士業のホームページ集客|費用の内訳と取扱分野ページの作り方

士業のホームページ集客|費用の内訳と取扱分野ページの作り方

この記事の要点

  • 相談が増えるかは取扱分野ページの作り方で決まる。1分野1ページが基本
  • 費用が上下する要因は5つ。見積書のどの行を見るかを本文で解説
  • 原稿を誰が書くかを決めずに発注すると止まる。よくある失敗を4つ掲載

士業のホームページで相談件数が変わる場所は、デザインの好みではなく取扱分野ごとにページが分かれているか、その中に相談前に知りたいことが書いてあるかの2点です。事務所案内と代表あいさつだけのサイトを新しくしても、問い合わせの数はほとんど動きません。

この記事は、税理士・社労士・行政書士・弁護士・司法書士など、士業事務所でホームページの発注を決める立場の方に向けて書いています。所長、パートナー、事務局長といった、費用を出す判断をする方を想定しています。読み終わる頃には、見積書のどの行を見て何を質問すればいいか、社内に残る作業がどれだけあるかを、発注前に判断できる状態を目指します。

ここで扱うのは、取扱分野ページの作り方、相談しやすい見せ方、費用が変わる要因、依頼先の選び方です。制作費の金額そのものの目安は業種別ホームページ制作費用の相場(クリニック・歯科・士業の目安)にまとめてあるので、予算の桁から知りたい方は先にそちらをご覧ください。

Contents / 目次
  1. 士業のホームページ集客で、発注前に決める3つ
  2. 取扱分野ページの作り方。1分野1ページに分ける手順
  3. 士業のホームページデザインで、相談しやすさが決まる4か所
  4. 士業のホームページ制作費用は、何で変わるか
  5. 公開後、何がどう変わるか。数字の見方
  6. 士業のサイトでよく起きる失敗4つ
  7. 依頼する側から見た、士業サイトの現場の妥協点
  8. 士業のホームページ集客のよくある質問
  9. まずは、自分の事務所がどう見えているかを確認してください

士業のホームページ集客で、発注前に決める3つ

発注前に事務所側で決めておくことは、次の3つです。

  1. 取扱分野の絞り込み
  2. 相談導線の条件
  3. 原稿を誰が書くか

この3つが決まっていないまま制作会社に依頼すると、打ち合わせが「どんなデザインが好きか」の話に流れ、公開後に相談が増えない形になります。

順番も大事です。取扱分野が決まらないとページ構成が決まらず、ページ構成が決まらないと原稿の量が決まらず、原稿の量が決まらないと見積もりが出ません。逆に言うと、この3つを紙に書き出してから相見積もりを取ると、各社の金額が同じ条件で比べられます。

決めること決めずに発注すると起きること決める人
取扱分野を何本に絞るか「相続・税務・労務すべて対応」の1ページになり、どの検索語でも上位に出ない所長・パートナー
初回相談の条件(無料か有料か、時間、対応エリア、オンライン可否)条件に合わない電話が増え、対応した時間が売上にならない所長+事務局
原稿を誰が書くか(事務所/制作会社/ライター)原稿が上がってこず、公開時期が決まらないまま止まる所長+事務局

取扱分野の絞り込みは、業務を減らす話ではありません。実際に受けている業務のうち、ページを作って集める分野を選ぶという意味です。事務所としては何でも受けるけれど、サイトで前に出すのは3つ、という形で問題ありません。

選び方の基準は、直近1年で実際に受けた件数の多い順ではなく、「これから増やしたい業務」と「実際に受けたことがある業務」が重なるところです。受けたことのない分野のページを作ると、問い合わせが来ても答えられず、初回面談で断ることになります。

この章の結論。取扱分野・相談条件・原稿の担当者を紙に書いてから見積もりを取ると、各社の金額を同じ条件で比較でき、公開後に相談が来ない形を避けられます。

取扱分野ページの作り方。1分野1ページに分ける手順

取扱分野ページは、1つの分野につき1ページを用意します。「相続」「顧問契約」「助成金申請」を1ページにまとめると、読む人にとって、そのページが何の専門ページなのか分からなくなります。相談したい人は自分の困りごとの名前で検索するので、その困りごと1つに答えるページが必要です。

ステップ1。相談者が使う言葉で分野名を決める

ページのタイトルは、事務所の中で使っている業務名ではなく、相談者が口にする言い方にします。ここを間違えると、内容が良くても検索でたどり着いてもらえません。

  • 事務所の言い方:「相続税申告業務」「労務顧問」「許認可申請」
  • 相談者の言い方:「親が亡くなって相続税がかかるか知りたい」「従業員が10人を超えた」「建設業の許可を取りたい」

言い方の候補を集める方法として、Googleの検索窓に「相続税 申告」と入れて、その下に出てくる候補(サジェスト)を10個ほど書き写すやり方があります。Googleはオートコンプリートの仕組みについて、実際の検索語をもとに予測を自動生成していると説明していますが、個々の候補がどの検索語をどれだけ反映しているかまでは分かりません。検索語そのものの一覧ではなく、言い回しを考えるための材料として扱ってください。地域名を足した候補が出てくるなら、その分野は地域名つきのページを作ることを検討する材料になります。実際に自事務所が表示されている言葉は、公開後にSearch Consoleで確認できます。

ステップ2。1ページの中身を5ブロックの型でそろえる

取扱分野ページの中身は、次の5ブロックの順で並べます。この順番は、相談する前に人が確認する順番と同じです。事務所の理念や沿革は、この5つの後ろに置きます。

  1. どんなときに相談するか(実際に受けた相談の言い方を3つ並べる)
  2. 進め方と期間(着手から完了まで何をするか、何か月かかるか)
  3. 料金の決まり方(金額そのものより、何で金額が変わるかを書く)
  4. 対応できない範囲(受けられないケース、他士業に引き継ぐケース)
  5. この分野のよくある質問(3〜5問)

この中で書き漏らしやすいのが4番の「対応できない範囲」です。書くと相談が減りそうに見えますが、当社の支援では、条件を先に書いた事務所ほど、面談前の段階で相談者が自分で判断してくれるようになります。書いていないと、電話で一通り話したうえで断る、という時間が積み上がります。

ステップ3。AIで下書きを作り、事実の部分だけ人が埋める

原稿が書けずに公開が止まるのは、士業の制作でよく起きることです。ここはAIに下書きを作らせて、事実の確認だけ人がやると、1ページあたりの所要時間がかなり短くなります。

大事なのは、AIに何を渡すかです。分野名だけ渡すと、どの事務所のサイトにも書いてある一般論が返ってきます。渡すのは、次の5つです。

  • 実際に受けた相談の言い方
  • 最初に確認する事項
  • 着手から完了までの期間
  • 料金が変わる要因
  • 受けられない範囲

この5つは事務所の中にしかない情報なので、これを渡した瞬間に出力の中身が変わります。

出発点として使えるプロンプト(AIへの指示文)の例です。作り込む必要はありません。これを貼って、返ってきた文章を見ながら対話で詰めていく形で十分です。

あなたは[税理士/社労士/行政書士]事務所の相談窓口の担当者です。
これから「[取扱分野名]」のページの下書きを作ります。
次の材料だけを使ってください。材料に無いことは書かず、
分からない箇所は「要確認」と書いて残してください。

・実際に受けた相談の言い方(3つ)=[例:「税務調査の連絡が来た」]
・こちらが最初に確認する事項(3つ)=[ ]
・着手から完了までの流れと、かかる期間=[ ]
・料金が変わる要因=[ ]
・対応できない範囲、他士業に引き継ぐケース=[ ]

見出しは次の順で作ってください。
どんなときに相談するか/進め方と期間/料金の決まり方/対応できない範囲/よくある質問

専門用語を使うときは、その場で1文の言い換えを添えてください。
実績数や解決率など、材料に無い数字は書かないでください。

出てきた文章で人が必ず確認するのは、次の3か所です。

  1. 材料に無い数字や断定が混ざっていないか
  2. 期間や手続きの説明が現在の法令・実務と合っているか
  3. 所属会の業務広告に関する取り決めに触れる表現になっていないか

この3つだけ見れば、あとは文章の調子を直す程度で公開できます。AIで作ったページを検索で評価される形にするために人が足すべきことは、AIで作ったサイトのE-E-A-Tを人が足す3要素で詳しく書いています。

士業の広告表現については、所属する会(日本弁護士連合会、日本税理士会連合会、全国社会保険労務士会連合会など)が取り決めを設けている場合があります。名称も内容も士業ごとに違うため、この記事では個別の規定内容には踏み込みません。原稿ができた段階で、所属会が公式サイトで公開している最新の情報を必ずご自身で確認してください。制作会社はここを判断できません。

ステップ4。公開前のチェックリストで抜けを見つける

1ページ書き上がったら、公開前に次の項目を確認します。制作会社に渡す前でも、上がってきた原稿を確認するときでも、同じリストが使えます。

  • 相談の入口:ページの上のほうと下のほうの2か所に、問い合わせへの導線があるか
  • 電話番号:スマホで見たときにタップで発信できるか。受付時間が併記されているか
  • 料金の書き方:金額を出せない場合でも、何で変わるかは書いてあるか
  • 担当者:この分野を誰が担当するか、顔写真と登録番号・所属会が分かるか
  • 対応できない範囲:断るケースが具体的に書いてあるか
  • 他分野への案内:別の分野のページへ移れるリンクがあるか
  • 専門用語:初めて出た用語に1文の言い換えが添えてあるか

ステップ5。1本目を公開して、残りを型どおりに増やす

3分野を同時に作ろうとすると、3本とも止まります。1本目を公開してから、同じ型で2本目を作るほうが早く進みます。1本目に時間がかかるのは型を作っているからで、2本目以降は材料を集める時間だけになります。

公開の間隔は、月1本で十分です。分野ページは公開してすぐ相談につながるものではなく、Googleも検索の仕組みについて、条件を満たしていてもインデックス登録と配信が保証されるわけではないと説明しています。検索での見え方が動くまでの期間は、分野や競合の状況で大きく変わります。一気に作って更新が止まるより、月1本のペースが続くほうが結果的に本数が増えます。

この章の結論。取扱分野ページは5ブロックの型を1つ作れば、あとは材料を差し替えて増やせます。事務所が用意するのは文章ではなく、相談の言い方・期間・料金の変わり方・断る範囲という材料です。

士業のホームページデザインで、相談しやすさが決まる4か所

士業のホームページデザインで相談件数に影響するのは、色やレイアウトの良し悪しではなく、次の4か所です。白基調で清潔感のあるデザインは同業でほぼ共通なので、そこで差はつきません。差がつくのは、相談する側の不安が減るかどうかです。

1. 最初の画面に、誰が何の相談に乗るかが出ているか

スマホでサイトを開いて最初に見える範囲に、事務所名だけが大きく出ているケースをよく見ます。ここに入れるべきなのは、対応エリア+主な取扱分野+相談の入口の3つです。「福岡市の相続手続き専門」のように具体的なほうが、来た人が自分に関係あるかを1秒で判断できます。

2. 人の顔と名前が出ているか

士業は、依頼する前にサービスの品質を判断できない仕事です。だから相談する側は「この人になら話せるか」で決めています。代表の顔写真と、経歴・登録番号・所属会が載っていれば、相談する前に「誰に相談することになるのか」が読み手に伝わります。

写真は、正面から撮った証明写真のようなものより、事務所の中で相談している場面のほうが向いています。カメラマンに依頼する場合、撮影費は制作費とは別に見積もられることが多いので、発注時に含まれているか確認してください。

3. 料金のページがあるか

相談者が最も見たがるのに、士業のサイトでいちばん抜けているのが料金です。金額を確定して書けない業務が多いのは事実ですが、「案件によります」だけで終わらせると、他事務所と比べる土台に上がりません

書き方は、金額そのものではなく金額の決まり方で構いません。「相続財産の総額と相続人の人数で決まります」「従業員数の区分で月額が変わります」と書いてあるだけで、相談者は自分の場合をだいたい想像できます。初回相談の条件(時間・費用・オンライン可否)も、同じページに書いてください。

4. 問い合わせフォームの項目が多すぎないか

士業のフォームは、住所・生年月日・相談内容を細かく聞く形になりがちです。面談前に情報がそろっていると事務所は楽ですが、入力する側は途中でやめます。まずは名前・連絡先・相談分野・ひとことの4〜5項目にとどめ、詳しい内容は返信のときに聞くほうが件数は増えます。項目の絞り方は問い合わせフォームを5項目に絞る入力設計で具体的に書いています。

この章の結論。デザインの評価は見た目ではなく、最初の画面・人の顔・料金の書き方・フォームの項目数の4か所で判断できます。制作会社のデザイン案を見るときは、この4つを1つずつ確認してください。

士業のホームページ制作費用は、何で変わるか

士業のホームページ制作で見積もりの金額が上下する要因は、ページ数そのものではありません。原稿を誰が書くか、取扱分野ページを何本作るか、写真を撮るか、公開後の更新を誰がやるかの4つで、同じページ数でも金額が倍ほど違います。

見積書の項目何で金額が変わるか士業で特に効くところ
設計・構成ページ数と、階層をどこまで作るか取扱分野を何本に分けるかで直接変わる
デザインデザインを起こすページの本数(下層は流用が普通)分野ページは同じ型を流用できるので、本数が増えても比例して上がらない
原稿・取材事務所が書くか、ライターが取材して書くかここがいちばん差が出る。取材ありは1本ごとに加算されるので、単価と本数を見積書で確認する
写真撮影撮影の有無、拘束時間、カット数顔写真は相談前の判断材料になるので、削る優先度は低い
実装・CMS自分で更新できる範囲をどこまで作るか分野ページを自分で増やせる形にすると初期費用は上がるが、後の追加費が減る
保守・運用月額。更新代行が含まれるか、サーバー管理だけか「更新代行あり」の中身が月何件までかを必ず確認する

ここで気をつけたいのが、安い見積もりは原稿の行が入っていないことが多いという点です。見た目の総額が低くても、原稿は事務所が書く前提になっていると、公開までの実作業が丸ごと社内に残ります。士業の場合、原稿を書けるのは所長かベテラン職員なので、いちばん時間単価の高い人の時間が使われます。どれだけの時間になるかはページ本数と分量で大きく変わるので、見積もりを比べる前に「何本を、誰が、いつまでに書くか」を紙に出してください。

契約前に、依頼先へ聞く5つのこと

相見積もりの段階で次の5つを聞くと、金額の差がどこから来ているかが分かります。そのまま質問文として使えます。

  1. 原稿はどちらが書きますか。取材はありますか。何回までですか。
  2. 公開後、取扱分野ページを1本追加するとき、こちらで作れますか。依頼する場合はいくらですか。
  3. この見積もりに含まれないもので、別途費用がかかるものを教えてください。
  4. 士業の広告表現については、どこまで確認していただけますか。
  5. 公開後の保守は、月に何件までの更新が含まれますか。それを超えたときはどうなりますか。

4番の答えが「所属会の取り決めは事務所側で確認をお願いします」でも問題ありません。むしろ正直な答えです。危ないのは「大丈夫です、うちで見ます」と即答して、根拠を説明できない先です。制作会社の選び方全般はホームページ制作会社の選び方と失敗しない判断軸にまとめてあります。

費用を抑える方向では、自治体のデジタル化支援を使う手もあります。都道府県や市区町村、産業振興センターが、中小企業向けにIT・デジタル関連の補助や専門家派遣を行っていることがあります。ホームページ制作費が対象になるかは事業ごとに違い、年度ごとに内容も募集時期も変わります。国の施策は中小企業庁とミラサポplusで、自治体の事業はお住まいの都道府県・市区町村の公式サイトで、対象や条件を最新の募集要項でご確認ください。

この章の結論。総額ではなく「原稿」と「保守」の2行を見比べれば、見積もりの差の理由はほぼ説明できます。安い見積もりを選ぶなら、社内に残る作業時間を先に計算してください。

公開後、何がどう変わるか。数字の見方

取扱分野ページは、公開してすぐ相談が増えるものではありません。検索での表示が動き出すまでの期間は分野や競合の状況で変わるので、公開直後に問い合わせが来ないのは異常ではありません。ただし、しばらく経っても検索からの訪問が増えないなら、分野名の選び方が実際の検索語とずれていないか、Search Consoleで表示されている言葉を確認してください。

見る数字は3つだけで足ります。多くの指標を見ようとすると続かないので、月1回、次の3つをメモする形をおすすめします。

  • 分野ページごとの訪問数:どの分野に人が来ているか。Googleアナリティクス(GA4)のレポートで見られます(項目名や操作は変わることがあるので、GA4のレポートに関する公式ヘルプで最新の手順をご確認ください)
  • 検索された言葉:Google Search Consoleの検索パフォーマンスで、どの言葉で表示されているかが見られます(項目の定義は検索パフォーマンス レポートの公式ヘルプをご確認ください)。想定と違う言葉が並んでいたら、ページの中身をその言葉に寄せます
  • 問い合わせ件数と、そのうち面談に進んだ件数:件数だけ増えても面談に進まないなら、条件の書き方に問題があります

投資として見合うかは、事務所ごとに1件あたりの報酬も受任率もまったく違うため、この記事では目安の数値を出しません。判断するときは、自事務所の実績から「1件受任したときの報酬」と「面談から受任に至る割合」を出し、面談が月に何件増えれば制作費に見合うかを、ご自身の数字で計算してください。この2つが分かれば、いくらまでかけてよいかを自分で決められます。

逆に、この計算が成り立たない事務所もあります。1件あたりの報酬が小さく、かつ面談に時間がかかる業務が中心の場合、Web経由の1件あたりコストが報酬を上回ることがあります。その場合はホームページよりも、既存顧客からの紹介の仕組みを作るほうが先です。

もう1つ、公開後に効いてくるのが更新です。取扱分野ページを作ったまま2年放置すると、法改正の内容が古いまま残り、相談者に「この事務所は動いていないのでは」と思われます。更新の担当と頻度をどう決めるかは更新されないサイトの信用低下を直す更新体制の作り方で書いています。

この章の結論。見る数字は分野ページの訪問数・検索語・面談に進んだ件数の3つ。検索からの訪問が動かないなら、Search Consoleの検索語に分野名を合わせて直すのが最初の一手です。

士業のサイトでよく起きる失敗4つ

ここに挙げるのは、士業事務所のサイトでよく見かける形です。どれも「安さで選んだ」「更新が止まった」といった一般論ではなく、士業だから起きるものだけを挙げています。

失敗1。全分野を1ページに並べて、どの検索語でも出てこない

起きる状況。「税務・相続・事業承継・労務、すべて対応します」と業務案内ページに列挙している形です。事務所としては正しい説明なので、悪意なくこうなります。

何が起きるか。「相続税 申告 ○○市」で検索している人が開いても、そのページには相続以外の業務も並んでいるため、自分の悩みに答えるページに見えません。1つの分野について書ける分量も、1ページに全分野を詰め込む形では限られます。

防ぎ方。業務案内の一覧ページはそのまま残し、その下に分野ごとのページを作ります。一覧ページは目次の役割、分野ページが集客の入口という役割分担です。全部を書き直す必要はありません。

失敗2。守秘義務を気にして、実績と事例を一切載せない

起きる状況。「依頼者のことは書けないから」と、解決事例も顧客の声もゼロのサイトです。士業として真面目な判断ですが、相談する側には判断材料が何も残りません。

何が起きるか。ページの内容が制度の一般的な説明だけになり、他の事務所のサイトと区別がつかなくなります。同じ説明なら、規模の大きい事務所や、先に見つけたサイトが選ばれます。

防ぎ方。依頼者が特定できる情報を出さずに書く形にします。「40代・会社員・相続人3名・不動産あり」のように属性だけにして、金額や地名は書かない。書けるのは何かを迷ったら、所属会が公開している広告表現の取り決めと、実際の依頼者との合意の範囲で線を引いてください。事例が1本もないより、属性だけの事例が5本あるほうが、相談者は自分の場合を想像できます。

失敗3。無料相談の条件を書かず、対応時間が売上にならない

起きる状況。「初回相談無料」とだけ大きく書いてあり、時間・対象範囲・対応エリア・オンライン可否が書かれていない状態です。

何が起きるか。問い合わせ件数は増えますが、その多くが受任につながらないものになります。件数のグラフは上を向いているのに、電話対応の時間だけが積み上がって事務所は疲れる、という状態です。

防ぎ方。「初回相談は60分まで無料。○○市および近隣が対象。オンライン面談可。すでに他の事務所に依頼中の案件はお受けできません」のように、条件を4行書きます。書いた分だけ問い合わせは減りますが、面談に進む割合が上がります。

失敗4。原稿を制作会社に丸ごと任せ、どこにでもある説明ページになる

起きる状況。「原稿もお任せください」という提案を受け、制度の説明中心のページが上がってくるケースです。ライターが法律の条文と一般的な解説をもとに書くと、必ずこうなります。

何が起きるか。読んでも、その事務所に頼む理由が分かりません。制度の説明なら公的機関のサイトのほうが正確なので、検索でも勝てません。しかも法改正があったときに、書いた本人が気づかないまま古い情報が残ります。

防ぎ方。原稿を任せる場合でも、事務所側が必ず出す材料を決めておきます。出す材料は次の5つです。

  • 実際に受けた相談の言い方
  • 最初に確認する事項
  • 着手から完了までの期間
  • 料金の変わり方
  • 断るケース

この5つは制作会社には作れません。ここだけは所長か担当者が口頭で伝えて、書き起こしてもらう形にしてください。取材にかかる時間は分野や事務所の状況で変わるので、依頼先に1本あたりの取材時間と回数を先に確認してください。

この章の結論。4つとも共通しているのは「事務所の中にしかない情報が、ページに載っていない」ことです。制度の説明は誰でも書けます。書けないのは、相談の受け方と断る範囲です。

依頼する側から見た、士業サイトの現場の妥協点

ここからは、発注してみないと分かりにくい部分を率直に書きます。判断するときに知っておいたほうがいい話です。

面談枠の上限が、集客の上限になる

見落とされやすいのが、事務所の受け入れ能力です。仮に所長1人で面談し、1日2枠、月20営業日で回すとすれば、計算上は月40枠になります。枠の数も営業日数も事務所ごとに違うので、この数字は当てはめずに、まず自分の事務所の枠数を数えてください。そこから既存顧客の対応に使う時間を引いた残りが、新規面談に回せる枠です。

この場合、ホームページで月30件の問い合わせを集めても、対応しきれません。集客を増やす前に、誰が一次対応するかを決めておく必要があります

形としては、事務局が相談内容と条件だけ聞いて、所長の面談は絞り込んだ後にする流れです。この形にしないと、集客が成功した月ほど事務所が回らなくなります。これは制作会社からは指摘されにくい部分です。

士業に詳しい制作会社が、必ずしも正解ではない

「士業専門」をうたう制作会社は多く、業界の事情を知っているのは確かに利点です。ただし、士業専門の会社ほどテンプレートが固まっていて、同じ地域の同業と似たサイトになることがあります。実際、同じ市内の事務所3件が、色違いの同じ構成のサイトになっている場面を見かけます。

判断の分かれ目は、その会社の制作実績を3件見て、取扱分野ページの中身が事務所ごとに違うかどうかです。デザインが違ってもページ構成と文章の型が同じなら、テンプレート運用です。それが悪いわけではなく、費用は抑えられます。差別化を求めるなら向かない、という判断ができればいいだけです。地域の制作会社を比べる観点は公開後の運用まで任せる制作会社の選び方でも書いています。

支店・複数拠点は、サイトを分けないほうがいい場合が多い

拠点を増やしたときに「支店ごとにサイトを作りたい」という相談をよく受けます。ただ、同じ内容のページを別ドメインで2つ持つと、更新のたびに両方を直す手間がかかり、片方が古いまま残りやすくなります。相談者から見ても、どちらが本体のサイトか分かりません。

基本は1サイトの中に拠点ごとのページを作る形です。拠点ページには、住所・地図・電話番号・その拠点の担当者・対応エリアを入れます。取扱分野ページは共通で使い回して構いません。別サイトにする価値があるのは、扱う分野も客層もまったく違う場合(たとえば法人向け顧問と、個人向けの相続に特化した窓口を完全に分ける)に限られます。

AIで作れる範囲について

いまのAIツールを使えば、士業サイトの見た目とページ構成は短時間で作れます。ただし、判断が必要な部分は残ります。所属会が定める広告表現の取り決めに触れないか、法改正に合わせて中身を直せるか、この2つは人が見るしかありません。この線引きについてはAIでホームページを作る5ステップとツール選びで詳しく扱っています。

この章の結論。集客の上限は面談枠で決まります。発注前に「新規面談に月何枠使えるか」を数えておくと、どこまで集客に投資すべきかが自分で決められます。

士業のホームページ集客のよくある質問

事務所名でしか検索されていないのですが、取扱分野ページを作る意味はありますか

あります。事務所名で検索する人は、すでに紹介などで名前を知っている人です。取扱分野ページは、名前を知らない人が困りごとの言葉で探したときの入口になります。役割がまったく違うので、事務所名の検索が多いことは分野ページを作らない理由になりません。

士業ポータルサイトに登録していれば、自事務所のホームページは不要ですか

ポータルサイトは掲載順や表示条件を運営側が決めるので、載せる内容も見せ方も自分では選べません。自事務所のサイトは、料金の決まり方や断る範囲まで自分の言葉で書けるのが違いです。併用して、ポータルから来た人が事務所サイトを見て決める、という流れを作るのが現実的です。

顧客の声を載せたいのですが、守秘義務が気になります

依頼者ご本人の同意を取ったうえで、特定につながる情報を外して載せる形が基本です。氏名・会社名・具体的な金額・地名は出さず、年代と相談内容の種類だけにします。掲載してよい範囲は所属会の広告表現の取り決めにも関わるので、原稿ができた段階で所属会の公式情報を確認してください。

分野ページは何本くらいから効果が出ますか

本数の正解はありません。1本だけだと検索で当たる言葉が限られ、一度に多く作ると更新が止まりやすくなります。まず主力の分野から公開して、しばらく経ってから検索されている言葉を見て、増やす分野を決めるほうが無駄が出ません。

既存のサイトを作り替えず、ページを足すだけでも進められますか

進められます。スマホで見づらい、常時SSL化されていない、といった土台の問題がなければ、分野ページを追加する形で十分です。全面リニューアルは費用も期間もかかるので、まず主力の分野ページを足して反応を見てから判断するほうが、投資の判断がしやすくなります。

まずは、自分の事務所がどう見えているかを確認してください

今日できることが1つあります。スマホで「お住まいの市区町村名+いちばん増やしたい取扱分野」を検索して、自事務所が何番目に出るか、そして表示されたページが分野ごとに分かれているかを見てください。1分で終わります。ここで自分のサイトが出てこないなら、この記事のステップ1から始める価値があります。もう少し費用の桁を先に知りたい方は、士業を含む業種別のホームページ制作費用の目安を先に読んでみてください。

取扱分野の絞り込みや、原稿の材料をどう出すかで手が止まりそうだと感じた方は、一度お話を聞かせてください。取扱分野ページから作るホームページ制作では、どのページを誰に見せるかを決めてから作り、公開後はお知らせや事例を事務所で更新できる形にします。いまのサイトを見ながら、どこから手をつけるか一緒に考えるだけでも大丈夫です。

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