SNS分析ツールの選び方|無料の標準機能と有料の判断ポイント

SNS分析ツールの選び方|無料の標準機能と有料の判断ポイント

この記事の要点

  • 分析ツールの要否は媒体数・報告頻度・遡りたい期間の3条件で決まる
  • 有料に移る分かれ目は5項目のセルフチェックで判定できる
  • 乗り換え時にデータが途切れる失敗が最多。回避手順を本文で解説

SNS運用の分析ツールが必要かどうかは、フォロワー数でも予算でもなく、「扱う媒体が何個あるか」「誰かに報告する必要があるか」「何か月前まで遡って比べたいか」の3つで決まります。1媒体を1人で運用していて、社内報告もないなら、各SNSの標準インサイトだけで十分に回せます。逆に3媒体以上を扱っていて毎月の報告資料を作っているなら、有料ツールの費用は人件費で回収できる可能性が高くなります。

この記事は、Instagram・X・Facebookなど複数のSNSを1〜2人で運用していて、「そろそろ分析ツールを入れるべきか」で迷っている広報・営業担当の方に向けて書いています。読み終わる頃には、自社が今どちらの段階にいるかを5項目のセルフチェックで判定でき、標準機能だけで回す月次の集計手順まで決められる状態を目指します。

なお、この記事は複数の媒体をまたいで分析する話に絞ります。1媒体の中の細かい分析、たとえばInstagramのハッシュタグごとの反応を見る手順はインスタのハッシュタグ分析の無料ツールでの手順と選び方で解説しています。そもそもインサイト画面が開けないという方は、先にインスタのインサイトが見れない原因4つと正しい見方を読んでから戻ってきてください。

Contents / 目次
  1. SNS運用の分析ツールを入れる前に見る、3つの条件
  2. 有料に移る分かれ目。5項目のセルフチェックで判定する
  3. SNS運用の分析を標準機能だけで回す5ステップ
  4. SNS分析ツールの4タイプと、比較で見る5項目
  5. 分析を続けた会社に起きる変化
  6. SNS運用の分析でよくある失敗4つ
  7. ツールを入れても数字が合わない場面と、割り切りどころ
  8. よくある質問
  9. 今日の一歩と、相談したいときの窓口

SNS運用の分析ツールを入れる前に見る、3つの条件

SNS運用の分析ツールとは、複数のSNSアカウントの投稿実績や反応の数値をひとつの画面にまとめ、集計とレポート作成を代わりに行うサービスのことです。ここで大事なのは、ツールが増やしてくれるのは「情報」ではなく「時間」だという点です。

各SNSは、もともと無料の分析画面を持っています。主なものは次の3つです。

  • Instagram:インサイト
  • X:アナリティクス
  • Facebookページ:インサイト

数値そのものは、実は標準機能でもかなり見られます。有料ツールが解決するのは、それを何枚もの画面から手で拾い集めて表にする作業のほうです。

だから判断は「どの数字が見たいか」ではなく「集める手間がどれだけあるか」で行います。次の3条件で見てください。

  • 媒体数:1〜2媒体なら標準機能で足りる。3媒体を超えると、画面を行き来する時間が急に増える
  • 報告の有無:自分が見るだけなら不要。上司・経営者・取引先に毎月出すなら、書き出し機能のあるツールが効く
  • 遡りたい期間:直近1か月で足りるなら不要。前年同月と比べたい、半年の推移を線で見たいなら、データを貯める仕組みが要る

3つ目の「遡りたい期間」が、いちばん見落とされます。各SNSの標準インサイトで過去のどこまで遡れるかは、媒体ごとに違います。自社の運用で半年前の数字が必要になるかどうかを先に決めたうえで、実際に各媒体の画面を開いて、どこまで表示されるかを自分の目で確かめてください。あとから取りに行こうとしても、画面に残っていなければ取り戻せません。

無料の標準機能と有料ツールの、できることの違い

標準機能と有料ツールの差は、指標の種類ではなく「集計・保存・共有」の3点に集中しています。下の表で、どちらが自社に合うかを確かめてください。

見る観点各SNSの標準インサイト(無料)有料の分析ツール
投稿ごとの反応見られる。媒体ごとの画面を開く見られる。全媒体を1画面に並べられる
複数媒体の横断集計手作業で表に転記する必要がある自動でまとまる
過去データの保存遡れる期間は媒体の画面で要確認連携した日以降を蓄積するものがある
レポートの書き出し媒体によって可否と範囲が異なる対応形式は製品ごとに異なる
競合アカウントの比較できない公開データの範囲で可能なものがある
複数担当での閲覧アカウント権限の設定が必要閲覧専用ユーザーの可否は製品ごとに異なる
費用0円月額課金。無料期間の有無は製品ごとに異なる

なお、複数媒体の横断はいきなり有料ツールに飛ばなくても、無料で一段階だけ進める方法があります。Meta社が提供するMeta Business Suiteで、どのアカウントを扱えるか、画面上でどの指標を見られるかは、MetaビジネスヘルプセンターのデスクトップのMeta Business Suiteのインサイトについてで確認してください。 使い方の流れはMeta Business Suiteでインスタとフェイスブックを一元管理する手順にまとめています。

この章の結論。分析ツールを検討する前に、自社の「媒体数・報告の有無・遡りたい期間」を紙に書き出してください。3つとも小さいなら、今は買わなくていい段階です。

有料に移る分かれ目。5項目のセルフチェックで判定する

有料ツールに移る分かれ目は、次の5項目のうち3つ以上に当てはまったときです。ここを超えると、標準機能での運用は「できなくはないが、担当者の残業で支えている」状態に入ります。

  1. 運用している媒体が3つ以上ある(Instagram・X・Facebook・TikTok・LinkedInなどの合計)
  2. 月に1回以上、誰かに数値を報告している(社内の会議資料、経営者への共有、取引先への報告のいずれか)
  3. 3か月以上前の数値と比べたい場面が、直近半年で2回以上あった
  4. SNSを見る人が2人以上いる(担当者と上司、本社と店舗など)
  5. 集計作業に月2時間以上かかっている(後述の実測方法で計ります)

集計にかかる時間の測り方と、費用の上限の出し方

5項目目の「月2時間」は、感覚ではなく実測してください。測り方はかんたんです。次に集計するとき、スマホのタイマーを開始して、終わったら止める。それだけです。

これを4週間続けると、自社の実数が出ます。媒体ごとの1回あたりの時間に、媒体数と月の回数をかければ、月にかかっている合計時間が出ます。この数字は媒体数・見る指標の数・担当者の慣れで大きく変わるので、他社の目安ではなく自社で計った値を使ってください。

ここに担当者の時間単価をかけると、集計にかかっている人件費が出ます。この金額が、自社がツールに出していい月額の上限の目安になります。これを超える金額のツールを入れるなら、集計の時短以外の理由(競合比較や複数拠点の一括管理など)が要ります。

この計算は「集計の時短だけ」を見た金額です。ツールを入れても、数字を読んで次の打ち手を決める時間はそのまま残ります。むしろ集計が楽になったぶん、そこに時間を回すのが本来の狙いです。

逆に、当てはまるのが2つ以下だった場合は、いま買わないでください。無料期間だけ使って結局解約する、という遠回りをしがちな段階です。次の章の手順で、標準機能のまま回してみてください。

この章の結論。5項目のうち3つ以上が当てはまり、実測した集計時間×時間単価がツール月額を上回るなら、導入の判断ができる状態です。どちらか一方だけでは足りません。

SNS運用の分析を標準機能だけで回す5ステップ

ここからは、ツールを買わずにSNS運用の分析を回す手順です。この5ステップは、あとで有料ツールに移るときの土台にもなります。というのも、有料ツールを入れても「どの指標を見るか」を決めるのは人間側の仕事で、そこが決まっていないとどのツールを使っても同じ結果になるからです。

ステップ1。見る指標を3つに絞る

最初にやるのは、指標を3つに絞る作業です。SNSの標準インサイトには数十個の数字が並んでいますが、全部を毎月追うと、翌月には誰も見なくなります。

絞り方は、目的から逆算します。目的が3種類あるので、自社に近いものを選んでください。

  • 知ってもらいたい(認知):リーチ数、インプレッション数、動画の再生数
  • ファンになってほしい(関係づくり):保存数、エンゲージメント率、プロフィールへのアクセス数
  • 問い合わせがほしい(獲得):プロフィールのリンククリック数、Webサイトへの流入数、問い合わせ件数

この3種類を混ぜないでください。認知が目的なのに保存数で一喜一憂する、獲得が目的なのにフォロワー数を報告する、といったズレが起きます。指標を商談まで結びつける組み立て方はSNSのKPI設計で商談貢献が伝わる指標ツリーの作り方で詳しく扱っています。

ステップ2。月次の集計シートを作る

次に、Googleスプレッドシートかエクセルで集計シートを1枚作ります。列の構成は、下の表をそのまま使えます。

列名入れる内容入力のコツ
投稿日2026/08/31 の形式日付形式で入れる。文字列にすると並べ替えが壊れる
媒体Instagram / X / Facebook など表記を統一する。「インスタ」と「Instagram」を混ぜない
形式リール / フィード / ストーリーズ / テキストあとで形式別の平均を出すために必須
テーマ事例紹介 / 社員紹介 / お知らせ など5〜7種類に固定する。増やすと集計できなくなる
指標1〜3ステップ1で決めた3つの数値列名に指標名をそのまま書く
取得日数値を写した日投稿直後と1週間後では数字が違うため、必ず記録する
気づき1行のメモ「冒頭に価格を出した」など、後で仮説を立てる材料になる

「取得日」の列を入れておくのが地味に効きます。投稿から何日目の数字なのかが揃っていないと、前月比が単に「測ったタイミングの差」になってしまうからです。

ステップ3。数値を写す日を、月2回に固定する

集計は毎日やらないでください。毎日見ると数字の上下に振り回され、続きません。15日と月末の月2回のように日を決めて、カレンダーに繰り返し予定として入れてしまうのが確実です。

作業の順番も決めておきます。媒体ごとに画面を開いて上から順に写す、という手順を毎回同じにしておくと、迷う時間がなくなり、回を重ねるほど短くなります。かかる時間は、見る指標の数や媒体によって変わるので、ステップ2の実測で自社の値を確かめてください。

このとき、必ず画面のスクリーンショットも一緒に保存してください。標準インサイトで遡れる範囲を超えると、後から「あの月の数字をもう一度見たい」となっても取り戻せません。画像で残しておけば、少なくとも証拠は残ります。Xのアナリティクスで何を見ればいいか迷う場合はXアナリティクスの見方とインプレッションの読み解き方が参考になります。

ステップ4。月末に「形式別・テーマ別の平均」を出す

数字を集めただけでは何も分かりません。分析と呼べる状態にする最小の作業は、形式別とテーマ別の平均を出すことです。

使っている表計算ソフトの集計機能で、「形式」ごとに指標1の平均を出します。同じことをテーマでも行います。これで「リールは平均◯、フィードは平均△」「事例紹介は平均◯、お知らせは平均△」という形になります。

ここで見るのは、上位1本ではなく平均です。バズった1本を再現しようとすると失敗しますが、平均が高いテーマは再現性があります。次の月は、平均が高かったテーマの本数を1本増やす。これだけで運用の改善サイクルが回り始めます。

ステップ5。AIに月次コメントの下書きを作らせる

集計シートができたら、CSVで書き出してAIに読ませると、報告用のコメント作成がかなり短くなります。AIが得意なのは「数字の差分を言葉にする」作業です。前月比の増減を1つずつ拾って文章にする手間が、ここで減ります。

使うのはChatGPT・Claude・Geminiのどれでも構いません。いずれもブラウザから使えます。CSVを添付できるかどうかは、契約しているプランや提供状況によって変わるので、実際に自社のアカウントで試して確かめてください。

渡すときのプロンプトは、作り込む必要はありません。出発点として、次のくらいの短さで十分です。

あなたはSNS運用の分析担当です。添付のCSVは[自社の業種を入力]の
SNS投稿実績です。次の3点だけを、事実と解釈を分けて日本語でまとめてください。

1. 前月と比べて数字が動いた項目(増減の数値を必ず添える)
2. 形式別・テーマ別の平均から言える傾向
3. 来月に試す施策の候補を3つ(理由も1行で)

CSVに書かれていない数字は絶対に足さないでください。
分からない項目は「データからは判断できない」と書いてください。

そのうえで、AIと会話しながら自社の状況に合わせて詰めていくのが早いです。「この月はキャンペーンをやっていた」といった背景を後から追加で伝えれば、解釈の精度が上がります。

AIの出力で、人が必ず直す3か所

AIの出力をそのまま報告に使うのは危険です。次の3か所は毎回、人が目で確認してください。

  • 数字の転記ミス:CSVにある数字と、文章中の数字が一致しているかを1つずつ照合する。AIはもっともらしい近い数字を書くことがある
  • 因果の言い切り:「リールにしたから伸びた」のような断定は、たいてい根拠がない。「リールの平均が高かった」という事実の記述に直す
  • 社内で使えない言い回し:「エンゲージメントを最大化」のような抽象語は、上司に伝わらない。「保存数が先月の1.4倍」のように、数字で言い直す

この章の結論。ステップ1で指標を3つに絞り、ステップ2のシートを1枚作れば、今日から分析は始められます。ツールを買うかどうかは、この5ステップを2か月続けてから決めても遅くありません。

SNS分析ツールの4タイプと、比較で見る5項目

いざ有料ツールを検討する段階になったら、個別の製品名から入らず、まずタイプで絞ってください。SNS運用の分析ツールは、目的別に大きく4つに分かれます。ここを間違えると、多機能なのに使わない機能ばかり、という結果になります。

タイプできること向いている会社注意点
一元管理型複数媒体の投稿予約・分析・レポートをまとめて行う3媒体以上を1〜数名で運用している1媒体しか使わないなら機能が余る
媒体特化型特定のSNSに絞って深く分析するInstagram1本、X1本など主戦場が明確他媒体を始めると別ツールが必要になる
ソーシャルリスニング型自社名や商品名の言及・口コミを幅広く収集するブランド名で語られる量が一定以上ある言及が少ない企業では収集件数が集まらない
BI・可視化型各種データを取り込みダッシュボード化するSNS以外の数値と合わせて見たいSNSデータを取り込む部分を別途用意する必要がある

タイプが決まったら、個々の製品は次の5項目で比べます。機能一覧の数ではなく、この5つだけを見てください。

  1. 自社が使っている媒体すべてに対応しているか(1つでも欠けると手作業が残る)
  2. 連携できるアカウント数と、料金プランの上限(店舗が複数あると足りなくなりやすい)
  3. データを何か月分保持するか。解約後はどうなるか
  4. CSV・Excel・PDFのどの形式で書き出せるか
  5. 閲覧だけのユーザーを追加できるか。追加に費用がかかるか

無料期間で必ず試す7つのチェック

無料で試せる期間が用意されている場合は、その間にやることを決めておいてください。機能一覧を眺めるだけで終えると、契約後に「思っていたのと違う」となります。次の7つを、実際の自社アカウントで試してください。

  • 連携が最後まで通るか:アカウントの種類や権限の条件が合わず、途中で止まることがある。手順の最後まで進めて確認する
  • 数字が標準インサイトと合うか:同じ投稿の同じ指標を、ツールと媒体の画面で見比べる。ズレるなら、その理由を営業担当に聞く
  • 連携前の投稿が見えるか:過去の投稿データを取り込めるのか、連携日以降だけなのかを確認する
  • レポートを1本、最後まで作れるか:実際に上司に出す形まで作ってみる。体裁の調整に時間がかかるツールがある
  • 担当以外の人が開けるか:上司のアカウントを追加し、ログインして中身を見てもらう
  • スマホで開けるか:外出先で数字を確認する運用があるなら必須
  • 解約手順とデータの扱い:解約方法と、解約後のデータの取り扱いを契約前に確認する

この章の結論。タイプを1つに絞り、上の5項目と7チェックだけで比べれば、比較検討にかける時間は大幅に短くできます。機能一覧の網羅性で選ばないでください。

分析を続けた会社に起きる変化

SNS運用の分析を続けて変わるのは、投稿の反応そのものより先に、社内での会話の中身です。「なんとなく反応が良かった気がする」という感想が、「事例紹介の平均保存数は、他のテーマより高い」という事実の話に変わると、次に何を作るかで揉めなくなります。

フォロワー数は、運用の成果を測るうえでは1つの数字にすぎません。目的に合う指標だけを見て投稿の中身を変え続けるほうが、次に何をすべきかの判断がしやすくなります。

数値として期待できる変化を、3つに分けて説明します。

集計時間の短縮は、計算で先に見積もれる

いちばん確実に効くのが、集計の時短です。先ほどの計算式に自社で実測した時間を入れれば、導入前に見積もれます。ツールで自動集計になれば、この時間のうち転記にあてていたぶんがなくなり、確認と考察だけが残ります。どこまで縮むかは媒体数と見る指標の数で大きく変わるので、無料期間中に実際の作業時間を計って比べてください。

ただし、これは指標が3つに絞れている場合の話です。見る数字が20個あるまま自動化しても、確認に時間がかかって短縮されません。だからステップ1の絞り込みを先にやる必要があります。

報告資料が「作るもの」から「見るもの」に変わる

2つ目の変化は、報告のあり方です。手作業のときは、報告の直前に慌てて数字を集めることになります。データが自動で貯まっていると、会議の場でその画面を開くだけになり、資料作成そのものが不要になる場合があります。

上司に見せる形の組み立て方はSNSのROIを上司に伝える報告書の作り方で、3層の指標に分けて説明しています。

担当が変わっても運用が止まらなくなる

3つ目は、引き継ぎです。数値の履歴と投稿の記録が1か所にあると、新しい担当者が過去の判断をたどれます。逆に、担当者個人のスマホの中だけで分析が完結していると、退職や異動でゼロに戻ります。

この観点は、ツールを入れる理由としてはあまり語られませんが、中小企業では効果が大きいところです。担当者が1人しかいない会社ほど、記録が資産になります。属人化を防ぐ具体的な方法はSNS運用の属人化を解消する引き継ぎノートと投稿テンプレの作り方にまとめています。

この章の結論。分析で最初に返ってくるのは投稿の伸びではなく、集計時間と社内の合意形成のスピードです。ここを期待値にしておくと、導入後にがっかりしません。

SNS運用の分析でよくある失敗4つ

ここからは、分析ツールを検討・導入する場面で実際によく起きる失敗です。どれも、事前に知っていれば避けられます。

失敗1。ツールの数字と標準インサイトの数字が合わず、毎月説明に追われる

これがいちばん多い失敗です。ツール導入後、上司から「先月インスタの画面で見た数字と違うけど」と指摘され、その説明に時間を取られるようになります。

原因は、集計の定義の違いです。次の4つが媒体側とツール側で違うと、同じ投稿でも数字がずれます。

  • 指標の数え方:同じ名前の指標でも、何を1件と数えるかが違う
  • 集計の締め時刻:どこまでを当日分とするかが違う
  • タイムゾーンの設定:日本時間で集計しているかどうかが違う
  • データを取りに行くタイミング:いつ時点の数字を表示しているかが違う

どちらかが間違っているわけではありません。防ぎ方は2つです。無料期間のうちに同じ投稿の同じ指標を見比べてズレ幅を把握しておくこと。そして社内で「どちらの数字を正とするか」を先に決めて、報告書の欄外に1行書いておくことです。「数値は◯◯ツールの集計(毎月末日時点)」と書いておくだけで、この議論は起きなくなります。

失敗2。連携した日より前のデータが入らず、前年比較ができなくなる

過去のデータをどこまで取り込めるかは、ツールによって違います。連携した日以降のぶんだけが貯まっていく作りのものもあるため、契約前に必ず確認してください。

この前提を知らずに「これで過去1年の推移が見られる」と思って契約すると、画面がほぼ空の状態から始まって落胆します。しかも、そのタイミングで手元の集計シートを止めてしまうと、過去と未来がどちらも中途半端になります。

防ぎ方は、導入前に手作業の集計シートを止めないこと。そして導入した月は、シートとツールを1か月だけ並行させて、数字が繋がることを確認してから手作業をやめてください。

失敗3。ダッシュボードに全指標を並べて、3か月後に誰も開かなくなる

導入直後は楽しくて、表示できる数字を全部ダッシュボードに置きたくなります。ところが指標が20個並んだ画面は、開いた瞬間にどこを見ればいいか分からず、やがて開かれなくなります。

これは担当者の意欲の問題ではなく、画面の設計の問題です。並べる数が増えるほど、どこを見ればいいかの判断に時間がかかり、開くこと自体が面倒になります。

防ぎ方は、最初のダッシュボードを3指標だけで作ること。物足りなく感じるくらいがちょうどよく、必要になったら足せばいい、という順番にしてください。「使い始めて3か月経ったら、一度も見なかった項目を消す」というルールを決めておくのも効きます。

失敗4。個人アカウントの権限で連携し、担当交代で全部切れる

分析ツールと媒体をつなぐとき、どのアカウントの権限を使うかは設定で決まります。ここで個人所有のアカウントや、退職予定の担当者の権限を起点にしていると、その権限が失われたときにデータの取得が止まることがあります。連携に使う権限が誰のものになっているかは、設定画面で確認してください。

厄介なのは、止まったことにすぐ気づかない点です。ダッシュボードは表示され続けるのに、新しい投稿のデータだけが入ってこない、という形で起きます。

防ぎ方は、連携に使う権限を会社として管理しているアカウントに寄せること、そして管理者権限を必ず2人以上に持たせておくことです。複数人での権限の持たせ方はX企業アカウントを複数人で運用する手順で解説しています。

この章の結論。4つとも、契約後ではなく無料期間中に手を打てば防げます。試用期間は機能を見る時間ではなく、この4点を潰す時間だと考えてください。

ツールを入れても数字が合わない場面と、割り切りどころ

ここは、ツールの紹介記事にはあまり書かれない話です。SNS運用の分析には、有料ツールを入れても解決しない領域が確実にあります。先に知っておくと、無駄な検討をせずに済みます。

「なぜ伸びたか」は、どのツールにも出てこない

分析ツールが出すのは結果の数字だけです。「この投稿がなぜ伸びたのか」は、どんなに高機能なツールでも出てきません。理由は、伸びた要因が投稿の外側にあることが多いからです。

たとえば、次のような背景です。

  • 季節や時期の影響
  • 関連するニュースが流れた
  • たまたま大きなアカウントが反応した
  • 社内のイベントと重なった

こうした背景は数字に残らないので、集計シートの「気づき」欄に人が1行書き残すしかありません。この1行の蓄積が、実はツールより価値を持ちます。

SNSから問い合わせまでの経路は、途中で切れる

もう1つの限界が、SNSと問い合わせのつながりです。SNSを見た人が、その場ではなく数日後に検索してサイトに来る、という動きは日常的に起きます。この場合、SNS経由としては記録に残りません。

ここを技術で完全に追いかけようとすると、費用も手間も跳ね上がります。中小企業の現場では、問い合わせフォームに「当社を知ったきっかけ」の選択肢を1つ足すほうが、はるかに安く実態に近づきます。

見落とされがちなコストは、ツール代ではなく初期設計の時間

ツール導入で見落とされるコストは、月額料金ではありません。指標の定義を決め、レポートの型を作り、社内に説明する時間です。ここにどれだけかかるかは、媒体数と、社内で合意を取る相手の人数で大きく変わります。ツールを契約する前に、この作業の時間を先にカレンダーに確保しておいてください。

そして、この設計をしないままツールだけ入れると、前の章の失敗3(ダッシュボードが見られなくなる)にほぼ確実に着地します。ツールを比較する時間より、指標を決める時間を先に確保してください。

なお、AIに任せる範囲については、集計と文章の下書きまでは任せてよく、指標の選定と社外に出す数字の確認は人が行う、と考えれば足ります。詳しくは生成AIのSNS投稿量産とAI・人の線引きを参照してください。

この章の結論。ツールが解決するのは集計と保存と共有まで。理由の記録と、問い合わせのきっかけの把握は、人の運用ルールでしか埋まりません。

よくある質問

Xのアナリティクスが以前より見られなくなりました。分析ツールを入れれば代わりになりますか

ツールを入れれば全部見られるとは限りません。無料期間中に、自社が見たい指標が実際に表示されるかを確かめてから契約してください。表示されない指標があった場合は、その理由をツールの営業担当に直接聞くのが早いです。

ツールの数字と標準インサイトの数字がズレます。どちらを社内の正にすればいいですか

どちらでも構いませんが、決めて固定してください。おすすめは、報告に使うほうを正とし、報告書の欄外に「数値は◯◯の集計・毎月末日時点」と1行書いておく方法です。途中で基準を変えると、前月比が意味を持たなくなります。

分析ツールを解約したら、貯めたデータはどうなりますか

解約後の扱いはサービスごとに違うため、契約前に確認してください。実務上の対策は、契約中から月1回CSVで書き出して自社のフォルダに保存しておくことです。この習慣があれば、乗り換えても過去比較が途切れません。

複数店舗のInstagramをまとめて見たいのですが、標準機能だけでできますか

店舗ごとにアカウントを切り替えて確認する形になるため、店舗数が増えるほど手間がかかります。目安として3店舗を超えたら、複数アカウントの一括管理ができるツールを検討する段階です。ただし、プランごとの連携アカウント数の上限は必ず先に確認してください。

ツールを入れる前に、何か月分のデータを貯めておくべきですか

最低2か月、できれば3か月です。1か月だと比較対象がなく、ツールの画面を見ても判断ができません。この記事のステップ2の集計シートを2〜3か月続けてから検討すると、必要な機能もはっきりします。

今日の一歩と、相談したいときの窓口

今日できることは1つだけです。スプレッドシートを新規で1枚開き、この記事のステップ2の列名をコピーして貼り付けてください。1分で終わります。次の投稿から数字を入れ始めれば、2か月後にはツールの要否を自分で判断できる材料が揃います。指標の決め方でつまずいたら、SNSのKPI設計で商談貢献が伝わる指標ツリーの作り方を先に読んでみてください。

ここまで読んで、指標を決めるところから一緒に見てほしいと感じた方は、数字の読み方から見直すSNS運用代行もご検討ください。いまどの媒体で何を見ているかを書き出すところからご一緒します。初回のご相談は無料なので、現状をお聞かせいただくだけでも大丈夫です。

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