AI研修の助成金申請を社労士に依頼する費用|自社で用意する書類
この記事の要点
- 社労士の費用は報酬の型と依頼する作業で決まり、統一の相場表は無い
- 出勤簿・賃金台帳・領収書は自社で用意。時期ごとの分担表を本文に掲載
- 汎用的なプロンプト研修はリスキリングコースの対象外。契約前の質問8つを本文に
社労士に助成金の申請を依頼する費用は、着手金・成功報酬・顧問契約のどの型で払うかと、計画届から支給申請までのどの作業を依頼するかで決まります。統一の相場表は無いので、この記事では金額の目安ではなく、費用の決まり方と見積もりの比べ方を扱います。
見積もりは報酬の型と作業の一覧をそろえて比べます。事務所ごとの見積もりを同じ条件で並べる比較表も本文に載せます。社労士に依頼しても、出勤簿・賃金台帳・研修費の領収書のような元になる書類は、自社でしか用意できません。
社員向けのAI研修に人材開発支援助成金を使うか検討していて、申請を社労士に依頼するかを決める立場の経営者・役員の方に向けた記事です。読み終わる頃には、見積もりを比べる観点と、社内で誰が何を用意するかを決められる状態を目指します。
制度の条件と申請の流れそのものは人材開発支援助成金の条件と申請の流れで解説しています。この記事では、依頼の費用・分担・契約前の確認を扱います。
Contents / 目次
社労士に依頼する費用の決まり方|報酬の型4つと不支給のときの扱い
費用を左右するのは、報酬の型と、依頼する作業の数です。社労士の報酬は各事務所が決めていて、公表された統一の基準はありません。だから金額だけを並べず、「何に対して、いつ、不支給でも払うのか」をそろえて比べます。
前提として、助成金の申請書類を報酬を受け取って作成・提出代行するのは、社会保険労務士(社労士)の業務です。社労士でない者(弁護士など、ほかの法律で認められた者を除く)が報酬を得てこの事務を業として行うことは、社会保険労務士法第27条で禁じられています。
| 報酬の型 | 払う時期 | 不支給のとき | 合う会社 |
|---|---|---|---|
| 着手金+成功報酬 | 依頼したときと、支給が決まったあと | 着手金が戻らない定めかを契約書で確認 | 初めて申請し、計画づくりから相談したい会社 |
| 成功報酬のみ | 支給が決まったあと | 払わない定めが基本。契約書で確認 | 研修の計画が社内で固まっている会社 |
| 顧問契約が前提 | 毎月の顧問料+助成金の報酬 | 顧問料は毎月かかる | 就業規則や労務の相談も続けて依頼したい会社 |
| 手続きごとの定額 | 計画届・支給申請など手続きごと | 済んだ手続きの分は払う | どの作業を依頼するかを自社で決めたい会社 |
同じ型でも、次の条件で見積もりの金額が変わります。
- 研修とコースの数:研修を2つに分ける、コースをまたぐと、届け出がその分増える
- 受講者の人数:受講者ごとに確認する雇用と賃金の書類が増える
- 計画の変更:受講者や日程を変えたときの届け出が別料金になる契約がある
- 就業規則・賃金規程の見直し:申請の前に見直しが要ると、その作成料が加わる
- 労働局からの問い合わせへの対応:追加の資料の提出や調査への同席を含むか
- 成功報酬の計算のもと:申請した額か、支給が決まった額か
実際の負担額の計算例
次の表は、計算の手順を示すための仮の数字です。相場ではありません。
| 項目 | 支給された場合 | 不支給の場合 |
|---|---|---|
| 研修費(自社が先に全額払う) | 80万円 | 80万円 |
| 助成金(仮) | −40万円 | 0円 |
| 着手金(仮) | 5万円 | 5万円 |
| 成功報酬(仮に支給額の20%) | 8万円 | 0円 |
| 自社の負担 | 53万円 | 85万円 |
見るべきは不支給の場合の列です。不支給になっても研修費は戻らず、着手金も払います。研修そのものの見積もりの内訳はAI研修の費用と内訳8項目で確かめられます。
見積もりを並べる比較表
見積もりを受け取ったら、事務所ごとに次の欄を埋めます。総額は「支給された場合」と「不支給の場合」の2つを出します。
【事務所名】[記入]
・報酬の型:[着手金+成功報酬/成功報酬のみ/顧問契約が前提/手続きごとの定額]
・着手金:[金額] 不支給のとき:[返金あり/返金なし]
・成功報酬:[率または金額] 計算のもと:[申請額/支給決定額]
・顧問料:[月額]×[契約期間]
・料金に含まれる手続き:[計画届/変更届/支給申請]
・別料金になる作業:[就業規則の見直し/変更届/労働局への対応]と各金額
・支給された場合の総額:着手金+成功報酬+顧問料+別料金
・不支給の場合の総額:着手金+顧問料+済んだ手続きと別料金の分
2つ以上の事務所でこの欄を埋め、まず不支給の場合の総額を比べます。そのうえで、料金に含まれる手続きが同じかを確かめます。
この章の結論。見積もりは、報酬の型・依頼する作業・不支給のときの支払いの3つをそろえてから比べます。そのうえで「不支給でも実施する研修か」を先に決めておくと、型を選びやすくなります。
AI研修の助成金の条件|法人が依頼する前に社内で確かめる6項目
社労士に依頼する前に、自社が条件に合うかを6項目で確かめます。社労士は書類を作れますが、雇用や研修の日程といった社内の事実は変えられません。ここで外れる項目があると、報酬を払っても支給されません。
次の表の項目の頭に書いたコース名は、その要件を載せている厚生労働省の資料のコースです。
| 項目 | 社内で確かめること |
|---|---|
| 雇用保険 | (人材育成支援コース)受講者が雇用保険の被保険者か。雇用保険に入っていない役員や事業主本人は対象外 |
| 社内の計画 | (人材育成支援コース)職業能力開発推進者を選び、事業内職業能力開発計画を作って社員に知らせているか |
| 届け出の期限 | (人材育成支援コース)計画届を訓練開始日の6か月前から1か月前までに出せる日程か |
| 研修の時間 | (人材育成支援コース)合計10時間以上か。2時間の研修1回では足りず、2時間×5回などに組む |
| 研修中の賃金 | (人材育成支援コース)研修の時間に賃金を払うか。所定労働時間外に行うなら割増賃金を払うか |
| 研修の中身 | (人材育成支援コース)受講者の職務に直接関連する内容か。(事業展開等リスキリング支援コース)汎用的なプロンプトの作り方だけを学ぶ研修は対象外 |
表の(人材育成支援コース)の項目は、厚生労働省の人材育成支援コースのパンフレット(令和8年8月3日版)の記載です(2026年10月21日時点)。雇用保険・社内の計画・届け出の期限・研修の時間・研修の中身は冒頭の「チェックリスト付きフローチャート」に、研修中の賃金は「賃金を適正に支払う事業主」の説明に載っています。
同じパンフレットの「OFF-JTの支給要件」の説明では、部外講師を使う訓練でも、申請事業主が企画し主催したものは「事業内訓練」に当たるとしています。講師と自社の作業の分け方はAI研修の講師派遣の分担表にまとめています。
研修の中身は、2026年8月3日の改正で特に注意が要る項目になりました。これは事業展開等リスキリング支援コースの扱いです。厚生労働省の資料「事業展開等リスキリング支援コース 改正:令和8年8月3日からの変更点について」では、生成AIを使うために汎用的なプロンプトの作り方を学ぶ訓練を、特定の業務への具体的な適用を伴わないとして助成対象外の例に挙げています。
同じ改正資料の末尾には「今回の変更には経過措置がございます。詳しくは支給要領・パンフレットをご確認ください。」とあり、どの訓練が経過措置の対象になるかはこの資料には書かれていません。経過措置は、事業展開等リスキリング支援コースの支給要領(令和8年8月3日版)に書かれています。2026年8月3日より前に計画届を出した訓練には、改正前の支給要領が当てはまります。8月3日以降に計画届を出す訓練でも、事業外訓練は教育訓練機関との契約か申込みが、事業内訓練は訓練の経費に関わる契約・申込み・発注のいずれか1つが8月2日以前なら、対象とならない訓練の扱いは改正前のままです。当てはまるかは、契約書や申込書の日付を示して、社労士か管轄の労働局に確かめます。
「ChatGPTの使い方入門」のような、どの会社でも同じ内容の研修は、このコースでは合わなくなります。
どの業務を題材にするかが社内で決まっていない場合は、AI導入支援で、業務と実現したいことを伺って優先するテーマを決め、その業務を研修の題材にする進め方もあります。
費用の面では、厚生労働省は注意喚起の資料で次のように書いています。
「『訓練経費』は無料になりません」(厚生労働省 人材開発支援助成金の注意喚起の資料「『訓練経費』は無料になりません」)。研修費は自社が全額を先に払い、助成金は支給申請と審査のあとに入ります。
この章の結論。6項目のうち、研修の時間と中身は研修会社と決め、雇用保険・社内の計画・賃金は自社で確かめます。どれか1つでも外れるなら、使うコースを社労士と確かめたうえで、研修の組み方から見直します。
自社で用意する書類と社労士が作る書類|時期ごとの分担表
社労士が作るのは計画届や支給申請書などの申請書類で、その元になる雇用・勤怠・支払いの書類は自社で用意します。研修の前・期間中・後の3つの時期に分けると、社内の担当者を決めやすくなります。
| 書類 | 用意する側 | 時期 |
|---|---|---|
| 受講者の雇用契約書・労働条件通知書 | 自社 | 計画届の前(労働局への提出は支給申請のとき) |
| 就業規則・賃金規程 | 自社(見直しは社労士) | 計画届の前 |
| 研修のカリキュラム・日程表・講師の経歴 | 研修会社から受け取り、自社が内容を確認 | 計画届の前 |
| 計画届と添付の様式 | 社労士(自社が内容を確認) | 訓練開始日の6か月前から1か月前まで |
| 出勤簿(タイムカード)と研修の出席記録 | 自社 | 研修の期間中 |
| 賃金台帳 | 自社 | 研修のあと |
| 研修費の請求書・領収書・振込の記録 | 自社 | 研修のあと |
| 支給申請書 | 社労士(自社が内容を確認) | 訓練終了日の翌日から2か月以内 |
計画届と支給申請書の期限は、人材育成支援コースのパンフレットの「計画届の提出期間」「支給申請期間(通常分)」と、「その他の留意事項」に挙げた対象外となる例の記載です(訓練終了日の翌日から起算して2か月以内に支給申請を行わない場合は支給されません)。必要な書類と様式の名前はコースと年度で変わるので、依頼した社労士と最新のパンフレットで確かめてください。
ステップ1 計画届の前に社内でそろえるもの
研修の開始日から逆に数えて日程を決めます。開始日の1か月前が計画届の締めで、社労士が書類を作る期間も要るので、開始日の2か月前には依頼すると余裕が出ます。
受講者の雇用契約書と就業規則は、この時点で社労士に渡します。就業規則が今の働き方と合っていないと、見直しが先になります。見直しの進め方は就業規則のAIチェックと社労士確認の線引きを参考にしてください。
ステップ2 研修の期間中に残す記録
研修を行った時間が、出勤簿で分かるようにします。研修を終業後や休日に移したのに出勤簿に残っていないと、賃金を払った証拠が無くなります。欠席者が出た日は、誰が何時間欠けたかをその日のうちに記録し、社労士に伝えます。
ステップ3 研修のあと、支給申請までに渡すもの
研修費は振込で払い、請求書・領収書・振込の記録を3点そろえて社労士に渡します。人材育成支援コースのパンフレットでは支給申請の期限を訓練終了日の翌日から起算して2か月以内としているので、研修が終わった週に賃金台帳と一緒に渡す日を決めておきます。
社労士に最初に渡す情報シート
初回の相談の前に、次の項目を社内で書き出しておくと、見積もりが早く正確になります。
【会社】
・雇用保険の適用事業所番号:[記入]
・社員数(うち雇用保険の被保険者):[記入]
・就業規則の最終改定日:[記入]
【研修】
・研修の目的(どの業務に使うか):[例 見積書の作成、問い合わせの返信]
・研修会社と講師:[記入]
・日程と合計時間:[例 2時間×5回=10時間]
・行う時間帯:[所定労働時間内/時間外]
・研修費の見込み:[記入]
【受講者】
・人数と雇用形態:[例 正社員4名、パート1名]
・研修を受けられない日:[記入]
AIで作ってよいのは、この情報シートやカリキュラムの下書き、分担表を自社用の確認リストに変える作業です。研修が要件に合うかの判断と申請書類の作成は、AIに任せず社労士と労働局で確かめます。
この章の結論。社労士に依頼しても、出勤簿・賃金台帳・支払いの記録は自社の担当者が用意します。この3つの担当者を研修の前に決めておけば、社労士との分担が決まります。
契約前に確認すること|任せても支給されない4つの条件
社労士に依頼しても支給されないのは、書類の外にある事実が要件と食い違うときです。AI研修の助成金で起きやすい4つの条件と、防ぎ方を挙げます。
研修会社の「申請サポート」に書類の作成まで含まれる
研修会社が受講料の中で申請書類まで作ると言う場合、社労士でない会社が報酬を得て作成する形になると、社会保険労務士法第27条に関わります。厚生労働省の社会保険労務士法の施行についての通知では、会費などの名目でも、申請書類の作成の対価と一般に認められるものは報酬に当たるとしています。誰が書類を作るのか、その社労士と自社の間に契約があるのかを確かめます。研修会社が紹介する社労士でも、契約は自社と結びます。
受講料の返金・値引き・実質無料をうたう研修
助成金が出たあとに受講料の一部を返す約束は、実際に払った研修費と申請の額が食い違い、不正受給とされるおそれがあります。「実質無料」と書かれた案内は、厚生労働省の資料「『訓練経費』は無料になりません」と合わないので、契約前に条件を書面で確かめます。
計画届のあとに受講者や日程が変わる
計画届を出したあとに受講者を追加したり、日程を変えたりすると、変更届が要ります。人材育成支援コースのパンフレットの「変更届の提出期間」では、変更届の期限を次のように定めています。
- 受講者を追加する場合:訓練開始日の前日まで
- 実施日時などを変える場合:変更前と変更後の訓練実施日のいずれか早い方の日の前日まで
同じ箇所には、期限までに変更届を出さずに変更後の訓練を実施すると、その部分は助成の対象にならないこと、受講者を減らす場合は変更届が要らないことも書かれています。
変更が出たら当日中に社労士へ連絡すると社内で決め、日程には予備日を1回分入れておきます。
出勤簿・賃金台帳と研修の記録が合わない
研修の日に打刻が無い、研修の時間に賃金を払った記録が無い、という食い違いは、社労士が書類で埋められません。研修の日は通常どおり打刻し、時間外に行った回は割増賃金を賃金台帳に載せます。
契約前に社労士へ確認する質問8つ
次の8つを見積もりの段階で書面にしてもらうと、事務所どうしを同じ条件で比べられます。
- 報酬の型と金額はどうなりますか。成功報酬は申請額と支給決定額のどちらで計算しますか。
- 不支給になった場合、着手金や作業料は返金されますか。
- 提出期限を過ぎたなど、事務所側の理由で不支給になった場合の扱いはどうなりますか。
- 計画届・変更の届け出・支給申請のうち、どの手続きが料金に含まれますか。
- 就業規則や賃金規程の見直しが要る場合、別料金になりますか。
- 労働局からの問い合わせや調査への対応は含まれますか。
- 研修の中身が、2026年8月の改正後の要件に合うかを申請前に確認してもらえますか。
- 顧問契約を結ばなくても、助成金の申請だけを依頼できますか。
この章の結論。支給されるかは、研修の中身・記録・支払いの事実で決まります。契約前は8つの質問への回答を書面で受け取り、不支給のときの支払いと、変更の届け出の扱いを必ず比べます。
AI研修の助成金申請でよくある質問
研修会社が紹介してくれる社労士に依頼しても大丈夫ですか?
依頼して構いません。ただし契約は自社と社労士の間で結び、報酬・不支給のときの扱い・研修の中身が要件に合うかの判断を、研修会社とは別に説明してもらいます。研修を受けることが依頼の条件になっていないかも確かめてください。
2026年8月の改正前に計画届を出したAI研修は、対象から外れますか?
外れません。事業展開等リスキリング支援コースの支給要領(令和8年8月3日版)の経過措置では、2026年8月3日より前に計画届を出した訓練には改正前の支給要領が当てはまります。8月3日以降に計画届を出す訓練でも、研修会社との契約や申込みなどが8月2日以前なら、対象とならない訓練の扱いは改正前のままです。当てはまるかは、契約書や申込書の日付を示して、依頼している社労士か管轄の労働局に確かめてください。研修会社の説明だけで判断しないでください。
顧問の社労士がいない会社でも、AI研修の助成金申請だけを依頼できますか?
単発で受ける事務所もあれば、顧問契約を条件にする事務所もあります。単発で依頼する場合は、就業規則の見直しや労働局からの問い合わせへの対応が料金に含まれるかで総額が変わるので、上の8つの質問で比べてください。
役員だけが受けるAI研修でも、助成金は使えますか?
雇用保険に入っていない役員や事業主本人は対象外です。役員が社員と一緒に受ける場合は、対象になるのは雇用保険に入っている社員の分だけと考えて、受講者の一覧を社労士に確かめてもらいます。
まずは、研修を受ける予定の社員が雇用保険に入っているかと、研修開始日の1か月前がいつになるかを書き出してみてください。助成金を使わない場合に何か月で回収できるかは、AI研修の費用対効果の計算表で試算できます。
助成金の申請は社労士と進めつつ、研修で何を教えるかを自社の業務から決めたい方は、AI活用研修のページをご覧ください。人材開発支援助成金の活用をご希望の場合は、初回のご相談で伺います。対象になるかは、研修の計画を決める前に管轄の労働局でご確認ください。申請の手続きは社会保険労務士の業務のため、弊社では行っていません。
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