WordPressの操作マニュアルの作り方|社内手順書と動画の進め方
この記事の要点
- 社内向けマニュアルは手順書・動画・連絡ルールの3点セットで作る
- 載せる作業は全部ではなく、頻度の高い上位5つに絞る
- スクリーンショットの撮り方で寿命が決まる。撮り方ルールを本文で解説
WordPressの使い方マニュアルを社内向けに作るなら、更新作業を全部書き起こすのではなく、実際によく発生する上位5作業だけを「1作業1ページ」の手順書にして、そこに3分以内の画面録画を添えるのが最短です。書き方の型と撮り方のルールさえ決めておけば、あとは同じ形を複製していくだけになります。
この記事は、自分がWordPressを覚えるための記事ではなく、誰かに渡す資料を作る側の人に向けて書いています。担当が自分ひとりで、休むと更新が止まる。人が入るたびに同じ操作を口頭で教えている。そういう状態を抜けるための作り方です。
読み終わる頃には、どの作業を書くか・どんな型で書くか・動画をどこに置くか・どこまでできたら完成とみなすかを、自分で決められる状態を目指します。なお、自分自身が編集操作を覚えたい段階の方は、先にWordPressの編集画面の使い方|文章と画像を自分で直す手順を読んでから戻ってくると、この記事の内容がそのまま作業に変わります。
Contents / 目次
社内向けマニュアルは、手順書と動画と連絡ルールの3点セット
WordPressの操作マニュアルは、文章の手順書だけでは足りません。手順書・動画・連絡ルールの3つを揃えて、はじめて「担当が代わっても更新が止まらない」状態になります。理由は、3つが答えている質問がそれぞれ違うからです。
手順書は「どこを押すか」に答えます。動画は「どんな画面が出てくるか」に答えます。そして連絡ルールは「困ったら誰に言うか」に答えます。現場で更新が止まるのは、たいてい3つ目が決まっていないときです。
| 資料の種類 | 答えている質問 | 作りやすさ | 寿命(作り直しが必要になるまで) |
|---|---|---|---|
| 手順書(テキスト+スクリーンショット) | どこを押して、何を入力するか | 作業ごとに書くので、対象を絞るほど早く終わる | 画面の見た目が変わるまで。撮り方次第で伸ばせる |
| 動画(画面録画) | 実際にどう動くか、正解の画面はどれか | 撮影と見直しの手間がかかる | 短い。テーマ変更や大きな更新で撮り直し |
| 連絡ルール(1枚のメモ) | 詰まったとき誰にどう聞くか、どこまで自分で触っていいか | いちばん早い。書くのは3項目だけ | 長い。担当者が代わったときだけ更新 |
作る順番が大事です。連絡ルール → 手順書 → 動画の順で作ってください。動画から作り始めると、手順が固まっていないので撮り直しが増えます。連絡ルールは一番早く作れて一番長持ちするので、先に決めてしまうのが得です。
連絡ルールに書くのは3項目だけ
連絡ルールは長く書く必要がありません。次の3項目をA4一枚に書いて、マニュアルの1ページ目に置いてください。
- 自分で触っていい範囲:投稿の追加と編集、お知らせの文章、既存ページの文言差し替えまで。ここまでは自由に触ってよいと明記する
- 触る前に相談する範囲:デザインの変更、プラグインの追加や削除、メニュー構成の変更、フォームの項目変更。触ると全ページに影響する操作をここに入れる
- 困ったときの連絡先と伝え方:社内の誰に言うか、制作会社に連絡する場合の窓口、伝えるときに必ず添える情報(ページのURL・操作した内容・画面のスクリーンショット)
3つ目の「伝えるときに必ず添える情報」を書いておくだけで、やり取りの往復が目に見えて減ります。「サイトが崩れました」だけの連絡が来ると、状況を聞き返すところから始まるからです。
この章の結論。マニュアルづくりで最初に手を付けるのは手順書ではなく、触っていい範囲と連絡先を決めた1枚のメモです。ここが決まると、手順書に何を書くべきかも自動的に決まります。
WordPressの使い方マニュアルの作り方6ステップ
ここからが実作業です。6ステップで進めます。1本目の型さえ決まれば、2本目以降は同じ形を複製していくだけなので、上位5作業ぶんは一気に進みます。
ステップ1 更新作業を棚卸しして、上位5つに絞る
最初にやるのは、書く対象を決めることです。WordPressでできることを全部書こうとすると、まず終わりません。直近3か月に実際に発生した更新作業だけを書き出してください。
思い出しで書くとブレるので、材料を先に集めます。自分の受信メール、社内チャットの「これ直しておいて」という依頼、サイトの更新履歴。この3つを見返すと、実際に何をやってきたかが出てきます。
書き出したら、次の表の形に整理します。この表がそのままマニュアルの目次になります。
| 作業名 | 頻度 | できる人の数 | 間違えたときの影響 | 資料にする形 |
|---|---|---|---|---|
| お知らせを1本投稿する | 月4回 | 1人 | 小(消せる) | 手順書+動画 |
| スタッフ紹介の写真を差し替える | 月1回 | 1人 | 小 | 手順書 |
| トップのバナーを入れ替える | 年6回 | 1人 | 中(全ページに出る) | 手順書+動画 |
| 営業時間・休業日を書き換える | 年4回 | 2人 | 中(来店に影響) | 手順書 |
| 採用ページの募集要項を更新する | 年2回 | 1人 | 小 | 手順書 |
絞り込みの基準はシンプルです。その作業を次にやるまでに手順を忘れているかどうかで決めてください。忘れるくらい間隔が空くなら、資料にする価値があります。
逆に、年1〜2回しか発生しない作業は、次にやる頃には画面が変わっていることが多く、資料を作る時間のほうが作業時間より長くなります。この場合は作らずに「そのとき相談する」に回します。ただし、間違えると来店や問い合わせに直結する作業(営業時間・電話番号・フォーム)は、頻度が低くても手順書にしてください。
ステップ2 1作業1ページの型を決めて、最初の1本を書く
手順書は、作業ごとにページを分けます。1つのページに複数の作業を詰め込むと、読む人が自分に必要な部分を探せなくなるからです。次の雛形をコピーして、まず1本だけ書いてみてください。
# [作業名]お知らせを1本投稿する
## この手順でできること
サイトの「お知らせ」に新しい記事を1本追加して、公開する。
## かかる時間
はじめて:15分/慣れたら:5分
## 先に用意するもの
- 本文のテキスト(メモ帳などに書いておく)
- 使う画像(横長・1枚。ファイル名は半角英数字にする)
- 公開する日
## 手順
1. 管理画面にログインする(URL・ID・パスワードの保管場所=[社内の保管場所を記入])
2. 左のメニューから投稿の一覧を開き、新規追加を選ぶ
3. タイトルを入れる(30文字前後。日付だけのタイトルにしない)
4. 本文を貼り付ける
5. 画像を入れる(詳しい入れ方は「画像を差し替える」の手順書を見る)
6. カテゴリーを選ぶ(迷ったら「お知らせ」)
7. 右上のプレビューで表示を確認する
8. 公開する
## 終わったら必ず確認すること
- スマホで実際のサイトを開き、一覧にタイトルが出ているか
- 画像がつぶれたり、はみ出したりしていないか
- 本文中のリンクを1つ押して、正しいページに飛ぶか
## よくあるつまずき
- 公開したのにサイトに出ない → [キャッシュの消し方のページを見る]
- 画像が縦長になる → 横長の画像を使い直す。ページ内で切り抜かない
- 保存したはずの文章が消えた → 下書き保存を押さずにタブを閉じている
## この作業で触ってはいけないもの
- 「外観」「プラグイン」の中の設定
- 既存の記事の削除
この型で押さえているのは、手順そのものより「前後」です。前後の2項目が、それぞれ別の事故を防いでいます。
- 先に用意するもの:作業の途中で画像を探しに行って中断する事故が減ります
- 終わったら必ず確認すること:公開後に崩れているのに誰も気づかない、という状態を防げます
管理画面のメニュー名やボタンの位置は、WordPressのバージョンと導入しているテーマによって変わります。手順書には「左のメニューから投稿の一覧を開く」のように役割で書き、実際の名称は自社の画面を見ながら1回だけ確認して補足してください。他社のマニュアルの表記をそのまま写すと、自社の画面と食い違います。
ステップ3 スクリーンショットは「押す場所だけ」を切り取る
マニュアルが1年でゴミになるかどうかは、スクリーンショットの撮り方でほぼ決まります。画面全体を撮ったマニュアルは、WordPressやテーマが更新されて見た目が少し変わっただけで、全ページ撮り直しになるからです。
撮り方のルールを4つに決めておいてください。
- 全体ではなく部分を撮る:押すボタンとその周辺だけを切り取る。ブラウザのタブやサイドバー全体は入れない。周辺が写り込むほど、更新の影響を受けやすくなる
- 赤枠は1枚に1つまで:1枚の画像に複数の指示を入れない。指示が2つあるなら画像も2枚に分ける
- 個人情報とID情報を写さない:ログイン名、メールアドレス、顧客の氏名が入った一覧はぼかす。社内資料でも、退職者や外部委託先の手に渡る前提で撮る
- 画像の下に必ず文章を1行置く:「ここを押す」だけでなく「ここを押すと、下書きのまま保存される」と結果まで書く。画面が変わっても文章が残れば、マニュアルは生き延びる
撮った画像のファイル名は「作業名-01」「作業名-02」のように通し番号にしておくと、差し替えのとき該当の1枚だけを探せます。日付をファイル名にすると、どの手順の何枚目か分からなくなります。
ステップ4 AIに手順書の下書きを作らせて、人が現物と突き合わせる
手順書の文章は、AIに下書きさせると作成時間が短くなります。ここで効くのは「AIに書かせる」ことより「AIに何を渡すか」です。渡す材料が薄いと、一般論のWordPress解説が返ってきて、自社の画面と合わないものができあがります。
依頼する前に、手元に揃えておく材料が3つあります。この3つが揃っていないうちに依頼しても、自社で使える手順書にはなりません。
- スクリーンショット:自分が実際に作業しながら撮ったもの
- その作業で使う値:カテゴリー名、画像サイズ、公開のタイミングなど
- 読む人の状況:パソコンは使えるがWordPressは初めて、など
この3つを添えて下書きを依頼します。出発点になる短い依頼文はこの程度で足ります。
社内向けのWordPress操作手順書を作ります。
添付は、私が実際に[作業名]をやりながら撮った画面のスクリーンショットです。
読む人:[パソコンの基本操作はできるが、WordPressは触ったことがない事務担当]
使う値:[カテゴリーは「お知らせ」/画像は横長/公開は当日中]
次の見出しで手順書の下書きを作ってください。
「この手順でできること」「先に用意するもの」「手順」「終わったら必ず確認すること」「よくあるつまずき」
条件:
- 画面に写っていない機能の話は書かない
- 手順は1文で1操作
- 専門用語を使うときは、そのつど短い言い換えを添える
大事なのはこの先です。返ってきた下書きは、必ず自分の画面と突き合わせてから配ってください。全文を読み直す必要はありません。AIの下書きが実物とずれやすい箇所は決まっているので、見るのは次の3か所に絞ると早いです。
- スクリーンショットに写っていないメニュー名やボタン名が、文章に登場していないか。AIは一般的なWordPressの知識で補ってくるため、自社の画面に無い名前が混ざることがあります
- 手順の順番が、実際にやったときの順番と同じか。特に「保存」と「公開」の位置は入れ替わりやすい
- 「よくあるつまずき」に、自社で実際に起きたことが書かれているか。ここはAIが一般論を書く場所なので、自分が過去に詰まったことに丸ごと書き換える価値があります
この確認を通す前提なら、下書きの作成時間はかなり圧縮できます。逆に、確認せずにそのまま配ると、読む人が最初のページで「そんなボタンがない」と止まり、結局あなたに聞きに来ます。
ステップ5 動画マニュアルは3分以内で撮る
動画は、手順書で伝えきれない「実際の動き」を補うために撮ります。だから長く撮る必要はありません。1本3分以内、1本につき1作業。これを超えたら、作業の切り分けが粗いというサインです。
撮影のために、新しくツールを買うところから始める必要はありません。まずは、いま使っているパソコンのOSと、社内で使っているオンライン会議ツールの公式ヘルプで、画面を録画する方法があるかを検索してください。Appleサポート「Macで画面を収録する方法」、Microsoftサポート「Windowsで画面を記録する」のように、提供元が手順を公開しています。名称や操作はバージョンで変わるため、確認するのは必ず提供元の公式ヘルプにしてください。
専用の動画マニュアル作成ツールもありますが、まず社内で回るかを試す段階では、手元にあるもので十分です。
撮る前に、次の準備をしてください。ここを飛ばすと撮り直しになります。
- ブラウザのブックマークバーを隠す:個人のブックマークや社内ツールのタブが映り込みます
- テスト用の下書きを1本用意する:本番の記事で撮ると、操作ミスがそのまま公開されます
- 通知をオフにする:撮影中にチャットの通知が出ると、その1本は使えなくなります
- 台本を3行だけ書く:「何をする動画か」「どこから始めるか」「終わったらどうなるか」。この3行を最初に声で言ってから操作を始めると、見る人が迷いません
編集はしなくて構いません。言い間違えたら、その場で「今のは違いますね、こちらです」と言い直して続けてください。編集を前提にすると、更新のたびに動画を作り直す気力がなくなります。撮り直しやすさのほうが、完成度より価値があります。
ステップ6 置き場所を決めて、引き継ぎテストで完成を判定する
作った資料の置き場所は、最初に1か所へ決めてください。手順書はここ、動画はここ、と分かれていても構いませんが、入口は必ず1つのページにまとめます。入口が複数あると、どれが最新か誰も分からなくなります。
| 置き場所 | 向いている状況 | 注意点 |
|---|---|---|
| WordPressの非公開ページ(自社サイト内) | マニュアルを読む人が全員WordPressにログインできる | ログインできない人には見せられない。サイトが止まるとマニュアルも見られない |
| Googleドライブなどの共有ドライブ | 社内の誰でも見られるようにしたい | フォルダの共有範囲を必ず確認する。「リンクを知っている全員」にしない |
| 社内Wikiやドキュメント共有ツール | マニュアルが他業務のぶんも複数ある | ツールを新しく増やすと、そのツールの使い方を教える手間が発生する |
完成の判定はここで行います。作った本人が読んで分かるのは当たり前なので、判定になりません。その作業をやったことがない人に資料だけを渡し、あなたは横で見ているだけにして、実際にやってもらってください。これが引き継ぎテストです。
見るポイントは次のとおりです。
- 途中で質問が出た回数:1回でも質問が出たら、その箇所が資料の穴です。答えた内容をその場で資料に追記する
- 手が止まった場所:質問されなくても、画面を見て数秒止まったところは分かりにくい箇所。あとで確認する
- 完了までの時間:あなたがやったときと比べて、極端に長くかかっていないか。時間そのものより、どこで時間を使っていたかを見る
テストが終わったら、追記したものを反映して完了です。最初から完璧を目指さず、この1往復で仕上げるほうが結果的に早く終わります。
配る前に見る7項目のチェックリスト
- ログイン情報の扱い:IDとパスワードそのものを資料に書いていない。保管場所だけを書いている
- 触ってはいけない範囲:各手順書の末尾に、その作業で触らないものが書いてある
- 確認手順:公開して終わりではなく、スマホでの表示確認まで手順に入っている
- スクリーンショット:個人情報や顧客名が写り込んでいない
- 用語:専門用語に短い言い換えが添えてある(「固定ページ」「ブロック」など、初めての人が引っかかる語)
- 入口:手順書の一覧ページが1つあり、そこから全部にたどり着ける
- 更新日:各ページの先頭に、最後に確認した日付が書いてある
この章の結論。マニュアルの完成は、書き終えた時点ではなく、やったことがない人が資料だけで作業を終えられた時点です。判定できる状態を先に作ってから書き始めると、どこまで書くか迷わなくなります。
WordPressの使い方をYouTubeの動画で学ぶときの限界
「WordPress 使い方 YouTube」で出てくる解説動画は、基本操作を覚える段階では役に立ちます。ただし、社内向けマニュアルの代わりにはなりません。理由は、あなたのサイトの画面が動画と違うからです。
WordPressは、導入しているテーマとプラグインによって管理画面の見え方が大きく変わります。解説動画で使われているのはたいてい標準的な構成のサイトなので、自社の画面には無いメニューが出てきたり、逆にあるはずのものが動画に出てこなかったりします。教わる側は、そこで「自分のやり方が間違っているのかも」と止まります。
そのうえで、使い分けの線を引くとこうなります。
| 目的 | YouTubeの解説動画 | 自社で撮った動画 |
|---|---|---|
| WordPressという仕組みを理解する | 向いている。投稿と固定ページの違いなど、概念の説明は共通 | わざわざ撮る必要はない |
| 自社サイトの決まった作業を再現する | 向いていない。画面もカテゴリー名も自社と違う | これが本命。3分の動画で足りる |
| トラブルの原因を調べる | 参考にはなるが、真似して設定を変えるのは危険 | 撮りようがない。連絡ルールで相談に回す |
解説動画を見た担当者が、動画のとおりにプラグインを追加したり設定を変えたりして、サイトの表示が崩れることがあります。連絡ルールに「動画を見て設定を変えるのは相談してから」と1行入れておいてください。これは能力の問題ではなく、動画の環境と自社の環境が違うために起きます。
自社で撮った動画をYouTubeに置くときの注意
自社の画面録画をYouTubeに置く場合は、公開範囲の設定が最重要です。設定できる公開範囲の種類と名称、それぞれの挙動はYouTube側で変わることがあるため、アップロード前にYouTubeヘルプ「動画のプライバシー設定を変更する」で現在の仕様を確認してください。
そのうえで、社内動画では次の3点を守ってください。
- 管理画面のURLやドメイン名が映る動画は、社外に出る前提で考えてください。どの公開範囲を選ぶと誰まで見られるのかは、上記のYouTubeヘルプで必ず確認し、社外の人に見られて困る内容なら、そもそもYouTubeに上げないと決めておくのが確実です
- 顧客の氏名・住所・電話番号が入った画面(フォームの受信一覧、会員情報など)は撮らない。撮ってしまったら、その動画は消して撮り直す
- 退職者が出たときに、アクセスできる人の一覧を見直す。共有ドライブと同じ運用ルールで扱う
社外に出ると困る画面が多い場合は、YouTubeではなく、アクセス権を管理できる社内の共有ドライブに置くほうが安全です。動画の置き場所は「便利さ」ではなく「間違って外に出たときに困るか」で選んでください。
この章の結論。YouTubeの解説動画は概念を覚えるまで、自社で撮った動画は決まった作業を再現するため、と役割を分けます。置き場所は公開範囲を決めてから選びます。
マニュアルを作ると、何がどれだけ変わるか
マニュアルの効果は「質問に答える時間が減ること」に集約されます。ここは実際の数字を自社で出せるので、作る前に見立てておくと社内の合意も取りやすくなります。
計算の仕方は次の3ステップです。
- 聞かれた回数を数える:直近1か月で「WordPressの操作について聞かれた回数」を数えます。メールとチャットを検索すれば出てきます
- 1回あたりの時間を決める:実際に聞かれたときの対応を思い出して、返信を書く時間と自分の作業が中断する時間を足し、1回あたり何分かかっているかを自社の感覚で決めます
- 掛け算する:この2つを掛ければ、質問対応に消えている時間が出ます
回数も1回あたりの時間も、業種と担当者の人数で大きく変わります。他社の数字を借りても意味がないので、必ず自社の実数で出してください。出した時間と、手順書と動画を作るのにかかった時間を並べると、どこまで作るかの判断がつきます。
大事なのは資料の量ではありません。作業を5つに絞り、その5つについては誰でも同じ品質でできる状態を作ることです。100作業の中途半端なマニュアルは、結局どれも最後まで使えないので、質問はそのまま残ります。
数字以外に変わること
質問が減ること以上に効いてくるのが、更新が止まらなくなることです。担当者が休んでも、退職しても、資料があれば別の人がお知らせを出せます。
逆に、資料がない状態で担当者が抜けると、更新が数か月止まります。止まったサイトは、訪問者から見て「この会社、まだやっているのか」という判断材料になってしまいます。更新体制そのものの作り方は更新されないサイトの信用低下を直す更新体制の作り方|担当と頻度で詳しく扱っているので、担当と頻度から見直したい方はそちらも読んでみてください。
この章の結論。効果は「質問された回数×1回あたりの対応時間」で自社の数字として出せます。作る前にこの数字を出しておくと、どこまで作るかの判断が早くなります。
WordPressのマニュアルでだけ起きる失敗4つ
ここで挙げるのは、WordPressの操作マニュアルを作るときに特有の失敗です。一般的なマニュアル論ではなく、実際にWordPressだから起きるものに絞ります。
失敗1 画面全体のスクリーンショットで作り、テーマ更新で全ページ死ぬ
起きる状況は、管理画面を丸ごとスクリーンショットして、赤枠で「ここを押す」と示すやり方でマニュアルを作ったときです。見やすいので、最初はこの作り方に流れます。
すると、WordPress本体やテーマが更新されて管理画面の見た目が少し変わっただけで、全ページの画像が実物と食い違います。読む人は「マニュアルと画面が違う」と感じた瞬間に、資料全体を信用しなくなります。1ページ古いだけで、全部が疑われます。
防ぎ方は、ステップ3で書いたとおり、押す場所だけを切り取ることと、画像の下に必ず結果を文章で書くことです。文章さえ残っていれば、画像が少し古くても読む人は自力でたどり着けます。撮り直すときも、該当の1枚だけで済みます。
失敗2 「更新したのにサイトに反映されない」が手順書に無い
起きる状況は、キャッシュ機能を使っているサイトで、担当者が投稿を公開した直後に自分のブラウザで確認したときです。キャッシュとは、表示を速くするために一度作った画面を保存しておく仕組みのことで、この保存が残っていると、更新した内容がすぐには見えないことがあります。
担当者は「公開が失敗した」と判断して、もう一度公開したり、記事を作り直したりします。結果、同じ記事が2本並びます。そして「サイトが壊れた」という連絡があなたに来ます。
防ぎ方は、各手順書の「よくあるつまずき」に、この項目を必ず入れておくことです。「公開してすぐは古い表示が残ることがある。数分待ってから、スマホの別回線でもう一度見る」と書いておくだけで、再投稿の事故はほぼ止まります。原因の切り分け方はホームページが更新されない原因|キャッシュの消し方と切り分けにまとめているので、マニュアルからこのページへリンクしておくのも有効です。
失敗3 全員に管理者権限を配って、マニュアルの意味がなくなる
起きる状況は、新しく更新担当を増やすときに、面倒だからと自分と同じ権限のアカウントを作って渡したときです。WordPressにはユーザーごとに操作できる範囲を決める権限の設定があり、どの権限で何ができるかはWordPress公式ドキュメント「ユーザーの種類と権限」にまとまっています。
全員が全部できる状態だと、「触ってはいけない」と手順書に書いても、実際には触れてしまいます。悪意がなくても、探しているうちに設定画面に入り込み、何かを変えてしまうことは起きます。さらに、アカウントが乗っ取られたときの被害範囲も、権限の広さに比例します。
防ぎ方は、投稿だけを担当する人には、投稿の追加と編集ができる範囲の権限を割り当てることです。権限の名称と設定場所はWordPressのバージョンで変わることがあるため、実際の設定前に自社の管理画面と上記の公式ドキュメントで現在の名称を確認してください。アカウントの守り方全般はWordPress乗っ取り対策|更新と二段階認証を今日から始める手順で解説しています。
失敗4 投稿と固定ページのどちらで作るかが書かれていない
起きる状況は、手順書に「新しいお知らせを作る」としか書いておらず、投稿と固定ページのどちらで作るかを指定していないときです。教わる側から見ると、どちらも「新しいページを作る」なので、選ぶ理由が分かりません。
投稿と固定ページは役割が違い、その違いはWordPress公式ドキュメント「固定ページ」で説明されています。お知らせ一覧に何が並ぶかは、自社のテーマの設定によって決まります。指定せずに任せた結果、一覧に出ない形で作られてしまうと、作った本人は公開したつもりでいるので、誰も気づかないまま数か月が過ぎます。あとで正しく作り直すとURLも変わり、案内していた先が消えます。
防ぎ方は、手順書の1行目に「これは投稿で作る作業です」と明記することです。加えて、マニュアルの入口ページに「投稿で作るもの」「固定ページで作るもの」の一覧を置いてください。判断基準そのものはWordPressの固定ページと投稿の使い分け|移し替えの進め方までにまとめてあります。
この章の結論。4つとも、原因は「書き手が当たり前だと思って省いたこと」です。手順書を書き終えたら、自分が省いた前提が無いかを見返してください。省きやすいのは、画像の撮り方・反映の待ち時間・権限・作る場所の4か所です。
作った後に効いてくる、現場の妥協点
ここからは、教科書的な記事には書かれない話です。マニュアルは作れば終わりではなく、作った後に必ず摩耗します。あらかじめ知っておくと、無駄な作り込みを避けられます。
マニュアルは全部作らない、と最初に決めておく
年1回しかやらない作業の手順書は、作らないほうが合理的です。手順書を書き上げても、次にその作業をやるのは1年後。その頃には画面が変わっていて、結局はゼロから確認し直すことになります。書くのにかけた時間は戻ってきません。
ただし、頻度が低くても資料にすべきものが2種類あります。間違えると外部に影響が出る作業(営業時間・電話番号・料金の表記)と、担当が自分ひとりしかいない作業です。この2つは、頻度ではなく、止まったときの困り具合で判断してください。
制作会社から受け取ったマニュアルは、たいてい半分足りない
サイトの納品時にマニュアルを受け取っている会社は多いのですが、中身を見ると一般的なWordPressの使い方の説明で、自社サイト固有の部分が抜けていることがよくあります。どのページのどこを直すとトップのどこが変わるか、といった構造の話です。
これは制作会社が手を抜いているというより、汎用の資料を使い回すほうが安く早いからです。だから、受け取る側から指定してください。発注や見積もりの段階で「自社サイト固有の操作についての説明を含めてほしい」と1行入れておくのが確実です。あとから頼むと追加費用の話になります。
すでに受け取ったマニュアルがある場合は、ゼロから作り直さず、足りない部分だけを自社で追記するのが現実的です。汎用部分は使えるので、上位5作業について「うちの場合はここ」を書き足せば実用になります。
動画は更新しない前提で作る
動画マニュアルの一番の弱点は、部分修正ができないことです。手順が1つ変わっただけでも、動画は途中から差し替えられません。撮り直すか、古いまま放置するかの二択になります。
だから、動画は最初から「変わったら丸ごと撮り直す」前提で作ってください。3分以内という制約は、見やすさのためだけでなく、撮り直しのハードルを下げるためのものです。10分の動画は撮り直せませんが、3分なら気軽に撮り直せます。
変わりやすい情報(カテゴリー名、担当者名、公開の締切)は動画の中で言わず、手順書のテキスト側に書いておくと、動画の寿命が伸びます。
AIに任せる範囲について
手順書の文章の下書き、専門用語の言い換え、動画の文字起こしからの手順化は、AIに任せて時間を短縮できる部分です。一方で、自社の画面に本当にそのボタンがあるか、その順番で正しく動くかの確認は、実際に画面を見た人にしかできません。詳しい進め方は上のステップ4に書いたとおりです。
この章の結論。作らない作業を決めること、納品されたマニュアルの足りない部分だけを足すこと、動画は撮り直す前提にすること。この3つを先に決めておくと、マニュアルづくりが続きます。
よくある質問
WordPress公式のドキュメントを読んでもらうだけでは足りませんか
基本操作の理解には足りますが、社内マニュアルの代わりにはなりません。公式は標準のWordPressについての説明なので、自社のテーマ独自の設定やカテゴリーの決まりは書かれていないからです。公式を「仕組みを知る用」、自社のマニュアルを「作業を再現する用」と役割を分けてください。
マニュアルはWordPressの非公開ページで作るのと、共有ドライブに置くのはどちらがいいですか
読む人が全員WordPressにログインできるなら非公開ページ、そうでないなら共有ドライブが現実的です。判断の分かれ目は「サイトが表示できないときにマニュアルを見たいか」です。トラブル対応の手順を載せるなら、サイトの外に置いてください。
テーマを変えたら、マニュアルは全部作り直しになりますか
画像は差し替えが必要ですが、文章は多くが残せます。「先に用意するもの」「終わったら確認すること」「触ってはいけないもの」はテーマに依存しないためです。作り直しの量は、画面全体を撮っているか、押す場所だけを撮っているかで大きく変わります。
動画マニュアル用に、有料の作成ツールを入れたほうがいいですか
最初は不要です。手元のパソコンで使える画面録画の機能で3分の動画を5本撮り、社内で実際に使われるかを見てから判断してください。動画が更新されずに放置される会社では、ツールを入れても同じ結果になります。導入するなら、機能と無料で使える範囲を各ツールの公式サイトで確認してから決めてください。
更新担当が自分ひとりです。それでもマニュアルを作る意味はありますか
ひとりのときこそ効きます。月1回しかやらない作業は、自分でも次にやるとき手順を忘れているからです。加えて、休んだときや退職したときに更新が止まるリスクを、資料1本で下げられます。まずは自分用のメモとして書き始めて構いません。
今日の1歩と、次に読むページ
今日すぐできることは1つです。メールとチャットを「更新」「直して」などで検索して、直近1か月に頼まれた作業を3つだけ書き出してください。1分で終わりますし、それがそのままマニュアルの目次になります。
そのうえで、そもそも更新を自分でやる体制から整えたい方は、WordPressの編集画面の使い方|文章と画像を自分で直す手順を先に読むと、書く材料が集めやすくなります。
ここまで読んで、資料を作る時間そのものが取れない、あるいは自社サイト固有の部分をどう書けばいいか分からないと感じた方は、一度お話を聞かせてください。コレットラボのホームページ制作・運用支援では、公開後に自社で更新していける形まで含めて設計しています。現状を整理するだけの相談でも大丈夫です。更新マニュアルまで作るホームページ制作からご覧いただけます。
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