広告代理店の変更|アカウント引き継ぎの手順と確認する数字
この記事の要点
- 解約を伝えるのは、広告アカウントの名義を確認し、新しい代理店と引き継ぎ方法まで決めた後。順番を逆にすると交渉材料が消える
- 変えて効くのは運用の質。商材とLPが原因なら代理店を変えても数字は動かない
- 引き継ぎ漏れが起きるのは計測まわり。確認する項目を本文で一覧にしています
広告代理店の変更で最初に決めるべきは、次の代理店をどこにするかではありません。いま配信している広告アカウントを、そのまま引き継げるかどうかです。ここが引き継げないと、過去のコンバージョン実績もリマーケティングリストもゼロから積み直しになり、切り替え直後の数字が落ち込むことがあります。
この記事は、広告運用を外部に任せていて、変えるかどうかを決める立場にある方(経営者・役員・事業責任者)に向けて書いています。読み終わる頃には、変更の判断に使う数字と、引き継ぎで確認する項目、伝える順番が決まった状態になります。
扱うのは「代理店を変えると決めた前後にやること」です。そもそも成果が出ていない原因が代理店側にあるのかを切り分けたい段階の方は、先に広告運用代行で成果が出ないときの数字の確認方法を読んでいただくほうが早く進みます。
Contents / 目次
広告代理店の変更で、先に決める3つ
順番はこうです。
- 広告アカウントの所有者が誰かを確認する
- 変えて効くことと効かないことを切り分ける
- 新しい代理店と合意してから解約を伝える
この3つを守れば、切り替えで起きる事故のほとんどは防げます。
広告アカウントの引き継ぎとは、いま配信している広告アカウントそのものを残したまま、管理する権限を別の会社に移すことです。新しく作り直すことではありません。ここを取り違えると、後戻りできない選択をしてしまいます。
そして、代理店を変えれば全部よくなるわけではありません。変えて動く数字と、変えても動かない数字があります。
| 領域 | 代理店を変えて動くか | 理由 |
|---|---|---|
| キーワードと除外の精度 | 動く | 検索語句の点検頻度と判断基準が、担当者によって大きく違うため |
| コンバージョン計測の設計 | 動く | 何を成果に数えるかの定義を作り直せる。ここが最も差が出る |
| 広告文とクリエイティブの検証量 | 動く | 月に何本作るか、内製か外注かで本数が変わる |
| 商材そのものの競争力・価格 | 動かない | 広告の外側にある。誰が運用しても同じ条件で戦うことになる |
| ランディングページの内容 | 条件つき | LP改修まで契約範囲に入っていれば動く。運用だけの契約なら動かない |
| 問い合わせ後の折り返し速度 | 動かない | 自社の営業体制の話。ここが遅いと広告の成果は改善しない |
先に確かめること。広告管理画面にログインして、アカウント名義とお支払い情報が自社になっているかを見てください。ログインできない、閲覧権限をもらっていない、という状態なら、それ自体が変更を検討する十分な理由になります。
Web広告の入札や配信面の割り当ては、媒体側の自動入札や自動化された配信の仕組みに任せる形が増えています。どの入札戦略でどこまで自動化されるかは媒体ごとに決まっているので、仕様はGoogle 広告ヘルプやMetaビジネスヘルプセンターで確認してください。そのぶん代理店の差が出るのは、入札を手で刻む作業ではなく、何を成果として渡すか(コンバージョンの定義と計測の精度)と、渡すデータの質です。だから乗り換えでは、計測設定をきれいに引き継げるかどうかが大きく効きます。
この章の結論です。変更の可否は「広告アカウントを引き継げるか」で決まり、変更の価値は「運用の質で動く領域が、自社の課題に当たっているか」で決まります。この2つが両方そろって初めて、乗り換える意味があります。
変えるか続けるかを判断する、4つの数字
感覚ではなく数字で決めます。見るのは次の4つです。どれも管理画面かレポートから今日中に出せるものだけを選びました。
- CPA(1件あたりの獲得単価)の6か月推移。月ごとに並べて、横ばいか、上がり続けているかを見ます
- コンバージョン数の絶対値。CPAが良くても件数が少なければ、改善の判断材料が集まりません
- 検索語句レポートの無駄打ち比率。直近1か月で、自社と関係ない検索語に使われた費用の割合です
- 商談化率・受注率。広告のコンバージョンのうち、実際に商談や来店につながった割合です
CPAが上がり続けているときの読み方
CPAが6か月で上がり続けている場合、代理店の問題とは限りません。競合の参入でクリック単価そのものが上がっていることがあります。切り分け方は、CPAを「クリック単価」と「コンバージョン率」に分解することです。
クリック単価だけが上がっていて、コンバージョン率が横ばいなら、まず疑うのはオークションの競争が激しくなったことです。ただし、広告文の差し替え、配信面やキーワードの追加といった運用側の変更でもクリック単価は上がります。判断する前に、同じ期間に入札戦略・キーワード・広告文を変えていないかを代理店に確認してください。運用側の変更が無かったのであれば、代理店を変えても同じクリック単価で戦うことになります。逆に、クリック単価は変わらずコンバージョン率だけが落ちているなら、キーワードの質かLPの問題で、これは運用で動かせる領域です。
検索語句の無駄打ちを確かめる手順
Google広告の検索語句レポートを直近30日で開きます。そのうえで、次の順に見てください。
- 明らかに自社と関係ない検索語を拾う(求人を探している、無料の方法を探している、競合の社名を調べている等)
- その検索語に使われた費用を合計し、期間の総費用に対する割合を出す
- 先月・先々月のレポートでも同じ作業をして、同じ検索語が繰り返し出ていないかを見る
判断は割合の大小ではなく、同じ検索語が毎月そのまま出続けているかどうかで行います。除外キーワードの追加は月1回の作業で済むので、前月に出ていた語がそのまま残っているなら、除外の手入れがされていないサインです。見方の詳しい手順はGoogle広告で毎週見る数字と直す順番にまとめています。
コンバージョンは増えたのに、売上が増えていないとき
これは代理店の問題ではなく、成果の定義がずれているケースです。レポート上のコンバージョンに、電話の誤タップ、資料ダウンロードの重複、採用応募などが混ざっていると、数字はきれいなのに商談が増えません。
確認方法は、広告管理画面のコンバージョンアクション一覧を開いて、計測されている項目を1つずつ読むことです。「何をもって1件と数えているか」を説明できない項目があれば、そこが原因です。成果に数える行動の決め方はBtoBで成果に数える行動の決め方で解説しています。
報告の中身で判断する
数字以外にもう1つ。直近3回分のレポートを並べて、先月と違うことが書いてあるかを見てください。数値の羅列と「引き続き最適化を進めます」だけが3か月続いているなら、手が入っていないか、入れる権限がない状態です。
この章の結論です。CPAの悪化だけでは判断材料になりません。クリック単価とコンバージョン率に分解し、商談化率まで見て、運用で動かせる領域に問題があると確認できたときにだけ、変更が効きます。
広告アカウントの引き継ぎ手順。6ステップ
ここが記事の本題です。進める順番を間違えると取り返しがつかないので、番号どおりに進めてください。
ステップ1。契約書の解約条項を読む
最初にやるのは、いまの代理店との契約書を開いて、次の4点を書き出すことです。
- 解約予告期間:何か月前に通知が必要か。契約書に書かれている月数をそのまま書き出します
- 最低契約期間:初回契約に縛りがあるか。残っている場合は違約金の有無
- 通知の方法:書面のみか、メールでも可か。代表者名が必要か
- 広告アカウントの帰属:アカウントの所有権や、解約時の取り扱い、引き継ぎへの協力義務を定めた条項があるか
4点目の条項が契約書に無いことは珍しくありません。無い場合は、次のステップで実際の管理画面を見て事実を確認します。
ステップ2。広告アカウントの名義と権限を確認する
契約書の記載よりも、実際にどうなっているかが優先されます。Google広告とMeta広告で、確認する場所が違います。
Google広告の場合。確認するのは次の2点です。
- 広告アカウントの名義と支払い者が自社か:管理画面の設定と、請求・お支払いの画面で、アカウント名と支払い者の名義を見ます
- 自社のGoogleアカウントに管理権限が付いているか:アクセス権を管理する画面で、自社のメールアドレスが管理者として登録されているかを見ます
管理画面のメニュー名や配置は変わることがあります。どの画面で名義とアクセス権を確認するか、代理店のマネージャーアカウントとのリンクを解除したあと自社で運用を続けるには何が必要か、その手順と条件はGoogle 広告ヘルプで最新の表示に合わせて確認してください。解除を実行する前に、自社のアクセス権が残る状態かどうかをヘルプで確かめておくと安全です。
Meta広告の場合。確認するのは次の2点です。
- 広告アカウントを所有しているのはどこか:自社の設定画面で、広告アカウントが自社の所有として並んでいるか、代理店側から共有されているだけかを見ます
- 代理店に渡しているのは所有権か、アクセス権か:自社が所有したまま代理店にアクセス権を渡している形か、代理店の所有になっているかを見ます
名称や画面の構成は変わることがあります。どの単位で権限を渡せるか、代理店のアクセス権を外したあとに自社で運用を続けられる条件は何かは、Metaビジネスヘルプセンターで確認してください。
代理店名義のアカウントで運用されている場合、アカウントの管理権限は代理店側にあります。これは権限の持ち方がそうなっているだけで、代理店が悪いわけではありません。ただし、譲渡に応じるかどうかは交渉次第になります。この事実を確認した時点で、まだ解約は伝えないでください。
ステップ3。新しい代理店を決めて、移管方法まで合意する
候補は3社程度に絞り、全社に同じ条件で提案を依頼します。同じ条件とは、次の4つを同じ文面で渡すという意味です。
- 月の広告予算
- 対象媒体
- 目標CPAまたは目標件数
- 現在の課題
条件がバラバラだと提案の比較ができません。
提案を受けるときに必ず聞くのが「いまのアカウントを引き継ぐ前提で設計するか、新規で作り直す前提か」です。作り直しを提案してきた場合は、その理由を説明してもらってください。アカウント構成が壊れていて作り直したほうが早いケースは実在しますが、単に自社の型に合わせたいだけのこともあります。比べる項目はリスティング広告の運用代行をBtoBで比べる5項目にまとめています。
ステップ4。解約を通知する
新しい代理店との契約に目処が立ってから、はじめて現在の代理店に通知します。通知文は簡潔で構いません。理由を細かく書く必要はなく、日付と、引き継ぎに協力してほしい項目をはっきり書くことが大事です。そのまま使える文面を置いておきます。
件名:広告運用委託契約の解約のご連絡
株式会社[代理店名]
[担当者名]様
いつもお世話になっております。
株式会社[自社名]の[氏名]です。
社内で検討の結果、貴社との広告運用委託契約につきまして、
契約書第[ ]条に基づき、[YYYY年MM月DD日]をもって
解約させていただきたくご連絡いたしました。
最終の配信日は[YYYY年MM月DD日]を想定しております。
つきましては、下記の引き継ぎにご協力をお願いできますでしょうか。
1. 広告アカウントの管理者権限の移管(対象:[媒体名をすべて記載])
2. GA4・Google タグ マネージャー・Search Console の権限の確認
3. コンバージョン設定の一覧と、計測タグの設置場所
4. 直近12か月のパフォーマンスレポート
5. 広告に使用している画像・動画の元データ
6. 過去に実施して効果が出なかった施策の記録
お手数をおかけしますが、[YYYY年MM月DD日]までに
ご対応の可否をご返信いただけますと助かります。
これまでのご支援に感謝しております。
引き続きよろしくお願いいたします。
6番目の「効果が出なかった施策の記録」は、依頼しないと出てきません。これが無いと、新しい代理店が同じ検証をもう一度やることになります。もらえるかどうかは別として、必ず依頼文に入れてください。
ステップ5。引き継ぐものを一覧で押さえる
広告アカウントだけ移しても、計測が旧代理店の持ち物のままだと、設定を直したいときに手が出せません。実際にこれが一番よく起きる事故です。次の表をそのまま確認用に使ってください。
| 引き継ぐもの | どこで確認するか | 抜けると何が起きるか |
|---|---|---|
| 広告アカウントの管理者権限 | 各媒体の管理画面のアクセス権の設定 | 配信の変更ができない。最悪、作り直しになる |
| お支払い情報の名義 | 広告管理画面の請求・お支払い設定 | 旧代理店への一括請求が止まらず、二重払いになる |
| コンバージョン設定の一覧 | 広告管理画面のコンバージョンアクション | 何を成果に数えているか分からないまま運用が続く |
| 計測タグの設置場所 | Google タグ マネージャーのコンテナ | タグが旧代理店のコンテナにあると、自社にアクセス権が無いまま権限を外された時点で修正できなくなる |
| GA4の管理者権限 | GA4の管理メニューのアクセス管理 | 広告とGA4の連携が切れ、経路の分析ができなくなる |
| リマーケティングリスト | 広告管理画面のオーディエンス | アカウントを作り直すと、蓄積し直しになる |
| 画像・動画の元データ | 代理店への依頼(編集可能な元ファイル) | 書き出し済みの画像しかなく、文言の差し替えができない |
| 直近12か月のレポート | 代理店への依頼+管理画面からの書き出し | 季節変動が分からず、新代理店が前年比を作れない |
見落としが多いのはGoogle タグ マネージャーです。コンテナが代理店のGoogleアカウントの下に作られていて、自社のアカウントにアクセス権が無いと、権限を外された時点でタグを編集できなくなります。自社のGoogleアカウントでコンテナを開けるか、いま確認してください。アクセス権の与え方や所有の移し方はGoogle タグ マネージャー ヘルプで確認できます。タグの持ち主を移す作業は、GA4とGTMでフォーム送信を計測する設定手順と同じ考え方で進められます。
ステップ6。旧と新が重なる期間をつくる
旧代理店の最終配信日と、新代理店の開始日を同じ日にしないでください。重なる期間をつくるのが安全です。必要な長さは契約の締め日と計測の項目数で変わるので、次の3点から逆算して決めます。
- 請求の区切りに合わせるため:請求のサイクルは契約書に書かれています。締め日と支払い条件を確認し、区切りに合わせて最終配信日を決めます
- 計測の照合に日数が要るため:新しい計測設定が正しく動いているかは、数日ぶんのデータを見ないと分かりません
- 質問できる相手を残すため:「この設定はなぜこうなっているのか」を旧代理店に聞けるのは、契約が生きているあいだだけです
重なる期間に予算を倍にする必要はありません。旧代理店の配信を段階的に絞り、その分を新代理店に寄せていく形で構いません。
この章の結論です。引き継ぎの成否は、広告アカウント本体ではなく計測まわりの持ち主で決まります。表の8項目を埋められれば、切り替えで数字が消える事故はほぼ防げます。
費用はどう変わるか。内訳と一時コスト
月々の手数料だけを比べると、切り替えの判断を間違えます。乗り換えの年は一時的にかかる費用が乗るので、そこまで含めた1年の総額で比べてください。
月々の手数料の決まり方
広告運用代行の手数料は、料率型と固定型に大きく分かれます。水準は会社によって大きく異なり、料率型では最低手数料を別に設けている場合もあります。どちらが有利かは広告費の規模で変わります。広告費が伸びる見込みなら固定型のほうが総額を抑えやすく、広告費を絞る時期なら料率型のほうが連動して下がります。計算の仕方は広告運用代行の固定と料率の違いと総額の出し方で数式にしています。
費用が変わる要因は、おもに次の4つです。
- 媒体数:Google広告だけか、Meta広告やYahoo広告も含むか。媒体が増えるほど点検と入稿の作業が増えます
- クリエイティブ制作の本数:バナーや動画を毎月何本作るか。制作を含むかどうかで金額が大きく動きます
- LP改修が範囲に入るか:広告の中だけ触るのか、着地先の改善まで含むのか
- 報告の頻度と形式:月1回のレポート提出だけか、月次の報告会や週次の共有まで含むか
乗り換えの年だけかかる一時コスト
ここを見落とすと、初年度の予算が足りなくなります。
| 費目 | 何にかかるか | 発生する条件 |
|---|---|---|
| 初期設計費 | アカウント構成の診断、キーワードの再設計、目標の設定 | 設定の有無と金額は会社によって異なる。見積もりで確認する |
| 計測の再実装 | コンバージョンタグの棚卸しと張り直し、GA4との連携 | タグが旧代理店の管理下にある場合は必ず発生する |
| クリエイティブの作り直し | 元データをもらえなかった画像・動画の再制作 | 編集可能な元ファイルを引き継げなかったとき |
| 重複期間の広告費 | 旧と新が重なる期間ぶんの配信費用 | 並行期間を設けるなら必ず発生する。ただし予算は分け合える |
| 解約にともなう費用 | 最低契約期間が残っている場合の違約金 | 契約書に定めがある場合のみ |
計測の再実装にかかる工数は、タグの数やフォームの数で大きく変わります。見積もりを受けるときは、作業時間ではなく「何を棚卸しして、何を張り直すか」を項目で出してもらってください。ここを「無料でやります」と言われた場合、本当に棚卸しまでするのか、既存のタグをそのまま使うだけなのかを確認します。
比べ方。提案を受けたら、月額手数料ではなく「初年度の総額(月額×12+初期費用+一時コスト)」を1つの数字にして並べてください。月額が安い提案のほうが初年度は高くつくことがあります。
この章の結論です。手数料の高い安いより、その金額に何が含まれるかで総額は変わります。媒体数・制作本数・LP改修・報告頻度の4つを同じ条件にそろえてから、初年度の総額で比べてください。
切り替えて成果が出た会社の共通点
代理店を変えて数字が動いたケースには、はっきりした共通点があります。逆に言えば、この条件がそろっていないと、変えても同じ結果になります。
成果が数字として見えるまでの時間
切り替え直後は、むしろ数字が落ちることがあります。入札戦略や予算の構成を変えると、自動入札の配信が安定するまでに時間がかかるためです。学習期間の扱いは媒体ごとに決まっているので、どの操作が学習のやり直しにあたるかはGoogle 広告ヘルプで確認してください。
この期間を「失敗した」と判断して2週間で元に戻すと、設定の変更がまた重なり、いつまでも安定しません。切り替え後は最低でも1か月、できれば3か月は同じ設計で回すと決めてから始めてください。判断するのはそのあとです。
数字が動いた会社がやっていたこと
- 広告アカウントを引き継いだ。過去のコンバージョン実績とリマーケティングリストを残したまま構成だけ直したので、初動の落ち込みが小さくて済んだ
- 成果の定義を作り直した。「問い合わせフォームの送信」だけを数えていた状態から、電話・資料請求・来店予約を分けて計測し、どれが商談につながるかを分けて見られるようにした
- 事業の数字を代理店に渡した。目標CPAだけでなく、1件あたりの粗利と、問い合わせから受注までの確率を共有した。これがあると、CPAをいくらまで許容できるかを代理店側が自分で判断できる
3番目が特に効きます。目標CPAだけを渡すと、代理店はその数字を守ることが目的になり、件数を絞る方向に動きます。粗利と受注率まで渡せば、「CPAが少し上がっても件数を増やしたほうが利益が出る」といった判断ができるようになります。逆算の考え方はCPAを粗利と受注率で逆算する決め方にまとめています。
切り替え後に見る数字と、その順番
新体制の1か月目から全部を見ようとすると判断できません。月ごとに見る数字を決めておきます。
- 1か月目:コンバージョンが正しく計測されているか。管理画面の件数と、社内に実際に届いた問い合わせ件数が一致するかだけを見ます
- 2か月目:検索語句の無駄打ちが減ったか。除外キーワードが実際に追加されているかを一覧で確認します
- 3か月目:CPAとコンバージョン数。ここで初めて、前の代理店の数字と比べます
- 4か月目以降:商談化率。広告からの問い合わせが、実際の商談につながっているかを見ます
この章の結論です。切り替えの成果は3か月目まで判断できません。1か月目にやるべきは数字を比べることではなく、計測が正しく動いているかの確認です。
代理店の乗り換えで実際に起きる失敗4つ
失敗1。解約を先に伝えて、移管交渉ができなくなる
どういう状況で起きるか。社内で「もう変える」と決まった直後、まず現在の代理店に解約を伝えてしまうケースです。誠実に早めに知らせようという気持ちから起きます。
何が起きるか。解約後の引き継ぎにどこまで協力してもらえるかは、契約書に協力義務の定めがあるかどうかで変わります。定めが無い場合、広告アカウントが代理店名義だと、譲渡の交渉材料が手元に無くなります。返答が遅くなったり、最低限の対応だけになったりしても、こちらから求める根拠がありません。
どう防ぐか。順番を守るだけです。
- アカウントの名義を確認する(ステップ2)
- 新しい代理店を決める(ステップ3)
- 解約を伝え、その文面で権限移管を依頼する(ステップ4)
この順番を社内で共有しておけば防げます。
失敗2。アカウントを作り直して、蓄積がゼロに戻る
どういう状況で起きるか。代理店名義のアカウントで、譲渡の交渉が面倒に感じたときです。「新しく作ればいい」という判断になりやすい場面です。
何が起きるか。アカウントを新しく作ると、そのアカウントには過去のコンバージョン実績がありません。リマーケティングリストを引き継げるかどうかも、媒体の仕様と権限の持ち方で変わります。引き継げない場合は、訪問者の多いサイトでも、リストが使える規模に戻るまで時間がかかります。移行できる範囲はGoogle 広告ヘルプで事前に確認してください。
どう防ぐか。作り直しを選ぶ前に、必ず譲渡を打診してください。断られる前提で諦めるのではなく、依頼文に明記して回答をもらいます。それでも譲渡できない場合は、作り直しを前提に、初動の落ち込みを織り込んだ予算と期間を新しい代理店と合意してから始めます。
失敗3。計測タグの持ち主が旧代理店のままで、数字が直せなくなる
どういう状況で起きるか。広告アカウントの権限移管だけを済ませて安心し、Google タグ マネージャーとGA4の権限を確認しなかったときです。広告の配信は普通に続くので、切り替えの当日は誰も気づきません。
何が起きるか。自社のアカウントにコンテナへのアクセス権が無いまま、旧代理店との関係が切れると、タグの修正ができなくなります。コンバージョンの数え方を直したくても触れません。さらに悪いのは、新しい代理店が別のタグを追加してしまい、同じコンバージョンが二重に計上されるケースです。件数が実態の倍になり、CPAが半分に見えます。
どう防ぐか。解約通知に「計測タグの設置場所」を項目として入れておくこと(ステップ4の文面の3番)。そして切り替え後の1週間、管理画面のコンバージョン件数と、社内に実際に届いた問い合わせ件数を手で突き合わせること。ここがずれていたら、数字を信じる前に設定を直します。
失敗4。効かなかった施策の記録が消えて、同じ検証を繰り返す
どういう状況で起きるか。引き継ぎ資料としてレポートだけを受け取り、「過去に試して効果がなかったこと」を聞かなかったときです。レポートには実施した施策の結果は載りますが、やめた理由は載りません。
何が起きるか。新しい代理店が、過去に試して効かなかったキーワードや配信面を、良かれと思ってもう一度試します。検証には時間がかかるので、その分だけ改善が後ろにずれます。予算も同じだけ消えます。
どう防ぐか。引き継ぎの打ち合わせで、代理店の担当者に口頭で聞いて、その場でメモを取ることです。「これまでに止めた配信と、その理由を教えてください」の一言で十分です。資料として求めると時間がかかりますが、会話でなら出てきます。
この章の結論です。4つとも、事前に1つ質問しておけば防げるものです。アカウント名義・タグの場所・やめた施策の理由。この3点を聞くタイミングを、解約を伝える前に持ってきてください。
変えてもうまくいかない条件と、契約前に確認すること
正直に書きます。代理店を変えても成果が変わらないケースはあります。むしろ、変更相談を受けたときにまず確認するのがここです。
変えても数字が動かない4つの条件
- 広告費に対してクリック単価が高く、クリック数が集まっていない:必要な予算は業種やキーワードの単価で大きく異なります。自社のクリック単価で、判断できるだけのクリック数とコンバージョン数が月に集まるかを計算してください。集まらないなら、誰が運用しても判断材料が足りないので、まず予算の設計を見直すほうが先です
- コンバージョンの件数が少なく、月ごとの比較ができない:件数が少ないと、増減が運用の結果なのか偶然なのかを切り分けられません。この場合は、成果に数える行動を手前に置く(資料請求や無料相談を足す)ほうが効きます
- 問い合わせへの折り返しが翌営業日になっている:広告からの問い合わせは、比較検討の途中で届きます。折り返しが遅いと、広告の成果は何をしても改善しません
- LPが無く、会社案内のトップページに着地している:広告の中だけで直せる範囲を超えています。運用だけの契約では動かせません
この4つのどれかに当てはまるなら、代理店を変える前にそこを直すほうが、同じ費用で結果が出ます。1つ目と2つ目に心当たりがある方は、月5万円のBtoB広告を検索1本に集中させる考え方のほうが役に立つはずです。
提案を受けるときに知っておくこと
乗り換えを検討している会社に対して、多くの代理店は初期診断やセカンドオピニオンを提案します。これは有用ですが、構造として知っておいたほうがいいことが1つあります。診断は提案のために行われるので、指摘は「切り替えれば直る」方向で出てきます。
だから診断結果を聞くときは、「その問題は、いまの代理店に伝えれば直せるものですか」と聞いてみてください。答えが「伝えれば直ります」なら、乗り換えずに条件を見直す選択肢が残ります。答えが「アカウント構成から作り直さないと無理です」なら、その理由を具体的に説明してもらいます。
契約前に確認する8項目
提案の内容とは別に、契約条件として確認する項目です。そのままチェックリストとして使ってください。
- 広告アカウントの名義は自社になるか。契約書に明記してもらえるか
- 契約終了時に、アカウントと計測設定を引き継げるか。その条件は何か
- 管理画面の閲覧権限をもらえるか。もらえない場合はその理由
- 最低契約期間と、解約予告期間は何か月か
- 手数料に何が含まれるか(媒体数・制作本数・LP改修・レポート頻度)
- 初期設計費と計測の再実装費は、別途かかるのかかからないのか
- 実際に運用する担当者は誰か。営業担当と別なら、打ち合わせに同席するか
- 報告に、数値の説明だけでなく「次の月に何をするか」が入るか
3番が特に大事。管理画面の閲覧権限をもらえないと、何にいくら使われ、どんな検索語に広告が出ているかを自分で確認できません。次に代理店を変えるときにも、同じ苦労を繰り返すことになります。
全部を任せない選択肢もある
代理店を変えるか続けるかの二択で考えがちですが、もう1つあります。広告アカウントと計測の持ち主は自社に置いたまま、運用だけを外に出す形です。この形にしておくと、次に体制を変えるときの引き継ぎが1日で終わります。
どこまでを社内に残し、どこからを外に出すかの分け方は、Web広告の内製化と外注の役割分担5モデルで整理しています。
この章の結論です。変えてもうまくいかない4つの条件に当てはまっていないかを先に確認し、そのうえで契約前の8項目を聞く。ここで「閲覧権限を渡せません」と言われたら、その会社は候補から外して構いません。
広告代理店の変更でよくある質問
解約を伝えるのは、新しい代理店を決める前と後、どちらが安全ですか
決めた後です。契約書に解約後の協力義務の定めが無い場合、解約が確定してからでは、広告アカウントの権限移管に協力してもらう根拠が弱くなります。先に名義を確認し、新しい代理店と引き継ぎ方法まで決めてから通知してください。契約書の解約予告期間だけは先に読んでおき、通知日から逆算して予定を組みます。
代理店名義の広告アカウントは、譲ってもらえないものなのでしょうか
応じてもらえることもあります。ただし契約に定めが無ければ義務ではないので、交渉次第です。依頼するときは、対象の媒体と広告アカウントのIDを明記して、書面かメールで正式に伝えてください。断られた場合は作り直しになりますが、その前提で初動の落ち込みを織り込んだ予算を新しい代理店と決めてから始めます。
引き継ぎのあいだ、広告はいったん止めたほうがいいですか
止めないほうがいいです。配信を止めたり設定を大きく変えたりしたときに、自動入札の学習がどう扱われるかは媒体の仕様によります。どの操作が学習のやり直しにあたるかはGoogle 広告ヘルプで確認してください。旧代理店の配信を段階的に絞りながら、新代理店の配信を立ち上げる形で重ねてください。予算の合計は増やさなくて構いません。
乗り換えた直後にCPAが悪化したら、失敗と判断していいですか
1か月目では判断できません。入札戦略や構成を変えた直後は数字が動きやすい時期です。1か月目は計測が正しいかの確認、2か月目は無駄打ちが減ったか、CPAを比べるのは3か月目からと決めておくと、早すぎる判断を避けられます。
複数の媒体を別々の会社に任せている場合、まとめたほうがいいですか
媒体をまたいで予算を動かしたいなら、1社にまとめるほうが判断は速くなります。ただし、得意な媒体が会社ごとに違うのも事実です。判断材料は「媒体間で予算配分を変える機会が、過去1年で実際にあったか」です。無かったなら、無理にまとめる必要はありません。
今日できる最初の一歩
まずは広告の管理画面にログインして、アカウントの名義と、お支払い情報がどこになっているかだけを見てください。1分で終わります。ログインできない場合は、それ自体が最初に動くべき理由になります。そのうえで、いまの数字の読み方から確かめたい方は広告運用代行で成果が出ないときの数字の確認方法が続きになります。
ここまで読んで、引き継ぐ項目は分かったけれど社内で進める時間が取れそうにない、あるいは提案を比べる基準に自信が持てない、と感じた方もいると思います。代理店切り替え後のWeb広告運用の支援では、いまのアカウントの状態を一緒に見ながら、引き継ぐものと確認する数字を書き出すところからご相談いただけます。状況を伺うだけでも構いませんので、お気軽にお声がけください。
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