問い合わせフォームの仕組み|送信データの保存先と個人情報の扱い
この記事の要点
- 1件の送信データは、メール・データベース・通知先など複数の場所に複製されて残る
- 保存先の棚卸し表と削除依頼への対応手順を本文に掲載
- 先に決めるのは利用目的・保存期間・アクセス権限・削除の4つ
ホームページの問い合わせフォームは、「入力欄」「送信処理」「保存と通知」の3つの区間でできています。送信ボタンが押されると、入力内容はサーバーへ送られ、そこからメール送信・データベース保存・チャット通知などに枝分かれします。つまり、1件の問い合わせは1か所ではなく、複数の場所に複製されて残ります。
この記事は、自社サイトのフォームを管理する立場になったものの、送信された内容がどこに保存されているのか把握できていない広報・総務・営業の方に向けて書いています。読み終える頃には、自社の保存先を紙1枚に洗い出し、保存期間と削除の手順を決められる状態を目指します。
フォームの設置手順そのものはContact Form 7の設定方法|確認画面と自動返信までで解説しているので、まだ設置していない方は先にそちらをご覧ください。この記事では、設置済みのフォームで「データがどこへ行き、どう扱うべきか」に絞ってお伝えします。
Contents / 目次
問い合わせフォームの仕組みは、入力・送信処理・保存通知の3区間
問い合わせフォームの仕組みは、送信ボタンを境に3つの区間に分けて考えると一気に見通せます。前半は訪問者のブラウザの中、真ん中はサーバー上の処理、後半がデータの行き先です。トラブルも個人情報の問題も、ほとんどが後半の「保存と通知」で起きます。
| 区間 | 何が起きているか | ここで決まること |
|---|---|---|
| ①入力欄(ブラウザ側) | 訪問者が入力した値が、各入力欄の名前(name属性)とセットで保持される | 入力のしやすさ、離脱率、どんな項目を集めるか |
| ②送信処理(サーバー側) | 入力値がまとめてサーバーへ送られ、必須チェック・スパム判定を経て処理される | 迷惑メール対策、送信エラー、確認画面の有無 |
| ③保存と通知(送信後) | メール送信、データベース保存、チャット通知、外部サービス連携などに枝分かれする | データの保存先の数、個人情報の管理範囲、削除の難易度 |
入力欄の正体は「名前」と「値」のセット
フォームの入力欄は、1つずつに「名前」が付いています。HTMLでいうname属性です。送信されるのは、この名前と入力された値のペアです。管理画面で「会社名」と表示されている欄も、データとしてはcompany=株式会社○○という形でサーバーへ渡ります。
最小構成のHTMLだと、こうなります。実際にはこれだけでは動かず、受け取る側の処理(action先)が必要です。
<!-- フォームの最小構成。action=送信先、method=送り方 -->
<form action="/contact-send" method="post">
<label for="company">会社名(必須)</label>
<input type="text" id="company" name="company" required autocomplete="organization">
<label for="email">メールアドレス(必須)</label>
<!-- type="email" はメールアドレス入力用の型。表示されるキーボードはOSやIMEによって異なる -->
<input type="email" id="email" name="email" required autocomplete="email">
<label for="tel">電話番号(任意)</label>
<!-- inputmode="tel" は電話番号入力用の指定。対応する環境では数字中心のキーボードが表示される -->
<input type="tel" id="tel" name="tel" inputmode="tel" autocomplete="tel">
<label for="message">お問い合わせ内容(必須)</label>
<textarea id="message" name="message" required></textarea>
<button type="submit">送信する</button>
</form>
input要素のtype属性やinputmode属性の仕様は、MDN Web Docs「input要素」で公開されています。実際にどんなキーボードが出るかは端末やIMEによって変わるので、自社で使う端末で確認してください。
ここで押さえておきたいのがmethod="post"の部分です。POSTとGETの違いは、入力内容をどこに載せて送るかにあります。
- POST:入力内容をURLではなく、リクエストの本体に載せて送る
- GET:入力内容をURLの末尾にくっつけて送る
GETにすると、氏名やメールアドレスがURLに乗ります。URLはブラウザの履歴やサーバーのアクセスログに記録されうるため、機微な情報をURLに載せないことが推奨されています。この点はMDN Web Docs「form要素」でmethod属性の説明として記載されています。
問い合わせフォームでPOSTを使うのは、この違いが理由です。ただしPOSTでも中身が暗号化されるわけではないので、SSL化とセットで考えてください。
通信の暗号化と、保存されたデータの安全は別の話
SSL化(URLがhttpsで始まる状態)が守るのは、ブラウザからサーバーまでの通信経路です。MDN Web Docs「TLS」でも、TLSは通信の暗号化とサーバーの認証を担う仕組みとして説明されています。サーバーに届いたあと、データベースやメールボックスに置かれた状態のデータが暗号化されるかどうかは、使っているサーバーやサービスの仕様によって変わります。自社の環境がどうなっているかは、契約先の提供元が公開しているドキュメントで確認してください。
ここを混同して「httpsにしてあるから個人情報は安全」と考えてしまうケースをよく見かけます。移動中の安全と、保存されたあとの安全は別々に手当てが必要です。SSL自体がまだの場合は、SSL化しないとどうなるか|無料で対応する手順と失敗回避を先に済ませてください。
この章の結論。仕組みの見どころは③の「保存と通知」です。ここを図面にできれば、個人情報の管理も削除依頼への対応も、あとは作業に落とし込むだけになります。
送信データの保存先を洗い出す5ステップ
保存先の洗い出しは、実際にテスト送信を1件流して、それがどこに現れるかを追いかけるのが一番確実です。設定画面を読むより早く、抜けも出ません。所要時間は、社内のツール構成や連携しているサービスの数によって大きく変わります。
ステップ1。テスト送信を1件流す
自社のフォームから、テスト用の内容で1件送信します。このとき、本文にテスト送信 2026-08-30 保存先調査のような検索しやすい目印を入れておくのがコツです。あとで各ツールを横断して検索するときに、この文字列で一発で見つかります。
氏名やメールアドレスは、実在する取引先のものではなく、社内の人間のものを使ってください。テストのつもりで外部の実アドレスを入れると、そのまま自動返信が飛びます。
ステップ2。メール系の行き先を全部たどる
メールは、最も保存先が増えやすい経路です。次の順に確認していきます。
- 管理者宛の通知メールが届いた受信箱(info@など)を開き、目印の文字列で検索する
- その受信箱に転送設定がないか確認する。個人アドレスや外部ドメインへ転送していれば、そこも保存先になる
- 通知メールの宛先・CC・BCCに、誰のアドレスが入っているかをフォームの設定画面で確認する
- 自動返信メールの「送信済み」が、どこに残っているかを確認する
- Gmailや外部のメール配信サービスを経由して送っている場合、その管理画面にログが残っていないか確認する
通知メールがそもそも届かない場合は、保存先の調査より先にそちらの解決が必要です。原因の切り分けはWordPressでメールが届かない原因と直し方|WP Mail SMTP Gmail設定にまとめています。
ステップ3。サイト側のデータベースに残っているか確かめる
WordPressのフォームプラグインは、大きく分けて「メールを送るだけのもの」と「送信内容をデータベースにも保存するもの」があります。ここは製品とバージョンによって仕様が変わるので、思い込みで判断せず、実際に管理画面を見て確かめてください。
確認の仕方はシンプルです。WordPressの管理画面にログインし、左メニューにフォーム関連の項目が出ていたら開き、ステップ1のテスト送信が一覧に表示されるかを見ます。表示されればデータベースに保存されています。表示されない、またはそもそも一覧の機能がなければ、そのプラグインは保存していません。
保存機能の有無や、保存を有効にする設定の場所は、プラグインのバージョンで変わることがあります。正確な仕様は、使っているプラグインの公式ドキュメントで確認してください。
ステップ4。通知・連携先をたどる
SlackやChatworkへの通知、Googleスプレッドシートへの追記、CRMや営業支援ツールへの登録を設定していれば、そこにも同じ内容のコピーが増えています。ステップ1の目印で、それぞれのツールを検索してください。
ここで見落としやすいのが、過去に試して使わなくなった連携です。「試験導入したツールに、今もデータだけが流れ込み続けている」という状態が実際に起きます。使っていないツールへの連携は、この機会に止めましょう。
ステップ5。棚卸し表に書き出す
ここまでで見つかった保存先を、次の形式の表に書き出します。書き方の例なので、保存期間や消し方の欄は自社の実態に合わせて埋めてください。空欄が残る行が、そのまま管理できていない箇所です。
| 保存先 | 具体例 | 誰が見られるか | 保存期間 | 消し方 |
|---|---|---|---|---|
| サイトのデータベース | フォームプラグインの送信一覧 | WordPress管理者 | 1年 | 管理画面から削除 |
| 通知メールの受信箱 | info@(共有アカウント) | 総務2名・営業3名 | 3年 | メールを削除しゴミ箱も空に |
| 転送先 | 担当者の個人アドレス | 担当者本人 | 3年 | 本人が削除 |
| 自動返信の控え | 送信済みフォルダ | 総務2名 | 1年 | メールを削除 |
| チャット通知 | チャットツールの社内チャンネル | チャンネル参加者全員 | 各ツールの保持設定による | 保持設定を確認して決める |
| 表計算・CRM | スプレッドシート、営業支援ツール | 営業部全員 | 案件終了後3年 | 行を削除 |
| サーバーのバックアップ | 日次バックアップ7世代 | サーバー管理者 | 7日で上書き | 期間経過を待つ |
チャットツールのメッセージ保持期間は、プランや管理者の設定によって変わります。自社の設定は、使っているツールの管理画面と公式ドキュメントで確認してから表に書き入れてください。
この表を実際に埋めてみると、保存先の数は使っているツールの構成によって大きく変わります。上の例で7か所です。「フォームの内容はinfo@に届いているだけ」と思っていた場合、書き出すと行数はそれより増えます。
AI連携を足すと、保存先がもう1か所増える
問い合わせ内容をAIに要約させたり、返信の下書きを作らせたりする使い方があります。工数は減りますが、仕組みの面では「保存先が1か所増えた」ことになります。問い合わせ本文が、AIサービス側へ送られるからです。
AIを挟むなら、始める前に次の3点を確認してください。
- 入力データの学習利用:送ったデータがモデルの学習に使われない設定になっているか。扱いはサービスと契約プランによって異なるので、利用するサービスの公式ポリシーと管理画面の設定を自社で確認する
- 保管される場所と期間:送ったデータがサービス側にどれだけ残るか。棚卸し表に1行足せるだけの情報が公表されているか
- プライバシーポリシーとの整合:個人情報を外部のサービスで処理することが、自社の公表内容と食い違っていないか
そのうえで、AIに丸ごと投げない設計にするのが現実的です。要約や下書きの作成はAIに任せ、送信先のメールアドレスと社名は人が目視で確認してから返信する。この線を引いておくと、宛先違いという最も痛い事故を防げます。
この章の結論。テスト送信を1件流して目印の文字列で全ツールを検索すれば、保存先を一通り洗い出せます。表の空欄が、そのまま次に手をつける場所になります。
個人情報の扱いで先に決める4つのルール
保存先が見えたら、次に決めるのは利用目的・保存期間・アクセス権限・削除の4つです。この4つが決まっていれば、問い合わせ対応も、万一のときの説明も、社内で判断がぶれなくなります。
個人情報保護法は、個人情報取扱事業者に対して、取り扱う個人データの安全管理のために必要かつ適切な措置を講じることを求めています(安全管理措置)。条文と解釈の詳細は個人情報保護委員会「法令・ガイドライン等」で公開されているので、自社の対応を検討する前に原文を確認してください。フォームの保存先を把握していない状態は、この安全管理措置を検討する前の段階にあたります。法改正の動向は、個人情報保護委員会「令和8年 改正個人情報保護法について」で公表されているので、定期的に確認してください。
ルール1。利用目的を具体的に書いて、実態と合わせる
個人情報を取得するときの利用目的の取り扱いについては、個人情報保護委員会「法令・ガイドライン等」で条文とガイドラインが公開されています。自社が何をどこまで行う必要があるかは、原文を確認したうえで判断してください。フォームの場合、プライバシーポリシーへの記載と、フォームの送信ボタン付近への案内文の2か所で対応するのが実務的です。
フォーム下に置く案内文は、この程度の分量で足ります。
ご入力いただいた個人情報は、お問い合わせへの回答と、
そのために必要な連絡のために利用します。
取り扱いの詳細は[プライバシーポリシー]をご確認ください。
気をつけたいのは、書いた目的と実際の使い方をずらさないことです。「問い合わせへの回答のため」とだけ書いておきながら、あとからメールマガジンの配信リストに入れる、という運用は目的の範囲を超えます。メール配信もするなら、最初からその旨を利用目的に含めておきます。
プライバシーポリシー自体の整え方は、プライバシーポリシーをAIで下書き|中小企業サイトの整え方で手順をまとめています。ひな形を写すだけだと実態とずれるので、自社の保存先を棚卸ししたあとに書き直すのが順番としては正解です。
ルール2。保存期間を保存先ごとに決める
保存期間は、法律で一律に「何年」と決まっているわけではありません。事業の実態に合わせて自社で決め、その期間を過ぎたら消す、という運用にします。決め方の目安は次のとおりです。
- 受注につながらなかった問い合わせ:対応完了から1年。再度の相談に備える必要が薄いため短めでよい
- 商談・見積もりに進んだ問い合わせ:案件終了から3〜5年。契約書や請求書との整合を取り、経理の保存年限に合わせる
- 採用に関する問い合わせ:選考終了から1年程度。採用担当以外が見られない場所へ移す
- クレーム・トラブル対応:解決から5年。再発時の経緯確認に使うため、他と分けて保管する
短期間で消すつもりのデータでも、本人からの開示や利用停止の請求への対応が必要になる場合があります。どのデータがその対象になるかは保有の状況によって変わるため、「すぐ消すから関係ない」と決めつけず、個人情報保護委員会「法令・ガイドライン等」で条文とガイドラインを確認したうえで判断してください。
ルール3。誰が見られるかを、保存先ごとに決める
棚卸し表の「誰が見られるか」の列を、実際の名前で埋めてください。ここで浮かび上がるのが、意図せず広がっているアクセス範囲です。
よくあるのが、チャットツールの全社チャンネルにフォームの内容がそのまま流れているケースです。パートやアルバイトを含めた全員が、取引先の担当者名と電話番号を見られる状態になっています。通知には「新しい問い合わせがあります」とだけ出し、内容は管理画面で見に行く形にすれば、この範囲は絞れます。
ルール4。削除の手順を、棚卸し表の順に書いておく
「問い合わせした内容を削除してほしい」という連絡は、実際に来ます。そのときに慌てないよう、手順を先に作っておきます。棚卸し表の行数分だけ、消す場所があるという前提で組み立てます。
- 本人確認をする。フォームに書かれていたメールアドレス宛に返信し、そのやり取りの中で依頼を受ける
- 棚卸し表を開き、上から順に対象データを検索する(氏名とメールアドレスの両方で検索する)
- データベース、メール受信箱、転送先、チャット、表計算・CRMの順に削除する
- メールはゴミ箱から完全に削除するところまで行う。ゴミ箱に入れただけでは残っている
- バックアップだけは即時に消せないため、上書きされるまでの期間を本人に伝える
- 対応日と対応した範囲を記録に残す
バックアップの中のデータは、その場で消せないことがほとんどです。「バックアップは7日で上書きされるため、その時点で完全に削除されます」と正直に伝える方が、無理に「すべて消しました」と答えるより誠実です。
この章の結論。利用目的・保存期間・アクセス権限・削除手順の4つを紙1枚に書けば、法対応の土台はできます。棚卸し表と削除手順は、同じ順番で並べておくと運用が崩れません。
問い合わせフォームでよくある失敗と回避法
ここからは、フォームの保存と通知まわりで実際によく見かける失敗を挙げます。どれも、設置した直後は問題なく動いていたのに、時間が経つと表面化するタイプのものです。
失敗1。メール送信だけの構成で、通知が迷惑メールに落ちて問い合わせが消える
フォームプラグインの中には、送信内容をデータベースに保存せず、メールを送るだけのものがあります。
この構成のとき、通知メールが迷惑メールフォルダに振り分けられたり、サーバーのメール送信が止まったりすると、問い合わせがあった事実ごと消えます。
誰も気づかないまま数か月が過ぎ、「そういえば最近フォームからの連絡がない」と気づいたときには手遅れです。
回避法は2つあります。
- データベースにも保存する:送信内容をサイト側に残す設定にして、メールが届かなくても管理画面で確認できるようにする
- 通知先を2系統にする:片方を別ドメインのアドレスにしておけば、片方が止まってももう片方で気づける
両方やっておくと、通知が届かないことによる取りこぼしを防げます。あわせて、月に1度は自分でテスト送信して届くかを確認してください。
失敗2。自動返信メールに、送信内容を全文引用して返している
「お問い合わせありがとうございます。以下の内容で承りました」として、入力内容を全文引用する自動返信は広く使われています。ただし、これは送信者がメールアドレスを打ち間違えたとき、赤の他人に会社名・氏名・電話番号・相談内容が丸ごと届く仕組みでもあります。
確認画面がないフォームでは、入力した内容を送信前に見直す機会がありません。回避法は、自動返信の引用を最小限にすることです。
この度はお問い合わせいただき、ありがとうございます。
以下の内容で受け付けました。
受付日時:2026年8月30日 14時05分
お問い合わせ区分:サービスについて
内容の詳細は、担当者からの返信メールにてあらためてご確認いただけます。
2営業日以内に担当者よりご連絡いたします。
受付日時と区分だけを返し、本文は載せない形です。送信者側は「送れたかどうか」が分かれば十分なので、これで用は足します。打ち間違い自体を減らしたい場合は、確認画面を入れる方法もあります。
失敗3。通知先に、制作会社や退職者のアドレスが残ったまま
既存サイトを引き継いだときは、次の2つを必ず確認してください。
- 制作会社のテスト用アドレス:サイトを作ってもらったときの設定で、CCに入ったままになっている
- 前任者の個人アドレス:宛先に残っていて、退職後もそのメールボックスに問い合わせが届き続けている
回避法は、棚卸しのステップ2で挙げた「宛先・CC・BCCの確認」を、担当者が変わるたびに行うことです。あわせて、通知先を個人アドレスにせず、info@のような共有アドレスに集約し、そこから社内で共有する形にしておくと、人が入れ替わっても設定を触らずに済みます。
失敗4。削除依頼にデータベースだけ対応して、他が残る
削除依頼を受けて、フォームプラグインの管理画面から該当のデータを消し、「対応完了」と返信する。ここまではよくある流れです。
ところが、同じ内容は他の場所にも残っています。通知メールは受信箱に、チャットツールにはログとして、営業がコピーしたスプレッドシートにも入っています。
この状態で「削除しました」と回答してしまうと、後日そのデータが別の場所から出てきたときに、説明のしようがなくなります。
回避法は、前章の削除手順を棚卸し表とセットで運用することです。表の行を上から順につぶし、消した場所と消せなかった場所(バックアップなど)を記録に残します。手順がないから慌てるのであって、手順があれば難しい仕事ではありません。
失敗5。スパム送信で受信箱が埋まり、本物が埋もれる
対策なしのフォームは、自動送信プログラムの標的になります。英文のスパムが繰り返し届くようになると、本物の問い合わせがその中に紛れます。さらに、データベース保存を有効にしていれば、そのゴミデータも溜まり続けます。
回避法は、スパム判定の仕組みを入れることです。設置手順は問い合わせフォームのスパム対策|reCAPTCHA v3の設置手順にまとめています。導入する仕組みが訪問者にどんな操作を求めるかは製品によって違うので、契約前にその製品の公式ドキュメントで確認してください。
この章の結論。5つの失敗はどれも「通知が1系統しかない」「棚卸しをしていない」という同じ根っこから出ています。通知の二重化と棚卸し表の2つで、ほとんどが防げます。
フォーム運用で出てくる現場の妥協点
ここまで整理の手順を書いてきましたが、実際には全部を理想どおりにはできません。現場で判断が分かれる箇所と、その落としどころをお伝えします。
外部のフォームサービスに移すと、保存先は減るが管理する相手が増える
フォーム作成サービスを使うと、自社サーバーにデータを持たずに済み、管理画面で対応状況も追えます。保存先の数は確かに減ります。ただし、個人データの取り扱いを外部に任せる形になるので、その委託先を選び、状況を把握しておく責任が新しく生まれます。
選ぶときに確認したいのは、次の3点です。
- データの保管場所:国内か国外か。国外の場合は法令上の整理が変わることがあるため、契約前に確認しておく
- 退会したときの扱い:解約後にデータがどうなるか、期間を置いて消えるのか、自分で消せるのか
- アカウントの権限:見られる範囲を人ごとに分けられるか
サイトの管理画面に誰も入れない状態が、いちばん困る
制作会社に作ってもらったサイトで、WordPressの管理画面のログイン情報を自社が持っていないケースがあります。この状態だと、通知先のアドレスを1つ変えるだけでも依頼と費用が発生し、削除依頼への対応も自社では完結できません。
制作を依頼するときは、費用の話と同じくらいの温度で「管理画面のアカウントを自社にも発行してもらえるか」「通知先の変更は自社でできるか」を確認してください。運用の主導権をどちらが持つかは、制作費よりも後々の負担に効いてきます。制作会社の選び方全般については、ホームページ制作会社の選び方|費用相場と失敗しない判断軸で判断軸をまとめています。
見落とされやすいのは、フォーム周辺のランニングコスト
フォーム自体は無料のプラグインで作れるため、コストがかからないと思われがちです。実際には、メールを確実に届けるための送信サービス、保存機能を持つプラグインの有料版、バックアップの保管など、周辺に小さな費用が発生します。1つずつは少額でも、複数を合わせると年間で無視できない額になります。
ここで「無料の範囲でやろう」と粘りすぎると、通知が届かない構成のまま運用することになり、問い合わせを取りこぼします。取りこぼした1件の商談と、月々数百円の送信サービスを比べれば、判断は難しくないはずです。
問い合わせ件数が少ないうちは、台帳ツールは要らない
問い合わせ管理システムやCRMは便利ですが、件数が少ないうちは導入しても使われずに終わります。共有メールボックスと1枚の表計算シートで回っている間は、そのままで構いません。むしろツールを増やすほど保存先が増え、削除依頼への対応が面倒になります。
複数人で対応するようになり、「誰が返信したか分からない」「二重に返信した」が起き始めたら、そのときに検討すれば間に合います。判断の基準は件数そのものではなく、対応する人数と1件あたりの重さです。
この章の結論。妥協していいのはツールの数と機能で、妥協してはいけないのは「自社が管理画面に入れること」と「通知が確実に届くこと」の2つです。
保存先を整理した会社に起きる変化
棚卸し表を作って運用を整えると、目に見えて変わるのは次の3つです。どれも派手ではありませんが、担当者の心理的な負担が確実に軽くなります。
削除依頼への対応が、その日のうちに終わる
棚卸し表と削除手順があれば、削除依頼を受けたときに消す場所が最初から分かっています。表がない状態だと、まずどこに保存されているかの調査から始まります。この差は、対応の速さそのものよりも、「調べないと答えられない」という不安がなくなる点で大きいです。
通知が届かないことによる取りこぼしを防げる
通知を2系統にしてデータベース保存も有効にすると、通知メールが1つ届かなかったせいで問い合わせに気づかない、という事態は起きなくなります。ただし、送信前の離脱やスパム判定による誤除外、社内での対応漏れなど、他の経路は別に手当てが必要です。
取引先から「先週フォームから送ったんですが」と言われて心当たりがない、という経験がある会社は、まずここから確認してください。
取引先からの確認に、その場で答えられる
BtoBの取引では、取引開始時に個人情報の取り扱いについて確認を求められることがあります。「Webフォームで取得した情報はどこに保存し、何年で削除していますか」という質問に、棚卸し表を見ながらその場で答えられるかどうかで、相手の受ける印象は変わります。
この確認は、大企業や自治体との取引ほど厳しくなります。すでに整理してある会社は、聞かれた時点で1枚の表を出すだけで済みます。整理していない会社は、そこから調査を始めることになり、契約手続きが止まります。
整理が終わったら、次はフォーム自体の改善へ
保存先と個人情報の扱いが固まったら、次に効くのは入力項目の見直しです。項目が多いフォームは、それだけで送信をやめる人が出ます。集める項目を減らせば、管理する個人情報も減るので、この記事の内容とも噛み合います。具体的な絞り方は問い合わせフォームは5項目に絞る|BtoBの入力設計と問い直しにまとめています。
この章の結論。整理の効果は、削除依頼への対応時間、取りこぼしの防止、取引先への説明の3つに出ます。どれも「聞かれたときに答えられる」状態を作る投資です。
問い合わせフォームの仕組みについてよくある質問
フォームプラグインを使っていますが、送信内容はサイトのどこかに保存されているんですか
製品によって違います。メールを送るだけで保存しないものと、データベースにも保存するものがあります。確認方法は、WordPressの管理画面にフォームの送信一覧が出るかどうかを見ることです。一覧に自分のテスト送信が表示されれば保存されています。正確な仕様は、使っているプラグインの公式ドキュメントで確認してください。
フォームの下の同意チェックボックスは、法律上つけないといけないものですか
チェックボックスそのものが法律で必須と決まっているわけではありません。利用目的の取り扱いについては、個人情報保護委員会が公開している条文とガイドラインを確認してください。実務では、フォーム付近に利用目的を1〜2行で書き、プライバシーポリシーへリンクする形が一般的です。チェックは、確認してもらった記録を残す手段として使われています。
フォームの通知メールを、担当者の個人スマホに転送していますが問題ありますか
転送先も保存先の1つとして数え、棚卸し表に書き、削除のときにその端末からも消す運用にしてあれば問題ありません。危ないのは、表に載っていない転送が動いている状態です。担当者が変わったときに設定が残り続けるので、通知先は共有アドレスに集約し、そこから社内共有する形をおすすめします。
Googleフォームを会社の問い合わせ窓口に使い続けても大丈夫ですか
使えますが、確認すべき点が2つあります。
- 回答スプレッドシートの共有範囲:リンクを知っている人が閲覧できる設定のままだと危険です
- 利用目的の表示:フォームの説明文に、利用目的とプライバシーポリシーへのリンクを入れてください
デザインを自社サイトに合わせたい段階になったら、移行を検討する時期です。
過去の問い合わせデータが何年分も溜まっています。まとめて消していいですか
先に保存期間のルールを決めてから、期間を過ぎたものを消す順番にしてください。いきなり消すと、進行中の商談の経緯や、過去のトラブルの記録まで失うことがあります。受注につながらなかった問い合わせは1年、商談に進んだものは案件終了から3〜5年、といった区分で線を引くのが実務的です。
今日の一歩と、相談先
まずは自社のフォームから、本文に「テスト送信」と目印を入れて1件送ってみてください。それが届いた場所を数えるだけで、今どこまで把握できているかが分かります。数えた先の整理は、この記事の棚卸し表をそのまま使ってください。
フォームからの問い合わせが期待より少ないと感じている場合は、保存先の問題ではなく導線の問題かもしれません。原因の切り分けは問い合わせが来ないホームページの原因5つと改善手順を先にご覧ください。
棚卸ししてみたら保存先が思った以上に散らばっていた、管理画面に自社が入れず手を出せない、という状態でしたら、コレットラボのホームページ制作・運用支援でご相談ください。現状の構成を一緒に決めるところからで構いません。問い合わせフォーム設置まで行うWeb制作から、お気軽にお声がけください。
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