求人票をAIで作成|社長が決める労働条件と表現の確認表
この記事の要点
- 労働条件は社長が決め、AIには仕事内容の文案だけを任せる
- 2024年4月から、業務と就業場所の変更の範囲も求人で明示する
- AIの文案は性別・年齢・固定残業代など12項目の確認表で点検
求人票はAIで作成できます。ただし、AIに任せるのは「社長が決めた労働条件を、読みやすい文章にする作業」までです。賃金・労働時間・就業場所などの条件をAIに考えさせると、もっともらしい数字や、法令に触れる書き方が混ざります。
この記事は、自社の採用業務にAIを使えるか試そうとしている経営者・役員の方に向けて書いています。読み終わる頃には、AIに渡す労働条件メモを書き、出てきた文案を自分で点検できる状態を目指します。
扱うのは、AIに渡す情報・依頼の文面・出てきた文の確かめ方です。応募書類の選考にAIを使う話は扱いません。
Contents / 目次
求人票の作成でAIに任せる作業と、社長が決める労働条件
AIに任せてよいのは、仕事内容・1日の流れ・求める人物像を文章にする作業です。労働条件の欄は、社長が決めた値をそのまま載せ、AIには表記をそろえる以外の手を加えさせません。
理由は、職業安定法の次の2つの定めです。
- 労働条件の明示:求人を出す会社に、労働条件の明示を求めている
- 虚偽・誤解を生む表示の禁止:虚偽の表示や、誤解を生じさせる表示を禁じている
AIの文案には、自社に無い手当や「残業ほぼなし」のような文が足されることがあります。
2024年4月の改正で、求人の段階で明示する事項に次の3つが加わりました(厚生労働省「職業安定法施行規則改正(労働条件明示等)」)。
- 従事すべき業務の変更の範囲
- 就業場所の変更の範囲
- 有期契約を更新する場合の基準:通算契約期間または更新回数の上限を含む
変更の範囲とは、入社後に配置転換や転勤で変わりうる業務・場所を、あらかじめ示しておくものです。AIの文案では、この欄が書き漏れることがあります。
求人票の項目ごとに、任せる作業と社長が決めることを分けると、次の表になります。
| 求人票の項目 | AIに任せる作業 | 社長が決めて入れること |
|---|---|---|
| 仕事内容 | メモを文章にする、1日の流れにまとめる | 雇入れ直後の業務と、業務の変更の範囲 |
| 就業場所 | 最寄り駅からの案内文 | 雇入れ直後の場所、就業場所の変更の範囲、受動喫煙を防止するための措置 |
| 労働時間・休日 | 表記をそろえるだけ | 始業・終業の時刻、時間外労働の有無、休憩、休日 |
| 賃金 | 表記をそろえるだけ | 金額、固定残業代がある場合はその内訳 |
| 契約期間・試用期間 | 任せない | 期間、更新の有無と基準、上限、試用期間中の条件 |
| 社会保険 | 任せない | 適用される保険の種類 |
| 会社の特徴・求める人物像 | 箇条書きのメモを文章にする | 書いた内容が事実かどうかの確認 |
表のとおり、AIが文章を書く欄は全体の一部です。応募書類の選考にもAIを使いたい場合は、AI履歴書スクリーニングの点数表と禁止項目の作り方で別に解説しています。
求人票をAIで作成する手順
手順は5つです。最初に社長が労働条件メモを書き、AIには文案だけを依頼し、最後に確認表と原本で点検します。
ステップ1 社長が労働条件メモを書く
AIに何かを入力する前に、労働条件を1枚のメモに書き出します。次の様式は、職業安定法で求人の段階に明示する主な事項に沿って作っています。点線より上は社長が決める欄、下はAIに文章化を依頼してよい欄です。
【労働条件メモ(社長が記入)】
職種名:
雇用形態:正社員/パート・アルバイト/契約社員
契約期間:期間の定めなし/あり( か月)
更新の有無と判断の基準:
通算契約期間または更新回数の上限:あり( )/なし
試用期間:なし/あり( か月。期間中の条件が違う場合はその内容)
業務内容(雇入れ直後):
業務内容(変更の範囲):
就業場所(雇入れ直後):
就業場所(変更の範囲):
受動喫煙を防止するための措置:
始業・終業時刻:
時間外労働:なし/あり
休憩時間:
休日:
賃金:基本給 円〜 円(月給/時給)
固定残業代:なし/あり( 時間分・ 円。超えた時間分は追加で支払う)
手当:
加入する保険:健康保険・厚生年金・雇用保険・労災保険
募集する会社の名称:
派遣労働者として雇用するか:しない/する
- - - - ここから下はAIに文章化を依頼してよいメモ - - - -
1日の仕事の流れ:
入社後3か月で覚えること:
職場の特徴(事実だけ):
来てほしい人の行動(例 お客様の質問をメモして持ち帰れる):
正確な明示事項は、求人を出す前に厚生労働省の職業安定法施行規則改正(労働条件明示等)と2024年4月から労働条件明示のルールが変わりますで確かめてください。
ステップ2 AIに渡さない情報を外す
求人票の文案づくりに、個人を特定できる情報は要りません。次の3つは、メモから外してから入力します。
- 在籍している担当者の氏名と個人の給与:「〇〇さんは月給△万円」のような情報は、給与の幅だけに書き換える
- 公表前の出店・移転・新事業の計画:就業場所の変更の範囲に必要なら「会社の定める営業所」のように書き、計画の中身は入れない
- 過去の応募者・退職者の情報:「前任者が辞めた理由」などは文案に不要
使うAIのデータの扱いも確かめます。次の設定の名前は、2026年10月14日に各社の公式ヘルプで確かめたものです。各サービスの設定画面の表記は変わることがあります。
- ChatGPTの個人向けプラン:有料プランでも、設定を止めない限り、入力がモデルの学習に使われることがあります。止めるには「設定」の「データコントロール」で「すべての人のためにモデルを改善する」をオフにします(OpenAIのヘルプ「How your data is used to improve model performance」)
- ClaudeのFree・Pro・Maxプラン:「設定」の「プライバシー」にある「Help Improve our AI models」(日本語版のヘルプでは「AIモデルの改善を支援する」)をオフにすると、新しいチャットは今後のモデルの学習に使われません(Anthropicのプライバシーセンター「How do I change my model improvement privacy settings?」)
プランごとの違いはAIの法人プランと個人プランの違いで比べています。
ステップ3 AIに文案を依頼する
依頼文は、出発点のたたき台として次の程度で十分です。ポイントは「メモの数字を変えない」「足りない項目は空けておく」と最初に伝えること。
あなたは中小企業の採用担当者です。次の「労働条件メモ」と「仕事のメモ」から、[ハローワーク/自社採用ページ]に載せる求人票の文案を作ってください。
守ること
・労働条件メモの数字・日付・地名・保険の種類は1字も変えずに使う
・メモに無い待遇・手当・数字は書かない。足りない項目は【要確認】と書いて空けておく
・性別を示す言葉(〜マン、〜レディなど)と、年齢を限るとも読める言葉は使わない
・「アットホーム」「誰でも稼げる」のように、事実を確かめられない言葉は使わない
出力の形
1. 仕事内容(300字程度)
2. 1日の流れ(箇条書き)
3. 求める人物像(行動で3つ)
4. 文案のうち、メモに無い情報から書いた部分の一覧
[ここに労働条件メモと仕事のメモを貼る]
出力の形の4番目が、点検の手がかりになります。一覧に何か出てきたら、その部分を消すか、事実なら社長がメモに書き足して作成し直します。あとはAIと対話しながら、言い回しを自社に合わせて調整してください。
ステップ4 AIの文案を12項目の確認表で点検する
出てきた文案は、次の12項目で点検します。1〜8は労働条件の明示、9〜12は表現の確認です。
| No. | 確認すること | 見る欄 |
|---|---|---|
| 1 | 賃金・労働時間・休日の数字が、労働条件メモと一致しているか | 給与・勤務時間・休日 |
| 2 | 固定残業代がある場合、除いた基本給・時間数と金額・超えた分の追加支払いの3点があるか | 給与 |
| 3 | 業務の変更の範囲が書かれているか | 仕事内容 |
| 4 | 就業場所の変更の範囲が書かれているか | 勤務地 |
| 5 | 有期契約なら、更新の有無・判断の基準・上限が書かれているか | 契約期間 |
| 6 | 試用期間と、期間中の条件が違う場合はその内容があるか | 試用期間 |
| 7 | 受動喫煙を防止するための措置が書かれているか | 勤務地 |
| 8 | 加入する保険が実際と合っているか | 待遇 |
| 9 | 性別を示す職種名・表現が無いか | 職種名・本文全体 |
| 10 | 年齢を限るとも読める表現が無いか | 求める人物像 |
| 11 | 「残業ほぼなし」のような、実績で裏づけられない言葉が無いか | 本文全体 |
| 12 | AIが足した手当・制度・数字が無いか(出力の4番目と照らす) | 本文全体 |
ステップ5 求人媒体に載せる前に原本と照合する
媒体の入力欄に文案を貼ったあと、労働条件の欄だけは労働条件メモと1字ずつ照らします。媒体ごとに文字数を合わせる過程で、AIに要約させた文から条件が抜けることがあるためです。
この章で押さえるのは、条件は社長のメモから、文章はAIから、という分け方です。メモと確認表があれば、AIの文案に何が足され、何が抜けたかを自分で見分けられます。
AIで作った求人票が法令に触れやすい5つの書き方と直し方
AIの文案で起きやすいのは、性別・年齢・固定残業代・変更の範囲・誇張の5つです。原因で分けると、次の3通りになります。
- 性別・年齢を示す言葉:よく使われる言い回しを、AIがそのまま出す
- 固定残業代の内訳・変更の範囲:メモに無い項目を推測で埋めたり、要約で落としたりする
- 実績のない働きやすさ:応募を増やしたいという依頼に合わせて、AIが言葉を足す
職種名に性別を示す言葉が入る
「営業マン」「ウエイトレス」のような職種名や、「男性歓迎」「女性向きの仕事」のような文は、AIが自然な日本語として出してきます。男女雇用機会均等法第5条は、次のように定めています(e-Gov法令検索「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律」)。
男女雇用機会均等法第5条。「事業主は、労働者の募集及び採用について、その性別にかかわりなく均等な機会を与えなければならない。」
直し方は、職種名を「営業職」「ホールスタッフ」のように業務の名前にすることです。依頼文に禁止の言葉を書いても混ざることがあるので、確認表の9番目で毎回見ます。
求める人物像に年齢を限る文が入る
「若手歓迎」「20代が活躍中」のような文は、AIが求める人物像を書くときに足しやすい言葉です。労働施策総合推進法第9条は、募集・採用で年齢にかかわりなく均等な機会を与えることを求めています。
年齢を限れるのは、同法施行規則第1条の3第1項に定められた例外に当たる場合だけです。条文はe-Gov法令検索「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律施行規則」で、例外の解説は厚生労働省「募集・採用における年齢制限禁止について」の資料で確かめられます。
求める人物像は「お客様の質問をメモして持ち帰れる」のように、行動で書けば年齢に触れずに済みます。新卒採用など例外に当たるかもしれない場合は、ハローワークか労働局に確かめてから書きます。
固定残業代の内訳が抜ける
AIに「月給25万円(固定残業代含む)」と要約させると、内訳が消えます。若者雇用促進法に基づく厚生労働省の指針(青少年の雇用機会の確保及び職場への定着に関して事業主、特定地方公共団体、職業紹介事業者等その他の関係者が適切に対処するための指針)は、青少年が応募する可能性のある求人で固定残業代を採用する場合、次の3点などを明示するよう求めています。
- 固定残業代を除いた基本給の額
- 固定残業代の計算方法:固定残業代の算定の基礎にする時間数と金額
- 超えた分の扱い:その時間を超えた時間外労働・休日労働・深夜労働の割増賃金を追加で支払うこと
依頼文で「固定残業代の行は要約しない」と伝え、確認表の2番目で照らします。
変更の範囲が書かれない、または実態と違う
メモに変更の範囲を書いていないと、AIは何も書かないか、「転勤なし」と推測で書きます。実際には将来別の営業所に移る可能性があるのに「転勤なし」と載せると、入社後の配置転換で説明が食い違います。変更の範囲は、社長が実際に起こりうる業務と場所を考えて、メモの段階で決めてください。
実績のない「働きやすさ」を書き足す
「残業ほぼなし」「有給が取りやすい」「誰でも稼げる」は、応募を増やしたいという依頼に対してAIが足しやすい文です。職業安定法第5条の4は、求人の情報について虚偽の表示や誤解を生じさせる表示を禁じ、情報を正確かつ最新に保つよう求めています(e-Gov法令検索「職業安定法」)。載せるなら「前年度の月平均の時間外労働は〇時間」のように、社内の記録で裏づけられる数字に書き換えます。
この章で押さえるのは、AIの文案で消すべき言葉を5種類に分けて見るということです。確認表の2〜4番目と9〜12番目で、この5種類を毎回確かめます。
確認表は見落としを減らすためのもので、法令に合っているかの最終判断はハローワークや労働局に確かめてください。生成AIがもっともらしい誤りを出す理由は生成AIのハルシネーションを業務で減らす手順にまとめています。
社長が1人で試すことと、会社として仕組みにすること
最初は、社長が1職種だけで試すのが確実です。労働条件メモを書き、AIの文案を確認表で点検し、求人を出すまでの手順を一度通すと、どこで時間がかかるかが分かります。
効果を確かめたいなら、試す前に「求人票1枚の作成にかかった時間」を記録しておきます。仮に、これまで1枚に2時間かけていて、AIを使って1時間になったとすると、そのうち点検に何分かかったかも一緒に記録します。点検の時間が長いなら、労働条件メモの書き方に抜けがある合図です。
会社として採用担当者にも広げる場合は、次の3つを先に決めます。
- 労働条件メモの様式:職種ごとに担当者が変わっても、同じ様式で条件を書く
- 確認する担当者と最終承認者:確認表で点検する担当者と、労働条件の欄を承認する役職者を分ける
- 使うAIとプラン:入力が学習に使われない設定のプランにそろえ、個人のアカウントで使わない
採用担当者がAIの使い方と、入力してよい情報の線引きをまだ共有していない場合は、経営者と社員で考えるAI活用研修で、情報の扱い方を先に決める進め方もあります。少人数・120分で、AIの仕組みと伝え方、情報の扱いを一緒に学べます。入力してはいけない情報の決め方はAIに入力してはいけない個人情報と社内ルールの作り方も参考になります。
求人票の作成のあとに、応募者の書類の評価までAIに広げるなら、もう1つ確認が要ります。経済産業省・総務省の「AI事業者ガイドライン」は、AIを利用する事業者に向けて、透明性や説明責任などの考え方を示しています。ガイドラインは改訂されるので、応募者の評価にAIを使う前に、このページで最新版の該当する項目を確かめてください。
海外では採用でのAI利用に規制を設ける動きもあり、労働政策研究・研修機構の「採用・雇用におけるAIの活用と規制(アメリカ:2025年10月)」で紹介されています。
この章で押さえるのは、1職種で手順を通してから、様式・承認者・プランの3つを決めて広げる順番です。
求人票のAI作成でよくある質問
ハローワークの求人票も、AIで作った文を使っていいの?
使えます。ハローワークの求人申込書は項目ごとに欄が分かれているので、賃金や労働時間の欄は労働条件メモの値をそのまま入力し、AIには仕事内容の欄の文案だけを依頼します。欄の文字数に合わせて要約させたときは、条件が抜けていないかを原本と照らしてください。
求人媒体に付いているAIの作成機能と、ChatGPTはどちらを使えばいい?
どちらでも、労働条件を社長が決めて渡し、文案を確認表で点検する手順は同じです。選ぶときは、入力した内容がどう扱われるか(学習に使われるか、媒体の外に保存されるか)を各社の規約で確かめます。どちらを使う場合も、法令に合っているかの判断は自社で行います。
今出している求人票をAIに読ませて、改善点を出させてもいい?
できます。在籍している担当者の氏名や個人の給与を外してから入力し、「業務と就業場所の変更の範囲が書かれているか」「性別や年齢を限る表現が無いか」を指摘させると、2024年4月の改正前に作った求人票の抜けを探す用途に使えます。指摘を採用するかは社長が判断します。
採用が決まったあとの労働条件通知書もAIで作れる?
労働条件通知書は、厚生労働省のモデル労働条件通知書を土台に、社長が決めた条件を書き込むほうが確実です。2024年4月から、契約を結ぶときにも業務と就業場所の変更の範囲などの明示が必要です(厚生労働省「2024年4月から労働条件明示のルールが変わります」)。求人票と違う条件で契約する場合、職業安定法は、その違いを応募者に示すことも求めています(e-Gov法令検索「職業安定法」)。
今日できる最初の一歩は、いま出している求人票を1枚開き、業務と就業場所の「変更の範囲」が書かれているかを確かめることです。応募が来たあとの選考にAIを使うか検討しているなら、続けてAI履歴書スクリーニングの点数表の作り方を読んでみてください。
求人票づくりから始めて、見積もりや議事録など、ほかの業務でもAIに任せる作業を決めたい方は、コレットラボのAI導入支援・DX支援にご相談ください。どの業務から始めるかを、現在の業務の流れを伺いながら一緒に洗い出します。
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