当日中 |
| 顧客からの苦情で、取引や個人が特定できそうな内容 | 広報責任者と担当部署 | 見つけた当日中 |
| 第三者による紹介・好意的な話題 | 広報の発信候補として記録 | 週次報告 |
| 商品・サービスへの要望や不満 | 営業・商品・Web担当 | 週次報告 |
| 同名他社・関係のない内容 | 記録のみ(除外語の候補にする) | 月1回の見直し |
苦情や批判の中で、直すべき意見と取り合わない攻撃をどう見分けるかは、企業SNSの批判コメント対応|批判と誹謗中傷の見分け方と初動で詳しく解説しています。
週次報告は、次の型に数字と要約を埋めるだけにしておくと、担当者が替わっても同じ形で続きます。
【ソーシャルリスニング週次報告】対象期間 [9月15日〜9月21日]
1. 件数
合計 [ ]件(A [ ]/B [ ]/C [ ]/D [ ]) 先週 [ ]件
収集元 Googleアラート(Web・ニュース)/Xの保存検索
2. 対応が要るもの(A)
内容の要約/知らせた相手/いまの状況
3. 広報に使えそうな話題(B)
話題の要約/発信の案(投稿・プレスリリース・取材の打診など)
4. 社内に共有する声(C)
要望・不満の要約/回した部署
5. キーワードの見直し候補
除外語に足したい語/新しく足したい呼び名
報告には、投稿者のアカウント名やスクリーンショットを貼らず、要約で書きます。社内の資料に個人のアカウント名が残ると、関係のない社員の目にも触れるためです。
この章の結論。5ステップのうち、ツールを触るのはステップ3と4だけです。ステップ1の1文とステップ5の渡し先の表を先に決めておけば、AIの分類結果をそのまま次の行動につなげられます。
仕組みを止めずに回す月1回の見直し
作った仕組みは、月1回、キーワードと分類の定義を見直すと精度が上がっていきます。見直しをしないと、同名他社や無関係な記事の割合が増え、確認の手間が毎週積み上がります。
見る場所は次の3つです。
- その月の分類Dの割合を数える。半分を超えていたら、Dに入った記事に共通する語を除外語に足すか、そのキーワードを組み合わせ語に変える
- 「要確認」が付いた行の理由を読み、同じ理由が3回以上出ていたら、AIへの指示の分類の定義に1行足す(例として「[業界の略称]は自社ではなく業界全体を指す」)
- 確認の途中で見つけた新しい呼び名や誤記を、キーワードに足す。10語を超えるなら、1か月間ほとんど拾えなかった語と入れ替える
この見直しの結果は、週次報告の5番に書いておきます。いつ、どの語を足し、どの語を外したかが残るので、件数が急に増えたり減ったりしたときに、話題の変化なのか条件の変化なのかを見分けられます。
AIエージェントに収集から報告までを自動で回させることもできますが、中小企業の広報なら、ここまでの形で十分に回ります。投稿への返信や社外への連絡は、分類の精度に関係なく広報担当が行います。
仕組み化すると広報の仕事で何が変わるか
一番大きな変化は、自社についての声が「記録」として残り始めることです。毎週同じ基準で分けた表が溜まると、月ごとの件数や分類の比率を比べられるようになります。
記録が残ると、施策の前後を比べられます。プレスリリースを出した週、展示会に出た週、Webサイトを改修した週のあとで、分類BやCの件数と中身がどう変わったかを見れば、発信がどこまで届いたかを言葉で説明できます。
分類Bに溜まった話題は、広報の発信ネタになります。第三者の紹介記事への反応や、顧客が使っている言い回しは、自社の中からは出てこない材料です。社内の日常と組み合わせたネタの作り方は社内の日常を投稿ネタに変える手順で解説しています。
分類Cを社内に回し続けると、SNSの声が営業や商品の判断材料として使われるようになります。
ベルシステム24が公開しているクレディセゾンのソーシャルリスニング導入事例では、SNS上の発言を可視化するダッシュボードと分析レポートを導入し、工数を削減したうえで約1,000人の社員に情報を共有できるようになったと紹介されています。規模は違っても、「集めた声を誰に渡すか」を決めているところは、この記事のステップ1と同じです。
作業時間の変化は、仮の数字で見ると分かりやすくなります。仮に広報担当者が毎日15分、自社名で検索しているとすると、週5日で75分、月におよそ5時間です。仕組み化したあとの作業を週1回30分の確認と報告にできれば、月2時間ほどに収まります。実際の時間は、言及の件数と確認の丁寧さで変わります。
言及が月に数件しかない会社でも、やる意味はあります。件数の推移より、「自社がどんな言葉で書かれているか」を知る価値のほうが大きいからです。顧客が使う言い回しは、Webサイトや営業資料の言葉を見直すときの材料になります。
この章の結論。効果が出る条件は、同じ基準で分けた記録が毎週残ることです。記録があれば、発信の効果を件数と中身で説明でき、社内の他部署にも声を回せます。
ソーシャルリスニングで起きやすい5つの失敗と防ぎ方
ソーシャルリスニングの失敗は、ほとんどが「集め方」と「AIの結果の読み方」で起きます。どれも、仕組みを作る前に知っていれば防げます。
社名が一般的な単語だと、収集の大半が無関係な記事になる
社名が「サクラ」「ミライ」のような一般的な単語や地名と重なる会社が、社名だけでアラートを作ると起きます。毎週、関係のない記事が何十件も届き、確認する側が読むのをやめてしまいます。
防ぐには、社名を単独で登録せず、業種や地名と組み合わせた語で登録します。そのうえで、ダブルクォーテーションで完全一致にし、よく混じる語をハイフンで除外します。
自社アカウントや社員の投稿が混じり、件数が膨らむ
自社の公式アカウントの投稿や、そのシェア、自社サイトのページが収集に入る設定だと起きます。件数が増えて見えても、中身は自社の発信の再掲で、外からの声は増えていません。
Xの検索では、ステップ3の検索条件のように自社アカウントを「-from:」で除外します。Googleアラートで拾った自社サイトのページは、週次の確認で分類Dに入れ、件数から外して数えます。社員の個人アカウントの扱いは、SNSガイドラインで先に決めておきます。
AIの感情分析の割合を、そのまま報告してしまう
AIやツールが出した「ポジティブ◯%」を、確かめずに上司への報告に使うと起きます。皮肉を好意的な投稿として数えた割合が、社内で事実として扱われます。
割合を報告に使うなら、広報担当が確かめたあとの数字だけにします。この記事の4分類のように、感情ではなく渡し先で分けておくと、割合よりも「誰が何をしたか」を報告の中心にできます。
収集元がWebだけなのに、言及ゼロを「話題になっていない」と判断する
Googleアラートだけで仕組みを作り、Xの確認を省いた場合に起きます。Web上の記事が0件でも、Xでは話題になっていることがあります。
週次報告の1番に、収集元を必ず書きます。「Googleアラート(Web・ニュース)のみ」と書いてあれば、読む側も0件の意味を取り違えません。
週1回の仕組みを、炎上の見張りとして使う
週1回まとめて確認する仕組みを作ったことで、炎上にも気づけると考えた場合に起きます。炎上は数時間で広がることもあるので、週1回の確認では気づくのが遅れます。
この記事の仕組みは、広報の材料を集めるためのものと割り切ります。炎上の兆しを当日中に知りたいなら、通知の頻度が高い専用ツールや、初動の手順を別に用意します。
この章の結論。失敗の多くは、キーワードの組み合わせ方、除外の条件、報告に書く収集元の3つで防げます。AIの分類結果は、広報担当が確かめたあとの数字だけを報告に使います。
無料で組むか専用ツールを入れるかの分かれ目
言及がWeb中心で週に数十件までなら、この記事の無料の構成で回ります。Xでの言及が中心の会社や、画像の中まで拾いたい会社は、専用のソーシャルリスニングツールを検討する段階です。
| 条件 | 無料の構成で足りる | 専用ツールを検討する |
|---|---|---|
| 言及が多い場所 | ニュース・ブログ・Webページが中心 | Xなど、SNSの投稿が中心 |
| 件数 | 週に数十件まで | 1日に数十件を超え、手で確かめきれない |
| 拾いたい内容 | 文章に書かれた社名・商品名 | 写真に写った商品やロゴ、動画の中身 |
| 知りたいタイミング | 週1回の報告で間に合う | 当日中、数時間以内に知りたい |
| 共有する相手 | 広報と数部署 | 役員や多数の社員に、画面で常に見せたい |
専用ツールも、AIによる要約や報告書づくりの機能を強めています。たとえばアディッシュは、2026年7月22日のSignalHiveの機能強化の発表で、同製品を「SNS上の声を『収集』『判断』『整理』するソーシャルリスニングAIツール」と説明しています。
同じ発表では、AIがサマリーを自動で作るPowerPointレポート機能の充実を挙げています。
ソニーネットワークコミュニケーションズのPrediction Oneのように、AIによる分析ツールをソーシャルリスニングに使う選択肢もあります。
専用ツールを比べるときは、見積書に出にくいコストを先に確かめます。
- 検索条件を作る手間:どのツールでも、キーワードと除外語はこちらで決めます。この記事のステップ2を済ませてから見積もりを取ると、設定の手間を具体的に聞けます
- 誤検知を減らす調整:導入してしばらくは、同名他社や無関係な投稿を外す調整が必要です。調整にかかる期間は言及の件数やキーワードの設定で変わるため、ベンダーがどこまで手伝うかを契約前に聞きます
- 画面を読む人の時間:ダッシュボードができても、読んで判断する人の時間は減りません。誰が週に何分見るかを決めてから導入します
- 契約期間:年単位の契約だと、合わなかったときにすぐやめられません。試用期間の有無と、最低契約期間を確かめます
無料の分析機能と有料ツールの一般的な選び方は、SNS分析ツールの選び方|無料の標準機能と有料の判断ポイントで解説しています。
集めた声を広報に使うときにも、線引きがあります。個人の投稿を自社のSNSや資料で紹介したいときは、投稿者に連絡して許可を得てから使います。好意的な内容でも、本人が企業に使われることを想定していない場合があるからです。
社員が自分のアカウントで検索し、見つけた投稿に個人として反応してしまうことも、仕組みを作ると起きやすくなります。見つけた声への返信は広報が窓口になる、と週次報告の最初の回で社内に伝えておきます。
この章の結論。まずは無料の構成で3か月記録を残し、件数と収集元の偏りを見てから専用ツールを判断すると、必要な機能と予算を具体的に比べられます。
ソーシャルリスニングのよくある質問
Googleアラートに社名を登録したのに、ほとんど何も届かないのはなぜ?
新しいWebページで社名が書かれていないか、件数の設定で絞られている可能性があります。オプションで表示する件数の設定を見直し、略称や読みでもアラートを作ってみてください。SNSの投稿は、Xの検索で別に確かめます。
Xの投稿も、スプレッドシートに自動で集められますか?
自動で取り込むには、XのAPIを使うか、Xに対応した専用ツールを使う方法があります。利用条件や費用は、それぞれの公式情報で確かめてください。まずは保存した検索条件で週1回確認し、見つけた投稿を手で足す形から始めると負担を抑えられます。件数が手に負えなくなった時点で、自動化を検討してください。
見つけたお客様の好意的な投稿を、会社のSNSで紹介してもいいですか?
紹介する前に、投稿者に連絡して許可を得てください。公開されている投稿でも、企業のアカウントで紹介されることを本人が想定していないことがあります。許可を得たら、いつ誰に許可をもらったかを収集シートのメモ列に残しておくと、担当が替わっても確かめられます。
分類をAIに頼むとき、元の投稿のURLまで貼っても大丈夫ですか?
公開されている記事や投稿のURLと本文なら、会社で使ってよいと決めたAIに貼る範囲で問題になりにくい情報です。ただし、社内の対応状況や顧客名を書いたメモ列は貼らないでください。会社名義のアカウントで使い、入力してよい情報を先に決めておくのが前提です。
言及が週に1〜2件しかない場合、週1回の確認は多すぎませんか?
件数が少ないうちは、確認にかかる時間も短く済みます。週1回の習慣を残しておくと、紹介記事が出た週や苦情が出た週に気づき遅れずに済みます。確認の時間が取りにくいなら、隔週にして、分類Aの基準に当たるものだけは届いた日に見る形でも構いません。
まず今日できるのは、Googleアラートを開いて、自社名をダブルクォーテーションで囲んだアラートを1つ作ることです。配信先をRSSフィードにしておけば、来週この記事のスクリプトにそのまま使えます。集めた声を広報の成果としてどう報告するかは、SNSのKPI設計|商談貢献が伝わる指標ツリーの作り方と報告術が次の一歩になります。
ここまで読んで、キーワード選びやAIへの指示づくりを自社の業務に合わせて進めるのは手間がかかりそうだと感じた方は、広報のAI活用研修(オンライン)をご覧ください。自社の広報業務を題材に、講師と1対1で進めます。いまの広報の進め方をお話しいただくところから、気軽にご相談ください。
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