Web制作会社の選び方|公開後の更新・保守・解約で差が出る確認項目
この記事の要点
- 比べるのは制作実績より、公開後に自社が持つ権限と契約の中身
- ドメインや管理画面など8つの名義と納品物を契約前に確認。一覧を本文に掲載
- 解約時の引き継ぎと著作権は条文で決める。制作会社へ送る質問文の例あり
Web制作会社を選ぶときは、デザインの好みや制作実績より先に、公開後の運用について契約で何が決まっているかを比べます。確かめるのは、自社で更新できる権限、保守契約に含む作業、解約したときの引き継ぎの3点です。この3点は見積書の合計金額には出てこないため、リニューアルや制作会社の変更を考えたときに初めて差が分かります。
この記事は、ホームページの制作を外部に依頼する経営者・院長・広報責任者に向けて書いています。読み終わる頃には、候補の制作会社に送る質問文と、契約書で確かめる条文を決められる状態を目指します。
月額の費用相場と内訳はホームページ保守の費用相場と月額に含む作業の一覧で解説しています。この記事では、更新の権限・保守契約の中身・解約時の引き継ぎに絞って扱います。
Contents / 目次
Web制作会社の選び方は、公開後に自社がどこまで操作できるかで比べる
制作会社の候補が2〜3社に絞れたら、デザインの提案より先に、公開後に自社が何を操作できるかを比べます。制作の品質は実績のページである程度分かりますが、公開後の権限や解約時の扱いは、質問しないと答えが出てこないためです。
次の表は、更新の権限・保守契約・解約時の引き継ぎの3点に、著作権の扱いを加えた4項目です。表の3列目のような答えが返ってきたら、契約前に条件を詰める必要があります。
| 確認する項目 | 制作会社に尋ねること | 契約前に条件を詰めたい答え |
|---|---|---|
| 更新の権限 | 自社用の管理画面のアカウントを、どの権限で発行するか | 「更新はすべて当社が行います」と言われ、自社のアカウントが無い |
| 保守契約の中身 | 月額に含む作業を、作業の名前で | 「保守一式」とだけ書かれ、作業の名前が無い |
| 解約時の引き継ぎ | 解約後にドメインとサイトのデータを自社へ移せるか | 「解約するとサイトは閉鎖します」と言われ、移す手順の説明が無い |
| 著作権 | 制作物の著作権を譲渡するのか、利用を許諾するのか | 契約書に著作権の条文が無い |
どの答えも、それ自体が悪いわけではありません。「更新はすべて当社が行います」という契約でも、月額に更新の回数が含まれ、解約時にデータを移す手順が決まっていれば、社内に担当者がいない会社には合っています。問題になるのは、答えが無いまま契約することです。
地域で候補を探す段階の方は、福岡のホームページ制作会社の選び方で、見積もりの比べ方から解説しています。
この章の結論。候補の会社に同じ4項目を尋ね、答えが無い項目を契約前に埋めれば、公開後の差を契約の段階で比べられます。
契約前に制作会社へ確認する4つの手順
確認は、社内で更新するページを決めることから始めます。どのページを誰が更新するかが決まっていないと、制作会社に求める権限も保守契約の中身も決められないためです。
ステップ1. 社内で更新するページと頻度を書き出す
公開後に社内で更新したいページを、担当者と頻度つきで書き出します。表計算ソフトに次の3列を作れば足ります。
- ページ:お知らせ、施工事例・導入実績、採用情報、営業時間・料金など
- 担当者:広報担当、店長、総務など、実際に文章を書く担当者
- 頻度:週1回、月2回、年1回など
月に何度も更新するページがあれば、社内で投稿できる仕組みと権限が必要です。年に1回の料金改定だけなら、保守契約の修正作業に含めるほうが安く済む場合もあります。
公開後にホームページで何を増やしたいのか(問い合わせ・採用・来店)がまだ決まらず、更新するページを書き出せない場合は、Web集客・Webマーケティングの相談で、ホームページ・SNS・広告のどれから始めるかを先に決める進め方もあります。
ステップ2. 8つの名義と納品物を確かめる
ホームページの運用に関わるアカウントやライセンスが制作会社の名義で作られると、解約時に自社へ移す手続きが必要になります。デザインデータや写真の原本も、納品物に含めると決めておかなければ受け取れません。次の8つの名義と納品物について、誰の名義で作るか、何を納品物に含めるかを契約前に確かめます。
| 項目 | 自社が持っておきたい状態 | 制作会社だけが持っていると起きること |
|---|---|---|
| ドメイン | 登録者が自社で、登録事業者の管理画面に自社でログインできる | 更新や移管のたびに制作会社の手続きが要る |
| サーバー | 契約者が自社。制作会社の名義なら、解約時の移行手順が契約書にある | 制作会社との契約終了と同時にサイトが止まる |
| CMSの管理画面 | 担当者ごとのアカウント。WordPressなら1つは「管理者」 | 担当者の追加やプラグインの追加を、そのつど依頼する |
| 有料テーマ・プラグイン | ライセンスの名義と更新費用の負担者が決まっている | 解約後に更新版を受け取れない場合がある |
| GA4 | 自社のGoogleアカウントに、プロパティの管理者権限がある | 解約後にアクセスの記録を見られなくなる |
| Search Console | 自社のGoogleアカウントが「所有者」 | 権限の追加をそのつど依頼する |
| Googleタグマネージャー | 自社のGoogleアカウントに、アカウントの管理者権限がある | 問い合わせの計測タグの追加・変更を、そのつど依頼する |
| デザインデータ・写真の原本 | 納品物に含めると契約書に書いてある | リニューアルのときに写真や図を使い回せない |
WordPressの公式ドキュメントでは、権限を特権管理者・管理者・編集者・投稿者・寄稿者・購読者の6種類としています。特権管理者は、マルチサイト(複数のサイトをまとめて管理する構成)でネットワーク全体を管理する権限です。1つのサイトだけのWordPressでは、管理者が特権管理者と同じ役割を持ちます(WordPress.orgのユーザーの種類と権限)。
「投稿者」は固定ページを編集できないため、会社概要や料金のページを社内で修正するなら「編集者」以上が必要です。プラグインの更新まで自社で行うなら「管理者」が要ります。
ステップ3. 保守契約に含む作業を作業の名前で確かめる
保守契約の見積書に「保守一式」としか書かれていなければ、含む作業を作業の名前で書き出してもらいます。次のチェックリストで、各作業が契約書か見積書の明細に書かれているかを確かめます。
- CMSの更新:WordPress本体のマイナー更新は初期設定で自動です。WordPress 5.6以降に新しくインストールしたサイトは、本体のメジャー更新も初期設定で自動になります。プラグインとテーマは、初期設定では自動更新されません(WordPress.orgの自動バックグラウンド更新の設定)。誰が、どの頻度で更新し、更新後の表示を確かめるか
- バックアップ:頻度、保存先、復元を依頼したときの費用
- SSL証明書:更新を自動で行うか。CA/Browser Forumの基本要件(Baseline Requirements)では、2026年3月15日以降に発行する証明書の有効期間は最長200日、2027年3月15日からは100日です。年額で契約していても、1年の間に入れ替えが要ります
- ドメイン・サーバーの更新料:支払うのは自社か制作会社か
- 文章や画像の差し替え:月に何回、何ページまでか
- 障害と改ざん:連絡してから対応を始めるまでの時間と、復旧の費用
ステップ4. 解約時の引き継ぎを契約書の条文にする
解約時の扱いは、口頭の約束ではなく契約書の条文にします。書いておきたいのは、次の4点です。
- 引き継ぐもの:ステップ2の8つの名義と納品物
- 解約の通知期限:解約の何か月前までに伝えるか
- 引き継ぎ作業の費用:データの書き出しや移管への協力にかかる費用
- 著作権の扱い:譲渡か利用許諾か
著作権は、制作会社に依頼して作ったホームページでも、契約で譲渡しない限り制作会社に残ります。譲渡を受けるときは条文の書き方にも注意が要ります。著作権法第61条第2項は、次のように定めています。
「著作権を譲渡する契約において、第二十七条又は第二十八条に規定する権利が譲渡の目的として特掲されていないときは、これらの権利は、譲渡した者に留保されたものと推定する。」
第27条は翻訳権、翻案権など改変に関わる権利です。第28条は二次的著作物の利用に関する原著作者の権利を定めています。条文はe-Gov法令検索の著作権法で確認できます。
「著作権を譲渡する」とだけ書いた契約では、デザインに手を加える権利が制作会社に残ったと推定されます。譲渡を受けるなら「第27条及び第28条の権利を含む」と明記し、著作者人格権を行使しない旨も条文に入れます。条文の解釈で迷う点は、弁護士に確認してください。
候補の制作会社には、次の文面で同じ質問を送ると答えを比べやすくなります。
件名:ホームページ制作のお見積もりについての確認
〇〇株式会社
ご担当者様
お見積もりをありがとうございます。契約前に、公開後の運用について次の点を確認させてください。
1. 管理画面のアカウント
当社の担当者用のアカウントを発行いただけますか。権限の種類(WordPressの場合は管理者・編集者など)も教えてください。
2. アカウントの名義
ドメイン、サーバー、GA4、Search Console、Googleタグマネージャーは、どなたの名義・アカウントで作成されますか。
3. 保守契約に含む作業
月額に含む作業を作業の名前で教えてください。含まない作業の料金の目安もお教えください。
4. 解約時の引き継ぎ
解約する場合、ドメイン・サイトのデータ・デザインデータを当社または別の会社へ移せますか。手順と費用を教えてください。
5. 著作権
制作物の著作権は、譲渡と利用許諾のどちらですか。譲渡の場合、著作権法第27条・第28条の権利も含みますか。
[会社名・担当者名]
この章の結論。更新するページを決めてから、8つの名義と納品物、保守の作業名、解約の条文を順に確かめれば、候補の会社を同じ基準で比べられます。
ホームページ制作会社選びで失敗する4つの条件と防ぎ方
制作会社選びの失敗は、制作中ではなく、解約やリニューアルのときに表れます。次の4つは、契約の段階で防げる条件です。
ドメインを制作会社の名義で取ると、移管に制作会社の協力が要る
制作会社がまとめてドメインを取得すると、登録者が制作会社になることがあります。この状態で解約すると、ドメインを自社へ移す手続きに制作会社の対応が必要です。対応が遅れて更新の期限を過ぎると、そのドメインのメールアドレスも使えなくなります。
防ぐには、ドメインは自社の名義で取得し、制作会社には設定だけを依頼します。すでに制作会社の名義になっている場合は、移管の手順を制作会社を変える前のドメインの確認と依頼文で確かめてください。
サーバーと一体のプランは、解約後にデータを持ち出せないことがある
制作会社のサーバーと独自のCMSを組み合わせたプランでは、解約後に別のサーバーへ移す手順が用意されていない場合があります。月額に制作費が含まれる契約では、解約時に残りの制作費を請求される条件もあり得ます。
契約前に、解約時に受け取れるデータの形式を尋ねます。WordPressなら、データベースとファイル一式を受け取れれば別のサーバーで動かせます。月額型の総額と解約条件の見方は、サブスク型ホームページ制作の総額と解約の注意点で解説しています。
管理画面のアカウントを1つ共有すると、誰が何を変えたか追えない
制作会社から受け取ったアカウントを社内で共有すると、どの担当者がいつ何を変えたかを、アカウントの名前で見分けられなくなります。
防ぐには、担当者ごとにアカウントを発行してもらいます。退職者のアカウントを削除できるよう、自社にも担当者を追加できる権限を持っておきます。
著作権の条文が無いまま契約すると、別の会社でのリニューアルに確認が要る
契約書に著作権の条文が無ければ、著作権は制作会社に残ります。別の制作会社にデザインの一部を流用したリニューアルを依頼するとき、元の制作会社の許諾が要るかどうかを確認しなければなりません。
テンプレートやプログラムの一部は、制作会社がほかの案件にも使う部品として譲渡の対象外にすることがあります。その場合は、部品ごとに利用を許諾する条件(改変してよいか、解約後も使えるか)を条文に書きます。
この章の結論。ドメインの名義、データの形式、担当者ごとのアカウント、著作権の条文の4つを契約前に決めれば、解約やリニューアルのときに制作会社の協力を待たずに進められます。
AIで社内更新するなら、制作会社に確かめておくこと
お知らせや施工事例の文章は、AIで下書きを作れば社内で更新しやすくなります。ただし、社内で投稿できる権限と投稿の型が用意されていなければ、AIで作った下書きを制作会社へ送り、反映を待つ運用になります。
制作会社には、社内で更新するページについて、見出し・写真・本文の位置が決まった投稿の型を作れるかを尋ねます。WordPressなら、その型をブロックエディターのパターンとして登録してもらえます。利用者がパターンを作れるのはWordPress 6.3以降です。同期しない設定で登録すれば、担当者は投稿ごとにパターンを挿入し、AIの下書きを貼り付けて写真を差し替えられます(WordPress.orgのブロックパターン)。
Vibe codingのように、AIにコードを書かせて作るサイトは、CMSが無いと更新のたびにコードの修正が必要です。コードの保存先とホスティングのアカウントが誰の名義かも、8つの名義と納品物と同じように確かめます。更新の仕組みの考え方はVibe codingのサイトの更新設計で解説しています。
契約書の確認にAIを使うなら、条文を貼り付けて「解約、著作権、保守の作業に関わる条文を抜き出し、条文番号を添えて一覧にしてください」と依頼します。抜き出された条文は、必ず契約書の原文と照らし合わせます。
契約書をAIに入力する前に、使うサービスの公式ヘルプで、入力した内容がモデルの学習に使われるかどうかと、その設定の変更方法を確かめてください。
自社で行う作業と制作会社に依頼する作業
公開後の作業を、社内の担当者が判断できるかどうかで分けると、保守契約に含める作業が決まります。
- 自社で行う作業:お知らせ・実績の更新、AIを使った文章の下書き、8つの名義と納品物の管理、年1回の権限の見直し
- 制作会社に依頼する作業:WordPress本体とプラグインの更新と表示の確認、バックアップと復元、SSL証明書とサーバーの障害対応、ページの追加やデザインの変更
この分け方を制作の前に決めておきたい場合は、社内で更新できる形にするホームページ制作もご相談いただけます。どのページを誰に見てもらうかを決めてから制作し、公開後はお知らせと実績を社内で更新できる形にします。
この章の結論。AIで更新を社内に移すなら、権限・投稿の型・コードの名義の3つを制作会社に確かめておくと、AIで作った下書きを制作会社の反映待ちにせず、自社で投稿まで操作できる状態になります。
Web制作会社の選び方でよくある質問
今の制作会社がドメインの名義を持っているか、どう確かめればいいですか?
登録者の情報は公開の検索で確認できない場合があるため、制作会社に登録事業者の名前と登録者の名義を書面で尋ねるのが確実です。あわせて、登録事業者の管理画面に自社のアカウントでログインできるかも確認してください。ログインできなければ、更新や移管に制作会社の手続きが要ります。
保守契約を解約したら、Search Consoleの過去のデータは見られなくなりますか?
解約の前に、自社のGoogleアカウントをSearch Consoleの「所有者」にしておけば、解約後も自社で検索の記録を確認できます。所有権の確かめ方は、Search Consoleヘルプのサイトの所有権を確認するで案内されています。制作会社が運用から外れるときは、制作会社のユーザーの削除も依頼してください。
制作会社に「WordPressの管理者アカウントは渡せない」と言われたら、契約を見送るべきですか?
理由を確かめてから判断します。社内の変更で不具合が出たときの責任を分けるために、日常の更新は「編集者」に限る制作会社もあります。その場合は、解約時に管理者アカウントを引き渡すことを条文にしておけば、公開後の運用で困りにくくなります。
リニューアルで制作会社を変えるとき、今の会社には何を依頼すればいいですか?
依頼するのは次の5つです。
- ドメインを移す手続きへの協力
- サーバーのデータ一式
- 管理者アカウント
- GA4・Search Console・Googleタグマネージャーの権限の移行
- デザインデータと写真の原本
新しい制作会社が決まる前に、解約の通知期限と引き継ぎの費用を今の契約書で確かめておきます。
契約前に今日確かめられること
まずは、今の契約書か候補の会社の見積書を開き、ドメインの名義と著作権の条文が書かれているかを確かめてください。見積書の明細の読み方は、ホームページ制作の見積書の読み方と確認点の一覧で続けて確認できます。
候補の制作会社の答えを自社だけで比べるのは難しいと感じた方は、ホームページ制作・LP制作の相談で、お手元の見積書をもとに、各社の見積もりに含まれる作業を、ページ数・原稿・写真・更新機能・公開後の保守の項目ごとに比べてみませんか。今の状況をお話しいただくだけでも大丈夫です。
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