DKIM設定の費用の決まり方|SPF・DMARCまで依頼する作業の内訳
この記事の要点
- 費用の中心は鍵の作成ではなく、送信元の洗い出しとDNSの作業
- 送信元が1つ増えるとDKIMの作業も1つ増える。内訳の表と計算式を本文に
- 保守契約の前に確認する6項目と、制作会社に送る質問の文面を掲載
DKIM設定の費用は、鍵を作る作業そのものではほとんど決まりません。会社のドメインでメールを送っている仕組み(社員のメール、問い合わせフォーム、予約や請求書のシステムなど)を洗い出し、それぞれをDNSに登録する作業の量で決まります。送信元が1つなら短く済み、5つあれば5つ分の作業が要ります。DMARCまで進めるなら、レポートを確かめてから設定を強める作業も加わります。
「会社のメールが迷惑メールに入る」と言われ、制作会社や保守会社への依頼を考えている経営者・院長に向けた記事です。読み終わる頃には、見積もりの内訳が妥当か判断し、保守契約に何を書いてもらうかを決められる状態を目指します。
ご自身で設定する手順は会社メールが迷惑メール判定される原因とSPF・DKIMの設定手順で解説しています。この記事では、費用の内訳と依頼するときの判断に絞ります。
Contents / 目次
DKIM設定の費用は送信元の数とDMARCまで進めるかで変わる
DKIM設定の費用を左右するのは、次の3つです。
- 会社のドメインからメールを送っている仕組みの数
- ドメインのDNSを誰が管理していて、すぐに変更できるか
- DMARCまで導入し、レポートを見ながら運用するか
DKIMとは、送ったメールに電子署名を付け、受け取った側がDNSに載せた公開鍵で「このドメインから送られ、途中で書き換えられていない」ことを確かめる仕組みです。SPFは送ってよいサーバーの一覧、DMARCはSPFやDKIMに合格しなかったメールの扱いを受信側に指示する仕組みです。
Google Workspaceは管理コンソールで鍵を作り、DNSにTXTレコードを1つ追加します(Google Workspace ヘルプ「DKIM を設定する」)。
Microsoft 365は、*.onmicrosoft.comのドメインから送るメールには自動でDKIM署名を付けます。独自ドメインから送るメールには、設定するまでDKIM署名が付きません。独自ドメインで署名するには、CNAMEレコードを2つ追加して有効にします(Microsoft Learn「カスタム ドメインで DKIM をメールに使用する方法」)。
どちらも各サービスの管理画面で設定できる機能で、費用の中心は作業時間です。
設定が求められる理由は、Googleの「メール送信者のガイドライン」にあります(2026年10月31日確認)。個人用のGmail(@gmail.com・@googlemail.com)宛てに送るなら、すべての送信者にSPFかDKIMの設定が求められます。1日5,000件以上送る送信者は、SPF・DKIM・DMARCのすべてと、Fromのドメインの一致、マーケティングメールのワンクリック登録解除が必要です。
| 作業 | 中身 | 費用が増える条件 |
|---|---|---|
| DNSの権限の確認 | DNSの管理者とログイン情報を確かめる | 管理者が分からない、前の制作会社が持っている |
| 送信元の洗い出し | ドメインでメールを送る仕組みを一覧にする | 部署ごとに別のサービスを契約している |
| SPFの設定 | 送ってよいサーバーをTXTレコード1行にまとめる | 送信元が多く、DNSの参照回数の上限に近い |
| DKIMの設定 | 送信元ごとに鍵を作りDNSに登録する | 送信元の数だけ繰り返す |
| DMARCの導入 | p=noneで始め、レポートの受け先を決める | レポートを読む期間を長くとる |
| DMARCの強化 | quarantine・rejectに変更する | 正規のメールの不合格が残っている |
| 送信テスト | 各送信元からメールを送り、ヘッダーで合格を確かめる | 送信元が多い |
見積もりを比べるときは、総額より「送信元をいくつと数えているか」を先に確かめてください。数え方が違えば、金額の差は単価ではなく作業の量の差です。
SPF・DKIM・DMARCで制作会社に依頼する作業の内訳
制作会社に依頼する作業は、送信元の洗い出し、SPF、DKIM、DMARCの4つのステップに分かれます。ステップ1を社内で済ませておくと、その分の調査時間が見積もりから外れます。
ステップ1 会社のドメインでメールを送る仕組みを洗い出す
From欄に会社のドメイン(例 info@example.co.jp)を使って送っている仕組みを、次の観点で書き出します。
- 社員のメール:Google Workspace、Microsoft 365、レンタルサーバーのメールなど
- ホームページのフォーム:問い合わせの通知と、お客様への自動返信
- 配信サービス:メールマガジン、お知らせの一斉配信
- 業務システム:予約、請求書、ネットショップ、求人応募の通知
- 使っていないドメイン:過去の社名やキャンペーン用に取得したドメイン
ステップ2 SPFを1行にまとめる
SPFのTXTレコードは、1つのドメインに1つだけです。送信元ごとに別のレコードを足すと、SPFの判定そのものがエラーになります。参照するDNSの回数も10回までとRFC 7208で決まっていて、送信元が多い会社ほど1行に収める調整に時間がかかります。
末尾の「~all」は、一覧にないサーバーを「おそらく許可していない」と示す指定です。RFC 7208は、この結果だけを理由にメールの受信を拒否しないよう、受信側に求めています。
ChatGPTなどの生成AIにSPFの1行を作らせることもできます。ただし、送信サービスごとのinclude先の値をAIが推測で書くことがあるので、各サービスの公式ヘルプにある値と1つずつ照らしてから登録してください。
ステップ3 DKIMを送信元ごとに設定する
DKIMは送信元ごとに鍵が別なので、送信元の数だけ作業を繰り返します。
Google Workspaceは反映に最長で48時間ほどかかることがあります(Google Workspace ヘルプ「DKIM を設定する」)。
Microsoftは、自社で直接管理しない一斉配信のサービスにはサブドメイン(例 news.example.co.jp)を使うよう勧めていて、本体のドメインの評判を守れます(Microsoft Learn「カスタム ドメインで DKIM をメールに使用する方法」)。
Google Workspaceだけで送る場合の完成形は、次のような3つのレコードです。
; ホスト名はドメイン名(example.co.jp)を省いた形で書いています
; SPF(ドメインに1つだけ。ホスト名は多くの管理画面で「@」か空欄)
@ TXT "v=spf1 include:_spf.google.com ~all"
; DKIM(管理コンソールで作った値を貼る)
google._domainkey TXT "v=DKIM1; k=rsa; p=[管理コンソールに表示された公開鍵]"
; DMARC(最初は p=none で様子を見る)
_dmarc TXT "v=DMARC1; p=none; rua=mailto:[レポートを受け取る共有アドレス]"
ホスト名の入れ方はDNSの管理画面ごとに違います。ドメイン名を省いて入れる欄に「google._domainkey.example.co.jp」と入れると、「google._domainkey.example.co.jp.example.co.jp」のように二重になります。完全な名前を求める欄なら「google._domainkey.example.co.jp」と入れるなど、入力欄の説明に合わせてください。
ステップ4 DMARCはp=noneから始めて強める
Googleの「DMARC を設定する」は、SPF・DKIMを設定してから48時間ほど空けてDMARCを有効にし、p=noneで始めるよう勧めています。p=noneはメールをそのまま届け、レポートだけを返す設定です。レポートで正規の送信元がすべて合格していると確かめてから、quarantine(迷惑メールに振り分け)やreject(受信拒否)に変え、pctで一部のメールから適用します。
見積もりを確かめる計算式
初回の設定費用は、次の式で見積もりの妥当性を確かめられます。
初回の費用 =(DNSの確認 + 洗い出し + SPF + DKIM×送信元の数 + 送信テスト×送信元の数 + DMARCの導入 + DMARCの強化)× 時間単価
月額の費用 = DMARCレポートの確認と報告 + 送信元を追加したときの設定
SPFは送信元がいくつあっても1行にまとめる作業です。ただし、送信元が多くDNSの参照回数の上限に近いときは、1行に収める調整の時間が加わります。
仮に、どの作業も1回1時間とし、SPFの調整は要らないとします(計算のための仮の数字で、相場ではありません)。送信元の数によらない作業(DNSの確認・洗い出し・SPF・DMARCの導入・DMARCの強化)で5時間、送信元1つごとにDKIMと送信テストで2時間です。送信元が1つなら合計7時間、3つなら11時間、5つなら15時間になります。送信元の数を社内で確定させておくと、見積もりの比較がしやすくなります。
時間単価は、見積書の「作業費」「技術料」などの行が、単価と時間に分けて書かれているかで確かめます。「メール認証設定一式」のように総額だけの場合は、作業ごとの時間と時間単価を分けて出してもらいましょう。
DNSやメールの設定の時間単価は、会社や保守契約に含む範囲で変わります。金額の水準は、見積書にある作業ごとの時間を上の式に入れ、その会社の時間単価を掛けると、自社の送信元の数に合わせて出せます。複数社の見積もりを同じ式に当てはめ、送信元1つあたりのDKIMと送信テストの時間が会社によって大きく違うときは、その作業に何が含まれているかを質問してください。
自社で行う作業と依頼する作業
自社で行うのは、送信元の一覧づくり、DNSの管理者の確認、DMARCレポートを受け取る共有アドレスの用意です。制作会社に依頼するのは、SPFを1行にまとめる調整、送信元ごとのDKIMの登録、送信テスト、DMARCを強める時期の判断です。
サイトの保守と一緒に、ドメインの管理を誰が持つかから決めたい場合は、公開後の保守管理まで含むホームページ制作でもご相談いただけます。
この章の結論。費用は「送信元の数×DKIM」と「DMARCをどこまで進めるか」でほぼ決まります。送信元の一覧を先に作れば、見積もりの差が作業の量の差なのか判断できます。
ホームページの運用保守費用にDKIMは含まれるか。契約前に確認する6項目
保守の月額にDKIMが含まれるかは、契約書に書かれた作業で決まります。ホームページの保守契約は、サーバーやWordPressの更新、バックアップ、軽微な修正を中心に書かれることが多く、DNSやメールの設定は書かれていなければ別料金になりえます。
月額に含む作業の一般的な分け方はホームページ保守の費用相場と、月額に含む作業・別料金の一覧で解説しています。DKIMに関しては、次の6項目を契約前に確かめてください。
- DNSを管理しているのは誰か(自社・制作会社・サーバー会社)と、ログイン情報の保管先
- 初回のSPF・DKIM・DMARCの設定は月額に含むか、別の見積もりか
- 新しい送信サービスを追加したときのSPF・DKIMの追加は、月額に含むか都度の費用か
- DMARCレポートの受け先と、月に何を報告してもらうか
- サーバー移転やメールサービスの変更のとき、DNSのレコードを引き継ぐ作業が含まれるか
- 解約するとき、DNSの管理権限とレコードの一覧を受け取れるか
制作会社には、次の文面で確認すると回答を比べやすくなります。
件名:メール認証(SPF・DKIM・DMARC)の対応についてのご確認
いつもお世話になっております。
当社ドメイン[example.co.jp]のメール認証について、次の点を教えてください。
1. 当社ドメインのDNSは、現在どなたが管理していますか。
2. 次の送信元について、SPF・DKIMの設定状況を確認していただけますか。
・社員のメール:[Google Workspace など]
・問い合わせフォームの通知と自動返信
・[予約システム・請求書システムなど]
3. 初回の設定と、DMARCをp=noneで導入する作業の見積もりをお願いします。
4. 保守契約の月額に、送信元を追加したときの設定とDMARCレポートの確認は含まれますか。
5. 解約時に、DNSの管理権限とレコードの一覧はいただけますか。
よろしくお願いいたします。
任せてもDKIMの設定がうまくいかない4つの条件と防ぎ方
制作会社に依頼しても、社内の準備や契約の決め方によっては設定が止まったり、正規のメールが届かなくなったりします。DKIM特有の条件を4つ挙げます。
DNSの管理者が分からないまま依頼する
DNSを変更できる担当者がいないと、制作会社は鍵を作れても登録できず、作業が止まります。
Whoisの表示だけでは管理会社が分からないことがあるので、ドメイン代の請求書や契約時のメールから管理会社を探します。依頼の前にログインできることを確かめておきましょう。
ドメインの更新管理と合わせて見直すなら、ドメインとSSLの期限切れを防ぐ更新管理の手順も参考になります。
問い合わせフォームのメールが送信元の一覧から漏れる
WordPressのフォームは、Webサーバーから会社のドメインを名乗ってメールを送ることがあります。一覧から漏れたままDMARCをrejectにすると、問い合わせの通知やお客様への自動返信が届かなくなります。フォームのメールをGoogle Workspaceなどの正規の送信元から送る設定は、WP Mail SMTPでWordPressのメールをGmail経由にする設定で解説しています。
DMARCを最初からrejectで登録する
早く終わらせようとしてp=rejectから始めると、洗い出しの漏れがあった送信元のメールは受信拒否されます。どのメールが止まったかは、レポートを読まないと分かりません。見積もりにp=noneの期間とレポートの確認が入っているかを確かめてください。
制作会社やサーバーを変えるときにDKIMのレコードが移らない
DNSを新しい会社に移すとき、Webサイト用のレコードだけを移してDKIMのTXTやCNAMEを忘れると、署名を検証できなくなります。
Microsoft 365は2つ目のCNAMEが無いと鍵の切り替えに失敗すると説明しています(Microsoft Learn「カスタム ドメインで DKIM をメールに使用する方法」)。
移す前にレコードの一覧を受け取り、移した後に送信テストを依頼しましょう。制作会社を変えるときの確認はリニューアルで制作会社を変える前のドメインの確認と依頼文にまとめています。
この章の結論。うまくいかない原因の多くは、技術ではなく「DNSを誰が変更できるか」と「送信元の漏れ」です。この2つを依頼前に確かめれば、DMARCを強める段階で正規のメールが止まるのを防げます。
DKIM設定の費用と依頼でよくある質問
1日5,000件も送らない会社でも、DMARCまで設定してもらう必要はありますか?
Gmailの要件で、1日5,000件未満の送信者に認証として求められているのは、SPFかDKIMのどちらかです。ただ、DMARCはp=noneならメールの届き方を変えずに、レポートで送信元の漏れが分かります。DKIMと同じ依頼でp=noneまで入れておくと、後から強めるか判断しやすくなります。
メールはGoogle Workspace、サイトは制作会社のサーバーです。DKIMはどちらに依頼すればいいですか?
DNSのレコードを追加できる側です。鍵はGoogle Workspaceの管理コンソールで作り、その値をDNSに登録します。DNSを制作会社が管理しているなら制作会社に、ドメイン会社の管理画面を自社で持っているなら、社内の管理者が鍵の作成から登録まで進められます。
DMARCのレポートがXMLのファイルで毎日届きます。誰が読めばいいですか?
レポートは送信元ごとの合否の集計です。生成AIに要約させることもできますが、合否は元の値と照らして判断してください。受け先は個人ではなく共有のアドレスにし、制作会社に月1回、不合格の送信元があったかを報告してもらうと、社内の負担が少なく済みます。
DKIMを設定すれば、取引先で迷惑メールに入らなくなりますか?
認証に合格しても、迷惑メールに振り分けられないとは限りません。Googleの「メール送信者のガイドライン」は、認証のほかに、迷惑メール率を0.3%未満に保つことや、送信に使うドメインかIPアドレスに逆引きのDNSレコード(PTR)を設定することなども求めています。設定後は、取引先に届いたメールのヘッダーで合格を確かめてください。
まずは、自社のドメインでメールを送っている仕組みを、社員のメール・フォーム・業務システムの3つに分けて書き出してみてください。保守契約そのものを見直すなら、公開後の更新・保守・解約で差が出る制作会社の確認項目が次の判断に役立ちます。
送信元の一覧を作ったものの、DNSの管理者や保守契約に何を書けばよいか決めきれない場合は、公開後の保守管理まで含むホームページ制作でご相談ください。メールの認証(SPF・DKIM・DMARC)の設定は、ホームページ制作のページに載せていない作業のため、ご希望の場合は初回のご相談で伺います。
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