AI導入の相談先|無料の公的窓口と有料の導入支援の使い分け
この記事の要点
- 無料の公的窓口で、任せる業務を1つに絞る
- 有料支援の費用は業務の数・データの準備・開発・研修・伴走の期間で変わる
- 相談先選びの失敗は5つ。契約前の確認表を本文に掲載
AI導入の相談先は、国や商工団体の「無料の公的窓口」と、ITベンダーや研修会社などの「有料の導入支援」の2つに分かれます。失敗しにくいのは、無料の窓口でAIに任せる業務と予算の上限を決めてから、有料の支援に見積もりを依頼する順番です。一般に、無料の窓口で受けられるのは助言で、入力フォームや手順書を作り、社員が使える形にする作業は有料の支援が担います。
社員数が数名から数十名で、社内にAIに詳しい担当者がいない経営者・院長・施設長に向けて書きました。読み終わる頃には、どこに何を相談し、契約前に何を確かめるかを決められるようになります。
扱うのは、相談先の使い分け、相談前に書き出す項目、費用が変わる条件、相談先選びで失敗する条件です。有料の支援会社の種類ごとの違いはITベンダー・コンサル・研修会社を比べたAI導入支援の会社の違いで詳しく比べています。
Contents / 目次
AI導入の相談先は4種類。無料の公的窓口3つと有料の導入支援の役割の違い
無料で相談できるのは、よろず支援拠点・商工会議所や商工会・自治体の産業支援機関です。有料なのは、ITベンダー・コンサルティング会社・研修会社などの導入支援です。無料の窓口は「何から始めるか」を一緒に考える相手で、有料の支援は業務の設計から社員向けの手順書まで作る相手、と考えると選びやすくなります。
| 相談先 | 費用 | 相談できること | 期待しにくいこと(目安) | 向いている段階 |
|---|---|---|---|---|
| よろず支援拠点 | 無料(何度でも) | 経営課題から、AIやデジタル化に取り組む順番を考える(AIアドバイザーにも相談できる) | ツールの設定や社内向け手順書の作成を継続して任せること | 何から手をつけるか決まっていない |
| 商工会議所・商工会 | 相談の条件は各団体で確認 | 経営相談、補助金の情報、専門家の紹介 | 個別の業務の設計を継続して任せること | 資金面も含めて相談したい |
| 都道府県・市町村の産業支援機関 | 事業によって違う | 地域のセミナーや支援事業 | 継続的な伴走(事業の期間に左右される) | 地域の支援事業を使いたい |
| 有料の導入支援 | 有料 | 業務の設計、ツールの設定、手順書、研修、定着支援 | 経営判断の代行 | 任せる業務が1つに決まった |
表の「期待しにくいこと」は、相談先を選ぶための目安です。公的窓口で相談できる内容は、窓口や担当する専門家によって異なります。専門家派遣などでITツールの具体的な助言を受けられる場合もあるため、予約の際に相談したい内容を伝えて確かめてください。
よろず支援拠点の公式サイトによると、よろず支援拠点は「国が全国に設置した無料の経営相談所」で、47都道府県に設置されています。独立行政法人中小企業基盤整備機構は、各拠点の活動を支援する全国本部の役割を担っています。公式サイトのトップページには「経営上のあらゆるご相談に何度でも無料で対応します」とあります。
よろず支援拠点と、拠点内に置かれた生産性向上支援センターには、令和8年度から「AIアドバイザー」が配置されています。公式サイトによると、AIアドバイザーは業務内容や課題を伺いながら、AIを活用できる業務の検討、導入に向けた社内文書・データの準備、活用できるサービスの検討を支援します。予約するときに「業務にAIを使いたい」と伝え、AIアドバイザーに相談できるかを確かめておくと、初回から具体的な話ができます。
公的窓口で受けられる助言の深さは、窓口や担当する専門家によって異なります。一般には、取り組む業務の順番と使えそうな支援制度を確かめる場として使い、入力フォームを作る、社員に使い方を教える、運用のルールを書くといった継続的な作業は、社内で進めるか有料の支援に依頼する前提で計画すると確実です。
AIに任せたい業務の候補がいくつもあって1つに絞れない場合は、AI導入支援・DX支援で、業務と実現したいことを伺い、優先するテーマを決める進め方もあります。
この章の結論。任せる業務が決まっていないなら無料の公的窓口から、業務が1つに決まっているなら有料の導入支援の見積もりから始めます。
AI導入の相談先を決める4つのステップ
相談先を決める前に、AIに任せたい業務を1枚のメモに書き出します。公的窓口でも有料の支援でも、最初に聞かれる内容は同じです。同じメモを持っていけば、相談先ごとの答えを比べられます。
ステップ1。相談メモに8項目を書き出す
次のメモを埋めます。分からない項目は空欄のままで構いません。空欄があること自体が、相談で決める論点になります。
【AI導入の相談メモ】
1. AIに任せたい業務:[例 見積書の作成]
2. 今の担当者と人数:[例 営業2名]
3. 1か月にかかっている時間:[例 1人あたり月15時間]
4. 使っている資料・システム:[例 Excelの見積書の雛形、過去の見積書200件]
5. 社外に出せない情報:[例 取引先名、仕入れの単価]
6. 今のAIの利用状況:[例 社員が個人のChatGPTを使っている/未導入]
7. 決めたい期限と予算の上限:[例 来年3月まで、上限◯万円]
8. 社内でAIの担当になれる社員:[例 総務の◯◯さん、週2時間]
3の時間は、正確でなくても構いません。担当者に「先月は何時間くらいかかったか」を聞いて書けば、費用と比べる基準になります。
ステップ2。無料の公的窓口で方向を確かめる
公的窓口では、メモを見てもらいながら次の3つを聞きます。
- メモの業務から始めるのが妥当か。ほかに先に手をつける業務はないか
- 使えそうな補助金・助成金と、申請の時期
- 有料の支援会社を選ぶときに見るべき点
「AIを入れるべきでしょうか」とだけ聞くと、答えは一般論になります。業務の名前と時間を示して「この業務から始めてよいか」と聞くのがコツです。
ステップ3。有料の導入支援2〜3社に同じ依頼文で見積もりを依頼する
見積もりを比べるには、各社に同じ内容を伝える必要があります。次の依頼文に相談メモを添えて送ります。
件名:AI導入支援のお見積もりのご依頼
[会社名]の[氏名]です。
添付の相談メモの業務について、AIを使った進め方のご提案とお見積もりをお願いします。
次の4点を、見積書で分けて記載いただけますか。
1. 業務の設計(AIが行う作業と社内で確認する作業の分け方)
2. 作るもの(入力フォーム、手順書、社内ルールなど)
3. 研修の人数と回数
4. 導入後の支援の期間と内容
あわせて、契約が終わったあとに社内に残るもの(手順書、設定、アカウント)と、
御社が支援できない作業があれば教えてください。
ステップ4。補助金を使うなら申請の順番を先に確かめる
補助金を使う予定がある場合は、契約や発注の前に申請の手順を確かめます。中小企業庁の担当者に聞いたミラサポplusの解説によると、ITツールの導入費用を対象にした「デジタル化・AI導入補助金」は、IT導入支援事業者との共同申請です。補助の対象になるITツールは、IT導入支援事業者が事前に事務局の審査を受けて登録したものです(2026年10月19日時点)。
申請の手順と最新の公募要領は、デジタル化・AI導入補助金の事務局の公式サイトで確かめてください。
同じミラサポplusの解説によると、2026年6月の第3回公募から「デジタル化セカンドオピニオン」が始まりました。IT導入支援事業者とは異なる第三者の専門家が、経営者本人とオンラインで面談し、申請予定のITツールや運用体制について助言と評価を行う制度です。通常枠の申請では、面談を受けると審査で加点されます。
面談を受ける時期などの要件は、事務局の公式サイトに掲載された最新の公募要領で確かめてください。採択されるかどうかは審査で決まるので、補助金が出る前提で日程を組まないようにします。
この章の結論。相談メモを1枚作り、公的窓口で業務の順番を確かめ、同じ依頼文で2〜3社の見積もりを取ると、相談先を比べて選べます。
有料の導入支援の費用は何で変わるか。任せる作業と社内に残る作業
有料の導入支援の費用は、主に「対象の業務の数」「社内データの準備」「開発の有無」「研修の人数と回数」「伴走の期間」で変わります。見積もりの金額が会社ごとに大きく違うときは、この5つのうちどれが違うのかを確かめます。
| 費用が変わる項目 | 費用が上がる条件 | 費用を抑えられる条件 |
|---|---|---|
| 対象の業務の数 | 複数の部署で同時に始める | 1つの業務から始める |
| 社内データの準備 | 紙や個人のフォルダに散らばっている | 雛形と過去分が1つのフォルダにある |
| 開発の有無 | 既存システムとの連携や独自の開発がある | 法人向けプランのAIと入力フォームで足りる |
| 研修の人数と回数 | 全社員に複数回 | 担当者数名から |
| 伴走の期間 | 月ごとの定着支援を長く続ける | 導入後の確認を数回に限る |
費用を判断するには、削減できる時間を金額に置き換えます。仮に見積書の作成に2名で月30時間かかっていて、AIを使って半分の15時間になったとします。人件費を1時間3,000円と仮定すると、月45,000円分の時間が空きます。
支援の費用を何か月分で回収できればよいかを経営者が先に決めておくと、見積もりを比べやすくなります。削減できる時間は業務によって大きく違うので、この数字は計算の例です。
自社で行う作業と依頼する作業
どの支援会社に依頼しても、次の作業は社内に残ります。ここを外部に任せると、契約が終わった時点で運用が止まります。
- 自社で行う作業:任せる業務と目標の時間を決める、AIの出力を確認して使うかを判断する、社外に出せない情報を決める、運用の担当者を置く
- 依頼する作業:AIが行う作業と社内で確認する作業の分け方、入力フォームと手順書の作成、社員向けの研修、導入後の使われ方の確認
依頼する作業のうち、社員にAIの使い方と情報の扱いを教える部分だけを外部に依頼したい場合は、経営者と社員が一緒に学ぶ120分のAI研修で、入力してよい情報を先に決める進め方もあります。
この章の結論。見積もりは5つの項目に分けて比べ、削減できる時間の金額と並べて判断します。業務と目標の決定、出力の確認、運用の担当は社内に残る作業です。
AI導入の相談先選びで失敗する5つの条件と防ぎ方
AI導入の失敗は、相談先を選ぶ段階で起きることがあります。ここでは相談先の選び方に関わる失敗に絞ります。導入後の失敗の型と撤退の基準はAI導入の失敗の型5つと撤退ラインの記入シートで扱っています。
ツールを販売する会社だけに相談すると、そのツールを使う前提の提案しか比べられない
特定のツールを販売する会社に相談すると、提案はそのツールを使う形になりやすくなります。別のツールや、法人向けプランのAIで足りる可能性は検討されにくくなります。防ぐには、ツールを販売する会社と、特定のツールを販売していない会社(研修会社やコンサルティング会社など)を1社ずつ含めて見積もりを取ります。
補助金の対象ツールから業務を選ぶと、使わない機能に費用を払う
補助金の対象になるツールの一覧を先に見て、そこから導入するツールを選ぶと、業務に合わない機能まで契約することになります。中小企業庁の担当者は、ステップ4で紹介したミラサポplusのデジタル化・AI導入補助金の解説で「大切なのは、『IT導入支援事業者(ITベンダー等)任せにしない』こと」と述べています。業務を先に決め、その業務に合うツールが補助の対象にあるかを後から確かめる順番にします。
相談先ごとに業務の説明が違うと、見積もりの金額を比べられない
A社には見積書の作成だけ、B社には見積書と請求書の両方を説明すると、金額の差が作業の違いなのか単価の違いなのか分かりません。ステップ1の相談メモとステップ3の依頼文を、全社に同じ内容で送ります。
社内の担当者を決めないまま任せると、契約が終わった月から使われなくなる
支援会社が設定と研修を行っても、社内で質問を受ける担当者がいないと、使い方に迷った社員はAIを使わなくなります。契約前に、週1〜2時間でもAIの担当を受け持つ社員を決めます。いなければ、最初の数か月は経営者が担当を兼ねます。
契約が終わったあとに残るものを確かめないと、手順書や設定を引き継げない
AIの設定やアカウントを支援会社の名義で作ると、契約が終わったときに社内で修正できなくなる場合があります。次の確認表で、契約前に答えをもらっておきます。
| 契約前に確認すること | 答えがあいまいなときのリスク |
|---|---|
| AIのアカウントと契約は誰の名義か | 契約終了後に使えなくなる |
| 手順書と設定は社内に渡されるか | 担当者が替わると運用が止まる |
| 社外秘の情報をAIに入力しない仕組みはあるか | 取引先の情報が個人のAIに入力される |
| 効果を何で測るか(削減した時間など) | 費用に見合ったかを判断できない |
| 支援できない作業は何か | 追加の費用が後から発生する |
この章の結論。種類の違う会社を含めて同じ依頼文で見積もりを取り、社内の担当者と契約後に残るものを契約前に決めれば、相談先選びの失敗の多くは防げます。
AI導入の相談でよくある質問
よろず支援拠点や商工会議所で、使うAIのツール名まで決めてもらえますか?
窓口によって対応は違います。よろず支援拠点のAIアドバイザーは活用できるサービスの検討を支援しますが、どのツールを契約するかを決めるのは自社です。窓口で取り組む業務の順番と支援制度を確かめたうえで、有料の支援会社の提案を2〜3社分比べて決めます。比べるときは、相談メモの業務に必要な機能だけを基準にします。
相談した支援会社がIT導入支援事業者でない場合、デジタル化・AI導入補助金は使えますか?
ミラサポplusの解説によると、この補助金の申請はIT導入支援事業者との共同申請で、補助の対象は事前に事務局の審査を受けて登録されたITツールです。そのため、登録されていない会社への支払いは、原則としてこの補助金の対象にならないと考えて計画します。補助金を使う場合は、相談した会社がIT導入支援事業者として登録されているか、提案されたツールが登録されているかを事務局の公式サイトで確かめてから契約してください。対象の条件は公募の回ごとに変わるため、最新の公募要領もあわせて確認します。
社員向けのAI研修なら、人材開発支援助成金で費用をまかなえますか?
研修の中身と申請の手順によります。厚生労働省の人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース)の令和8年8月3日からの変更点の資料では、「生成AIを利用するために汎用的なプロンプトの作り方を学ぶ訓練」が助成対象外の例として示されています。
計画届の期限や訓練時間の条件もあります。厚生労働省の人材開発支援助成金のページやAI研修で使える人材開発支援助成金の条件と申請の流れで確かめてから、労働局に相談してください。
AIの担当を任せられる社員がいない場合、支援会社に全部任せても大丈夫ですか?
設定や研修は任せられますが、AIの出力を使うかどうかの判断と、社員からの質問を受ける役割は社内に残ります。担当者がいない場合は、最初の数か月は経営者が担当を兼ね、その間に支援会社と一緒に手順書を作り、後任の社員に引き継ぐ形にします。
まずは相談メモの1〜3行目、AIに任せたい業務・担当者と人数・1か月にかかっている時間だけを書き出してみてください。業務の候補がいくつもある場合は、最初の1業務を選ぶ採点表で絞り込めます。
ここまで読んで、業務の絞り込みや見積もりの比較を社内だけで進めるのは難しいと感じた方は、書きかけの相談メモのままでもお話を聞かせてください。AI導入支援では、業務と実現したいことを伺い、優先するテーマを一緒に決めます。
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