広告のコンバージョン率の平均|比べ方と自社目標の決め方
この記事の要点
- 外部の平均コンバージョン率は分母もCV地点も違い、自社の合否判定には使えません
- 目標は「必要CVR=CPC÷許容CPA」で逆算します。計算例を本文に載せています
- 判定に使う件数は自社で決めます。本記事では、月次で増減を語れるだけの母数として主CV30件前後を目安に置いています
広告のコンバージョン率の平均を調べると、調査ごとにまったく違う数字が出てきます。その数字を自社の合否判定にそのまま当てるのは無理があります。調査ごとに、分母(クリックかセッションかユーザーか)も、何をコンバージョンと数えるか(購入か資料請求か電話タップか)も違うからです。同じ広告実績でも、数え方を変えるだけで0.5%にも2.9%にも見えます。
この記事は、リスティング広告やSNS広告を自社で回している、または代理店の月次レポートを受け取っている経営者・広報・営業担当の方に向けて書いています。読み終わる頃には、自社の目標コンバージョン率を数字で決めて、その数字を何件のCVが貯まった時点で判定するかまで、紙の上で答えを出せる状態を目指します。
扱うのはコンバージョン率(CVR)の見方と目標の決め方です。広告費が売上に対して見合っているかを見るROASの計算は指標が別なので、広告の費用対効果の出し方|ROAS計算と指標の見方・目安で解説しています。CPCやCPAといった用語から確認したい方は、先にWeb広告の基本用語一覧|CPC・CVR・ROASをお金の流れで理解を読んでから戻ってきてください。
Contents / 目次
広告のコンバージョン率の平均を自社の判定に使えない理由と、代わりにやる3つのこと
結論から言うと、外部の平均コンバージョン率は「自社の数字が高いか低いか」の判定には使えません。使えるのは「自社の数字が桁違いにおかしくないか」を見るときだけです。理由は、比較の前提が揃わないからです。
コンバージョン率が高い/低いは、施策の上手さより先に、4つの前提で決まってしまいます。同じ会社の同じ月の実績でも、この4つのどれかを変えると数字が動きます。
| 数字がズレる原因 | 何が起きるか | 自社で先に決めること |
|---|---|---|
| 分母の違い | クリック数で割るか、サイトのセッション数で割るか、ユニークユーザー数で割るかで結果が変わる | 広告のCVRは「クリック基準」に固定する |
| CV地点の違い | 問い合わせだけを数えるか、資料DLや電話タップも足すかで数倍違う | 主CVと補助CVを分けて別々に数える |
| 媒体・面の違い | 顕在キーワードの検索広告と、認知目的のディスプレイ広告を合算すると平均が薄まる | キャンペーン単位で分けて出す |
| 計測方式の違い | 広告管理画面とGA4では集計の前提が違うため、同じ月でも件数がずれる | 目標管理に使う数字をどちらか一方に決める |
この4つを放置したまま「業界平均は◯%らしい」と比べても、判断材料になりません。外部の平均値を比較に使うには、その調査の分母・CV地点・対象範囲・集計年まで確認する必要があり、そこまで公開されている調査は多くありません。確認できないなら、自社の数字だけで判断した方が早いです。代わりにやるべきことは3つです。
- 定義を固定する:分母・CV地点・計測元(管理画面かGA4か)を紙に書いて決め、以後は変えない
- 直近90日の自社実測値を出す:キャンペーン別・デバイス別に分けた「自社の現在地」を1枚の表にする
- 許容CPAから必要CVRを逆算する:他社平均ではなく、自社の粗利から逆算した数字を目標に置く
ポイント。目標コンバージョン率は「業界の平均に追いつく数字」ではなく、その予算で赤字にならない最低ラインのことです。だから他社を見る前に、自社の粗利と許容CPAから先に計算できます。
この章の結論として、押さえるのは順番です。外部平均を探すのは後回しにして、まず自社の定義を固定し、実測して、逆算する。この3手で目標が決まります。
広告のコンバージョン率の計算方法。同じ実績でも3つの数字が出ます
コンバージョン率とは、広告経由の反応のうち何%が成果につながったかを示す割合です。本記事では、広告のCVRを「コンバージョン数÷クリック数」で統一して扱います。式にすると「CVR=CV数÷クリック数×100」です。分母に何を使うかは媒体や管理画面の表示設定によって変わるため、自社で使う分母を決めてから計算してください。
同じ月の実績を3通りで計算すると、こうなります
数字がどれだけ動くかを、架空の1か月の実績で計算してみます。クリック1,000回、広告からのサイトセッション900、ユニークユーザー700、コンバージョン20件(内訳は問い合わせ5件・資料ダウンロード15件)としましょう。
| 数え方 | 計算 | 出てくる数字 |
|---|---|---|
| クリック基準・CV全部 | 20 ÷ 1,000 | 2.0% |
| セッション基準・CV全部 | 20 ÷ 900 | 約2.2% |
| ユーザー基準・CV全部 | 20 ÷ 700 | 約2.9% |
| クリック基準・問い合わせのみ | 5 ÷ 1,000 | 0.5% |
まったく同じ広告の、まったく同じ1か月です。それでも0.5%から2.9%まで開きます。ネットで見つけた平均値と自社の数字を比べたとき、差の大半はこの数え方の違いで説明がつきます。
クリック数とセッション数が一致しないのは異常ではありません。ページが表示される前に離脱する人がいる一方で、同じ人が時間を空けて再訪すると別のセッションとして数えられることもあります。どちらが多く出るかは計測設定によって変わるため、数が食い違うこと自体を計測の異常と決めつけて作業を止める必要はありません。実際の差の中身は、各ツールの公式ヘルプで自社の設定を確認してください。
リスティング広告のコンバージョン率を他社の数字と比べる前のチェックリスト
他社の数値や業界平均と自社を並べるときは、次の5点が揃っているか確認してください。1つでも不明なら、その比較はやめた方が早いです。
- 分母:クリック数か、セッション数か、ユーザー数か
- CV地点:購入・問い合わせ・資料請求・電話タップのどれを数えているか、複数を合算していないか
- 期間と調査年:いつ集計されたデータか。広告の自動入札や計測環境は年単位で変わるため、数年前の数値は前提が違う
- 対象範囲:国内か海外か、BtoBかBtoCか、広告経由だけか全流入込みか
- 媒体と面:検索広告だけか、ディスプレイやSNSも混ざっているか
この章の結論です。自社のコンバージョン率は「クリック基準・主CVのみ・管理画面の数字」に固定して出すと、月をまたいでも比べられるようになります。数え方さえ固定すれば、平均値を探さなくても改善しているかどうかは判断できます。
自社の目標コンバージョン率の決め方。5ステップで逆算します
目標コンバージョン率は、粗利から許容できるCPA(1件あたりの獲得単価)を出し、それをCPC(1クリック単価)で割り戻すと決まります。順番に進めれば、電卓とスプレッドシートだけで今日決められます。
ステップ1。CV地点を主と補助に分けて定義する
最初にやるのは、何をコンバージョンとして数えるかの線引きです。売上に直結するものを「主CV」、その手前のものを「補助CV」として、別々の指標として扱います。混ぜて1つのCVRにしないのが要点です。
- 主CV:問い合わせフォーム送信、見積依頼、電話(一定秒数以上の通話)、購入
- 補助CV:資料ダウンロード、メルマガ登録、料金ページ到達、LINE友だち追加
社内の目標管理でも、主CVと補助CVは同じ表に混ぜず、別の行として扱ってください。混ぜると、資料ダウンロードが増えただけの月を「成果が伸びた月」と読み違えます。媒体側の設定でどこまで分けられるかは管理画面の仕様によって変わり、更新もされるため、実際に設定するときは各媒体の公式ヘルプで最新の画面を確認してください。フォーム送信の計測をこれから作る場合は、フォーム送信をコンバージョン計測する設定手順|GA4とGTMで手順を解説しています。
ステップ2。直近90日の実測値を1枚の表にする
次に自社の現在地を出します。広告管理画面のレポートで期間を直近90日にし、キャンペーン単位でクリック数・CV数・費用をダウンロードしてください。そのうえで、次の列を持つ表を作ります。
【自社CVR現在地シート(スプレッドシートの列構成)】
A: キャンペーン名
B: 媒体(検索 / ディスプレイ / SNS)
C: デバイス(PC / スマホ)
D: 費用
E: クリック数
F: 主CV数
G: 補助CV数
H: CVR(主CVのみ) = F / E
I: CPC = D / E
J: CPA(主CV) = D / F
K: 判定に足りる件数か = IF(F>=30,"判定可","件数不足")
※ Kの30は「月次で増減を判断する目安件数」。
※ CV数が1桁のキャンペーンは、月単位で良し悪しを語らない。
この表を作った時点で、多くの会社は「1つの平均CVR」では語れないことに気づきます。検索広告は2%あるのにディスプレイは0.3%、PCは1.2%でスマホは2.4%、といった具合に散らばるのが普通です。全体の平均CVRは、この散らばりを平らにならして見えなくするだけの数字です。
ステップ3。粗利から許容CPAを出し、必要CVRを逆算する
ここが目標を決める本体です。計算式は次の2本だけです。
- 問い合わせ1件の期待粗利 = 受注1件の粗利 × 問い合わせ→商談化率 × 商談→受注率
- 必要CVR = CPC ÷ 許容CPA
架空の会社で当てはめてみます。受注1件の粗利15万円、問い合わせから商談になるのが50%、商談から受注が30%だとすると、問い合わせ1件の期待粗利は15万円×0.5×0.3で2.25万円です。
そのうち広告費に回してよい割合を50%とすれば、許容CPAは11,250円になります。CPCが200円なら、必要CVRは200÷11,250で約1.8%です。これが「他社平均が何%であろうと、自社が下回ってはいけないライン」になります。
| 項目 | 入れる値(例) | 出し方 |
|---|---|---|
| 受注1件の粗利 | 150,000円 | 直近1年の平均受注額×粗利率 |
| 問い合わせ→商談化率 | 50% | 営業側の実績。分からなければ50%で仮置き |
| 商談→受注率 | 30% | 同上。分からなければ30%で仮置き |
| 問い合わせ1件の期待粗利 | 22,500円 | 150,000×0.5×0.3 |
| 広告費に回す割合 | 50% | 先行投資できるなら70%、利益を厚くしたいなら30% |
| 許容CPA | 11,250円 | 22,500×0.5 |
| 直近90日の実績CPC | 200円 | ステップ2の表のI列の平均 |
| 必要CVR(目標) | 約1.8% | 200÷11,250 |
仮置きでいいので必ず埋める。商談化率や受注率が分からないと言って計算を止める会社が本当に多いです。50%と30%で仮置きして先に進め、3か月後に実績で置き換えれば十分間に合います。
ステップ4。判断できるまでの件数と期間を逆算する
目標を決めたら、その目標を「いつ判定するか」を先に決めます。CV数が少ないと、CVRは運で上下するからです。
先ほどの例で、月予算30万円、CPC200円なら月1,500クリック。目標CVR1.8%なら月27件のCVが見込めます。この規模なら月次で増減を判断できます。一方、月予算10万円だとクリック500回、CVは月9件です。9件では、たまたま2件増えただけでCVRが0.4ポイント動いてしまいます。
- 月30件以上のCVがある:月次でCVRの増減を見て、翌月の打ち手を決めてよい
- 月10〜29件:2〜3か月を合算して判定する。単月の上下は無視する
- 月10件未満:CVRでは判断しない。クリック数・検索語句・LP到達率など手前の指標で改善点を探す
この30件という線引きは統計的な検定の基準ではありません。当社が中小企業の広告運用を支援するなかで社内ルールとして使っている実務上の目安です。根拠は上の例と同じ考え方で、1件増減したときにCVRが何ポイント動くかから決めています。CVが9件の月は1件増えるだけでCVRが0.2ポイント動きますが、30件あれば1件の増減は0.06ポイントに収まり、月ごとの上下と施策の効果を見分けられるようになります。自社で別の件数を置きたい場合は、この「1件の増減が目標ラインの幅に対してどれくらいの割合か」で決めてください。厳密に判定したい場合は、比較する2群の件数と差の大きさから有意差検定を行ってください。
広告のA/Bテストで勝ち負けを決めたい場合も同じ考え方です。比較する各パターンに30件前後のCVが貯まるまでは、数字の差を勝敗と読まない。これは実務上の割り切りですが、これを守るだけで無駄な差し替えが減ります。 Meta広告のABテストの進め方|比較する要素と判断の基準も判断のしかたの参考になります。
ステップ5。目標をレンジで置き、見直しのルールを決める
目標は1点の数字ではなく、幅(レンジ)で置きます。CVRは季節や競合の出稿量でも動くため、1.8%ぴったりを狙うと毎月一喜一憂して運用がぶれます。
【目標シート・そのまま社内共有できる文面テンプレート】
■ 対象
媒体/キャンペーン:Google検索広告・指名以外の一般キーワード
■ 数え方(以後変更しない)
分母:クリック数(Google広告管理画面)
主CV:問い合わせフォーム送信・30秒以上の通話
補助CV:資料ダウンロード(別枠で観測。目標には含めない)
■ 目標
目標CVR:1.8%(許容ライン1.5%/好調ライン2.2%)
許容CPA:11,250円
根拠:受注粗利150,000円 × 商談化50% × 受注30% × 広告配分50%
■ 判定ルール
判定単位:月次(主CVが30件を下回った月は翌月と合算して判定)
1.5%を2か月続けて下回ったら:LPの主CV導線と検索語句を点検する
2.2%を2か月続けて上回ったら:予算増額かキーワード拡張を検討する
■ 見直し
商談化率・受注率は四半期ごとに実績値へ更新する
CPCが3割以上変動したら必要CVRを再計算する
この文面をそのまま社内チャットや代理店との共有ドキュメントに貼ると、毎月の会話が「今月は上がった/下がった」から「許容ラインを2か月割ったので点検します」に変わります。
AIを使うなら、要因の分解と仮説出しを任せる
ステップ2で作った表を貼り付けて、AIに要因分解をさせると、人が見落とすキャンペーンの偏りを拾ってくれます。ChatGPTやClaudeなど、手元で使えるものに表を読ませれば十分です。
【出発点のたたき台(seed)。あとはAIと対話しながら詰める】
あなたは[業種を入力]のWeb広告運用担当です。
以下はGoogle広告の直近90日のキャンペーン別データです。
主CVは問い合わせフォーム送信のみ、分母はクリック数です。
[表を貼り付け]
1. 全体平均ではなく、キャンペーン別・デバイス別に
CVRの散らばりを整理してください。
2. CVRが低い群について、原因の候補を
「検索語句のズレ」「LPの内容不一致」「フォームの入力負荷」
「計測もれ」の4つに分類して挙げてください。
3. それぞれについて、私が管理画面やサイトで
何を見れば確認できるかを具体的に書いてください。
出てきた答えは、そのまま実行せず必ず2点を人が確認してください。1つは、AIが挙げた原因が実際のデータで裏づけられるか(検索語句レポートを開いて本当にズレた語が入っているか)。もう1つは、CV数が少ないキャンペーンについて断定的な原因を語っていないかです。AIは件数の少なさを気にせず、それらしい理由を作ります。ここを鵜呑みにすると、たまたま2件減っただけのキャンペーンを止めてしまいます。
この章の結論です。目標コンバージョン率は「必要CVR=CPC÷許容CPA」で計算でき、その目標を判定するタイミングは自社で決めた件数のルールに従います。この2つが決まれば、他社の平均値を探す必要はなくなります。
目標を決めたあとに変わること。0.5ポイントの改善が持つ意味
コンバージョン率が0.5ポイント上がると、広告費を増やさずに獲得件数が増えます。増える件数の割合は、元のCVRが低いほど大きくなります。ここでは元が1.8%のケースを、先ほどの例(月予算30万円、CPC200円、月1,500クリック)で見ていきます。
なお、以下の件数はいずれも「1,500クリックにCVRを掛けた期待値」です。実際に発生する件数は整数なので、月によって上下に振れます。
| 改善前 | 改善後 | 差 | |
|---|---|---|---|
| CVR(主CV) | 1.8% | 2.3% | +0.5ポイント |
| 月間CV数(期待値) | 27件 | 34.5件 | +7.5件 |
| CPA | 約11,100円 | 約8,700円 | −約2,400円 |
| 月間の期待粗利(1件22,500円換算) | 約60.8万円 | 約77.6万円 | +約16.8万円 |
改善前のCPA約11,100円は、広告費30万円÷27件で計算した値です。ステップ3で出した許容CPA11,250円をわずかに下回っており、目標ラインぎりぎりで運用できている状態を表しています。
広告費は30万円のまま、期待粗利が月16.8万円増える計算です。同じ7.5件をCVR1.8%のままで増やそうとすると、必要なクリック数は7.5件÷1.8%で約417クリック。CPC200円なら417×200で約8.3万円の追加予算がいります。つまり、CVRを0.5ポイント上げるのと、広告費を約8万円増やすのが同じ結果になります。CVRの改善が「予算増額より先に手を付ける価値がある」と言われるのは、この差があるからです。
この表は架空の数値で計算した例です。実際の粗利・商談化率・CPCは業種と商材で大きく変わるので、必ず自社の値に置き換えて計算してください。他社の改善率をそのまま自社の見込みにするのは、平均CVRを流用するのと同じ間違いです。
目標コンバージョン率が機能している会社の共通点
広告の数字が安定して伸びている会社には、施策の派手さではなく、数え方の運用に共通点があります。
- 定義を1年変えていない:途中でCV地点を足したり分母を変えたりしないので、前年同月と比べられる
- 主CVと補助CVを分けて報告している:資料DLが増えて問い合わせが減った月に、すぐ気づける
- CVRの下に商談化率が並んでいる:CVRだけが上がって商談が増えない状態を、その月のうちに見つけられる
- 判定件数のルールがある:CVが少ない月に慌てて設定をいじらないので、運用が安定する
毎週どの数字をどの順で見るかを固めたい場合は、Google広告の運用方法|毎週見る数字と直す順番の考え方に週次のルーティンをまとめています。
この章の結論です。CVRの0.5ポイントは、予算8万円分の価値になり得ます。だからこそ、上がった下がったを正しく判定できる数え方の運用が、施策そのものより先に効いてきます。
平均コンバージョン率の使い方でよくある失敗4つ
ここからは、平均値を扱うときに現場で実際に起きる失敗です。どれも「数字の読み方」の問題なので、広告の設定を変えなくても今日から直せます。
失敗1。全キャンペーン合算のCVRを業界平均と比べる
指名検索、一般キーワード、リマーケティング、ディスプレイをすべて合算した平均CVRを出し、それを「業界平均」と比べてしまうケースです。
指名検索は自社名を知っている人が検索するのでCVRが極端に高く、ディスプレイは認知目的なので低く出ます。合算すると、指名検索の好調がディスプレイの不振を隠します。
結果として「平均並みだから問題なし」と判断してしまいます。成果の出ていない面に予算を配り続けても、それに気づけません。
防ぎ方は単純で、CVRを見る単位を必ずキャンペーン以下に固定することです。アカウント全体のCVRは、社内報告用の参考値として扱い、打ち手の判断には使いません。
失敗2。補助CVを混ぜたCVRで「平均より高い」と安心する
資料ダウンロードやメルマガ登録をコンバージョンに含めていると、CVRの数字は主CVだけで数えたときより大きく上がります。この記事の冒頭の例でも、問い合わせだけなら0.5%、資料ダウンロードを足すと2.0%でした。数字だけ見れば平均を上回るので、社内報告は通ります。
ところが問い合わせは増えていない、という状態がここで生まれます。自動入札は、広告アカウントで「コンバージョン」として計上している成果に向けて配信を調整する仕組みです(各媒体の入札戦略のヘルプに記載されています)。つまり、資料ダウンロードを計上していれば、その計上件数を増やす方向に調整が働きます。最適化の向き先が売上から離れると、放っておくうちに商談数がじわじわ減ります。
防ぎ方は、広告のコンバージョンに計上するのは主CVだけにして、補助CVは「観測用」として別枠に置くことです。入札戦略の設定と合わせて見直したい場合は、Google広告の予算上限と入札戦略の決め方・設定手順を参考にしてください。
失敗3。管理画面とGA4の数字を混ぜて前月比を出す
先月は広告管理画面のCVRを、今月はGA4のコンバージョン率を報告書に書いてしまう。担当者が変わったときや、レポートのテンプレートを作り直したときに起きます。
広告管理画面とGA4は別のツールで、計測の対象も分母の取り方も同じではありません。同じ月・同じサイトでも件数がずれます。この2つを混ぜると、施策は何も変えていないのにCVRが動いたように見えます。差がどこから来ているかは自社の計測設定によって変わるため、詰めたい場合はGoogle広告ヘルプとGA4ヘルプで、それぞれのコンバージョンの定義と自社の設定を確認してください。
防ぎ方は、目標管理に使う数字をどちらか一方に決めて、レポートのタイトルに「Google広告管理画面・主CV・クリック基準」と明記しておくことです。もう一方は参考値として並べるだけにします。
失敗4。CV数が1桁の月の増減を、原因つきで語ってしまう
月のCVが8件から5件に減ったとき、「先月の広告文の変更が原因」と結論づけて元に戻す。これがいちばん多い失敗です。
8件と5件のような1桁どうしの差は、広告文を変えなくても月によって普通に起きる幅です。ここで設定を戻せば、翌月はまた別の数字が出ます。原因を探すつもりの操作が、比べられる期間そのものを短くしてしまいます。
防ぎ方は、ステップ4で決めた判定件数のルールを先に共有しておくことです。「主CVが30件を下回った月は単月で判断しない」と紙に書いてあれば、社内から増減を問われても答えられます。件数が少ない期間は、CVRではなく検索語句・LP到達率・フォーム離脱といった手前の指標を見ます。
この章の結論です。CVRの失敗は、施策ではなく集計単位で起きます。キャンペーン単位・主CVのみ・計測元を固定・判定件数のルール、この4つを守るだけで、誤った打ち手のほとんどは避けられます。
現場での妥協点。コンバージョン率を上げない方がいい場面もあります
コンバージョン率は、上げようと思えば簡単に上げられます。キーワードを指名検索と顕在キーワードだけに絞り込めば、翌月から数字は跳ね上がります。ただし、CV数は減ります。ここが実務でいちばん判断に迷うところです。
CVRとCV数はトレードオフになることがある
たとえば月27件のCVをCVR1.8%で獲得している状態から、キーワードを半分に絞ったとします。クリックは1,500から700に減り、CVRは3.0%に上がる。件数は21件です。CVRは1.2ポイント改善したのに、問い合わせは6件減っています。
どちらが正しいかは、事業の状況で変わります。営業が人手不足で商談をさばききれないならCVRを上げて質を取る。売上を伸ばす局面ならCVRが下がっても件数を取る。CVRは、単体では良し悪しを判定できない指標です。必ずCV数とCPAを横に並べて見てください。
CVRが高くても、商談化率が低ければ意味がない
問い合わせフォームの入力項目を減らすと、CVRは上がります。ただし、社名も予算も書かずに送れるようにすると、営業からは「連絡がつかない問い合わせが増えた」という声が上がります。
この状態を数字で捉えるには、CVRの隣に商談化率を置くしかありません。月1,500クリックで、2つのパターンを比べてみます。
| フォームを軽くした場合 | 入力項目を残した場合 | |
|---|---|---|
| クリック数 | 1,500 | 1,500 |
| CVR | 2.5% | 1.5% |
| 問い合わせ数 | 37.5件(1,500×2.5%) | 22.5件(1,500×1.5%) |
| 商談化率 | 20% | 60% |
| 商談数 | 7.5件(37.5×20%) | 13.5件(22.5×60%) |
問い合わせ数はフォームを軽くした方が15件多いのに、商談数では6件負けています。フォームを軽くする施策は、必ず商談化率とセットで判定してください。営業側の結果を広告側に返す仕組みが必要な場合は、オフラインコンバージョンのインポート手順|Google広告で商談計測で全体像を解説しています。
代理店レポートのCVRを受け取ったら、3つだけ聞く
運用を外部に任せている場合、レポートのCVRが良く見えるかどうかは、集計の切り方でかなり変わります。疑うという意味ではなく、前提を揃えるために次の3点を聞いてください。
- このCVRの分母はクリック数ですか、セッション数ですか
- コンバージョンには何が含まれていますか。資料ダウンロードや電話タップは入っていますか
- 指名検索キャンペーンを除いた数字も出せますか
この3つに即答してもらえるかどうかで、レポートの精度はだいたい分かります。答えが揃った状態で初めて、前月比の議論に意味が出ます。比較の観点をもう少し広く持ちたい方は、リスティング広告の運用代行の選び方|BtoBで比べる5項目も合わせて確認してみてください。
なお、CVRの要因分解や仮説出しはAIに任せて構いませんが、目標値そのものを決めるのは人の仕事です。粗利をどこまで広告に回すかは経営判断で、データからは出てこないからです。AIと人の分担の考え方はリスティング広告の運用で成果を出す中小企業の手順|AIと人の分担にまとめています。
この章の結論です。CVRは上げること自体が目的ではありません。CV数・CPA・商談化率と並べたときに、事業として前に進んでいるかを見る。その並べ方を決めるところまでが、目標設定の仕事です。
よくある質問
リスティング広告のコンバージョン率が1%を切っています。すぐ止めるべきですか
止める前に、許容CPAとCPAを比べてください。CVRが1%でもCPCが安ければCPAは許容内に収まることがあります。判断はCVRではなくCPAで行います。CV数が月10件未満なら、単月の数字では止める判断をせず、2〜3か月合算で見てください。
Google広告の管理画面とGA4でコンバージョン率が違うのはなぜですか
別のツールで、計測の対象も分母の取り方も同じではないためです。広告のCVRはクリックを分母にしますが、GA4はセッションやユーザーを分母にできます。件数が一致しないのが普通だと考えて、どちらかを目標管理用に決め、そちらだけで前月比を見てください。差の中身を詰めたい場合は、Google広告ヘルプとGA4ヘルプで、それぞれのコンバージョンの定義と自社の設定を確認してください。
業種別の平均コンバージョン率を調べても、自社の業種が載っていません
探し続けなくて大丈夫です。目標は「CPC÷許容CPA」で計算できるので、業種平均がなくても決まります。受注1件の粗利、商談化率、受注率の3つを仮置きで埋めれば、その日のうちに自社の必要CVRが出せます。
代理店から「業界平均より高い」と報告されました。何を確認すればいいですか
分母がクリック数かどうか、コンバージョンに資料ダウンロードなどの補助CVが含まれていないか、指名検索キャンペーンが混ざっていないかの3点です。この3つを外した数字が、実際の集客力を示します。答えが揃えば前月比の議論に進めます。
コンバージョン率が先月より下がりました。まず何を見ればいいですか
CV数が30件前後あるかを先に確認してください。1桁なら月ごとの振れ幅の範囲なので設定は動かしません。件数が十分あるなら、検索語句レポートで無関係な語の流入が増えていないか、LPやフォームを変更していないかの順に確認します。
まず1分でできることとして、広告管理画面のコンバージョン設定を開き、「コンバージョン」に計上されている項目に資料ダウンロードや電話タップが混ざっていないかだけ確認してみてください。ここが混ざっているだけで、平均値との比較も、自動入札の最適化先もずれます。そのうえで数字が動かない原因を切り分けたい場合は、Web広告で問い合わせが来ない原因|5層で切り分ける点検手順が次の一歩になります。
ここまで読んで、自社の粗利や商談化率をどう置けばいいか迷った、あるいは代理店レポートの数字をどう読めばいいか判断がつかないと感じた方は、一度お話を聞かせてください。現状の数字を一緒に並べて、目標をどこに置くか整理するだけでも構いません。契約の前提なしで、まずは相談からで大丈夫です。
毎月の数字を見て次の一手を決める人が社内にいないときは、広告の数字まで見る定額制マーケティング支援という進め方もあります。
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