生成AIの社内活用例7選|中小企業が業務別に任せる作業と確認点

生成AIの社内活用例7選|中小企業が業務別に任せる作業と確認点

この記事の要点

  • 任せやすいのは議事録・返信下書き・見積など7業務。一覧表で比較
  • 最初の1業務は4つの基準で選ぶ。点数表の使い方を本文で解説
  • 作成と確認の時間を2週間記録。まねても定着しない4条件も紹介

生成AIを社内で使いやすいのは、次の7業務です。

  • 議事録
  • 問い合わせメールの返信
  • 見積書のたたき台
  • 手順書
  • 社内規程への回答
  • 求人票
  • 領収書の読み取り

どれも、材料をAIに渡すと下書きが返り、社内で確認して仕上げる形で使えます。最初から7つ全部を試さず、自社で毎週くり返している1業務から始めると、効果を確かめやすくなります。

AIを契約したものの、社員が何に使えばいいか分からず止まっている経営者・総務・営業責任者の方に向けた記事です。読み終わる頃には、自社で最初に試す1業務と、2週間で記録する数字を決められる状態を目指します。

社内ルールの作り方は生成AI社内ルールのサンプルと12項目のひな形で解説しています。この記事では、業務ごとの使いどころと試し方に絞ってお伝えします。

Contents / 目次
  1. 生成AIの社内活用例7つの一覧と、最初の業務を選ぶ4つの基準
  2. 業務別に見る生成AIの活用例7つ
  3. 自社の1業務で生成AIを試す4ステップ
  4. 他社の活用事例をまねても定着しない4つの条件
  5. 生成AIの社内活用でよくある質問

生成AIの社内活用例7つの一覧と、最初の業務を選ぶ4つの基準

生成AIの社内活用は、次の7業務から選ぶと始めやすくなります。7業務に共通するのは、AIが下書きをつくり、最終的な判断は社内で行うという分担ができる点です。

ここで挙げる7つは、特定の会社の成果報告ではありません。中小企業でくり返し発生する業務に生成AIを当てはめた活用例です。自社で同じ使い方を試すときに、AIに何を渡し、社内でどこを確認するかが分かるように、業務別に並べています。

業務AIに任せる作業AIに渡す材料社内で確認すること
議事録決定事項・宿題・保留事項に分けて書き出す会議の録音の文字起こし固有名詞、数字、「決定」と「検討」の区別
問い合わせメールの返信返信文の下書き問い合わせ本文、過去の返信文価格・納期・対応可否などの約束
見積書・提案書品目の洗い出し、似た過去案件の提示顧客名を伏せた過去の見積書、依頼内容単価、合計金額
手順書質問役、手順の書き出しベテラン社員の話の録音判断の分かれ目に抜けがないか
社内規程への回答社員の質問への一次回答就業規則、経費精算のルール回答のもとになった文書と改定日
採用求人票、スカウト文、面接質問の下書き仕事内容、1日の流れ、勤務条件条件の数字、仕事に関係のない質問
経理領収書・請求書の項目の読み取り領収書・請求書の画像やPDF金額、日付、登録番号、勘定科目

7つのうち、どれから始めるかは次の4つの基準で選びます。

  • 毎週くり返す:毎週発生する業務ほど、2週間の試行で比べられる件数が集まる
  • 入力と出力の形が決まっている:書式が決まっていると、AIの下書きの良し悪しを比べやすい
  • 確認できる社員がいる:AIの下書きを元データと照合する担当を決められる
  • 材料がデジタルになっている:メールやファイルにある材料は、そのままAIに渡せる

4つとも当てはまる業務ほど、試した結果を2週間で判断しやすくなります。反対に、材料が紙や口頭にしかない業務は、AIを使う前に記録の形を決める必要があります。最初の1業務の選び方は、中小企業がAI導入で最初に選ぶ1業務の決め方でも詳しく解説しています。

業務の候補は挙がっても、AIに任せる作業と社内で確認する作業の境目を、社内だけでは決めきれないこともあります。その場合は、議事録や見積もりづくりのAI導入支援で、業務を1つ選び、入力フォームと手順書まで作る進め方もあります。

業務別に見る生成AIの活用例7つ

7業務とも、AIに任せるのは下書きまでです。ここからは業務ごとに、どんな会社に向くか、何を渡すか、どこを確認するかを順に紹介します。

議事録と会議の宿題の書き出し

議事録では、録音の文字起こしをAIに渡し、決定事項・宿題・保留事項に分けて書き出させます。会議のあとに議事録を書く時間が取れず、宿題の担当と期限が曖昧なまま次の会議を迎えている会社に向いています。

確認するのは、固有名詞と数字、そして「決定」と「検討」の区別です。会議で「検討します」と話した内容を、AIが「決定」として書くことがあります。録音から清書までの流れは、録音から清書まで確認中心で回す議事録の自動化手順で解説しています。

以下は[会議名]の文字起こしです。
次の3つに分けて書き出してください。
1. 決定事項
2. 宿題(担当者と期限を併記。発言に無い期限は「未定」と書く)
3. 保留事項(誰が何を確認するか)
発言に無い内容は足さないでください。

[文字起こしを貼り付け]

これは出発点のたたき台です。自社の議事録の書式に合わせて、AIと対話しながら項目を詰めてください。

問い合わせメールの返信下書き

問い合わせメールでは、よく届く質問に送った過去の返信文を参考として渡し、新しい問い合わせへの返信を下書きさせます。同じ質問への返信を毎回ゼロから書いている営業や総務の担当者に向いています。

確認するのは、価格・納期・在庫・対応可否のように、会社としての約束になる言葉です。AIは過去の返信を参考にして「対応可能です」と書くことがあります。送信前に、最新の価格表や在庫の状況と照合してください。

過去案件を使った見積書と提案書のたたき台

見積書では、顧客名を伏せた過去の見積書と新しい依頼内容を渡し、必要な品目の洗い出しと、似た過去案件の提示をAIに任せます。見積もりの作成が特定の社員に集中している会社に向いています。

単価と合計金額はAIに決めさせません。単価は最新の単価表から転記し、AIが出した合計は表計算ソフトで検算します。AIは計算を誤ることがあるためです。詳しい手順は過去案件を使った見積もり作成のAI活用手順で解説しています。

ベテラン社員の話からつくる手順書

手順書づくりでは、AIに質問役を任せ、ベテラン社員の話を手順の形に書き出させます。「この作業は〇〇さんしか分からない」という業務を抱えている会社に向いています。

AIに「新人が迷う場面を質問してください」と指示すると、判断の分かれ目を聞き出す質問が返ってきます。できあがった手順書は、ベテラン本人と新人の両方に読んでもらい、抜けている判断を書き足します。進め方はベテランのノウハウをAIに移す4つの手順で紹介しています。

社内規程に答える社内問い合わせAI

就業規則や経費精算のルールについての社員の質問は、社内文書を読ませたAIに一次回答を任せられます。この仕組みはRAGと呼ばれます。RAGとは、AIが回答する前に指定した社内文書を検索し、その内容をもとに答える仕組みのことです。

試すときは、アップロードした資料をもとに答えるツール(例:Gemini Notebook(旧 NotebookLM)の公式ヘルプ)を使い、よく出る質問10個から始められます。確認するのは、回答のもとになった文書名と改定日です。作り方はRAGで自作する社内問い合わせチャットボットの手順で解説しています。

求人票と面接質問の下書き

採用では、仕事内容・1日の流れ・勤務条件を渡し、求人票、スカウト文、面接の質問案をAIに下書きさせます。採用担当が他の業務と兼務している会社に向いています。

確認するのは、給与や勤務時間の数字と、仕事に関係のない質問が入っていないかです。応募者の本籍や家族構成を尋ねる質問が混ざっていないかを見てください。採用選考で避ける質問の基準は、厚生労働省の「公正な採用選考について」で確認できます。

領収書と請求書の読み取り

経理では、領収書や請求書の画像からAI-OCRで項目を読み取り、会計ソフトに取り込む形で使えます。AI-OCRとは、画像やPDFの文字を読み取り、日付・金額・取引先などの項目に分けてデータにする仕組みです。

確認するのは、金額、日付、適格請求書発行事業者の登録番号です。勘定科目はAIが候補を出せますが、判断に迷う取引は税理士に確認してください。

この章の結論。7業務とも、約束・金額・規程の内容は社内で確認します。「確認すること」を具体的に言える業務から選ぶと、試した結果を判断できます。

自社の1業務で生成AIを試す4ステップ

生成AIの社内活用は、1業務を2週間試し、作成時間と確認時間を記録してから広げるのが確実です。次の4ステップで進めます。

ステップ1 業務の書き出しと点数づけ

まず、社内で毎週くり返している業務を5〜10個書き出し、先ほどの4つの基準で0〜2点をつけます。合計8点のうち、6点以上の業務が最初の候補です。

基準2点1点0点
毎週くり返すか毎週5件以上月に数件年に数回
入力と出力の形書式が決まっている担当者ごとに違う毎回違う
確認できる社員担当が決まっている兼務で時間が限られるいない
材料がデジタルかメールやファイルにある一部が紙紙か口頭だけ

6点以上の業務が複数ある場合は、議事録や手順書のように社外に出ない業務を先にします。誤りがあっても、社内で気づいて修正できるからです。

ステップ2 2週間で記録する数字

試す前に、AIを使わずに同じ業務を3件行い、1件あたりの時間を測っておきます。比べる基準が無いと、2週間後に効果があったかを判断できません。

業務名:[例:問い合わせメールの返信]
試す期間:[開始日]〜[終了日](2週間)
AIを使わない場合の1件あたりの時間:[試行前に3件測った平均]

1件ごとに記録する項目
・日付/件名
・AIの下書き+確認にかかった時間(分)
・修正した箇所の数(事実の誤り/言い回し)
・AIを使わなかった場合は、その理由

仮に、問い合わせの返信が月40件あり、1件15分かかっていた作業が、AIの下書きと確認で8分になったとします。この場合の短縮は月280分(約4.7時間)です。確認の時間まで含めて記録すると、この数字が実態に近くなります。

試す期間中は、使うAIツールを1つに絞ります。削減時間の測り方はAI業務効率化の削減時間を数字で出す方法で詳しく解説しています。

ステップ3 AIに入力してよい情報の線引き

試す業務が決まったら、その業務で扱う情報を3つに分けます。全社のルールを先に作るより、業務単位で決めたほうが判断が速く進みます。

区分例(問い合わせ返信の場合)扱い
入力してよい自社の商品説明、公開済みの価格表そのまま入力する
伏せれば入力してよい問い合わせ本文氏名・会社名・電話番号を[顧客A]などに置き換えて入力する
入力しない取引先から受け取った秘密情報、未公開の価格AIを使わずに対応する

あわせて、使うAIのプランで、入力内容が学習に使われる設定になっていないかを確認します。確認の観点はAIの法人プランと個人プランの違いで解説しています。

社員が個人でAIを使い始めていて、入力してよい情報がまだ決まっていない場合は、経営者と社員が一緒に学ぶ120分のAI研修で、入力した情報がどう扱われるかを先に学ぶ進め方もあります。

ステップ4 確認の担当と差し戻しの基準

最後に、AIの下書きを誰が確認し、どんな誤りが出たら使い方を見直すかを決めます。確認の担当が決まっていないと、下書きがそのまま社外に出てしまいます。

  1. 確認の担当を1人決める(兼務でもよい)
  2. 社外に出す文は、送信前に元データ(価格表・規程・録音)と照合する
  3. 事実の誤り(数字・固有名詞・約束)の件数を記録表に残す
  4. 2週間で事実の誤りが記録件数の1割を超えたら、AIに任せる範囲を狭める(例:返信の全文から、返信の構成案だけに変える)

この章の結論。2週間後に「下書きと確認の合計時間」と「事実の誤りの件数」を見れば、続けるか、範囲を狭めるか、別の業務に変えるかを判断できます。

他社の活用事例をまねても定着しない4つの条件

他社の活用事例は、業務名だけまねても定着しません。次の4つの条件のどれかに当てはまると、2週間試しても判断材料が集まらないからです。

材料が紙と口頭のままだと、AIに渡すものが無い

議事録や見積もりの事例をまねても、会議の記録が手書きのメモだけで、過去の見積書が紙のファイルにしかない会社では、AIに渡す材料がありません。試す前にスキャンや文字入力の時間がかかり、この時間はツールの料金には含まれていません。

防ぐには、ステップ1で「材料がデジタルか」が0点の業務を後回しにします。どうしても選ぶ場合は、最初の2週間を記録の形を決める期間にあて、共有フォルダや入力フォームに材料が集まってからAIを使い始めます。

7業務を同時に配ると、どれが効いたか測れない

7つの使い方を一覧にして全社員に配ると、社員ごとに違う業務で試すため、記録の取り方がばらばらになります。2週間後に集計しても、どの業務で時間が減ったのかが分かりません。

防ぐには、1業務・1ツール・推進役1人から始めます。推進役が記録の取り方をそろえておくと、2週間後にどの業務で時間が減ったかを比べられます。

作成時間だけ測ると、確認時間の増加に気づけない

見積書や社内規程への回答は、AIの下書きが速くても、元データとの照合に時間がかかります。作成時間だけを記録すると「半分になった」と判断してしまい、確認を含めた合計はほとんど変わっていない、ということが起こります。

防ぐには、ステップ2の記録表で「下書き+確認」の合計を記録します。合計が減らない業務は、AIに任せる範囲を品目の洗い出しや構成案までに狭めると、確認の手間が減ります。

古い版の規程を読ませると、改定前の内容で答える

社内問い合わせAIに共有フォルダの規程をまとめて読ませると、改定前の古い版が混ざることがあります。するとAIは、以前の経費の上限額のように、古い版の内容で答えてしまいます。

防ぐには、読ませる文書の一覧に「文書名・改定日・差し替えの担当」を書き、規程を改定した日にAIに読ませる文書も差し替えます。回答に文書名と改定日を必ず出させると、社員が古い回答に気づけます。

この章の結論。活用事例をまねる前に、次の4点を確かめておくと、2週間の試行がそのまま判断材料になります。

  • 材料:AIに渡す材料がメールやファイルにあるか
  • 範囲:試す業務を1つに絞れているか
  • 記録:確認の時間まで測れるか
  • 版:AIに読ませる文書が最新の改定日のものか、差し替えの担当が決まっているか

生成AIの社内活用でよくある質問

社員10人以下の会社なら、7つの使い方のどれから始めればいい?

議事録か、問い合わせメールの返信下書きから始めるのがおすすめです。どちらも材料がメールや録音の形で手に入りやすく、確認も1人で済みます。特に議事録は社外に出ないので、誤りがあっても社内で気づいて修正できます。

社内規程が紙しかない会社でも、社内問い合わせAIは作れる?

作れます。先に規程をスキャンしてPDFにします。スキャンしただけの画像のPDFから文字を読み取れるかは、ツールによって違います。使うツールの公式ヘルプで対応しているかを確かめ、対応していない場合は、文字認識(OCR)をかけて文字を読み取れるPDFにしてください。そのうえでツールにPDFを読ませ、よく出る質問を1つ入れたときに、規程の文言どおりに答えるかを試します。最初は規程全体ではなく、よく出る質問10個に関係するページだけで試すと、準備の時間を抑えられます。

見積書のたたき台をAIに任せると、単価を間違えないか心配です

単価はAIに考えさせず、最新の単価表から転記する運用にすれば防げます。AIに任せるのは、依頼内容から必要な品目を洗い出す作業と、似た過去案件を探す作業までです。合計金額も表計算ソフトで検算してから社外に出してください。

無料版のAIで、議事録や返信下書きの使い方を試してもいい?

顧客情報や未公開の数字を入力しない範囲なら、無料版でも試せます。ただし、入力内容が学習に使われる設定になっている場合があるので、試す前に設定を確認してください。有料に切り替える目安はAI業務効率化を無料で使える範囲と有料に切り替える判断点で解説しています。

まずは、この記事の7業務の一覧を見ながら、自社で毎週くり返している業務に印を付けてください。印が付いた業務が、ステップ1で点数をつける候補になります。試したあとに社員へ広げる段階の進め方は、生成AIを90日で社内に定着させる進め方で解説しています。

ここまで読んで、どの業務を選び、どこまでAIに任せるかを社内だけで決めきるのは難しいと感じた方もいると思います。最初の1業務を決めるAI導入支援では、業務を1つ選び、AIが行う作業と社内で確かめる作業に分けて、社員が使う入力フォームと手順書まで作ります。いまの業務の状況を伺うところからでも大丈夫ですので、気軽にご相談ください。

個別のご相談

サービスの選び方やご依頼について、ご相談いただけます。

相談する

Read Next / 次に読む

AI議事録アプリの選び方|無料と有料の違いと比較のポイント
DX・AX

AI議事録アプリの選び方|無料と有料の違いと比較のポイント

2026.08.06 / 約 16 分

関連記事

DX・AX

Gemini Gemで社内AIアシスタントを作る5ステップと注意点

更新
DX・AX

契約書をAIでチェックするプロンプト例と失敗しない注意点

更新
DX・AX

GPT-6.1 Sol、料金はAstraの5分の1|Work・Codex・APIの使い分け

DX・AX

センチメント分析をAIで自動化|お客様の声を打ち手に変える手順

更新
DX・AX

納品書と請求書の照合をAIで自動化する4ステップ手順

更新
DX・AX

AXの成否はデータの質で決まる|広報資料の構造化と失敗の防ぎ方

更新
DX・AX

生成AI社内ルールのサンプル|12項目のひな形・情報区分表と決め方

更新
DX・AX

AI業務効率化を個人で始める手順|部署に広げる進め方

更新
DX・AX

AXとは|広報の定型作業を仕組み化する6手順と業務カード

更新
DX・AX

AIに入力してはいけない個人情報|線引きと社内ルールの作り方

更新
DX・AX

Claude Codeで過去記事をSEOリライト|順位を保つ対話手順

更新
DX・AX

生成AIの顔画像と肖像権|リスクは2つ、公開前の3チェックで安全

更新