不動産の集客代行|任せる作業と費用の内訳・契約前の確認点
この記事の要点
- 任せやすいのは広告の設定と改善、掲載文の作成、Googleマップの更新、追客の配信設計。成約・価格変更の連絡と判断、電話と面談は社内に残る
- 費用は広告費・運用手数料・初期費用・制作費など6費目。仮の計算例を本文で解説
- 成約済み物件の掲載残りはおとり広告のおそれ。契約前の確認10項目を本文に
不動産の集客代行に任せやすいのは、Web広告の設定と改善、ポータルサイトの掲載文づくり、Googleマップの運用のように、同じ作業を毎月繰り返す部分です。一方、反響への折り返し、内見後の追客、成約や価格変更の連絡と判断は社内に残ります。この線引きを決めないまま契約すると、反響は増えても成約は増えません。
売買・賃貸の仲介会社や管理会社で、集客を外部に任せるか迷っている経営者・役員の方に向けた記事です。読み終わる頃には、依頼先に何を任せるか、費用のどこを比べるか、契約前に何を確かめるかを決められる状態を目指します。
広告アカウントの設定手順そのものは扱いません。反響の計測設定はフォーム送信をコンバージョン計測する設定手順で解説しています。
Contents / 目次
不動産の集客代行に任せる作業と、社内に残る作業
不動産の集客代行では、広告や掲載の「設定と改善」は任せられます。しかし、物件の在庫と反響への対応は社内に残ります。集客代行とは、Web広告の運用、ポータルサイトの掲載、SNSやGoogleマップの運用など、問い合わせを集める作業を外部の会社が代わりに行うサービスです。
反響とは、物件や店舗に対して届いた問い合わせのことです。フォームでの問い合わせ、電話、来店予約、内見予約、査定依頼などを指します。不動産の集客方法ごとに、任せる作業と社内に残る作業を分けると、次の表のようになります。
| 集客方法 | 代行に任せやすい作業 | 社内に残る作業 | 向いている状況 |
|---|---|---|---|
| リスティング広告(Google広告・Yahoo!広告) | キーワード、入札、広告文、除外設定の調整 | 在庫と成約の連絡、反響への折り返し | 「〇〇駅 賃貸」のように物件を探している人を集めたい |
| SNS広告(Meta広告など) | 配信設定、画像・動画の差し替え、配信地域の調整 | 写真・動画の撮影許可、物件情報の確認 | 分譲住宅やモデルルームの来場予約を増やしたい |
| ポータルサイト(SUUMO・アットホーム・LIFULL HOME’S) | 掲載文と写真の準備(管理画面での入稿・更新を外部に任せられるかは、各ポータルとの掲載契約で確認) | 掲載してよいかの判断、成約・価格変更をすぐ伝える | 賃貸仲介・売買仲介で物件ごとの反響を集めたい |
| Googleマップ(Googleビジネスプロフィール) | 写真・投稿の更新、口コミ返信の下書き | 返信内容の最終確認、営業時間の変更連絡 | 店舗への来店や電話を増やしたい |
| 自社サイト・コラム | 記事の企画と執筆、LP制作 | 地域の情報や取引の実例を提供する | 売却や投資物件のように検討期間が長い |
| 追客(LINE・メール・電話) | 配信シナリオの設計、配信文の下書き | 送るかどうかの判断、電話と面談 | 反響のあと連絡が途切れる |
表のどの列を任せる場合も、契約の前に社内で決めておくことが3つあります。この3つが決まっていないと、代行会社は何を増やせばよいか分からず、報告書の数字も比べられません。
- 反響の定義:問い合わせ・来店予約・内見予約・査定依頼のうち、どれを成果として数えるか
- 物件情報の連絡:成約・価格変更・掲載終了を、誰が何時間以内に代行会社へ伝えるか
- 折り返しの担当:届いた反響に、誰がいつまでに連絡するか
広告・ポータル・Googleマップ・LINEのどれから手をつけるかを社内で決めきれない場合は、始める順番から決めるWeb集客の相談窓口で、最初に取り組む施策を決める進め方もあります。
任せる作業を表で決め、反響の定義・物件情報の連絡・折り返しの担当の3つを社内で決めてから見積もりを取ると、依頼先どうしを同じ条件で比べられます。
不動産で集客できない原因を、依頼する前に切り分ける
不動産で集客できない状態は、次の4つに分かれます。集客代行で改善しやすいのは、反響そのものが少ない場合と、反響を数えられていない場合です。内見後に成約しない原因は、広告を変えても解決しません。
| 症状 | 考えられる原因 | 代行で改善しやすいか |
|---|---|---|
| 反響そのものが少ない | 配信地域・キーワード・掲載写真が合っていない | 改善しやすい |
| 反響はあるが来店・内見につながらない | 折り返しが遅い、問い合わせた物件がすでに成約済み | 社内の対応が中心 |
| 内見後に成約しない | 提案内容や条件が合っていない | 代行の対象外 |
| 反響の数が分からない | 電話やポータル経由の反響を計測していない | 計測の設定は任せられる |
どの症状に当たるかは、表計算ソフトで次の手順の一覧を作ると確かめられます。
- 直近3か月の反響を、ポータル・Web広告・電話・来店・紹介の経路別に書き出す
- 経路ごとに「反響→内見→申込→契約」の件数を横に並べる
- 件数が大きく減っている段階を探す。反響の件数そのものが少なければ集客の問題、反響から内見の間で減っていれば折り返しの速さや成約済み物件の掲載の問題、内見から先で減っていれば提案内容や条件の問題と考える
- 電話の反響がどの広告から来たか分からない場合は、まず計測から始める
電話で問い合わせるお客様がいる業種では、広告からの電話をコンバージョン(成果)として数える設定が無いと、広告の成果が実際より少なく見えます。
代行会社を比べるときは、電話・フォーム・ポータルのどこまでを反響として数えているかを会社ごとにそろえてください。数える範囲が会社によって違うと、報告書の件数を並べても同じ条件の比較になりません。
契約後の成約を広告側に戻す方法は、Google広告のオフラインコンバージョンのインポート手順で解説しています。
経路別の件数を並べ、反響そのものが少なければ集客代行を、反響から内見の間で減っていれば折り返しと掲載物件の管理を、内見から先で減っていれば提案内容や条件を先に見直すと判断できます。
不動産の集客代行の費用の内訳と、金額が変わる条件
不動産の集客代行にかかる費用は、次の表の6つの費目に分かれます。代行会社の見積もりに入るのは主に広告費・運用手数料・初期費用(計測の設定を含む)・制作費の4つです。ポータルの掲載費や追客ツールの利用料は見積もりに入っていないことがあるので、別に確かめます。
| 費目 | 中身 | 支払先 | 金額が変わる条件 |
|---|---|---|---|
| 広告費 | クリックや表示に対して支払う費用 | Google・Metaなどの媒体 | 配信地域の広さ、競合の数、物件の種類 |
| 運用手数料 | 設定、改善、報告 | 代行会社 | 固定額か広告費の料率か、扱う媒体の数 |
| 初期費用・計測設定 | アカウント開設、電話・フォームの計測 | 代行会社 | 既存アカウントの有無、計測する反響の種類の数 |
| 制作費 | LP、バナー、物件の写真・動画 | 代行会社・撮影会社 | 物件ごとに作るか、会社単位で作るか |
| ポータル掲載費 | 掲載枠 | ポータル各社 | 掲載する物件の数とエリア |
| ツール費 | 追客のMA・CRMツール | ツールの提供会社 | 利用者数、機能 |
見積もりが妥当かは、反響1件あたりと成約1件あたりの費用で判断します。ここでは仮の数字で計算してみます。
- 月の費用:広告費30万円、運用手数料が料率20%なら6万円で、合計36万円
- 反響単価:反響が月30件なら、36万円÷30件=1件あたり1.2万円
- 成約単価:反響から成約する割合を仮に5%とすると成約は月1.5件で、36万円÷1.5件=1件あたり24万円
成約1件あたり24万円が、1件の仲介手数料から得られる利益の中に収まるかを確かめます。賃貸仲介は1件あたりの仲介手数料が売買より小さいため、同じ反響単価でも費用が合わないことがあります。利益から許容できる単価を逆算する方法は、CPAを粗利と受注率で逆算する方法で解説しています。
料率の契約は、広告費を増やすほど手数料も増えます。広告費が月ごとに大きく変わる場合は、固定額との総額を比べてください。比べ方は広告運用代行の固定と料率の違いにまとめています。
見積もりは月額の大きさではなく、反響単価と成約単価を仲介手数料の利益と比べて判断します。その計算に要る「反響から成約の割合」は、前の章で書き出した件数から出せます。
不動産広告の規制と、集客代行で起きる失敗
代行会社が作った広告でも、広告主として名前が出るのは不動産会社です。表示の確認を自社の作業から外すことはできません。宅地建物取引業法(宅建業法)第32条は、誇大広告を次のように禁じています。
「宅地建物取引業者は、その業務に関して広告をするときは、当該広告に係る宅地又は建物の所在、規模、形質若しくは現在若しくは将来の利用の制限、環境若しくは交通その他の利便又は代金、借賃等の対価の額若しくはその支払方法若しくは代金若しくは交換差金に関する金銭の貸借のあつせんについて、著しく事実に相違する表示をし、又は実際のものよりも著しく優良であり、若しくは有利であると人を誤認させるような表示をしてはならない。」(宅地建物取引業法 第32条)
宅建業法の条文は、e-Gov法令検索の宅地建物取引業法で確認できます。この章で触れる第33条・第34条も同じページにあります。
業界の自主ルールである「不動産の表示に関する公正競争規約」は、第21条で、おとり広告として次の3つの表示を禁じています。規約と施行規則の原文は、不動産公正取引協議会連合会が掲載している不動産の表示に関する公正競争規約・同施行規則(PDF)で確認できます。
- 存在しない物件:物件が存在しないため、実際には取引できない物件の表示
- 取引の対象にならない物件:物件は存在するが、実際には取引の対象となり得ない物件の表示
- 取引する意思がない物件:物件は存在するが、実際には取引する意思がない物件の表示
成約済みの物件を広告に残すと、おとり広告のおそれがある
成約の連絡が代行会社に届かないと、広告やポータルに成約済みの物件が残り続けます。成約済みの物件は取引できないので、2つ目の「取引の対象となり得ない物件」に当たるおそれがあります。防ぐには、成約を社内の誰が何時間以内に代行会社へ伝え、代行会社が連絡から何時間以内に掲載を止めるかを契約書に書き、月に1回、掲載中の物件と在庫の一覧を突き合わせます。
AIで量産した物件紹介文に、使用が制限される用語が入る
生成AIに物件紹介文を書かせると、公正競争規約で使い方が決まっている用語や表示が入ることがあります。代表的なものは次の3つです。
- 特定用語:「最高」「完全」「格安」のような用語は、規約の第18条で使用が制限されています
- 新築:同じ第18条で、建築工事の完了から1年未満で、まだ誰も住んでいない物件にしか使えないと定められています
- 徒歩の所要時間:規約の施行規則第9条で、道路距離80メートルを1分として計算し、1分未満は切り上げると決まっています。AIはこの距離を測れません
第18条は不動産の表示に関する公正競争規約・同施行規則(PDF)の「第7章 特定用語等の使用基準」、徒歩の所要時間は同じPDFの施行規則第9条第9号で確認できます。
公開前の確認にAIを使う場合は、次のような短い指示をたたき台にして、自社の物件の種類に合わせて調整してください。
あなたは不動産広告の表示を確認する担当です。
次の物件紹介文から、以下の3つを抜き出し、理由を添えて一覧にしてください。
1. 「最高」「完全」「格安」「新築」など、使用に条件がある用語
2. 根拠となる資料が必要な表現(徒歩分数、日当たり、眺望など)
3. 取引態様(売主・代理・媒介)や所在地の書き漏れ
[物件紹介文を貼り付け]
AIが挙げた用語は、規約の原文と照らして判断します。徒歩分数は地図で道路距離を測って確かめます。取引態様の明示は、宅建業法第34条で求められています。
未完成の物件の広告を、許可や確認の前に始めてしまう
分譲住宅や新築マンションの集客を急ぐと、建築確認などの前に広告を出してしまうことがあります。宅建業法第33条は、工事完了前の物件について、開発許可や建築確認などの処分があった後でなければ広告してはならないと定めています。代行会社には、配信開始の条件として確認済証などの日付を伝え、それより前の日付では配信しない取り決めにします。
反響数の保証を条件にすると、成約しない反響が増える
「月○件の反響を保証」という契約では、代行会社が件数を増やしやすい配信に寄せやすくなります。その結果、エリア外の人や、資料だけを求める人からの反響が増えるおそれがあります。反響数を保証する契約を選ぶ場合は、エリアと物件種別を絞った反響だけを数える条件を付けてください。
広告の表示が公正競争規約に合うかで迷う点は、地域の不動産公正取引協議会に相談できます。取引のルールで迷う点は、免許を出した行政庁(都道府県知事免許なら都道府県、国土交通大臣免許なら地方整備局など)の宅建業の担当窓口に相談できます。
この章で挙げた失敗は、成約・価格変更の連絡の遅れと、公開前の確認がないことから起きます。連絡の期限と確認の担当を、契約の前に決めてください。
集客代行の契約前に確認する10項目
契約前には、次の10項目を代行会社に質問し、答えを書面で受け取ってください。特に1と2は、代行会社を変更するときに困らないために欠かせません。
| 確認すること | 返ってきてほしい答え |
|---|---|
| 1. 広告アカウントの名義 | 自社名義で作り、代行会社に権限を付与する |
| 2. 解約時に引き継げるもの | アカウント、計測設定、作った画像・LP、反響のデータ |
| 3. 反響の数え方 | 電話・フォーム・LINE・ポータルを分けて数える |
| 4. 成約・価格変更の反映までの時間 | 連絡から何時間以内に反映するかが契約書にある |
| 5. 公開前の表示確認 | 広告文と物件紹介文を自社が確認してから公開する流れ |
| 6. 写真・動画の権利 | 撮影者と売主・貸主の許可を誰が取るか決まっている |
| 7. 請求の内訳 | 広告費と手数料が分かれて請求される |
| 8. 最低契約期間 | 期間と、解約を申し出る期限が明記されている |
| 9. 報告の中身 | 反響数に加え、反響単価と内見数まで出る |
| 10. 担当する媒体 | 広告・ポータル・Googleマップのうち、どれを誰が担当するか |
アカウントが代行会社の名義のままだと、解約したときに過去の配信データや計測設定を引き継げないおそれがあります。引き継げるかどうかは、媒体ごとのアカウントの仕様と、代行会社が権限の移し替えに応じるかで変わります。変更の手順は広告代理店の変更とアカウント引き継ぎの手順で解説しています。
自社で行う作業と代行会社に任せる作業
自社に残すのは、次の4つの作業です。
- 反響への折り返し
- 成約・価格変更の連絡
- 広告表示の最終確認
- 追客の電話と面談
代行会社に任せるのは、次の5つの作業です。
- 広告の設定と毎月の改善
- 計測の設定
- 掲載文や画像の作成
- Googleマップの写真・投稿の更新と、口コミ返信の下書き
- 追客の配信シナリオの設計と、配信文の下書き
広告文や追客メールの下書きはAIでも作れますが、表示が正しいかの確認と、送るかどうかの判断は自社で行います。
すべてを外に出すのではなく、毎月の判断と実装を社内に残したい場合は、配信設計から見直す広告運用の支援という選択肢もあります。毎月何から手をつけるかを決めて実装まで進め、判断の理由と手順を文書に残すので、社内に担当者ができた時点で引き継げます。
10項目への答えを書面で受け取り、自社に残る4つの作業の担当者を決めてから契約すると、解約や変更のときにデータを引き継げなくなる事態を防げます。
不動産の集客代行でよくある質問
ポータルサイトに掲載していれば、Web広告の集客代行は要らないですか?
ポータルからの反響で成約が足りていて、掲載費が利益に見合っているなら、急いで足す必要はありません。掲載費が上がって利益が残りにくい場合や、売却査定のように自社へ直接問い合わせてほしい反響がある場合は、Web広告で自社サイトへの経路を作る意味があります。
賃貸仲介の小さな店舗でも、集客代行を使う意味はありますか?
あります。ただし賃貸は1件あたりの仲介手数料が小さいため、広告費をかける前に、成約1件あたりにかけられる費用を計算してください。広告よりも、Googleマップの写真と営業時間の更新、口コミへの返信のほうが、少ない費用で来店につながる場合があります。
代行会社が作った広告に規約違反があったら、どう対応すればいいですか?
広告主として名前が出るのは不動産会社なので、まず該当する広告を止めて表示を修正します。後から慌てないよう、契約の段階で公開前の確認の流れと、違反が見つかったときの修正期限を決めておきます。判断に迷う場合は、規約の原文を確かめたうえで、地域の不動産公正取引協議会に相談してください。
売却の反響を増やしたい場合、一括査定サイトと集客代行のどちらを先に使うべきですか?
すぐに査定の件数がほしいなら一括査定サイト、自社を指名して問い合わせてほしいなら自社サイトと広告です。一括査定は他社と比べられる前提の反響になります。地域の売却事例や査定の流れを自社サイトに載せ、そこへ広告で集める方法と、件数と成約率を比べて決めてください。
まずは直近3か月の反響を、ポータル・Web広告・電話・来店の経路別に書き出してみてください。すでに代行会社に任せていて成果に不安がある場合は、広告運用代行で成果が出ないときの数字の確認と変更の判断が次の一歩になります。
反響の数え方や、どの作業を外に出すかを社内だけで決めきれない場合は、毎月の判断と実装を進める定額制のWeb広告運用の支援もご検討ください。いまの広告と反響の状況を伺い、最初に見直す点を一緒に洗い出すところから始められます。
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